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マシックガールズ  作者: まーだ
第七章 黄昏の魔法少女たち
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第79話 竜化

魔法少女同士のトーナメント開催。

実力を図るための練習試合にも関わらず、空気は重く苦しかった。


昨日の歓迎会の会場とは一転。

金網で区切られた4つのリングが物々しい雰囲気を醸し出していた。


心配事もなくなりぐっすりと眠れたグローリアたちは寝坊せず早めに会場に到着していた。


「そうだ、グローリア。トーナメント表は見た?」


イブキはグローリアに話しかけた。


「あ、忘れてた。昨日のうちに張り出されてるんだっけ?見に行こう」


二人はトーナメント表を後ろから眺めた。


「あれ……私の名前……ないな」


「グローリア……あそこ!」


イブキが指し示すのはトーナメント表の左上。


「だ、第1シード?」


「グローリア、すごい……」


「いやいや、たまたまくじ引きとかでしょ……」


グローリアが焦っていると、後ろから声が聞こえた。


「いや、第4シードまでは実力で決められたとハルシオン殿は言っていた」


グローリアが振り返ると、周りの魔法少女より一回り長身の女性が立っていた。


「あなたは?」


「私はバレット。トーナメント表では第2シードになっている」


「へぇ、よろしく」


グローリアはバレットに握手を求めた。

しかしバレットはその手を弾いた。


「だがこれはハルシオンによる個人的な判断による順位だ。このトーナメントで私の実力の方が勝っていると明らかになるだろう」


「なるほど、燃えるね」


高圧的なバレットに対し、グローリアは挑発をした。

二人の様子を間から眺めていたイブキはおろおろしていた。


「決勝で、待っているぞ」


そう言うとバレットは高笑いしながら去って行った。


「あの人、言葉だけじゃなさそうです」


と、イブキはグローリアに言った。


「ああ、体格でかいし多分強い」


「体格は関係ないと思いますけど……」


「そう言えばイブキはトーナメントどこなの?」


「私はBブロックですね。順当にいけばグローリアと戦うのは準決勝です」


「そうだな、その時はお互い悔いの残らない試合にしような」


「はは……手加減してほしいです」


---------------------



「……」


トーナメントは始まった。

しかし、モニター室で試合を見ているハルシオンは退屈していた。


攻撃を当てたら、「ごめんなさい」と謝る者。

そもそも攻撃しない者。

じゃんけんで勝敗を決める者。


過度な殺し合いは想定していなかったものの、実際に行われているのはまるでお遊戯会。


「はぁ~、こっから戦闘のプロを育てるのは骨が折れるぞ……。あのジジイはどうやって魔法少女軍を作り上げたんだよ、まったく……」


ハルシオンの隣で黒い服を纏った少女が言った。


「本当の目的は軍隊を作り上げること、じゃないでしょ?」


「まあそうだけど」


「ふふ……やっぱり暗躍は楽しいものね」


少女はそう言うとモニター室から出て行った。


--------------------


トーナメントは滞りなく進み、イブキの一回戦が始まろうとしていた。


「イブキ―!がんばれー!」


金網の外からグローリアはイブキを応援した。


「はは……グローリア、私よりやる気あるじゃん……」


しばらくしてイブキの対戦相手が入場した。


「よろしくお願いします!正々堂々戦いましょう」


イブキの相手の魔法少女は右手を差し出した。


「あ……こちらこそ……」


イブキは相手の握手に応じた。


その後、審判の合図により試合が始まった。



「あの子は君の親友だったな」


グローリアの後ろからバレットが話しかけた。


「何か用?」


「ただの偵察さ。君の親友の実力を確かめたくてね。でも無駄足だったな」


「どういう意味だ?」


「大した事ないって意味だよ」


グローリアは立ち上がりバレットの胸倉をつかんだ。


「イブキを馬鹿にするんじゃない!私にはわかる!あいつは強いんだ!」


「別に弱いとは言っていないさ。お人よしだと言っているのさ。だから敵の罠に簡単に引っかかる」


「罠……だと?」


「正々堂々だ?そんな戯言、魔法少女同士の戦いには存在しないんだよ、今に見てろ」


「まさか……!」


グローリアはバレットを離し、イブキの試合に視線を戻した。


イブキの顔面に拳が炸裂し、地面に倒れる。


「イブキ……!」


「相手の魔法少女。毒の使い手みたいでね。試合前の握手で一発仕込まれたね」



リングの中ではイブキが奮闘していた。


(おかしい……試合が始まってから……頭が……)


イブキはふらふらと立ち上がる。


(目が……見えない……)


相手の攻撃が続く。

イブキは身を守ることしかできずにいた。


(痛い……、私……負けるの……?)


