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マシックガールズ  作者: まーだ
第六章 愛と希望の物語
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第69話 あの日の約束

メルメルの実力は圧倒的だった。

訓練を積んだ政府の魔法少女たちはまるで虫けらのように吹き飛ばされる。


対してロロは大きく手を抜いている。

できるだけ魔力を温存しておいた方が、後にメルメルから逃走するときに役立つからだ。

そのため、メルメルの魔力が尽きるまでは後方でメルメルの支援をしていた。


メルメルが粗方相手の魔法少女を消し飛ばした後だった。


眼鏡の男が悠々と登場した。


「見た感じ魔法少女ではない、政府関係者ってところだな」


「ご名答、私は事務担当のマクスウェルと申します」


眼鏡の男は眼鏡をくいっと上げて答えた。


「随分と余裕そうだな?」


ロロは意味ありげな笑みを浮かべるマクスウェルに聞いた。


「えぇ、丁度大きな仕事も終わりましたし……」


「仕事?」


「魔法少女の処刑ですよ」


「……!」


ロロたちの潜入と同時刻に行われた魔法少女たちの公開処刑。

紅島たちが助けに行ったはずだが。


「そんな、紅島たちは……」


「えぇ、居ましたね、そんな人たち。少々鎮圧に時間がかかりましたがね」


「お前……!」


激昂しそうになるロロをメルメルは制止した。

そしてマクスウェルに聞いた。


「だけど、その余裕は理解できないな。今の状況わかってるのか?目の前に魔法少女が二人。お前の護衛は全滅。どう考えても絶体絶命なのはお前だ。」


「えぇ、えぇ。言いたいことはわかりますとも。だからこの笑みの意味は余裕ではない。喜びです」


「なんだと……」


「私の大っ嫌いな魔法少女を弄んで殺せるという喜びですねぇ!」


マクスウェルは歓喜のあまり、眼鏡を持っていた手を強く握りしめた。

当然眼鏡は壊れ、割れたレンズが男の手に刺さり、血を流す。


と、同時に天井が崩れ落ちる。

大きな影が出現する。


「本当は……政府の魔法少女たちもズタボロにして殺してやりたいんだが、あいつらはトワの所有物だからな仕方ない」


「そんな……いつの間に……!」


ロロは一歩下がった。

現れたのは魔消兵。


「ふむ、なるほど、やはりそうか。魔消兵の魔消能力は敵魔法少女からも感知できる。ということか。」


マクスウェルの呼び出した魔消兵は背部のタンクがピンク色に光だした。

それと同時に、ロロは地面に膝をついた。


「……う、私たちに気づかれないよう。敢えて魔消能力を発動させずに接近してきたのか……」


マクスウェルは大声で笑いだした。


「フハハハハハ!どうだ、絶望したか?許しを請え!助けてくださいって言え!意味ないがな!お前らに待っているのは残虐な死だけだ!魔法少女に生まれてきたことを後悔しろ!」


