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マシックガールズ  作者: まーだ
第七章 黄昏の魔法少女たち
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第81話 地獄の光

トーナメント最終日。

会場に集まったのは勝ち上がった者たちに加えてごく少数の魔法少女だった。

噂によると、例の魔法少女の試合を見て精神を病んでしまったらしい。


「まあ、あんなもん見せられて平気な奴はいねぇよ」


「私たちは平気だが?」


「揚げ足とってんじぇねぇよ、バレット」


「それはそれとして、わかってるよな昨日の約束」


「ああ……」


第一試合、グローリアは昨日と同じように一瞬で終わらせ、準決勝にコマを進めた。

そして、ついにイブキと例の魔法少女の試合が始まろうとしていた。


イブキは既に会場に入っており、試合前の準備体操をしていた。


あれからイブキは一人で色々考え、覚悟を決めたらしい。

昨日とは違い非常に落ち着いている。


会場の扉が開き、一人の魔法少女が連れてこられた。

拘束具でぐるぐる巻きにされており、一人では歩いてこられず、車輪を付けた台座を転がしながらリングに上がった。


「ー!ー!」


連れてきた職員が猿轡を取り外した。

すると、その瞬間、その魔法少女に腕を嚙みちぎられた。


「ぎゃあああああ!!!!」


職員は悲鳴を上げ気絶した。


「まずいなぁ、人間の血はぁ……」


その魔法少女は自分で拘束具を破り、アイマスクを取り外した。

その瞳と髪は、今まで殺してきた人間の血を吸ったかのような深い赤色をしていた。


「……」


イブキはその気迫に押されて一歩下がった


(大丈夫、これは、武者震い)


そう言い聞かせ、冷静さを保った。


「そういえば、あなたの名前は?」


「あなた、私が怖くないの?」


魔法少女は質問に質問で返した。


「怖くない……ちっとも、だから名前を教えて。」


イブキはそう言い、再び名前を聞いた。


「ザーナ、ザーナ・ヘルフレア」


「ザーナ……よし、戦おう」


「ククク……面白いやつ……」



リングの外ではグローリアとバレットが話し合っていた。


「ザーナ。一体どんな魔法を使うんだ」


「グローリア、君は見てなかったのか?」


「昨日、あいつは魔法を一切使わなかった。やったのはただの暴力。だが、イブキ相手にそれは通用しないはず」


「魔法は精神の形がそのまま現れると言われる。奴の残虐性が魔法となっていると考えると、相当恐ろしい魔法だろうな」



そして、ついに試合は始まった。



イブキはさっそく竜化の魔法を使い、空に羽ばたいた。

対するザーナは空に飛んだ竜を相手に棒立ちだった。


(ザーナ、何をしてくるんだ……)


イブキはしばらく空を旋回し、様子を見たが、ザーナが何かをしてくる様子はない。


(なら、こっちから……)


イブキはさらに上空に飛び上がり、勢いをつけてザーナに突撃した。

ザーナは両手を突撃してくるイブキに向けた。そして、にやりと笑った。


イブキの足がザーナを踏みつける瞬間、ザーナの手から光があふれ、爆発を起こした。


「!?」


「イブキ!」


イブキの巨大な体が再び空に吹き飛んだ。

空中で体制を立て直したイブキだったが、攻撃に使用した右足が欠けていた。


「うぅ……あぁ……」


どぼどぼと、大量の血液が零れ落ちる。


「そんな、なんでイブキの方が負けるんだ!」


質量は力。そう考えていたグローリアは驚きの声を上げた。

実際、ザーナの体は巨大な竜につぶされたように見えた。


「わかったぞ、奴の能力」


「どういうこと、バレット?」


「カウンターだ。奴に攻撃すると、そのままの威力を返される。奴が自分から攻撃しないのはそれが理由だ。」


「そんな、じゃあ、どうやって勝てって言うんだよ……」


「それを考えるのが、魔法少女の戦いだ」



たった一撃、たった一撃でイブキの体は限界に近づいた。

痛みで視界がぼやけ、頭の回転が遅くなる。

敵の魔法の正体には気づいていた。


(カウンター……)


