第67話 進軍
「ああ、こっちはいつでもOKだ」
ロロはそう言い電話を切った。
ユイはロロに聞いた。
「誰と話していたの?」
「紅島」
「誰だよ……」
「彼は魔法結社のサブリーダーだ。」
魔法結社は暴動を起こす前、二つに分裂していた。
政府と戦う者とエリア1から逃亡する者。
リオンはどちらの意見も尊重し、逃亡側の指揮を紅島に任せた。
リオンが騒ぎを大きくしてくれたおかげで、逃亡側の作戦は成功。
紅島たちは逃走用の鉄道を奪取し、隣国のエリア2へ逃走することができた。
しかし、紅島はリオンの死をうけ、自分一人だけエリア1に戻り、先の戦いで敗北した残党をかき集めた。
そして、政府に一矢報いるため魔法結社を再結成したのだ。
と、ロロは説明した。
ロロが紅島から連絡を受けたのは数日前だ。
魔法結社の捕らえられた残党の公開処刑が行われる日。
紅島たちは玉砕覚悟の特攻に出る。
その時、少なからず警備は薄くなる。
ロロたちはその隙に政府複合施設に侵入し、政府のリーダーであるトワを討つ。
これが作戦の全貌だ。
正直、ロロはかなり不安だった。
それでも最適な突入タイミングはそこしかなかった。
「みんな、そろそろだ。準備をしてくれ」
メンバーは、ロロとユイ、エフィを含めたシスター数名。
全員が小型のロケットランチャーを装備している。
ロロとユイは魔法少女に変身をした。
そして、ロロは魔法水のカプセルがたくさん入ったカバンを肩にかける。
「さん……に……いち……」
カウントダウンが終わると、ロロはマンホールの蓋を開け外に出た。
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同時刻。
政府に反乱を企てた魔法少女は磔にされていた。
魔法を発動させないため、胸に黒い鉱石が刺さっている。
眼鏡の男が壇上でまるで神にでもなったかのように松明を掲げた。
「見よ、愚かな魔法少女に神の裁きを……!」
次の瞬間、観客たちの中心で大きな爆発が起きた。
「突撃!!」
紅島が号令をかけると、周りに潜んでいた魔法少女たちは一斉に飛び出した。
「き、貴様ら!?どうやってここに!!」
焦りで取り乱している男に紅島は挑発した。
「魔法少女が下水を通ってくるとは思わなかったか?詰めが甘いんだよ。そして、あえて火刑にすることで俺の仲間を苦しませようとしたみたいだが、皮肉なものだな。ここには魔消兵の気配がない。好きに暴れさせてもらうぜ」
そう言い、紅島は野球のバットとボールを生成した。
紅島はボールを処刑台に向けて打った。
「ひぃぃ!!」
眼鏡の男は頭を下げて躱したが、そもそも狙われていない。
ボールは十字架を砕き、磔にされていた魔法少女は解放された。
「魔法少女軍はどうした!?早く助けに来ないか!!」
近くで警備していた兵隊が銃を構える。
「撃てーっ!!」
住民もろとも暴れている魔法少女に向かって機関銃を放った。
「そんなおもちゃの銃。俺には効かねぇ!!」
紅島はバットを一振りした。
すると機関銃から放たれた弾は全て兵隊に向かって飛んでいった。
「うわああああああ!!!」
眼鏡の男は腰砕けになりながら、後ろへ下がった。
入れ替わりに魔法少女部隊が到着する。
「何事だ……!!」
「さあ、お前ら。ここからがクライマックスだ!」
紅島はバットを掲げ仲間を鼓舞した。
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一方、ロロたちは政府複合施設に向けて着々と進軍をしていた。
『死ねぇ!魔法少女!』
「ロロ!後ろ!」
エフィの放ったロケット弾が魔消兵に命中した。
魔消兵は爆散した。
「今ので10体目か……」
「きりがない……」
「みんな……あと少しだ……」
ロロは足を止めた。
エフィは疑問に思い聞いた。
「どうしたの、ロロ?」
「市民が一人もいない……」
「みんな処刑台の方に集まっているんじゃないの?」
確かに、先日の件も併せて、エリアAでは魔法少女に対する反感が強まっている。
しかし、一人もいないということはあり得るのだろうか。
