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マシックガールズ  作者: まーだ
第一章 魔法少女という病
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第7話 命の魔法少女

☆登場人物☆


『衛堂ミコト』

主人公。17歳。

黒のショートボブヘアで赤い瞳の少女。

至って普通の女子高生。頭は良くない。

育ての親を失い喪失感に駆られていた所、人外の化け物「マジン」に襲われる。

「死にたくない」という願いを抱き魔法少女として覚醒する。

魔法少女形態【???の魔法少女】

まるで医者の白衣のような衣装。グローブとブーツは白色だが、白衣の下は黒いタイツ。

頭には二本の丸っこい角が生えている。

白衣の裏から尻尾が伸びており、尻尾の先は注射器のようなデザインになっている。

白衣には緑色の線がデザインされている。それはサイリウムのように発光しており、ミコトの心臓の鼓動に合わせて心電図のように波を流す。

使用武器は「ミコトカリバー」

ミコトの身長ぐらいの大きさの剣であり、両手に持って戦う。

剣のグリップ真横には緑色の液体が入ったタンクがあり、タンクから伸びた管はミコトのグローブの中へと繋がっている。


『レン』

黄色いロングヘア―と金色の瞳の少女。

とある理由からテレビ局に住んでいる魔法少女。テレビに映るときは赤色のカラコンをしている。

一緒に戦う仲間は必要ないと言い放つが、ミコトの言葉で心を開く。

魔法少女形態【雷の魔法少女】

黒と黄色を基調とした警告色のドレス。

胸元には何本かの導線が張り巡らされており、背中にはバッテリーのようなものがついている。

使用武器はないが、雷を自在に操り、矢のように飛ばして攻撃ができる。



『ユイ』

レンの大切な妹。



『サカエダ』

今回の敵。


数分でレンは冷静さを取り戻した。

私は体の回復をはかるため、レンのベッドで寝かされた。

甘くていいにおいがする。


「ミコト。あなたが心配してくれるのはうれしい。だけど、この件には関わらない方がいい。」


レンは私の手の上に手を重ね、真剣なまなざしで言った。


「それはどうして。」


私は横たわったままレンに聞いた。


「敵は、知性を持ったマジンだ。」


マジンは、訳の分からない言語を発し、欲望のままに暴れまわる。

もう、そういった常識は通用しないようだ。


「あいつは私の妹を人質にしている。とても卑怯で狡猾な手段。だから、私はあいつには逆らえない。」


なるほどな。人の言語を話すこともできるのか。


「それだけじゃない。まともに戦ってもあいつには勝てない。一撃では倒せない、強靭なマジンだ。」


「だったら、なおさら、私にも協力させてくれない?」


倒せる、倒せないじゃない。

私は救うべき人は救うという精神で生きてきた。

それに、そんな危険なマジン放っておくのも問題だ。


「それはできない、あなたの家族も巻き込んでしまうかも……」


レンはそういったが、私の家族はもういない。

それに、すぐに倒せば何の問題ないだろう。


「レンが何を言おうとも、私は協力するつもりだ。」


レンが顔を手で覆う。その奥で初めて笑った顔が見れた。


コンコン……


部屋の扉をたたく音が聞こえた。

こんな夜中に誰だろう。


レンは深刻な表情をして、毛布を私の上にかぶせた。

そして、小さくささやいた。


「そこでじっとしていて……」


言われるがまま、じっとしておきたかったが、気になったので隙間から覗き見た。


部屋に小太りの男が入ってきた。

高級そうなスーツに身を包んでおり、偉い身分の人であることは間違いない。

ここのテレビ局の重役だろうか。


「物音が聞こえたけど誰か居るのか?」


男は部屋を見回した。

レンの雷の弓矢で壁や床に亀裂ができてしまったが、カーペットや額縁でうまいように隠してある。

私の流した血も薄暗い部屋では、模様に見える。

戦った痕跡があることは詳しく見ないとわからないだろう。


「いないわ。そんなことより私の妹、ユイは無事なんでしょうね!」


「言葉には気を付けたまえ。君の行動は妹の命に関わることになる。」


レンは何も言い返せなかった。

男に頭を捕まれる。


「今後の活躍を期待しているぞ。」


そういうと男は部屋から出て行った。

私はある事実に驚愕していた。


話の流れからレンの言うマジンとは彼のことであろう。

今までいろんなマジンを見てきた。

しかし、あんな姿のマジンは見たことがない。

あれはまるで、というか人間そのものではないか。


レンがベッドの脇に座った。


「あいつの名前はサカエダ。例のマジンだ。人間の姿に変身できる能力を持っている。あいつは私の力を利用してこのテレビ局を乗っ取るつもりでいるらしい。理由はわからない。」