イブキは遠距離攻撃の手段を持っていない。

攻撃すれば、再びあの爆発の餌食になる。まさに絶体絶命。

それでもイブキは最期の攻勢を仕掛ける。


イブキは再び、さらに高く飛び上がった。


「ダメだ!イブキ!」


グローリアの声など聞こえない、遥か彼方。

だが、イブキの血液だけが雨のようにリングに降り注ぐ。


「……」


ザーナは自分の頭にかかったイブキの血液を拭う。

その瞬間をイブキは見逃さなかった。


音よりも、光よりも速く、イブキは流星のように、ザーナに突撃をした。


ザーナはガードしていない。


「いける!」


グローリアはイブキの勝利を確信した。

ザーナは隙だらけだった。


しかし、先ほどと同じように、イブキの攻撃がザーナに命中する瞬間、爆発が起き、イブキの体の一部が消し飛んだ。


「あ……」


勝敗は決した。イブキの竜化は解け、血まみれで地面に倒れた。


「ククク……」


ザーナは怪しく笑いながら、瀕死のイブキに近づいた。


「君!止まりなさい!」


審判の命令を無視し、イブキに近づく。


ザーナがイブキに手を伸ばした瞬間。


「それ以上、動いたら殺す」


グローリアとバレット、そして黒い服を着た少女がザーナを止めに入った。

ザーナは伸ばした手を戻し、言った。


「殺す?私を?」


「ああ、イブキを殺そうって言うなら、容赦はしない」


ザーナは余裕たっぷりにに笑って見せた。


「ククク、やってみろ、このぼろ雑巾と同じ末路を辿ることになる」


「なんだと?」


黒い服の少女がグローリアとバレットに言った。


「グローリア、バレット、ここは私に任せて、リングから降りて」


そう言われても、引き下がるわけにはいかない二人。

黒い服の少女はため息を吐き、それからイブキを抱えて、リングから離れた。


「治療班、急いで!」


リングに残った三人。グローリアとバレットはザーナににらみをきかせていた。


「お前はどうしてそんなに残虐になれるんだ?」


グローリアはザーナに聞いた。


「知るかよ、私は楽しいことをしているだけだ」


ザーナはそう答えた。


「分かった。お前は私が殺す」


「果たして殺せるかな、お前ごときに私が?」


「そこまでだ」


黒い服の少女が再び戻ってきた。少女は手から糸を噴き出すと、ザーナの体をぐるぐるに拘束した。


「バレット、あなたは次の試合の準備をして、グローリアはリングから離れて」


黒い服の少女はザーナを抱えたまま、どこかへ行ってしまった。


「棄権してもいいんだぞ?グローリア」


と、バレットがグローリアに言った。


「ほざけ、あいつもお前も、私が倒す」


グローリアはバレットにそう言い返した。


「とりあえず、グローリアはイブキの様子を見に行ってくれ」


「ああ」


-------------


医療室にイブキは居た。

あれだけのダメージを負っていたにも関わらず、イブキは話せるぐらいには回復していた。


「不思議なものだね、魔法少女の体って」


「イブキ、よかった、無事みたいね」


「ありがとね、グローリア、あなたが助けてくれたんでしょ」


「バレットもね、イブキもよくがんばったよ……」


「うん……」


しばらくの静寂の後、イブキは突然泣き出した。


「い、イブキどうしたの?どこか痛いところでも……」


「ううん、違うの……」


「じゃあどうして?」


「悔しいの、勝てなかったことが、とても……」


「イブキ……」


その時、グローリアを呼び出すアナウンスが入った。


「私が仇を討ってくる。だから、イブキはここで安静にしてて」


「……うん」


グローリアは会場に向かって走り出した。



「強く……なりたい……」


一人になったイブキはそうつぶやき、窓の外を眺めた。


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