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マシックガールズ  作者: まーだ
第六章 愛と希望の物語
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第72話 終焉の光

エフィは階段を駆け上がっていた。

正直なところ、ユイが本気を出せたとしてもシルビアに勝てるかどうかは分からなかった。


それでも自分の果たす役割は決まっていた。


トワの元へたどり着いて降伏させること。

たとえ殺してでもトワの暴挙を止めなければならない。


息を切らしながら大きな扉を開けた。

先ほどの神殿にも引けを取らないぐらい大きな部屋。

部屋の両端には中世の甲冑のようなものが並べてある。

奥の壁は全面ガラス張りになっており、デスクが一つだけぽつんと置いてある。

そこにトワはいた。


装甲と仮面をつけており、顔までは見えないが、トワは拳銃を構えた。


「う、動くな!シルビアは何をしているんだ……!!」


対してエフィは懐にしまってある大砲を取り出した。


「う、うわああああああああ!!!」


それを見て、トワは引き金を引いた。

しかし、エフィには当たらなかった。


エフィは落ち着いて弾を装填する。

トワは何発も銃を撃つが、一切当たらない。


「な、なぜ当たらない!」


「初心者の弾はそう簡単には当たらない、だからこういうのを使うんだよ」


そう言いエフィは大砲を発射した。

弾はトワの目の前に着弾し、大きな爆発を起こした。


「ぐわあああああああ!!!」


装甲に守られ、トワはほとんどダメージを受けていない。

しかし、持っていた拳銃は爆発によって吹き飛んだ。


エフィは安全を確認し、トワに近づいた。


「く、くるなぁ!!」


トワはふらふらと歩きながら、向かって右端の壁に触れた。

壁が動き、その中から魔消兵が姿を現した。


マッドブラックの塗装がされた特別仕様だ。

トワはそれに乗り込む。


『後悔しても遅いぞ……!』


トワはさっそく魔消兵を起動した。

エフィは冷静に二発目を装填する。


『あ、あれ……?おかしいな、このフィールド内では魔法少女はまともに動けないはずだ……』


「悪いね、私、魔法少女じゃないんだ」


エフィの放った大砲は魔消兵のコックピットにしっかりと命中した。

魔消兵は動きを停止し、炎上した。


エフィは魔消兵に近づき、それが爆発する前に、中にいるトワを引きずり出した。


機内で仮面を取り外していたのか、トワは頭から血を流して気を失っていた。


「……」


最初に感じた違和感。

事前の情報では、トワは60~70歳の老人だと聞かされていた。


しかし、目の前にいるこの男はどう見ても20歳ぐらいの若者だ。


「まさか……影武者!?」


その答えに気づいた時、ガラス張りの壁の先に巨大な影が現れた。


------------------


島が浮いている。

そう思うのも無理はない。


実際、エリア1の上空に現れたその巨大要塞は、4本の脚によって支えられていた。

真下で見ると、まるで浮いているように見える。


「最大全長約380メートル、居住地面積約4キロ平方メートル、機動要塞テュポーン。これが私の最高傑作だ……」


テュポーンは大地を揺らしながらゆっくりと立ち上がる。

トワは離れゆく地上を眺め、声高々に叫んだ。


「……」


トワの隣で、レイスと研究所長ハルシオンが驚愕しその光景を眺めていた。


「どうだ?レイス博士、私の研究は」


「一体どれだけの魔力を使えば、これだけの物体を動かせるんだ……」


「逆に、必要だったのはエネルギーだけだった。それが今は無限に手に入る。私の研究はついに完成したのだ……!」


トワは手に宝石のようなものを握っていた。

魔結晶。魔法水の原料ともなっているその結晶は、魔法少女を犠牲に生み出したもの。

エリア1は一般人を半魔法少女化(デミ化)し、魔結晶を無限に生み出す技術を確立していた。


「それに……テュポーンはまだ本気を出していない。この要塞がただ一般市民を乗せ歩くだけのものではないことを証明してあげよう」


そう言い、トワは手を目の前にかざした。

ホログラムの巨大なモニターが現れる。


レイスはその上部に書かれている文字を震えながら読んだ。


「殲…滅、砲?」


確かにそう書いてあった。