人間の姿をしているマジン。だが関係ない。そうだとしても彼は悪い人間だ。


「じゃあ、始めるか。」


「え?」


レンは不思議な顔をして、ベッドから顔を出した私を見た。


「マジン狩り!」


私はレンににやりと笑って見せた。


----------


時は深夜3時。

私ともう一人の魔法少女は1つの車を追いかけて夜の街を飛び回った。


尾行を始めたのはマジンが部屋を出てから数分後、私の傷が完治してからだ。


レンが私に聞いた。


「何か算段でもあるの?」


私は言った。


「ないよ。」


「ユイが人質に取られてるんだよ!そんな適当な行動……」


「適当ではないさ。奴が人質を取っているなら、その行動を少なくとも数時間おきに見張る必要がある。奴を追えば、人質がいる場所にたどり着くはずだ。」


その車はとある民家にたどり着いた。

周りは木々に囲まれている。

やたらボロボロでとても人が住んでいるとは思えない。

当然空き家であろう。近くにほかの家も見当たらない。


レンはこぶしを握り締め、家に向かって行った。

私はレンの前に手を伸ばし、彼女を止め、言った。


「レンはここで待ってて。」


「でも、あいつは強い……」


レンは私のことを心配してくれているようだ。

だけど、人質がいる状況ではレンはかえって邪魔になる。


「私がマジンと対峙したときに合図を出す。レンは人質を救出することだけを考えていればいい。」


私の瞳を見てレンも覚悟を決めたようだ。


「わかった。必ず生きて帰ろうね。」


私はマジンの潜む家に向かい歩き出した。


「安心して、私は死なない。」


私はレンに向かってそう言った。


-----------


ゆっくりと玄関の扉を開けた。暗くてよく見えない。


玄関の先に下へ続く階段だけがあり、他に部屋と呼べるようなものは存在しなかった。


そのまま階段を降りる、一段一段しっかりと。


……


どれだけ降りただろうか、先が見えない暗闇。


壁にぶつかった。

手探りで壁を調べる。

取っ手のようなものを見つけた。どうやら扉だったようだ。


恐る恐る扉を開く。


とても広い空間に出た。だが、真っ暗だ。


そのまま、まっすぐ進む。


後方で扉の閉まる音がした。


私は自分の武器を構える。

武器は微かに光り、自分の周りをぼんやりと照らした。


あたりが急に明るくなる。

私はまぶしくて目をふさいだ。


ゆっくりと目を開ける。


学校の体育館1つぐらいの大きさの閉鎖空間。

直径1mぐらいの白いタイルでびっしり埋まっていた。


次第に目が慣れ、目の前の男を補足した。


「やあ。」


男は腕を後ろに回し、数メートル先に立っていた。

男はタバコを咥え火をつけた。


「見たところ魔法少女だね、君。誰の差し金だい?」


私は男の質問を無視して言った。


「女子高生の前でタバコなんて吸ってんじゃねぇぞ、ゴミ野郎。」


男は大きな声で笑いタバコを捨て、足で火を消した。


「まあ、言わなくてもわかるよ。君はレン君に言われて来たのだろう。安心しなさい。人質はここにいる。」


男がそう言うと、10mぐらい上の天井から,十字架が下りてきた。

写真で見たレンの妹が磔にされている。

意識がない、だが、かろうじて生きている。


「へぇ、隠しとけばよかったのに、何で見せたの。」


私は湧き上がる怒りを抑え不敵に男を挑発した。


「この方が盛り上がるだろう、それに君はもう生きては帰れないしね。」


男はそういうと上着を脱ぎ捨てた。


男の体はみるみる肥大化してゆき天井ぎりぎりまで到達した。

巨大な腕が新たに4本生え、体は赤黒い色の装甲に包まれた。


「正体あらわしたな、マジンめ。」


私は剣先をマジンに向ける。そして叫んだ。

剣は私の声に共鳴して発光した。


「「死ね」」


お互いにそう叫ぶと黒の拳と光の剣が交差した。


----------


マジンは膝をついた。


「馬鹿な……、この私が……」


マジンは強くはなかった。

装甲はぼろぼろに崩れ、六本の腕のうち三本を斬り飛ばした。


