表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシックガールズ  作者: まーだ
第五章 アンチマギカ炎症
74/97

第62話 決死の攻防

更新、少し文章を追加

数時刻前、魔結晶工場の上層で二人の魔法少女の攻防は続いていた。


メイは糸を発射した。


高速で発射された糸はエニグマに向かう。


「無駄だ」


しかし、エニグマの炎によって糸は燃え尽きた。


「いい加減あきらめろ、クリフォート。お前の魔法は貧弱すぎる」


「あ?」


メイがエニグマを睨む。

エニグマはあざ笑うかのように言った。


「お前の魔法をコピーさせてもらった」


エニグマは手から糸を出した。

メイの魔法と全く同じものだ。


エニグマはそれを両手で引きちぎった。


「なんだこの糸は。耐久力もない、耐火性もない。こんなもので私を倒そうというのか?」


「やっぱりな。お前は他人の魔法の本質を理解していない」


「ふん、相手の体に突き刺せば何か起きるのだろう?拘束か、洗脳か。だが無駄だ。お前の攻撃は私には届かない。」


エニグマは再び炎を纏った。

そして、空中に大きな火の玉を作り出し、メイに向かって投げた。


メイは糸を何重にも重ねて自身を覆った。


「ガードのつもりか?無駄だってぇ!」


火球は糸の繭に接触した。

じりじりと繭を溶かし、内部へ侵入する。


燃え落ちる繭の中から一本の糸が飛び出した。

エニグマはそれを余裕を持って回避した。


「おっと、不意打ちか?それも無駄」


「……」


繭の後ろからメイが姿を現す。


「これで馬鹿なお前でもわかっただろう。攻撃は通じない、防御も突破される。お前に勝ち目はない。これ以上は時間の無駄だ。」


「時間の無駄。そうかもね。」


メイはそれでも攻撃を止めなかった。

数十本の糸がエニグマに襲い掛かる。


「クソッ……いい加減に……」


エニグマがblackboxを取り出した。

その箱から一本の剣が出現する。アルカの剣だ。


エニグマはその剣を振るい、全ての糸を焼き払った。

そして、その攻撃はメイにも直撃する。


「がぁっ……!」


火だるまになったメイは地面に転がる。

しばらくして鎮火したが、エニグマはメイの目の前まで距離を詰めていた。


「雑魚が……てこらずらせやがって」


エニグマはメイに剣を向ける。

メイは地面に倒れながらため息をはいた。


「はぁ……私の魔法ではこれぐらいが限界か」


メイの顔から笑みがこぼれた。

絶体絶命の状況にも関わらず、エニグマは疑問に思った


そんなエニグマに、メイは言った。


「糸は攻撃するためのものじゃない。鉄や銅の糸なら切れるかもしれないけど。私の糸はそこまで硬くない」


「なに?」


「だから、私があなたにやったのは攻撃じゃない。ただの時間稼ぎだ」


「時間……稼ぎ」


メイは人差し指をエニグマに見せた。

人差し指の先から透明な糸がどこか遠くへ伸びている。

メイはエニグマに向かって言った。


「糸電話って知ってる?」


「まさか……!」


エニグマはあわててその糸を切断した。


「もう、おそいよ」


メイはエニグマと戦っていたのではなかった。

誰かに助けを求めていたのだ。

そしてその助けは……


通路の天井が崩れ落ちる。


差し込む太陽の光と共に一人の魔法少女が姿を現した。


「私を呼んだのは……あなた?」


ロロ。リンネのアジトでの戦いでメルメルを打ち破った魔法少女だ。

メイはロロに絶対の信頼を寄せ、万が一のときのため、糸をつないでいたのだ。


「誰が来ようと関係ない……全員殺してやる」


エニグマはロロに向かって火炎を飛ばした。


「火……」


ロロは空中に絵を描いた。

すると、ロロの後方から津波が押し寄せてきた。


「何ぃ!?」


炎は一瞬で消え去り、エニグマはそのまま施設の奥に押し流されていった。


ロロは壁に掴まっていたメイを救出した。


「あなたはたしか、ミコトの教会のシスターさんね。まさか魔法少女だったなんて……」


「ありがとう、ロロ。助かったよ。急いでアルカの所に行かなきゃ」


「アルカもいるの?」


「うん。今連絡を……」


メイはアルカに連絡を取るため、あらかじめアルカにつけておいた糸を取り出した。

そして魔法を発動する。


メイの魔法、糸電話はまるで本物の電話のように通話することができる。