表示されている画像にはエネルギーがテュポーン下部の砲台に集められている。


「まさか……そんな……!!」



-------------



エフィは絶望し、膝をつき、肩を落とした。

目の前に現れた巨大要塞。その下部に取り付けられた砲台に莫大なエネルギーが蓄積されていた。

それが放出されたら、今いるエリアAはもちろん、エリア1全体を消し飛ばすことも可能だろう。


もう打つ手はない。


「トワァァァァァァァァァ!!」


エフィは心の底からその名前を叫んだ。


魔法少女に反乱を起こさせ、エリア1を放棄する。それがトワの狙い。

魔法結社の魔法少女と情勢が安定しないエリアBの市民たち。

それはトワのとって邪魔な存在でしかなかったのだ。


極めつけに、エリア1の消滅は魔法少女の反乱のせいにすることもできる。


全部、トワの計画の内だったのだ。


巨大要塞から放たれた小さな光。

それは地面に着弾すると辺り一面を大きな闇で飲み込んだ。


--------------------


数分前。



「実はこの場所はいわゆるエンジンルームだ」


「エンジンルーム?」


ロロはベルセルクに聞き返した。

確かに、蒸気が噴き出しているのを見ると、そう見えるかもしれない。


しかし、これほどまでに大きいエンジンはいったい何を動かすものなのか。


「俺も、詳しい話は聞かされていない。だが、これは巨大要塞のエンジンだ。トワはエリア1からの脱出を企んでいるんだ」


「巨大要塞……」


その時、エンジンはさらに加速した。


「まずい、もうすぐ発射するみたいだ」


「そんな……トワに逃げられてしまう!」


ベルセルクはエンジンの奥を指さした。

鉄製の梯子とその上に開閉用ハンドルのついた円形の扉がついている。


「そこの梯子を登れば要塞に侵入できる、早く行くんだ!!」


「う、うん、わかった。でもベルは……」


「まだ、やり残したことがある」


「そんな……」


「大丈夫、すぐに戻るさ。さあ急いで!!」


ベルセルクに急かされて、ロロは慌てて梯子に飛び乗った。

ベルセルクは反対方向に走っていった。


「必ず!必ず戻ってきてね!!」


「ああ、必ず……な」


ベルセルクは手を振り、その部屋を後にした。

ロロはそれを見届けると梯子登っていった。


「……」


ロロは扉を開ける前、一瞬思考が停止した。

何か大切なことを忘れてしまった。そんな気がした。


後ろを振り向く。そこにはもう誰も居なかった。



-----------



ベルセルクが部屋を出ると、地面に倒れ、壁にもたれかかった。


「すまないな、ロロ……嘘をついて」


ベルセルクは息を切らしながら独り言を呟いた。


自分の手を見る、ギリギリ感触はあるものの。それはもうほとんど消えかかっていた。


ロロの進化した魔法。

それは過去に介入し、悲惨な現実を改変するというもの。


もちろんただで済むはずがない。


救ったのは過去のベルセルクであり、今のベルセルクではない。

過去を変えたのなら、現在も変わるはずだ。だが、現在にあまり変化は見られない。

ベルセルクは魔法少女になることもなく、未来でロロと出会うこともなかった。


実際、その兆候は少しは現れているらしい。

ベルセルクはロロに救われていたということを実感できるぐらいには。


しかし、それだけ。

それまでのベルセルクの人生に大きな矛盾が生まれてしまう。

タイムパラドックスだ。その矛盾を解消する方法は一つだけ。都合のいいように未来も書き換えること。

その時、最も大きな矛盾を孕んでいるベルセルクは非常に邪魔な存在なのである。


つまり、ベルセルクは間もなく消える。

ロロやユイの記憶からも跡形もなく。


ロロはベルセルクを救った気でいるが、本当はベルセルクを存在ごと消していたのだ。

それが致命的な欠点。


「いいや、お前は俺を救った。それで十分だ」


ベルセルクはふと思い出し、自分の胸ポケットからきれいな石を取り出した。

戦争が始まる前、トワから受け取ったものだ。

それがどんな効果があるのか分からない。しかし、それはもうベルセルクに必要のないものであることは確かだ。


ベルセルクがそれを遠くに投げようとしたが、腕に力が入らず、それはベルセルクの目の前で落下した。

そして、目を閉じ、自分の最期を悟った。


「来世はもっと、早くお前に会えるといいな。ロロ……」