「ちょっと硬いだけだね、他の雑魚マジンと大差ない。」


私は余裕を見せマジンを挑発した。


マジンは憤怒し、残りの腕を縦横無尽に振り回した。

しかし、私には届かない。


「どこを狙っている?」


敵の攻撃に違和感を感じた。

まるで、意図的に当てるつもりがない攻撃だ。


私は自分に向かってきた、一本の腕を斬り飛ばす。

マジンは悲鳴を上げのたうち回った。

そしてゆっくりと立ち上がり、不気味な笑みを浮かべる。


「ふはは、これを見ろ!」


マジンの巨大な手に少女が握られていた。


「あの子は!」


天井にぶら下がった十字架を見る。

そこに人質はいなかった。


「お前、汚いぞ……」


私はマジンをにらんだ。

マジンはにやにやと笑った顔をミコトに近づけた。


「そんなこと言っていいのかなぁ?この子がどうなってもいいのかなぁ?」


次の瞬間、私はマジンの腕に成すすべなく吹き飛ばされた。


「がぁっ……」


壁に打ち付けられた。

予想以上のダメージに意識が飛びかけた。

何とか立ち上がる。


マジンの拳がさらに襲い掛かった。


「お゛ぁ……」


私は膝から崩れ落ち、大量の血を吐いた。

全身の内臓や骨がぐしゃぐしゃになった感じがした。


気持ち悪い、息ができない。


「無様だな、魔法少女。たった一つの命さえ見捨てることができないとはな。」


私は、最後の力を振りしぼり、声を出した。


「見捨てていい命なんて……存在しない!」


「そうか、じゃあそろそろ死んでくれ。」


マジンの巨大な足が影となり、私に迫ってきた。


その時、一本の雷の矢がマジンの足元を通過した。


私は薄れてゆく視界の中で確認した。

魔法少女の姿のレンが怯えた表情で立っている。


「レン、だめだ……」


マジンは私を踏みつぶすのをいったん止め、もう一人の魔法少女の方へ歩いてゆく。


「おやおや、どうやらメインゲストの登場のようですね。」


レンはマジンに向かって弓を構えた。


私の意識はそこで途切れた。


----------


マジンは手に握った少女をレンの前に出した。


「やめなさい、レン君!君のかわいい妹がミンチになるのはつらいでしょう。武器を下ろしなさい。」


「う……」


レンはマジンの言うとおりに弓を下ろした。


「あなたは今まで通り、私の命令を聞いているだけでいいのです。そうすれば、君の妹は悲惨な目に合わずに済むのです。」


マジンはレンの頭をやさしくなでた。

レンは何もできず、膝をついた。


「そうだ、こうしましょう。レン君、あそこでくたばっているゴミの処理をあなたに任せます。」


そう言い、マジンはミコトを指さした。


「わ、私に……ミコトを殺せと……」


レンは震え声をあげながら、マジンに言った。


「そうだ、断れば、君の妹はひき肉になる。」


マジンはレンの前に妹の顔を持ってくると、拳に少しだけ力を入れた。

妹は意識は無いが、肺がつぶれるような変な声を出した。


「やめっ、てくれ……」


レンは泣きながら懇願した。

マジンは今度はレンの頭をつかみ無理やり自身の顔に近づけ目の前で言った。


「瀕死の魔法少女にとどめを刺す簡単な仕事だ、さあやるのだ。」


マジンはレンの頭を適当に離した。

レンは自分の武器を取り、ミコトの方に近づいた。

マジンは遠くでその様子を伺った。


レンはミコトの前で弓を引いた。

そして、目を閉じ、自分自身に言い聞かせるようにささやいた。


「昨日までの自分なら、すぐにでもあなたを殺していただろう。ただ、あなたは私を助けようと言ってくれた。自分を犠牲にしてもなお、自分を救おうとしてくれた。」


「私の行動は決まっている……!」


レンは弓を後ろに構えた。


「ユイをつかんでいる腕を最速で消し飛ばせば……!」


そうすればユイは助かるだろう。


しかし


マジンは既にレンの目の前まで来ていた。


「レン君、君には失望したよ。」


「あ……」


レンが言葉を発する間もなく、血のシャワーが降り注いだ。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああ」



