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マシックガールズ  作者: まーだ
第五章 アンチマギカ炎症
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第61話 命の統制者

「ミコト……」


最悪な状況だった。

アルカが今一番会いたくない人物に合ってしまった。


だが、ミコトはアルカの記憶が戻ったことをまだ知らない。

いくらでもごまかすことができる。


しかし、アルカは目の前の人物を敵として認識した。

たまたまの偶然であるが状況が状況だ。

アルカはもうすでに自分の記憶が戻ったことがミコトに知られていると思ってしまった。


「その子は?」


ミコトがディアナに触れようとした。

その時。アルカは剣を抜いてミコトを攻撃した。


「あ……あぁ……」


不意打ちであったのにも関わらず、攻撃は当たらなかった。


ミコトの表情が変わる。

その目は今までのやさしいミコトではない。

アルカを拷問した、あの日の目だ。アルカは恐怖した。


ミコトは笑顔でアルカに語りかけた。


「ところで、捜索していた人たちの件、どうなった?」


声色を一切変えずにアルカに語りかける。


「……レイスとアビス以外、全員死んでたよ。その二人も政府に捕まってる。」


「そっかぁ、早いうちに助けに行かないとね。」


会話が途切れる。


「ミコ……」


アルカがミコトの名前を呼ぶ前に、ミコトが割り込んで言った。


「戻ったんだね。アルカ?」


ミコトが魔法少女に変身し、剣を構える。

白い衣装の下に、怪しく光る緑の光が見える。


「あなたには二つの選択肢がある。再び記憶を消すか、ここで死ぬか。私は前者の方がいいんだけど……」


やるしかない。

アルカは再びミコトに剣を向けた。


「うおおおおおおおおおお!!」


激しい炎が舞う。

周りの木々を焼き払い、ミコトに襲い掛かる。


「暑くなってきたね。服脱ごうかな……」


ミコトはアルカの剣技を華麗に捌いた。

その表情は笑っていた。

急ぐ必要などない。ミコトにとってアルカは毒の回った獲物だ。

魔法が尽きるのを待てばいい。


「あなたの実力はそんなもの?」


ミコトの予想通り、アルカの炎の出力はすぐに落ちてきた。


「くっ……」


いとも簡単にアルカの剣は弾き飛ばされた。


「これで、終わり。」


ミコトがアルカの首元に剣を当てた。


「大丈夫。また、もとに戻るだけ……」


ミコトの剣が振り下ろされる。

しかし、首が切り落とされることはなかった。


「あれ?」


想定外の事態にミコトも少し戸惑った。


「本当は、使いたくなかったけど……」


アルカは炎を纏った腕を犠牲にしてミコトの攻撃を防いでいた。


本来ならば、魔力が足りず、腕ごと切り落とされていたであろう。

しかし、アルカには秘策があった。


アルカはミコトに口を開いて見せた。

舌の上に乗っていたのは魔結晶。

アルカが工場から盗んできたものだ。


アルカは口の中にある魔結晶をかみ砕いた。

アルカは口から大量の血液があふれ出す。

だが、傷口はみるみるうちに修復した。


アルカの魔法は完全に回復した。


「あなたたちの魂。借りてくわ!」


「ふーん。なるほどね。」


それでもミコトは余裕の表情だった。

そんな余裕な表情を叩き潰す、アルカの一撃。


「!?」


ミコトは大きく吹き飛ばされた。


効いている。

以前とは比べ物にならないほどパワーアップしているアルカの魔法にミコトは圧倒された。


さらにアルカの追撃は加速する。


「……!!」


ミコトに休む隙も与えない。

ミコトの余裕の表情は失われていた。


そしてついに、アルカの一撃がミコトに突き刺さる。

急所は外れたが、ミコトは地面に倒れた。


「やった……」


ミコトは仰向けになって空を見上げる。

そしてアルカに語りかけた。


「アルカ……少し、話をしようか。」


「……」


アルカは不意打ちを警戒しながらミコトに近づいた。

ミコトに抵抗の意志がないことを察したアルカは、一旦剣をおさめた。


「人は誰しもが、必死で生きている。」


「何の話だ?」


「人の命の価値を数値で表すと、1だ。国王だろうが、平民だろうが、奴隷だろうが誰もが平等に1の価値を持っている。その1の価値を奪うってことはね、奪った人の命の価値も失われるんだ。1人殺したら0、2人殺したら-1。わかりやすいでしょ?」


「だから価値が0以下の人間を殺しても問題ないと言いたいのか?」


「うん。よくわかってるね。」


アルカは首を振った。


「残念だけどミコト。その理論は通らない。あなたはディアナを1回殺している。自分の保身のためだ。それに、あなたは無差別に悪い人を殺しているように見える。その中には人殺しをしていない人も含まれているはずだ。」


