第73話 勝者と敗者
巨大要塞テュポーンから放たれた光はエリア1を飲み込んだ。
地上に残された人々や建物、魔法少女たちは全て焼き払われた。
冷たい風が硝煙の匂いを運ぶ。
「そんな……」
レイスはテュポーンの上から焼け野原となったエリア1を見下ろした。
「フハハハハハ!!!」
トワは両手を広げ、高笑いをした。
レイスはトワの胸倉をつかみ叫んだ。
「地上には……まだ取り残された人たちがいた!彼らをみんな殺したんだぞ!!」
「奴らは反逆を企てようとしていた。どのみち処分される身だ」
「それだけじゃない!お前のために戦った兵士や魔法少女たちだっていたんだ!!」
「致し方ない犠牲だ」
「トワ……!!」
トワはレイスの腕を振り払って言った。
「それに、君はあまり抵抗しないほうがいいと思うが?」
「……っ」
レイスは囚われの身のなっている魔法少女アビスを思い出した。
研究室に軟禁されてから、毎日アビスの映像を見せられている。
彼女は拷問を受け、泣いて、叫んでいた。
魔法少女だから簡単には死なない。それが逆に彼らにとって都合がよかった。
何度でも、何度でも痛めつけられるのだから。
レイスはアビスを救うためトワの命令に従うしかなかったのだ。
「ハルシオン。レイスを連れていけ」
「レイス博士、行くぞ」
ハルシオンはレイスの肩をたたき、誘導した。
そして、ハルシオンは去り際に跡形もなくなった地上の施設を見てつぶやいた。
「間に合わなかった……か」
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『速報です』
『魔法少女の反乱による戦争でエリア1が陥落しました』
『繰り返します』
『魔法少女の反乱による戦争でエリア1が陥落しました』
『エリア1代表、トワライトさんの会見が開かれるようです』
トワはマイクを手に取り、報道陣に向かって話を始めた。
「エリア1は魔法少女の侵略によって崩壊した」
「奴らの起こした大爆発は、多くの一般市民を殺戮した」
「しかし、これは敗北ではない……!」
「勝利のための布石である……!」
「生き残ったエリア1の人々、そしてほかのエリアの人々よ」
「共に協力し、悪しき魔法少女を殲滅しようではないか!」
「人類のための、平和を手に入れるのだ……!!」
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エリア1で発生した魔法少女の反乱は収束した。
しかし、エリア1で暮らしていたほとんどの人は焼き殺され、生き残った者も飢えて死んだ。
エリア1だった場所には白い灰が永遠と降り注ぎ、とても人の住める場所ではなくなった。
テュポーンによってエリア1を脱出した民は様々なエリアを移動し、魔法少女の凶悪さを説いた。
そして、人々は極端に魔法少女を恐れるようになる。
後にこの戦争は、魔法少女が全てを滅ぼした戦後最大の惨事『魔法戦争』として語り継がれる。
そして5年の月日が流れた。
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白い灰の上を少女が歩く。
「……」
少女は何かを探しているようだった。
「あ、あった」
それは小さな瓶。
灰を払うと、中にはきれいな青い色の液体が入っている。
少女は瓶の蓋をあけ、それを一気に飲んだ。
「ぷはぁ……」
瓶を捨て、再び辺りを彷徨い歩く。
「それにしても、ユイやロロ、みんなどこに行ったんだろう……ん?」
少女は何かを見つけた。
それは人の手のようだった。
灰をかき分けながらその手を掘り出す。
すると少女と同じぐらいの大きさの少女が掘り起こされた。
「おーい?」
少女は灰まみれの顔を払ってあげた。
するとその少女は黄色の目をぱっちりと開けた。
普通の人なら、間違いなく死んでいるだろう。
しかし、その少女は何故か生きていた。
その少女は自分の体についた灰を振り落としながら、少女に聞いた。
「お前は?」
少女は答えた。
「私はガブリエラ、あなたは?」




