永き夜の終わりに
目を開いた時、そこが何処なのか分からなかった。
正確には何も見えない闇の中にいたのだ。
手を動かそうとするも上手く動かない。
しかしとても狭い空間にいることだけは何となく感じた。
閉塞感に息苦しさを感じ、少しずつ感覚の戻ってきた手足をばたりと動かす。声は…出なさそうだ。
暑いわけでもないが額に汗が滲んだ。
それからどれくらい経ったのだろうか。
ガタガタと周りが揺れたと思えば光が差し込んだ。プシュゥと、密閉されていた容器が開いたかのような音が鳴る。眩しさに目を開けられず顔を背ける。
「嘘。嘘嘘嘘。起きてるよ本当に!」
カンと響くような高い声と共に、大きな音をたててもう一度闇が戻ってくる。
どうやら蓋のようなものか被せてあるらしく、開けてくれた人物が中身を…いや、私を確認してまた閉めていったようだ。
ぐっと力を入れるとその蓋は再び横にずれ、光が目に差す。
酸素マスクのようなものを外すと、起き上がろうと試みる。しかしうまく力が入ってくれない。
蓋も中途半端に開いたままで、そこからは白い天井が見えるだけだ。
何やら、騒がしい。
初老の男性が隙間を覗き込む。目が合った。
「生きておられた。生きておられた…よかった、よかった。」
敵意を感じないその声に安心したのか、再び私は意識を手放した。