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マシックガールズ  作者: まーだ
第五章 アンチマギカ炎症
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幕間 魔法少女になった日 後編

アルカとベンジャミンは山奥の温泉宿に来ていた。

区分的にはエリアBに相当するが、利用客はエリアAの住民が多く、治安は悪くない。


「静かでいいところですね」


「そうだな」


エリアAという都会で暮らしていたアルカたちにとっては自然に囲まれた建物というものは相当珍しいものだった。


「よう、来たかベンジャミン探偵。それにアルカ君」


宿の入り口で受付を済ませたのを待っていたのはオリーブ刑事。

ベンジャミンと同じくどこか古臭いおじさんだ。

ベンジャミンとは相当長い付き合いで、お互いに信頼している相棒のような存在。


「すまない、アルカ。私はこれからオリーブ刑事と仕事の話をするから先に部屋に行っていてくれ。」


そう言い、ベンジャミンはアルカに部屋の鍵を渡した。


先日ベンジャミンは探偵についての話をしていた。

探偵となっても殺人事件の調査をするのは稀であると。

しかし、アルカは知っていた。ベンジャミンは特別に優秀な探偵であることを。

そのため、よくオリーブ刑事と仕事の相談をしている。


「はーい!」


アルカは元気よく返事をして部屋の方へ駆けて行った。


---------


アルカは一人でふらふらと回廊を歩く。

中庭には大きな桜の木が生えていた。興味を持ったアルカは近くでそれを観察した。


地面に落ちていた

感触に違和感を覚えたアルカはそれを口の中に入れた。


「苦ッ……」


プラスチックの味、この桜は人工物だ。

がっかりしたアルカは偽物の桜の木の下に腰を下ろした。

それでも上空から吹く風や日陰の涼しさは心地よかった。


しばらくたそがれていると、アルカと同年齢ぐらいの少女がやってきた。

少女は地面を注意深く見ながら中庭を歩いている。


「探し物ですか?」


アルカは少女に聞いた。

銀色の髪に隠れていた青色の瞳がアルカを見つめた。


「ええ、そうです。髪留めを失くしてしまって……」


「それは大変だ。一緒に探してあげるよ」


「あ、いえ。大丈夫です、一人で探しますから」


少女は申し訳なさそうにそう言った。


「遠慮しないで!困ってる人は助けるべし!先生の言葉だよ!」


アルカは自信満々にそう言い、アルカは少女の手を引っ張った。


「先生って誰ですか!?というかどこに行くんですか!?」


「この名探偵アルカに任せて!」


「名探偵?」


アルカが少女を引っ張っていった先は入り口のロビー。

アルカは受付の人に聞いた。


「すみません、落とし物を探しているのですが……」


「名探偵……」


少女は蔑みの目でアルカを見つめた。


「あとは時間が解決してくれるはず!」


アルカは少女に向かって笑顔で親指を立てて見せた。

少女は呆れて怒る気にもなれず、


「ありがとね」


とだけ言った。


-----------


「ふーん、じゃあ、あなたはその探偵の助手ってことね」


「そうともさ」


アルカは自信満々に答えた。

なんだかんだアルカと少女は仲良くなり、お互いのことについて語り合った。

少女は友人と旅行に来ているようだ。


「そういえば、ほかの子たちは?」


「この辺りを散策していると思う。私は一人で髪留めを探していたから」


「ふーん、大事なものなんだ」


「うん、もうだいぶ使い古されていてボロボロだけど、お母さんの形見なの」


アルカにとって家族は施設の人々だ。それ以前の記憶はない。

施設で家族にやさしくされたという思い出はない。


なぜ少女が形見の髪留めを大切にしているかアルカはわからなかった。

それでも少女の顔を見てそれがどれだけ大切なものかを知ることができた。


アルカは何も言わず少女の悲しそうな顔を眺めていた。


「おーい!」


その時、散策に行っていた少女の友人たちが戻ってきたのか、少女を呼ぶ声が聞こえた。


「髪留め見つかった?」


「ううん、まだ」


「そっかぁ」


少女は無理やり笑顔を作って友人と楽しそうに会話をしていた。


「この子は?」


3人の友人のうち、リーダーらしき一人がアルカについて尋ねた。


「この子はアルカ、髪留めを探すのを手伝ってくれたの!」


少女は友人たちにアルカを紹介した。


「どうも……」


アルカは友人たちに挨拶をした。


「ありがとね!」


友人たちの感謝の言葉に、アルカは顔をうつむけて照れ隠しをした。


「アルカちゃんはね、探偵の助手をしていてね」


「あ、あの……」


「その探偵は数々の殺人事件を解決してきた名探偵なんだって!」


アルカが止めようとしても、少女は友人にアルカのことをどんどん話し始めた。


「へぇ、すごいんだね。アルカちゃんは」


「は、はは……ま、まあね」


引くに引けなくなったアルカは笑うしかなかった。

もう流れに身を任せ、適当に愛想笑いを振りまいた。


「そうだ、みんなでお風呂行こ!アルカちゃんも!」


少女はアルカの手をつかんだ。


「え?」


「いいね!」


友人たちもアルカを囲む形で陣形を組んだ。

アルカに逃げ場はない。


「え、えぇ……ちょっと……!」


今度はアルカが少女に引っ張られる形で風呂場に連れていかれた。


-------------