距離は無限。どれだけ離れていようが、誰かがその糸の存在に気づき、切断されるまで継続する。


メイはアルカと通信した。


「……」


メイの顔が引きつる。


電話であるから当然、相手側の声も聞こえる。

メイはアルカの周辺の音を聞く、すると聞こえてきたのはアルカではなく、ミコトの声だった。


少なくともアルカの近くにミコトがいる。

考えられる限り最悪な状況。


「どうかしたの?」


「ロロ、今から私の言う場所に向かって……。できるだけ急いで……!」


-----------------


そして現在。


「大丈夫、アルカ?」


ロロはミコトの前に姿を現した。

遅れてメイもやってくる。


「間に合った……?」


間に合ってはいない。

ミコトの剣はアルカの目の前で止まったが、ディアナは既に死んでいた。


「ロロ、こんなところで何をしているの?」


「それはこっちのセリフ……」


ロロはミコトを押し返した。

そしてミコトに向かって質問をした。


「どうしてアルカを襲おうとしていたの?」


「違うよ、ただ遊んでいただけ」


ミコトはにっこりと笑ってロロを見つめた。

ロロは質問をつづけた。


「その死体は、ミコトがやったの?」


「さぁ……」


「どうして、魔法少女になっているの?」


「……」


ミコトは何も言わなくなった。


「ロロ、ミコトを……殺して」


ロロの後ろにいたアルカが言った。

ロロは振り返り、アルカの顔を見る。

その顔は泣いていた。

絶望しきった後、何かに望みを託すかのような表情。


ロロは全てを察した。


敵は目の前にいる。そしてそれはミコトであると。


「ねぇ、ロロ。私とあなたは戦う理由ないんだけどなぁ」


「私も、ミコトと戦いたくない」


「そうだよね。それならお互いに武器を下ろして、おしまい!ね!ロロ?」


ミコトはロロにやさしく語りかけた。

ロロが見てきたいつものミコトだ。

しかし、ロロは冷酷に言い放った。


「でも、あなたがあの子を殺して、アルカを悲しませたのなら。戦うしかない」


武器をミコトに向ける。


「ならこっちも、あなたを殺すしかない」


ミコトも武器を構える。


お互いの武器がぶつかり合う。



交わるはずのなかった二つの物語。

それが今一つに収束しようとしていた。



「そして、向かうのは終焉……」


赤い服を着た少女が丘の上で二人の決闘を見て笑った。



-----------------


ロロとミコト。

二人の実力は拮抗してはいなかった。


何でも生み出すことのできる夢幻魔法。ロロがミコトを圧倒している。

ミコトのあらゆる攻撃がロロには届かないでいた。


そんな様子を、アルカとメイは傍らで見ていた。


「すごい……これなら……!」


「いや……このままだと、ロロは勝てない」


アルカがそう言った。

メイはアルカに聞いた。


「どうして?」


「ロロの魔法は強力である代わりに、消費する魔力が非常に多いんだ。対してミコトは8000以上の命。相性が悪すぎる……」


「……いや。相性は逆にいいかもしれない!」


メイはロロを指さして言った。


ロロが持っている武器。それはいつもの筆ではなく、スポイトのようなものに変わっていた。

おそらくロロが夢幻魔法で新たに作り出した武器であろう。


ロロがミコトにとどめをさしたあと、ロロはスポイトをミコトの死体に突き刺していた。


「あの武器でミコトの死体から魔力を吸っているんだ。ミコトは復活するたび魔力が元の状態に戻るから。ロロはミコトを殺すたび、魔力が補給できるんだ。」


「!」


ロロはミコトと戦闘を続けている限り魔力が尽きることはない。

そして魔法少女であるから体力の低下もない。


「ロロは、ミコトに勝てる……!」


二人がそう結論付けたとき、ロロは10人目のミコトを倒していた。


ロロ自身がこの作戦を思いついたのが先ほどだ。

メイと共にアルカの元に向かっている途中でミコトの能力を盗み聞きしていたのだ。


ミコトがゆっくりと立ち上がる。


「すごいじゃないか、ロロ。あなたがこんなにも強いとは思わなかったよ」


ミコトは武器を地面に突き刺し、拍手をした。


「降参するの?」


ロロはミコトに聞いた。


「降参?まさか……」


ミコトの様子が変わる。

再び武器を握りしめてロロに言った。


「お前は、私を10回も殺した。絶対に殺してやる」


ミコトはゆっくりと歩き出した。