レンは弓を落とし、その場で泣き崩れた。


マジンは死体を適当に投げ飛ばした。

鈍い音を立てて、白い壁が真っ赤に染まる。


「どきなさい、レン君。そのゴミを始末する。」


レンは涙をこらえ、ゆっくりと弓を構えなおした。


「どくもんか……」


「そうか……」


マジンはレンを蹴飛ばした。


それでもレンは立ち上がろうとした。

しかし、立ち上がったその瞬間、



ミコトはマジンに踏みつぶされて死んだ。



レンは絶望し、魂が抜けたかのようにへたり込んだ。

全て失ったのだ。妹も救世主も。


マジンがゆっくりとレンに近づく。


「レン君、あなたにもう私の奴隷としての価値はない。」


レンの耳にはマジンの声は届かなかった。

全てがどうでもよくなっていたのだ。


「君みたいな魔法少女、また捕まえてこればいい。」


レンの走馬燈にうつったのはミコトの姿。

自分の命を賭し死んでいった本物のヒーローだ。


レンにはもう、何も失うものがない。

だが、この目の前にいる悪魔だけは確実に殺すという意志のもとに最後の力を振り絞った。


「もう二度とこんな悲劇を繰り返させないために……!」


レンは雷の弓を放った。


至近距離で放たれた弓矢は、油断していたマジンの心臓部を貫いた。


だが、マジンは笑った。


「私は腕がある限り死なない……残念だったな。」


レンは自分の無力さと理不尽な世界を呪った。

そしてただ、目の前の敵を眺めた。


瞬間、閃光が走った。


そして、マジンの左腕が吹き飛んだ。

マジンは悲痛な叫び声を上げ悶えた。


その魔法少女はレンの前に立ち、手を差し伸べた。


レンはその魔法少女の名前を呼んだ。


「ミコト……」


レンの悲しみの表情は消え、やさしい暖かさに涙を流した。


ミコトは何とも言えない表情をした。


----------


大切な人を失ってもなお立ち上がる魔法少女を見て、希望を与えられた。

そして、同時に悲しくなった。

それはレンが惨めだとかそういうことではない。

自分自身の無力さを一番痛感していたのは私自身だ。


私はレンと共にマジンを見る。


マジンは私が生きていたことに驚きはしたものの、不敵な笑みを止めることはなかった。


「手が、最後の一本に、なってしまったなぁ……」


マジンは残った最後の手で自分の心臓を貫いた。

そして人一人分ほどの心臓を取り出した。


「最後のショータイムだ……」


心臓から無数の管が出現し、マジンを覆い隠す。

マジンの姿は一本の巨大な手に変貌した。


手を広げ、私たちに襲い掛かった。


レンは矢を連続で放った。

矢は全て外れた。


「馬鹿め!どこを狙っている!」


マジンはレンを握りつぶそうとした。

しかし、直前でマジンの動きは止まった。


「なっ!?これは……!」


三本の矢はワイヤーで繋がっており、天井に刺さることでマジンを拘束した。


「小癪な……」


マジンはワイヤーを引きちぎろうとする。


そんなマジンの前まで私は歩いて近づいた。


マジンはおびえた表情を見せて叫んだ。


「うおおおおおおおおお!!!やめろ!やめろぉ!!!」


マジンに私の姿はどう映ったのだろう。

他5本の腕を斬り落とした光の剣の魔法少女。

こんな外道なマジンでも恐怖するんだな。


しかし、私は止まらない。


私は剣でマジンを貫いた。マジンは爆発四散して消滅した。


-----------


レンはぐしゃぐしゃになった妹を前に再び泣き崩れていた。


結局のところ、私はだれも救えなかったのだ。


私は血まみれになった、ユイの顔をやさしく拭いてあげた。


ふと、とある記憶が蘇った。


それは昔の思い出だ。

今にも忘れたいほど悲しい思い出。


あの夜、私の愛するものが死んだ。

何度も何度も彼女の名前を叫び続けた。

生き返ってくれと願った。

だけど彼女が再び動くことはなかった。


どうして、何の罪もない命が消えなければならないのか。

私はすべての罪なき命を救いたい。

そう思った。



そして奇跡は起きた。



ユイの体が金色の光に包まれた。


「これは……」


ユイのねじ曲がった体が元の形に戻ってゆく。


「再生しているのか……!」


やがて肉片はボロボロの服を着た、少女の形になった。


「死んだ者の命を復活させた、私が……」


レンもその瞬間を見ていた。

そして、すぐさまユイのもとへ駆け寄った。


「ユイ!ユイ!」


ユイは目をゆっくりと開けた、そして口を開いた。


「おねぇ……ちゃん……」


レンはユイをぎゅっと抱きしめた。

そして何も悪くないのにひたすら謝った。


私は傍らで立ち尽くした。

自分の手を見る。何ら変わりない、私の手。

本当に自分が蘇生させたのかと疑心暗鬼になる。