メルメルは魔消兵に向かって歩き出した。


「待っ…メルメル……」


「フハハ!そんなに死にたいか?いいだろう!まずお前から四肢をもいでやろう!」


マクスウェルの命令で魔消兵の腕が動き出す。

メルメルは右手で拳銃の形を作り言った。


「ばーん!」


すると魔消兵の胴体に大きな穴が開いた。


「え?」


「な……」


魔消兵の中で操縦をしていたパイロットは自分の体の半分がなくなっていることにも気づかず機体の爆発に巻き込まれた。

メルメルはすぐさまロロを保護し、爆発から守った。


爆風が晴れたとき、そこにあったのは哀れにも爆発に巻き込まれたマクスウェルの姿だった。

地面を這いずりながら必死で逃げようとしている。


メルメルはロロの様子を確認した。


「うーんそんな体じゃ、相手になんないなぁ」


メルメルはロロの体をひょいと持ち上げぶんぶんと縦に振った。

ロロは魔消効果が抜けておらず、抵抗できずなすがままに揺れた。


「じゃあ戦うのはまた今度になるね」


メルメルはロロを雑に放り投げ、逃げまどうマクスウェルの方へ意気揚々と歩いて行った。


ロロは脳が揺れ収まるのを待ち、それから魔法水の入った注射器を一本自分の腕に刺した。

体中から抜け出した魔力がロロの体に行き渡る。

徐々に視界も安定してきた。


メルメルはマクスウェルをサッカーボールのように蹴り飛ばして遊んでいる。


「……」


なぜメルメルは魔消兵の能力が効かなかったのか。

それはメルメルの魔法が魔力を用いたものではないからだろう。

もしくは、魔力を一切使わずに魔法を使うことが出来るのか。

どちらにせよ、先ほどまで政府の魔法少女たちの連戦で夢現魔法を連発しているのに、メルメルに魔力の消耗は見られない。


ロロはメルメルの興味が再び自分に向く前にその場を後にした。


--------------


それからロロは施設内をしばらく彷徨った。

敵の魔法少女や政府関係の人、一切出会わなかった。


「もしかして、もうみんな脱出済みとか……」


ロロたちが突撃を開始してから一時間近く経っている。

災害を検知してから逃げ出すまで十分な時間がある。

とはいえ、政府複合施設はかなりの大きさだ。

そこに住まう役人たちも大勢いるはず、少なくともどこかに人の流れがあるはずだが、それさえも見当たらない。


「……ここは」


ロロは一つの部屋にたどり着いた。

薄暗い部屋だ。

しかし、何やら重要そうな機械が動いている。

蒸気は緑色に発光しており、ロロはそれから魔力の匂いを感じ取った。


「……これは」


考えてみれば不思議な話だ。

たった数名の魔法少女の襲撃に対し、政府複合施設を放棄するということ自体が。

それでも人が一人もいないということは、逃げ出したということだろう。


それならばこの機械は一体何のために動いているのか。

消し忘れ?そんな馬鹿な。


「そこまでだ」


ロロの背後に一人の魔法少女が姿を現した。


「……!」


ロロは声の方を振り向く。

その少女はフードを被っており、顔は見えなかった。


ロロはその声に聞き覚えがあった。

忘れるはずのない声だ。

ロロは少女に向かって笑顔を見せた。


「なぜ、笑っているんだい?」


少女はロロに聞いた。


ロロは涙を流しながら言った。


「だって、言ったでしょう。次会うときは笑顔でって……」


ロロは少女の名前を呼ぶ。それは正確には愛称であったが。


「ベル!」


「まったく、サプライズのつもりだったんだがな」


少女はフードを取り外した。

それは紛れもなく、ロロの戦友ベルセルクだった。


「久しぶりだな、ロロ」



---------------



二人は、不気味に動く機械の下で語り合った。

ロロはこれまでのことをベルセルクに話した。


「それでね、ユイと協力して……」


しかし、ベルセルクはロロの話にまるで興味が無いように虚空を見つめていた。


「どうしたの、ベル?」


不思議に思い、ロロはベルセルクに聞いた。


「……いいや、続けてくれ」


「そう?」


ロロは現在に至るまでのことをベルセルクに話した。


「次はベルのことも聞かせてよ」


「ああ……」


ベルセルクはゆっくりと立ち上がる。


「ベル?」


「お前と別れた後のことだ。俺はシルビアと戦った。」


エリアC脱出時の時だ。


「俺はシルビアに敗北した。歯が立たなかったよ。必死で攻撃していたのにも関わらず、あいつはまるで動じなかった」


「そうなんだ……」


ベルセルクは戦闘狂だ。

長い間、戦いしかしてこなかった故に飲まれた狂気。

勝利か敗北、どちらに転んでも彼女にとっては最期だったはずだった。


「でも、俺は生かされた。軍を抜けた裏切り者だというのに、この上ない屈辱だったよ」


「命があるのはいいことだよ、また挑戦すればいいじゃん……!」


「普通は、な……」


ベルセルクは目を閉じ、あの時の光景を思い出した。


「はっきり言ってあいつは別次元だ。絶対に勝てない。そう思ってしまうほどだ」


「そんな弱音、ベルらしくない」


「俺はもう諦めたよ。だから、生きる理由がないまま生きてきた」


「ちょっとベル、やっぱりなんか様子がおかしいよ。以前のベルじゃない」


ロロはベルセルクの言動に違和感を感じざるを得なかった。


「政府の命令を実行して、あとは適当に、川に流される落ち葉のように……そんな生活も悪くないなーって」


ロロは立ちあがり、ベルセルクに言った。


「ベル、私と戦おう」


「どうして?」


「あなたは政府の魔法少女、そして私はクーデターを実行した張本人。戦う理由は十分でしょ?」


「……」


ベルセルクはロロの顔を見ると、二本の剣を取り出した。

ベルセルクの表情は以前ロロと共に戦った時の表情に戻っていた。


ロロは笑ってベルセルクに聞いた。


「ところで、本音は?」


「ロロがどれだけ成長したか、見てみたい。感じてみたい……!」


「素直じゃないやつ」