相手のブローが腹に刺さり、イブキは膝から崩れ落ちた。


(やっぱり私……弱かったんだ……)


「イブキ!!」


イブキの頭の中にグローリアの声が響く。


「負けたく……ない!」


イブキは必死で堪えた。


「無駄だよ、お前はもう私の術中に堕ちた!これで終わりだ!」


「嫌だ!」


次の瞬間、イブキの姿が変容した。

腕や足が肥大化し、制服はびりびりに破けた。

そしてイブキはリングと同じぐらいの巨大な竜となった。


「……!」


「すごい、これが……」


イブキの髪色と同じ、蒼く高貴な竜の姿に周りの魔法少女たちは言葉を失った。


「まだ、ふらふらする……あ、ごめんっ」


イブキが片足を上げると、対戦相手の魔法少女がペラペラになっていた。


「試合続行不可です。勝者イブキ」




「しゃあ!どうだイブキは強いだろ!」


グローリアはバレットに向かって言った。


「だから弱いとは言ってないさ。無駄足ではなかったがな」


そう言い、バレットはまた別の魔法少女の観戦へ向かっていった。


「やったよグローリア!」


「すごいじゃないかイブキ!まさかドラゴンだったなんて」


「いやこの姿は、魔法の力によるものだよ」


「そっか、どっちにしろすごいじゃないか!」


グローリアとイブキは笑いあった。


「……変身、解除しないの?」


竜に変身した状態では金網の外に出ることはできない。

グローリアはイブキに聞いた。


「あの……、せめて……、観客がいなくなったら……」


イブキはびりびりになった自分の制服を眺めた。


「あ……今全裸なのね……」


「言わないでよ!」


イブキは竜になったままその場で丸くなった。


「なああのリングで魔法少女が竜に変身したらしいぞ!」


「すげぇ本物だ!」


観客はどんどん集まってくる。


「ああ、こりゃダメだな……」


「助けてよーグローリア!!」



-------------------



トーナメント1日目が終了した。

特に目立った試合はなく、一番注目を集めたのはイブキの試合だった。


グローリアたちは居住区のカフェに来ていた。


「イブキの勝利を祝って、かんぱーい!」


「もう大袈裟だよ、まだ一回戦じゃん……」


イブキは照れながら笑っていた。


「しかし、イブキの実力は確かなものだった。次も問題なく勝てるだろう」


バレットがイブキの肩をたたきながら褒めたたえた。


「……なんであんたがいるんだよ」


「良いではないか、群れる方が楽しいだろ?」


「友達いないの?」


「そんなことより、君は本当に強いのか?グローリア」


バチバチに燃える二人の間にイブキが割り込んだ。


「仲良くしようよ~」


「ふん……!」


「まあいい、明日お互いの実力は明らかになるだろう」


バレットはミルクコーヒーを一口飲み、話題を切り替えイブキに聞いた。


「そうだ、イブキ、例の魔法少女のことは聞いたか?」


「例の魔法少女?」


「昨日暴れて取り押さえられた奴だ」


「あっ……」


イブキは思いだし、震えた。

昨日、部屋の前を通過した血まみれの魔法少女のことだ。


あの魔法少女は雰囲気が違った。

グローリアやバレットのような友好的な様子は全く見られない。

まるで獣。目を見たとき殺されるような感覚が背筋を伝った。


「知っていたか。あいつは第4シード、君と同じBブロックだ」


「……」


「凶暴さイコール強さとは限らないが、あの魔法少女は警戒しておくに越したことない、だからよく観察したほうがいい」


「……」


イブキは震えて何も言えなくなっている。


「おいバレット、あまり怖がらせるなよ」


「イブキ、恐れをなしていては、勝てる相手も勝てなくなる」


バレットはグローリアの言葉を無視してイブキを激励した。


「君は強い、勇気を持つことは」


「ありがとうございます、がんばってみます、バレットさん……!」


「ちぇ、いいように言いやがって」


グローリアはクリームソーダを飲みながら、そっぽを向いた。

バレットはグローリアの肩に手をまわし、顔を近づけて言った。


「嫉妬かい?」


「ここで死ぬか?バレット」


再び二人はバチバチと燃え上がった。


「はは……仲いいなぁ」


イブキは呆れながら笑った。


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