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マシックガールズ  作者: まーだ
第七章 黄昏の魔法少女たち
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第82話 強者

トーナメント準決勝が始まる。

ハルシオンが予想した通り、第4シードまでがベスト4に進出した。


グローリアは第3シードの魔法少女の詳細は分かっていないが、今はとりあえず目の前の敵に集中することにした。


例の魔法少女ザーナが運ばれてくる。

彼女を拘束した黒い服の少女も一緒だ。


ザーナの拘束が解かれ、リングに上がる。

グローリアも同時にリングに上がった。


「さあ、私を殺してみろ?」


「言われなくても、やってやるよ」


グローリアとザーナ、二人の魔法少女の戦いが始まった。


カウンター狙いのザーナは動かない。

グローリアはザーナの周囲をゆっくりと歩いた。


(イブキの攻撃は全く通用しなかった。あれだけの質量を完全に無効にすると考えると、私が時を止めてから攻撃しても果たして通用するのか)


「やらなきゃ、始まらないか」


先に仕掛けたのは、やはりグローリア。


時を止めて、ザーナの背後に回り込む。

そして後頭部を思いっきり殴った。


時は動き出し、ザーナの頭からグローリアに向かって光の爆発が起きた。


「うっ……やっぱり……!」


グローリアは爆発に巻き込まれ、右腕の骨が折れた。


「通用しないのか……」


しかし、予想外のことはもう一つ起きた。

爆発の煙が晴れたとき、ザーナは地面に倒れていた。


「???」


ザーナは後頭部を押さえながら、ふらふらと立ち上がる。

自分が何をされたか理解していないようだった。


(効いてる、私の攻撃も)


だが、ダメージレースではグローリアは圧倒的不利。


(次の作戦だ)


幸い、ザーナは自分からは攻撃しない。

グローリアは一呼吸おいて、再び時を止めた。


次の瞬間、ザーナの前に現れたのは石の弾丸。


「くっ……!」


グローリアはリングの地面をえぐり、ザーナに遠距離攻撃を仕掛けていた。


「どうだ!」


ザーナの体で爆発が起き、その爆発は全てグローリアに向かってきた。


「遠距離攻撃も効かねぇのかよ!」


グローリアは再び時を止め、爆発を回避した。


グローリアは苦戦していた。

初めての経験、勝てないかもしれない相手。

だが、それはザーナも同じだった。


未知数の相手。勝つのは相手をより上回った方。


(どうする……)


ザーナはグローリアの躊躇を見逃さなかった。


「守るだけが私の戦いじゃない!」


ザーナはグローリアの目の前で自分の体を叩いた。

発生した爆発は目の前のグローリアを襲う。


「!」


グローリアはザーナの背後にまわりそれを回避した。


「私、頭良くないから、やっぱこれしかねぇわ」


グローリアは空気を深く吸い。呼吸を整えた。


「行くぞ、どっちが先にくたばるか!勝負!」


グローリアの作戦はシンプル。

時を止めて、ザーナを攻撃。

ザーナのカウンターを時を止め回避し、再び攻撃。


ザーナの攻撃は当たらず、自分の攻撃は当たる

理論上、グローリアは負けることはない。

とんでもない魔力消費をするという点を考えなければ。


つまりこれは、グローリアの魔力が先に尽きるか、ザーナが戦闘不能になるかの勝負。


この状況を理解できるのはグローリア本人のみ。

ザーナは何をされているのかすら理解できない。


ひたすらに時止めを繰り返す。


「うっ……」


グローリアの意識が途切れかけた。


「しまっ……」


ザーナの爆発がグローリアを襲う。


「うあああああっっ!!」


全身が燃えるほど熱さ、重機に潰されるような風圧。

それでもグローリアは倒れなかった。


ゆっくりと目を開ける。


目の前の敵、ザーナは地面に倒れていた。


「勝った……勝てた……」


グローリアは右手を挙げた。


--------------------


グローリアは控室で魔法水を飲みながら待機していた。


「本当に、こんな水で回復するんだな、魔法少女って」


隣にいたハルシオンが言った。


「魔力はエネルギーだ。魔力さえあれば、魔法少女は死なない。そういう意味では、さっきの戦い方は愚策だな。魔力を消費しすぎてる。頭をぶち抜けば殺せただろ?なぜしなかった」