ロロはしっかりとミコトを見つめる。


間合いに入ればいつでも殺せるように。


突然、ミコトの体が二人に分裂した。


「何……!?」


不可思議な現象に、ロロも動揺した。

ミコトは三人、四人とだんだん増えてゆく。


それはロロだけが見ている幻覚などではなかった。


ロロの戦いを見ていたアルカとメイにもミコトが増えているように見えていた。


「どういうことだ……」


「ま、まさか……」


ミコトがロロの周囲を包囲した。


「私の魔法はね。命を奪うだけじゃない。奪った命で新たな命を作り出すことだってできるんだ」


分身などではない。

それは全て命であった。


「ね、メイちゃん?」


1人のミコトがメイの方を振り返って笑った。


「私も、奴によって作り出された命……」


これがミコトの娘たち。命の教会の真実。


「さて、と。殺しますか。」


ロロを包囲していたミコトが一斉に襲い掛かる。


「数が増えても……!」


ロロは無数の刃を発生せ、ミコトたちは一掃された。

ロロはスポイトで魔力を吸収しようとする。


「……!」


「気が付いたみたいね。」


本物のミコトが木の上にぶら下がっていた。


「その子たちは、紛れもなく本物の命。魔法少女じゃないの。だから魔力の吸収なんてできない。残念だったね」


「なら最低限の攻撃で殺せばいい。魔力の自動回復はそれで間に合う」


「ふーん。罪悪感の欠片もないのね。ならいいわ」


ミコトは木から飛び降り、続けて言った。


「私の本気を、見せてあげる」


ミコトは再び分裂し、新たなミコトを生み出した。

先ほどと違い、全員がミコトと同じ大剣を持っている。


「全員、命を賭し、敵を狩れ」


ミコトがそう命令すると、ミコトたち全員が緑色に発光した。


「何っ……!」


ロロは驚いた。

魔法少女でない普通の人間が魔法を使うなんてありえない。

しかし、ミコトたちが放つ光は異様な魔力を放っていた。


「見よ、これが命の輝きだ」


ミコトがそう言うと、一斉にロロに向かって突撃をした。

攻撃は単調だ。剣を縦に構えて突進するだけ。

しかし人間では考えられない速度だ。

ロロは躱すのが精一杯だった。


「クソ……!」


ミコトの猛攻はわずか一分で終わった。

というのも、一分後ミコトたちは魂でも抜けたかのように同時に倒れたからだ。


そのうちの一人だけが立ち上がる。


「私の魔法『ライフサーキュレート』の最後の能力。文字通り命を賭けることで、爆発的な魔力を生み出す」


「そんな……馬鹿な……」


「さて、あなたは何人の私が死ぬことで殺せるのかしら……」


勝てない。いずれ魔力が切れて殺される。

ついに訪れた絶望的な状況。


ロロは煙幕を炊いた。

傍観していたアルカとメイを回収し、魔法で作り出した車に乗り込み逃走を図る。


「逃がさない」


緑色の閃光がロロたちの車を執拗に追いかける。

閃光は的確に車のエンジン部を貫き、車は大破した。


「ぐわぁぁぁ!!」


三人は車から投げ出されたが、ミコトたちはロロだけを追う。


ロロは夢幻魔法でミコトたちと応戦をした。

1人ずつ確実に叩き落した。


しかし、無数に降り注ぐ、剣の嵐。

ロロの足がミコトの剣に貫かれた。


「……いっ!」


ロロが地面に膝をつく。


ミコトたちも命が尽き、七日目の蝉のように次々と空中から降り注いだ。

そして、1人のミコトが奥から悠々と姿を現した。


「終わりだ、ロロ」


ミコトがロロの首元に剣を据えた。


絶体絶命。

ロロは必死で思考を巡らせた。次の一手を。

しかし、どう考えても逆転の一手は出てこない。

全てはその場しのぎにすぎないと悟った。


ミコトが剣を振りかぶる。


「うおおおおおおお!!!!」


「アルカ!?」


その時、アルカがミコトに向かって突撃した。


ミコトは、突然のことに少し驚き、対応できなかった。

が、そんなこと些細な問題にすぎない。


たとえ死んだとしても、次の命で二人まとめて殺せばいいだけだ。


アルカの剣がミコトに突き刺さる。


「無限の命を持つ魔法少女。だけどこれなら……どう?」


アルカの手に握られていた剣。

それはいつものアルカの剣ではなかった。


黒いナイフ。


ミコトの余裕の表情が消えた。


「ば、馬鹿野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ミコトは動揺し、アルカの体を剣で切り裂いた。