更衣室からアルカが出てきた。

その顔は宿がアルカが着ている着物よりも真っ赤に染まっていた。


アルカの記憶が正しければ、アルカは明日16歳になる。

アルカはこんな歳になるまで他の人の裸を見たことがなかった。

その上、今さっき会ったばかりなのにやたらと近づいてる少女とその友人。

アルカの心臓はバクバクと震え燃え上がっていた。

温泉はアルカにとって刺激が強すぎたのかもしれない。


少女はアルカの様子を見て心配した。


「アルカ?大丈夫?」


「うん、ちょっとお湯が熱くてのぼせちゃったみたい」


アルカは嘘を言ってごまかした。

少女たちを見て興奮したなんて口が裂けても言えない。


「アルカちゃん、今から私の部屋でカードゲームやるんだけど、来ない?」


「い、いいね!たのしそう!」


アルカは呼ばれて少し動揺したが、深呼吸をして自分を落ち着かせた。


「おーいたいた。アルカー」


別方向からアルカを呼ぶ声。

アルカが振り向くと、そこにベンジャミンが居た。


「あ、やべ」


「まったく、結構探し回ったよ、広い宿も困りもんだな」


ベンジャミンの部屋の鍵はアルカが持っている。

ベンジャミンはオリーブとの仕事の話が終わったあと、ずっと部屋からしめ出されていた。


「あなたがアルカの言っていた探偵さん?」


少女たちはベンジャミンに群がった。


「……友達か?」


ベンジャミンは少女たちの顔を一人ずつ見て、その後アルカに聞いた。


「そうか、ようやくアルカに同年代の友達ができたか。よかったな!」


ベンジャミンは笑顔でアルカの頭を撫でた。


「こ、子ども扱いするな!」


アルカはベンジャミンの手を払いのけた。

その時、ベンジャミンは少し悲しそうな表情をしていたのが見えた。


少女たちはベンジャミンに事件当時の話をしてほしいと頼んだが、ベンジャミンは断った。


「探偵は余計な情報を話さないものだ、そう教えたよな、アルカ」


「アハハ……ソーデスネ……」


アルカは片言で返事をした。

ベンジャミンは呆れて深いため息を吐いた。


「そろそろ行くぞ、アルカ」


「ごめん!また明日ね!」


アルカは少女たちに別れを告げた。

カードゲームできないことは残念だったが、この宿に泊まっている以上また明日会える。


「連絡先も明日聞けばいいか」


そう思えば、踏ん切りはつくものだ。

アルカは自分で納得した。


------------


夜、アルカは隣の布団で寝ているベンジャミンに話しかけた。


「先生。家族ってなんですか」


ベンジャミンの返答はない。寝てしまっているのだろうか。

それでも、アルカはひとり続けて言った。


「家族は居なくなったら寂しいものらしいのです」


「なら、先生が家族ってことでしょうか」


アルカは深く考えた。

次第に眠りに落ちて行った。



------------


次の日、アルカとベンジャミンは食堂で朝食をとっていた。


その後、アルカたちは部屋の片づけをして宿を立ち去ることになっている。

あとで、少女たちの部屋に寄って行こう。アルカはそう思った。


その時、食堂に少女の友人二人が入ってきた。

少女本人とリーダー格の友人は居なかった。


「アルカちゃんおはよー」


アルカは目を合わせないようにして返事をした。


「お、おはよ……」


少女二人は食堂を見渡した。


「あれ、ミノルとアナちゃんがいないな……」


アルカは疑問に思って聞いた。


「ん、あなたたち一緒の部屋じゃないの?」


「私たちはそれぞれ一人一部屋だったんだよ。他の部屋は予約が入っててね。」


「そうだったんだ……」


にしては食堂はガラガラすぎるが、些細な疑問だった。


「部屋でまだ寝てるのかも、起こしにいこ!」


そう言い二人は元来た道を戻って行った。

アルカも急いで朝食をかきこみ


「ごちそうさま!」


とだけ言うと、二人の後を追った。

ベンジャミンの呼び声が聞こえた気がしたが、アルカは無視をした。


三人が駄弁りながら歩いていたら、部屋に行く途中で少女と出会った。


「あ、アルカちゃん、それにみんな。三人そろってどうかしたの?」


「ミノルは?」


「え、ミノル?もう起きてると思ってたんだけど……」


少女とその友人たちの間ではミノルと呼ばれるリーダー格の少女は早起きで有名とこのこと。

三人は不思議に思った。アルカはそんな三人の様子を不思議そうに眺めた。


「とりあえず、部屋まで行ってみよう」


四人はミノルの部屋まで向かった。


---------------


朝の8時。

カーテン越しでも日差しが入ってくる頃。

この時間まで寝ているのはおかしい。と


少女はミノルの部屋のベルを鳴らした。

だが、反応はない。


「ミノルー!」


呼び声にも反応しない。


「風呂場に行ってるのかも……」


三人が別の場所を探そうとしたその時。



ガチャ



とミノルの部屋の扉が開いた。

同時に少女は言った。


「部屋に、鍵がかかっていない……」


嫌な予感がした。


「かして……」


アルカは少女に代わって扉をゆっくりと開けた。

入り口前の狭い道を一歩ずつ進む。



「……ッ!」



そこにそれはあった。


アルカが昨日会った少女の友人。

元気があり、他のみんなをまとめていたであろうリーダー。

名前はミノル。


胸に黒色のナイフが刺さっている。


その少女は死んでいた。


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