「ここで殺したら、あのザーナって子と一緒になると思って……、私は狂人じゃないから……」


「とにかく……その魔法の連続使用はできるだけ控えた方がいい」


しばらくして、控室に試合を終えたバレットが帰ってきた。


血だらけで、体中、いろいろなところを切り刻まれていた。

そして息を切らしながら言った。


「ハルシオン、やるぞ、決勝戦だ」


「馬鹿が増えたな。決勝戦は1時間の休憩の後行う。まずは傷を癒せ」


ハルシオンはそう言うと、控室から立ち去った。

バレットは地面に倒れ、置いてあった魔法水を浴びた。


「バレット、大丈夫?」


グローリアはバレットに聞く。


「心配するな、次ですべてが決まる」


「ああ、そうだね」



--------------------


トーナメント決勝戦。

決勝だけは見届けようと、棄権した魔法少女たちが観客席に集まってきた。

ハルシオンはモニター室で、イブキは医務室で彼女たちの試合を眺めた。


審判はザーナを止めた少女が務めるようだ。


「バレット、グローリア、準備はいい?」


「問題ない」


「こちらも」


「では、時間無制限、はじめ!」


先に仕掛けたのはバレット。

合図と共に腕を大砲に変え、グローリアに向かって発射した。


「おま、銃だけじゃなかったのかよ!」


グローリアは時を止め大砲を回避した。

そして、バレットに追撃に向かう。


しかし、そこにバレットは居なかった。


(何……!?)


バレットがいるのは遥か上方。

両腕を飛行機の翼に変化させ空を舞っていた。


(あれじゃ……届かない)


グローリアの時止めの解除条件は二つ、魔法生成物に触れること、そして呼吸をすることだ。

バレットの所まで、泳いでいくのに時間がかかり、とても呼吸せずにたどり着くのは不可能。


グローリアはそのまま時止めを解除した。


「どうした?瞬間移動してこないのか?」


バレットはさらに上に逃げる。


「あいつ……まさか、私の魔法の正体に気づいているのか……」


グローリアは焦りだした。


「まあな、私の魔法も見せた。これでお互い様だろ?私は自分の体を兵器に変化させることが出来る、例えばこんな風に……」


バレットは自分の髪の毛を数本ちぎり、空にばらまいた。

それらは全て手榴弾となり、地上にいるグローリアに降り注いだ。


グローリアは時を止め、地面をえぐることでドームを作り、爆発を防いだ。


「そうやって逃げまどうといい!空にいる私にはお前の攻撃は届かないだろうがなぁ!」


余裕をかましているバレットの右翼に攻撃が命中した。

ザーナと戦った時に見せた土による遠距離攻撃だ。


「ちっ……だが、そんな豆鉄砲いくら撃とうが意味はない……!空を飛べるのは私だけだ!」


グローリアはそのセリフで確信した。

バレットはグローリアの魔法が時を止めることだと分かっている。

しかし、時の止まった世界でグローリアがどのように移動しているかまでは分かっていない。


(バレットは私が空間を泳げることを知らない……!)


グローリアにとってその情報はあまりにも重要だった。

チャンスは1回、だが攻撃を当てれば、バレットを地上に落とせる。


「これで、おしまいだ!」


バレットは両腕をガトリング砲に変形させた。

そして地上に向かって乱射した。


(今だ!)


一回目の時間停止、銃弾の雨をすり抜け、とにかく上に泳ぐ。

停止解除。


「なっ」


バレットがグローリアの接近に気づく、

しかし、すぐさま二回目の時間停止、グローリアはバレットの後ろに回り込む。


(たどり着いた!ようやく!)


攻撃の直前で時間停止の解除。そして、グローリアはバレットの片翼を破壊した。


「やった!」


「く……」


グローリアが喜んだのも束の間、バレットは落下しながらガトリングの照準を空中のグローリアに合わせた。


「……飛んで火にいるってやつさ」


「そんな攻撃!」


グローリアは再び時間停止をし、バレットの攻撃を回避した。


「どうだ……って、あれ」


ザーナの時と同じ感覚。意識が途切れるような。


つまり魔力切れ、グローリアの魔法はあまりにも消費が大きすぎた。

一時間程度では完全に補給などできていなかったのだ。


「クソ……」


二人の魔法少女が地面に着地する。


(まずい……これ以上は回避できない)


バレットはため息をつき、両手を挙げ言った。


「降参だ、この状況で勝てるかよ、こんなバケモンに」


「わ、私の勝ち……」


魔力切れのグローリアに勝ち目はなかった。

しかし、それを知る術をバレットは持っていない。


決勝戦はあまりにもあっさりと幕を下ろした。

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