お店は開店したまま、のぼりも降りていない。
まるで、つい先ほど避難したかのように。
「嫌な予感がする、みんな十分に注意して……」
ロロはそう言い、再び走り出した。
その時だった。
ロロたちに向かって無数の隕石が降り注いだ。
「……!」
ロロは魔法を使いシールドを展開した。
隕石はロロたちに当たる前に粉々に砕け散った。
「よう……会いたかったぜ……ロロ」
そして、一人の魔法少女ドラグーンが地面に着地する。
翼を折りたたみ、ロロの顔を見つめる。
「ユイ、みんなを連れて先に行って」
ロロはユイに言った。
「わかった」
ユイたちはドラグーンを警戒しながら、横を通り抜ける。
ドラグーンは見向きもせず、ロロだけを見つめていた。
「お前……」
ロロは知っていた。その顔を忘れるはずがなかった。
エリアCから脱出する際、友人であるエリスを殺害した張本人。
竜の姿をした魔法少女。
「そういえば名乗ってなかったね。私はドラグーン。」
「お前の名前なんてどうでもいいんだよ」
ロロは片手に持っていたロケットランチャーを投げ捨てた。
そしてドラグーンを挑発するように言った。
「かかってこい。今度は本当に殺してあげるから」
「言うようになったねぇ……、面白い!」
ドラグーンは深く息を吸った。
そして、思い切り息を吐く。
ドラグーンの息吹は業火となり辺り一面を焼き尽くした。
付近の建物は熱さに耐え切れず溶解していく。
しかし、そんな炎の中でもロロは立っていた。
ロロが筆を振るう。
すると氷で作られた矢がドラグーンに向かって発射された。
それはドラグーンの羽を貫いた。
「チッ……あの豆鉄砲がこんなに威力が上がってんのかよ……」
ドラグーンは大きな竜の爪で地面を砕き壁を作り出した。
しかし、次に放たれた氷の矢は岩の壁を粉砕した。
ドラグーンは砂埃をはらい、ロロの方を見る。
「な、なんだよ。その魔法……」
ドラグーンは驚きで立ち尽くしていた。
ロロの周りに氷の矢が何十本、何百本、何千本と生成されていた。
「い、いや。そうだ、思い出した。お前の魔法はハッタリだ!全部見せかけの幻想だ……!」
かつてのロロ。
それは銃弾を放ち、相手に幻想を見せるというもの。
攻撃力の全くないものだった。
しかし、ロロの魔法は既に夢現魔法に進化していた。
その過程をドラグーンは知る由もない。
「残念だけど、全部本物なの」
ロロはそのうち一本の矢を放った。
ドラグーンが回避する間もなく、彼女の足を貫いた。
「がうあああああああああ!!」
ドラグーンは痛みで転げまわった。
しかし、すぐ態勢を立て直し物陰に隠れた。
「クソ……こんな屈辱……!」
高速でビルとビルの隙間の迷路を駆ける。
ドラグーンはしばらく走り、ロロの気配が消えたところで壁を背に座った。
「はぁ……はぁ……」
ドラグーンは自身の魔力を使い、損傷した箇所の回復を試みた。
しかし、思うようにいかない。
それどころか、傷口は広がっていく。
そして、ドラグーンは急に吐血をした。
「へ?」
目や鼻からも血があふれ出す。
体中から魔力が奪われていく感触を感じた。
ドラグーンが後ろを振り返ると巨大な機械が立っていた。
ドラグーンは政府に侵入した際、実際に確認したので知っていた。
それは紛れもなく魔消兵。
『運が悪かったな子猫ちゃん』
魔消兵の中から声が聞こえた。
機械の腕が動き、機関銃が大きな音を立てて回転する。
「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
次の瞬間、ドラグーンの後方から飛んできたロケット弾によって魔消兵は爆散した。
「ロ、ロロ?」
ロロはため息を吐き、その場から去ろうとした。
ドラグーンは這いずりながらロロの後を追った。
「ど、どうして私を助けた……!」
それは突発的な行動であったため、ロロは自身でも分からなかった。
親友の仇であるドラグーンを生かす理由なんて無い。
しかし、ロロの目には助けを求める魔法少女だけが写っていた。
「もう、勝負はついたから」
ロロはそう言い残し、先を急いだ。




