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マシックガールズ  作者: まーだ
第六章 愛と希望の物語
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幕間 ずっと遠い過去の話 前編

20XX年

私が人間として生きている中で最悪な年だった。


原因不明の新型ウイルスの蔓延。恐慌に次ぐ恐慌。

失業者の数は歴代最大となり、世界経済は崩壊した。


世界中、どんな国でも暴動が起き、その有様はまさに世紀末。


近々、大きな戦争が起こる。

そんなうわさを誰もが信じていた。


--------


11月15日、東京。


「あ、あれ……財布が……」


カバンに入れてあった財布がない。


落としたのか、盗まれたのかはわからない。

だが、いくら探しても財布は見つからなかった。


「運が悪いね、多分すられたよ、あんた。悪いけど、終点まで来てもらうよ」


「……はい」


以前だったら、「次回払ってね」と言われて終わったのだろう。

これも治安が悪くなった結果だ。


私はバスの終点まで乗り、書類を書いて解放された。

結果、私は学校に遅刻することになった。

が、そんなことはどうでもいい。

学校は特別楽しいわけでもなかったからだ。


より重要なのは銀行口座の凍結だ。

悪用されたらたまったものではない。


私は急いで近くの銀行へ向かった。


-----------


「はい、確かに元の口座は凍結いたしました。こちらが新しい口座になります」


「よかったぁ、間に合った」


口座の中のお金も無事のようだ。

財布に入っていた数万円は無事に無くなったが。


帰ったら、何かおいしいものでも食べよう。

そう思って銀行から出ようとした、その時だった。


「いて……」


私は誰かにぶつかり地面に倒れた。


顔を上げると、体格の良い大男が数人立っていた。

顔は覆面で覆われており、全くわからない。

手には物騒な銃を持っている。


「あ……」


漫画とかで見たことあるので知っていた。

銀行強盗だ。


私は声を上げる間もなく、男の一人に手を掴まれた。


「全員その場から動くな!動いたらこいつの命は無い!」


「ひっ……」


怖くて体が動かない。

だれか、助けて。そう願って目を開いた。

すると、


「へぇ~すげぇ」


「銀行強盗、本物だぁ」


客は皆、スマホを取り出し、銀行強盗の写真を取り出した。

窓口は制止しているが、慌てている様子はない。


「いい加減にしろ!お前らは早くこれに金をつめろ!」


強盗が怒りを表しても、客は止まる様子はない。


まるで、私の命に関心がないようだ。


思ってみれば、そうかもしれない。

他の誰かが死のうが自分には関係ない。


狂っている?いいえ、

それがきっと普通なんだ。


でも、私は……


「生きたいよぉ……」


私の願いは届かなかった。

鳴りやまないシャッター音とフラッシュが強盗の五感を刺激した。

それが引き金となり、銃のトリガーが引かれた。


大きな音が耳元でなったのが最後、私の意識はプツンと切れた。


--------------


意識が戻った時、私は天国にいるのかと思った。

しかし、そこは天国でも地獄でもなく現実だった。


さっきまで私がいた銀行。


強盗が銃を乱射したのか、辺りは血の海になっていた。

スマホで動画を撮っていた客はほとんど死に、生き残った者は部屋の隅でおびえていた。


強盗は金をつめいてる最中だ。


だけど、全員が私の方を見ている。


「な、ななな、なんだぁお前はぁぁぁ!!!」


強盗が私に向けて銃を放った。

私はとっさに目を瞑ったが、弾が当たる気配はない。


私が目を開けると、弾は空中でゆっくりと動いていた。


「え……」


弾だけではない。周りのものが全てゆっくり動いている。


私は指先で銃弾に触れてみた。


「いっ……」


銃弾は突然高速で動き出し、私の指をへし折った。

そして再びゆっくりと動き出す。


私はそれで理解した。

周りの時空がゆがみ、遅くなっているのではない。

私の感覚が鋭くなっているのだ。


人は死を目前にしたとき、周りのものがスローに見える。

漫画でしか見たことがないが、アレに似ている。


私は銃弾が当たらない場所へ移動した。

すると私の予想通り、時は加速し、元のスピードにもどった。


「何ぃ……!?」


強盗が驚愕し、銃を落とした。

それもそのはず、たとえ銃弾がゆっくり見えたところで、避けれるはずがないのである。

つまるところ、私は人間の限界を超えるスピードで移動したことになる。


それは強盗の目にもはっきりと移ったはずだ。まるで瞬間移動でもしたかのように。


私自身もまた、この力に驚きを隠せなかった。

そもそも、銃で撃たれて死んでいたはずである。


私は窓に反射する私自身を見つめた。


さっきまで自分が着ていた地味な服ではなく、何とも派手で煌びやかな服を着ていた。


「えっ……!?」


まるで、魔法少女。

あまりにも場違いなコスプレに、私は少し恥ずかしくなった。


しかし、私は同時に理解した。


「魔法少女か、悪くない……」


私は天井に手を掲げた。

魔法少女が戦うには武器が必要だ。


今なら出現させられそう、そう思った。


出てきたのはアサルトライフル。


「はは……こうなっちゃうか……」


最初にイメージした武器が銃だ。

突然、武器をイメージすると言っても、強盗が使っていた銃しか出てこなかった。


私はそれを握りしめた。

あまり重くはない。それに初めて持ったのに使い方がなんとなくわかる。


「まあいいか!」


その銃弾は相手が悲鳴を上げるよりも早く、三人の強盗の眉間を打ち抜いた。


人を殺したという感触はない。

ただ、悪を倒しただけ。


「こういうとき、何て言うんだっけ……」


私が毎週見ているアニメの魔法少女のセリフが思い出せない。

とりあえず私はかっこいいポーズを決めた。


そして、拍手と歓声が私に送られる。はずだった。


上がったのは悲鳴。

銀行員は恐怖の悲鳴を上げた。

強盗を面白半分で撮影していた客でさえ、恐怖で震えてスマホを握れずにいた。


「だ、だいじょうぶだよ……?」


私の言葉を聞いてくれる様子ではない。


それもそのはずだ。

私の力はあまりにも異質。異次元。不可解。

人間が理解が追い付くはずがない、未知の恐怖。


「警察だ!銃を下ろせ!」


警察が来た。やっとこれで救われる。

そう思って振り返ると、警官の拳銃は私自身に向けられていた。


「そこを動くな!」


「どうして……」


私は弁明しようとした。


「う、動くな!化け物!」


「ばっ……」


警官が銃を放った。

先ほどと同じだ。その銃弾は簡単に避けられるように見えた。

だけど私は避けなかった。


試してみたかったからだ。

私の正体は何なのかを。


銃弾は私の心臓に命中する。

付近の骨や肺を砕いた。

全身に痛みがこみ上げる。私は吐血した。


「ごほっ……ごほっ……」


だけど、死ぬ気は全くしなかった。

痛みはすぐに引いてゆき、傷跡も完全に塞がった。


残ったのは、口の中に広がる血の味だけ。


「化け物……か……」


私は警官の横を通って、銀行の外へ出た。

警官は誰一人、私が横を素通りしたことに気づかない。

ただの人間だからだ。


外に出ると、冬でも温かい日差しが照らしていた。


「雨でも降ってくれたら、完ぺきだったのにな……」


私は歩いて家に帰ることにした。

帰ったら寝よう。


これはきっと悪い夢だから。



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