死んだら終わり、蘇ることなんて天地がひっくり返ってもありえない。


美音との会話を思い出した。

魔法少女としての成長。新たな能力の開花。


「これが、私の……能力?」


私は自分のしたことにただ茫然となるしかなかった。


------------


マジンの住んでいた施設を出ると朝日が目に差し込んだ。

もうこんな時間か、早く戻らないと、美音が心配する。


続いてレンがユイを抱えて出てきた。

ユイは疲れていたのかぐっすりと寝ている。


レンはマジンの乗ってきた車の後部座席にユイを下ろすと、ゆっくりとこちらに近づいてきた。


そして、私の目の前に立った。


「ミコト、ユイを救ってくれたことには感謝してる。だけど、その能力は底が知れない。あまり使用すべきではないと忠告しておくわ。命を蘇らせるのと同程度の代償は必ずあるはずだわ。」


レンの金色の髪が逆光に輝く。それは荘厳な雰囲気を醸し出していた。


「ああ、そうだな……」


私は適当に返事をした。


と言うのも、私がそれを把握していないわけがなかった。

命を蘇らせる代償はすでに払ってある。

だが、レンが言うように命の価値と同程度、とは思えない本当にしょうもない代償だ。

本当にそんなものでいいのか、私自身も不安になってきた。

真実は私の心の中にとどめておくことにした。


「レン、これからどうするの?よかったら一緒に来ない?美音と三人でマジンを倒すの。」


私の言葉に反応してレンは足を止めて振り返った。


「ありがとう、でも、私はもう少しテレビ局にいることにする。ユイを養うためにお金を稼がないといけないしね。」


「なるほどね、仲がよさそうな姉妹で羨ましい。」


「そんなことないよ!」


レンは照れながら笑った。


レンは運転席に座り、車のエンジンをかける。


「はい、これ連絡先。」


レンは車の窓から私に一枚の紙を差し出した。

しっかり作られた名刺のようだ。

テレビ局の住所の他にあのマジンの名前も書いてある。

あいつマネージャーしていたんだ。


「何か困ったことがあったらいつでも呼んでね。私の救世主さん!」


車はそのまま坂を下って行った。


さて、私も帰るとするか……


私は周りを見渡す。

山や森。あたりに建物は全く見えない。


どこだよここ……


私はすぐに携帯を取り出した。

そして先ほどもらった番号に電話をかける。


「あの、困ったことがあるんですが……」


----------


車は高速道路を走る。


「というか、ナチュラルに車運転してるけど、レンって何歳なの?」


私は隣で運転しているレンに尋ねた。


「もうすぐ、16。」


レンは何の迷いもなく答えた。私の一個下だった。

免許を取れる年齢ではない。


「なーに、事故らなければ問題ないさ。」


レンは自信満々に言ったが、問題しかないと思うな……

とはいえ、レンの運転に慌ただしい様子は見られない。

相当慣れているように見えた。


「ねぇ、レンはどうして魔法少女になったの?」


私は話題を変えた。


「つまんない話だけどね。」


レンは文句ひとつ言わず話してくれた。


「三か月ぐらい前に、試合があったんだよね。アーチェリーの。いっぱい練習したから、自信はあった方ね。だけど、本番に緊張しちゃって結果は全然ダメ。私の努力が全部無駄になったと思うと、めちゃくちゃ悔しかった。その夜はベッドでずっと泣いていた。そして、起きたら魔法少女になっていたの。」


「ってことはレンの望みって……」


「アーチェリーがうまくなりたい?そんな馬鹿な!」


レンは笑いながら言った。


「変に吹っ切れて、どうでもよくなったわ、それに……」


レンはフェンダーミラー越しにユイの姿を見た。

気持ちよさそうに寝ている。


「もっと大切にしたいものがあるしね。だから私の望みは妹の、ユイの幸せだよ。」


「いいお姉さんだね。レンは。」


本心でそう思った。自己犠牲の境地。

それだけ妹のことが大好きなのだろう。

私には到底真似することはできなかった。


「だから、そんなことないって!」


また照れた。レンに笑顔が戻って本当によかった。


「次はあなたのことを聞かせて、ミコト。」


レンが私に言った。

私は今まで経験してきたいろいろなことを話した。


----------


家に着くころにはすっかり朝になっていた。

玄関の扉をゆっくり開ける。

幸いにも美音はまだ寝ているようだった。

怒られないで済む。


二段ベッドの下にこっそりともぐりこむ。

久しぶりの感覚。

やっと、熟睡することができるのだ。

私は一瞬で眠りに落ちた。


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