ベルセルクはロロに向かって日本の剣を振り下ろした。

ロロは筆を生成し、それを受け止める。


-------------------


ロロはベルセルクが戦っている様子は何度か見てきた。

しかし、ベルセルクの魔法の正体は見たことがなかった。


魔法少女同士の戦いは、相性以上に相手の魔法をどのようにいなすかが勝敗に直結している。

つまり、相手の魔法を見るまでは迂闊な行動はできないのだ。


できないはずなのに。

ベルセルクの猛攻は止まらない。


バーサーカー。まさに名前の通り。


「くっ……」


ロロの魔法は発動するまでに多少なりとも時間がかかる。

それはほんの数コンマ秒であるが、その隙すらも与えられない。


「どうした、ロロ!そんなんじゃ俺には勝てないぞ!」


ロロは一か八かの賭けに出ることにした。


敢えて、ベルセルクの攻撃を受ける。その間に分身を行い、時間を稼ぐ。

甚大なダメージを受けるが、現状よりはよくなるだろう。


ロロはガードを解き、自分の分身を生成し始めた。


「!」


ベルセルクの動きが止まる。

チャンスだ。

と、ロロは自身の数を2人、4人、8人と増やしていった。


「……」


ベルセルクも戦闘のプロだ。

ロロがガードを解いたこと、即ち何かしらの反撃を受ける可能性を考慮し攻撃を止めたのだろう。

それが仇となったのだ。


勝敗は決した。とまでは行かないが、戦闘状況はロロの有利に傾いた。


「分身……それがロロの能力か?」


「そう、すごいでしょ?」


「ロロは本当に嘘が下手だな。」


ロロは苦笑いした。

ベルセルクもロロを笑った。


「さて、どうするかな……」


ベルセルクは周りのロロたちを見て考え込んだ。

ロロはその隙をつき、次の魔法を唱えた。


ロロと分身たちが取り出したのはガトリング銃。


「蜂の巣だよ……!」


銃弾がいっせいに放たれる。


「その選択は、間違いだぜ、ロロ」


「!?」


ベルセルクはまるで踊るように銃弾を弾いた。

銃弾はロロの元へ反射される。


「そこか……」


ロロは自身にシールドを張ったため、ダメージを受けずに済んだ。

しかし、ベルセルクはダメージを与えるために銃弾を反射したのではない。

本体さえ見つけることが出来れば十分だった。


シールドを張ったロロに剣を振り下ろす。

シールドは豆腐のように崩れ落ち、ロロは三枚におろされる。


「何っ……!?」


ロロの体は霧となって消えた。


「ま、それも偽物なんだけどね」


物陰で隠れていたロロが姿を現した。


「ふふ、甘いなぁロロは。今の隙をつけば俺を殺せたかもしれないのに」


「……」


「ロロ、これは真剣勝負だ。殺す気で来てほしい」


ベルセルクは薄々感じていた。

ロロが本気を出せば、こんな戦いすぐに決着がつくと。

自分なんていともたやすく殺すことが出来ると。


「いやだ……」


しかし、ロロは本気を出していなかった。

ロロは二人とも全力を出し、楽しい戦いだったね、で終わらせるつもりだった。

そして願わくば、再び親友としてともに過ごしたかった。


「頼むよ、ロロ。お願いだ。戦おうって言ったのはロロじゃないか」


「……っ」


ロロは先ほど語り合ったベルセルクの言葉は演技ではないことを察した。

戦いに飢え、敗北し、生きる意味を失った魔法少女。ベルセルクはこの戦闘で本当の終わりを望んでいた。


殺してくれ。


それがベルセルクの願いだった。


「いやだ、いやだ……!」


ロロは大きな風船を作り出した。


「これで……再起不能に……!」


風船は大きな音を出して破裂した。

普通の魔法少女なら気絶するレベルの轟音。

しかしベルセルクはビクともしなかった。


「……やさしいな、ロロは」


「なら……!動きを止める!」


ロロは鎖を生み出し、ベルセルクの手足を縛った。

ベルセルクは自らの手足をちぎり、鎖から抜け出した。


「な、何をしているの……」


「言ってなかったな、私の魔法は治癒の魔法だ。似合わないだろ?」


ベルセルクが魔法を唱えると手足は瞬時に再生した。


「ま、死んだらおしまいだけどな」


「そんなことっ……言わないで!」


「ロロが来ないなら、俺からいくぞ!」


ベルセルクは二本の剣を構えロロに向かって突撃した。



---------------------


戦いが始まってから10分が経過しようとしている。

終わりの見えない剣戟。

殺す以外何をしても無駄だという選択肢を与えられたロロはひたすら受けにまわるしかなかった。


ロロは衝撃はでベルセルクを自分から突き放す。

そして持っていた魔法水のカプセルを自分に刺した。これで7本目。残りは3本。


ロロは徐々に追い詰められていた。


「クソっ……考えろ……何かあるはずだ、ベルを救う方法が……」


吹き飛ばされたベルセルクは一呼吸を置いて再びロロに詰め寄る。


「ロロ!お前の魔法を見せてみろ!」


「私の……魔法……」


「そうだ!俺は成長したお前の姿が見たいんだ……!」


ロロの夢現魔法。

それは誰かを守るための圧倒的な力。


でも、


メルメル。ミコト。そして政府の魔法少女たち。

その多くが夢現魔法によって敗れ、死んでいった。


仕方がない?いいや。

誰かを守るためには、他の誰かを傷つけなければならない。

そんなのは間違っている。


そうだ

私の魔法は……


「私の魔法は、誰かを傷つけるものじゃない!誰かを救う力だ!」


ロロがそう叫んだ。


すると、ロロの筆はみるみる縮み、ロロの手に収まるぐらいの光の玉に変容した。


「まさか……魔法の進化?」


ロロがその光の玉を掴むと、それは宝石がちりばめられた一つの時計にはっきりと姿を変えた。


「見せてあげる、ベル。これが私の魔法!」


薄暗い部屋は光に満たされ、そして何も見えなくなるまで真っ白に染まった。


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