ベルセルクの瞳から涙が零れ落ちた。



--------------


同時刻。


速く……もっと速く。

ユイはさらに速度を増す。


殲滅砲が発射される数分前、テュポーンの起動時の振動が伝わらないぐらい、戦況は緊迫していた。


シルビアは雷神と化した魔法少女に防戦一方だ。

しかし、それでも政府最強の魔法少女の名は伊達ではない。


ユイの攻撃すべてを受け止めてみせた。


「な、なんだ……こいつの強さは……」


シルビアは千年ほど生きてきて、初めての感覚を味わっていた。

自分をここまで追い詰める敵に出会った。

そんな状況でもシルビアは笑っていた。


「私はこの状況を楽しんでいるのか……」


シルビアの刀がユイの蹴りによって弾き飛ばされる。


「面白い……!」


シルビアは空間から二本目の刀を出現させた。

かつてアイの起こした災厄をたった一人で鎮めたその時の刀。


今まで使っていたのは魔法少女の力によって生み出したものではない。

現物の刀に魔力を纏わせて振るっていただけに過ぎない。


魔法少女の武器は重さも軽く、威力も桁違いだ。

なぜ、わざわざそのような回りくどいことをするのか。


シルビアが本気を出せば、戦いは一瞬で決着がつく。

それではつまらない。鍛錬のし甲斐がない、シルビアはそう思い。

自分への枷として、普通の刀を振るっていた。


つまり、戦いに飽いていただけに過ぎない。


本気を出せる相手を見つけたということだ。

しかし、これでようやく対等に……



ならない。

ユイの加速は止まらない。


「……っ!!」


本気の刀を取り出してから、シルビアの攻撃速度は格段に上昇した。

しかし、それすらも追いつかないほどユイの速度はシルビアを上回っていた。


戦術も何もない、真正面からのごり押し。

ユイは止まらない。


シルビアは葛藤していた。


常に求めているのは完璧な勝利だ。

それを可能にしていたのは圧倒的な力。


それが通用しない相手と対峙したとき。何をするべきか。


シルビアは強くなりすぎた。

長らく忘れていたのだ、本当の勝利は犠牲失くしては得られない。



それは目の前の魔法少女も同じである。

自らの命を犠牲に、勝利とつかみ取ろうとしている。


「……」


シルビアの覚悟は決まった。

シルビアは自身の手から魔力を解き放った。

大きな爆発が発生する。


ユイはシルビアから一瞬だけ距離をとった。

しかし、すぐに距離を詰める。


次の瞬間、それが最後になる。

シルビアは刀を構えた。


「うおおおおおおおお!!!」


「あああああああああ!!!」


ユイの雷撃がシルビアに命中する。

それはシルビアの右腕を焦がし、焼き払った。


「う゛ぅぅぅぅぅ……!!」


シルビアは歯を食いしばり、痛みを堪えた。

ユイはその瞬間、勝利を確信していた。

しかし、ユイの口から血があふれ出した。


シルビアの刀がユイの心臓を突き刺していた。


「肉を切らせて……骨を断つ……」


シルビアがそう言った通り、シルビアは右腕を犠牲にすることで無防備なユイの体を貫いた。

唯一の隙をついたのだ。


「これでも……届かない……のか」


シルビアの刀がユイの体から抜かれる。


ユイの纏っていた電気の魔力は消散した。

そしてそのまま地面に倒れた。


ユイの虚ろな目が天井を見つめる。


「ロロ、エフィ、ベル……」


ユイの脳はほとんどが破壊されており、まともな思考が出来なくなっていた。

唯一覚えていたのはかつて一緒に戦った仲間の名前。

そして最期に、自分の姉を思い出した。


「どう、おねえちゃん……私、かっこよかった?」


そう言うと、ユイは眠るように息を引き取った。



シルビアは敵が死んだことを確認すると、失った右腕の出血口を押さえながら階段へ歩き出した。


もう間に合わないと知りつつも、階段を一歩一歩登る。

しかし、次第にその速度は落ちていった。


最後に傷ついたのはいつだろうか、思い出せないほど昔の出来事だ。

シルビアは魔力による回復の方法を忘れていた。


血は止まらず、意識が遠くなる。

壁にもたれ掛かり、目を閉じた。


「トワ、すまない……約束を果たせなかった」


次の瞬間、暗い階段は辺り一面の光に包まれた。

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