その直後、ミコトの大剣は消滅した。


「アルカ……!」


ロロは足を引きずりながらアルカの元へ駆け寄る。


「これは……アンチマギカのナイフ……。少しの間、魔法少女の能力を……消し去る……」


アルカは気を失い、その場に倒れた。


「ありがとう、アルカ。あとは任せて……」


ロロはそう言うと、ミコトの元へ向かった。



----------------------------------


「あぁ……、私の……私の命が……!!」


ミコトから大量の光の玉があふれ出した。

魔法少女の能力を維持できなくなったため、今まで奪ってきた命が解放されているのだ。


「もう、無限の命は失われた。あなたの負けです」


ロロがミコトの前に立った。


「ひぃ……!」


ミコトはひどくおびえていた。


「殺さないで……お願い……」


「……っ」


ロロはとどめを躊躇した。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


ミコトは地面に手をつき、ひたすら謝った。


ロロにいろいろな感情が流れ込む。


ミコトは行く当てがない自分を受け入れてくれた。

メルメルとの戦いのときも、全力でサポートしてくれた。

ミコトはいつもやさしかった。


ロロは、ミコトを殺せなかった。

ロロは武器をしまい、ミコトから距離をおいた。


「なんで、なんでミコトを殺さない……!」


メイがロロに聞いた。

ロロはメイのそばに腰を下ろして言った。


「私には殺せないよ……」


「わかった、なら私がやる。」


メイは立ち上がり、ミコトの元へ向かった。

魔法少女の武器として使っている巨大なスカルペルを取り出し、大きく振りかぶる。


「メイ……」


「さようなら、お母さん」


「待って……!」


遠方から声。

メイは攻撃を止めた。


ミコトの教会のシスターたちが駆けつけていた。


「お前たち……どうして……」


「ロロさんから連絡を受けて」


ロロは服の中から通信機を取り出して見せた。


「交渉の余地があった場合の時のため、一応呼んでおいた」


シスターの一人、エフィがミコトの前に立つ。


「話は全部ロロさんから聞きました」


「そうか、なら失望したか?エフィ」


「はい」


「ごめんね」


「でも、ミコトさんには感謝しています。あなたのおかげで私たちは生まれてきたのですから」


「……」


ミコトが顔を上げると、エフィやシスターたちは全員笑っていた。


「ミコトさん。ありがとう」


「ありがとう」


「あなたならやり直せます。きっと」


「みんな……」


メイはその様子を茫然と眺めていた。


「あなたの人生はどう、楽しかった?」


ミコトはメイに聞いた。


メイはこれまでミコトに何かを強制されるようなこともなく、教会のシスターたちと仲良く暮らしていた。

ミコトからシスターへの愛は間違いなく本物だった。


メイの瞳から涙がこぼれる。


「なんで……なんで私が泣いてるんだよ……」


メイはその場に泣き崩れた。

ミコトはメイをやさしく抱きしめる。


「こんなことになって、ごめんね。メイ」


「う、うわぁぁぁぁぁぁ」


ミコトはメイの涙をやさしくふき取った。


周りのシスターたちもミコトに駆け寄る。

ミコトは全員を抱きしめた。


「みんなありがとう……」


ロロは遠くからその様子を見て、ほほ笑んだ。


「最期に、みんなにお願いがあるの、聞いてくれる?」


ミコトがシスターたちに言った。


「何でしょうか?」


シスターたちが聞き返した。


その言葉はロロの耳にも届いていた。

言葉の違和感。


「最期……?」


ロロはミコトの顔を見た。

その顔は涙を流していたが、同時に笑っていた。

あまりにも邪悪に。



「私のために、死んで」



ミコトは剣を振るった。

シスターたちの約半数は真っ二つに切断された。


その攻撃はメイにも命中していた。


「そんな……、ナイフの攻撃、効果が……切れていた……のか……」


メイは地面に倒れた。


「ミコトぉぉぉぉぉ!!!!」


ロロが武器を描きながら、ミコトに向かって走り出す。


「私は……絶対に死んでたまるか……!」


ロロが作り出した槍は、ミコトの心臓に突き刺さった。

ミコトはそれでも笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