「はは……そうだね。」


「認めるのか?」


「私は既に2人の親友を殺している。私の命の価値なんて、もうすでにないんだ。」


「……」


「あははは……ははは……!!」


ミコトは狂ったように笑い出した。

アルカは何も言うことができなかった。


ミコトは狂っていた。

一体いつから狂っていたのか、アルカにはわからなかった。

少なくとも、ミコトは己の正義を成したあとに自分も死ぬ気でいる。

それだけの覚悟を持って殺人鬼となったのだ。


「さて……ゆっくり回復できたよ。ありがと、アルカ。」


ミコトは軽快に立ち上がり、剣を握り直した。


「ミコト……!お願いだ。もうこんなことは……」


「残念だね。もう遅いんだよ。」


アルカはミコトに改心の余地が少なからずあることを知った。

アルカは必死に説得しようと試みたが、それは叶わぬ願いとなった。

今、ミコトのすべてを受け入れ、成してきた罪を許すことが出来たとしても、ミコト自身がそれを許さなかったからだ。


破滅へ向かうただ一つの光。

ミコトを救う方法は存在しない。


ミコトがアルカに向かって突進した。

反応が遅れたアルカは倒れ、その上にミコトが馬乗りになった。


「だけど大丈夫、まだみんなと楽しく暮らせる時間は残っている。あなたの記憶が消えればね……」


ミコトはアルカの顔に剣を向けた。


アルカは右手の炎をミコトにぶつけようとした。

しかし、ミコトはアルカの右腕を切り落とし攻撃を防いだ。


「がぁ……」


「抵抗しないでよ、私を悲しませないで……」


ミコトは泣いていた。

アルカは力を振り絞り、ミコトを振るい落とそうとした。

しかし、ミコトはびくともしない。


その時、一筋の閃光がミコトの体を貫いた。


「!?」


突然のことに驚いたミコトは後ろを振り返る。


白い服を着た少女が銃を構えて立っていた。


「アルカから離れて……」


「ディアナ……」


「あ?」


二発、三発。銃弾は放たれた。

弾丸は全てミコトの急所に命中した。

命中した頭と胸は膨張し、大きな爆発を起こした。


頭と上半身の消し飛んだミコトの体が地面に倒れる。


「あ、あぁ……」


ディアナが地面にへたりこむ。

アルカはすぐにディアナの元へ駆け寄った。


そしてディアナをぎゅっと抱きしめた。


魔法少女への覚醒。ロロから聞いた話だ。

デミは魔法少女になりうる力を秘めている。

きっとアルカを守りたいという思いが、ディアナを覚醒させたのだ。


「怖かったよ……アルカ……」


「もう大丈夫。助かったよ、ディアナ……」


アルカは笑顔でディアナの顔を見つめた。


「え」


あまりにも一瞬のことだった。

そこにディアナの顔はなかった。

アルカが抱いていたもの、それは首が切り落とされたディアナの死体だった。


「ディアナ?」


話しかけても返事は帰ってこない。


「今度はその子も生かしてあげようって思ったけど……都合が変わった。」


後ろから聞こえたのはミコトの声。

アルカは恐る恐る振り返った。


そこにはミコトが立っていた。

持っていた大剣を地面に向かって振りぬき血振りをした。


「な……なんで……」


たった今殺された魔法少女が生きている。立っている。ケガの1つもない。

確かに魔法少女は損傷した体を再生可能である。

しかし、ここまで速いのはあり得ないことだ。そもそも頭部を破壊されれば再生すらできない。


ただ、ミコトはディアナを殺した。それだけは何よりもはっきりとした事実だった。


「8943人……」


ミコトがそうつぶやいた。


「私が今まで殺してきた人の数だ。」


「いったい……何のことだ……」


アルカが聞くと、ミコトは大剣を天に掲げた。


「私の魔法は命を奪う魔法。奪った命は私の命となる……」


それがどういうことか、アルカは一瞬で分かった。

ミコトは単に己の信じる正義のために悪人を殺してきたわけではない。

自分が死なないようにするために多くの命を奪ってきたのだ。


奪った命はミコト自身の命となる。つまり、ミコトはあと8943回殺さないと死なない。


アルカは絶望した。

ミコトを殺せたのは命がけの不意打ちで1回。

もはやどうがんばってもミコトを殺すことは不可能だった。


「もう、どうでもいいや……」


アルカは自身の剣を捨て、魔法少女の変身を解いた。

あまりにも理不尽な能力に抵抗する気も起きなかった。


「そう……じゃあ死んで。」


ミコトはアルカに剣を振り下ろした。


自分の命を奪った相手だ。

もはやミコトに容赦はなかった。


アルカは目を閉じた。


大きな音を立て、ミコトの剣は止まった。


アルカはゆっくりと目を開ける。

アルカの目の前に一人の魔法少女が立っていた。


その魔法少女は希望。

どんな絶望的な状況にも打ち勝ってきた希望。


「ロロ……」


「大丈夫、アルカ?」


ロロはアルカに手を差し伸べた。

アルカは涙をぬぐい、ロロの手を掴んだ。


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