第51話 夢現魔法
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。
エリアCという地獄から生還し、出会いと別れを繰り返しながら成長。
魔法少女形態【色の魔法少女】
白と黒と金色を基調とした高級感のあるドレス。様々な色の宝石が散りばめられている。
帽子は虚空に繋がっているため、端から見たら頭が欠損しているようにも見える。
羽のような大きな黒いリボンを背負っている。
使用武器は「マジックパレット」
空間に自分の思い通りの絵を描くことが出来る。相手の視覚を妨害できるが攻撃力は皆無。
『レイス・アタラクシア』
天才研究員リンネの元助手。黒のポニーテールに黒い瞳。21歳の女性。
リンネの研究を引き継ぎ、「魔法少女病」の特効薬を開発している。
それなりに成果が出ている模様。「デミ化」手術の開発者であるが、「デミ」の闇については知らされていなかった。
『アビス』
レイスの助手、兼魔法少女。レイスと同じく黒髪に黒い瞳。
シロとクロが消えてから数日後、突然レイスの目の前に現れた。
本名はルシア・マキナ。魔法少女軍のメンバー。
リンネの実験台にされたクロエの復讐のため、自ら志願して研究室に潜り込んだが、
レイスに悪意が感じられなかったため、彼女の研究に協力するようになった。
魔法少女形態【空間の魔法少女】
黒いスーツのようなデザインの衣装。所々空間に溶け込んでおり、欠けているように見える。
虚空に身を潜め、疑似的な瞬間移動ができる。
---------------------------------
『衛堂ミコト』
黒のショートボブヘアで赤い瞳の女性。
魔法少女だったが、暴走する親友を止め魔法少女を引退する。
その後は、より多くの人を救うため貧困地エリアBに教会を作る。
『カイザー』
カウボーイハットをかぶった時代遅れの男。
目元は陰になっておりよく見えない。
ミコトの教会に住み着く浮浪者。
ミコトの教会をガールズバーに改装した変態。
『エフィ』
シスターの長を務める少女。身元不明。
『ガブリエラ』
ミコトの教会に迷い込んだ幼い少女。
金髪で透き通るような青い瞳をしている。
『ユイ』
奈落に住む少女。レンの妹。
黄色い髪に金色の瞳。姉とよく似ているが、髪は長くない。
「突然いなくなった姉を探す」という願いのもと、魔法少女として覚醒。
魔法少女形態【電気の魔法少女】
長めの黒タンクトップ一枚だけで非常に動きやすい衣装、所々青色に発光している。
電気を操る魔法を使うが、不器用なため姉のように電気で武器を生成することはできない。
そのため、ひたすらに出力を上げ火力にモノを言わせた攻撃を得意とする。
『アルカ・ディアナ』
赤のメッシュが入った黒髪の少女。
探偵の服を着ており、どこからどう見ても探偵。
魔法少女形態【真実の魔法少女】
全身から青い炎が迸り、周囲を炎上させる。
物体に触れることで対象の過去を映像資料のように見ることが出来る。
サポート能力もさることながら、戦闘能力も高い。
---------------------
『天道リンネ』
赤色のショートヘアで赤い瞳。
世界的に有名な研究者であり、魔法少女になってしまう病気「魔法少女病」の研究をしていた。
シロに惨殺されたはずだが、なぜが生きている。
『メルメル』
リンネに仕えている魔法少女。
ピンク色のおさげに、黄色の瞳を持ち、黒い革ジャンを着ている。
他の魔法少女を寄せ付けない圧倒的な実力を持っている。
魔法少女形態【電波の魔法少女】
見た目に変化はない。
使用武器は「メルフォン」
持っているスマホを使ってアプリを起動することで魔法を発現する。
基本的にできないことはないが、電波が届かない場所だと使えなくなってしまう。
使用魔法は「メルメルト」
相手に触れることで対象をドロドロに溶かす。
こちらは電波が無くても使用可能。
数日後、教会の修理はカイザーとシスターたちのおかげで順調に進んでいた。
魔法少女たちは適当な部屋でレイス救出のための作戦会議を始めていた。
「正面突破よ!」
元も子もない話を始めたユイ。
「魔法少女3人がかりでも勝てない相手だ。無謀すぎる。」
アルカに却下された。当然だ。
「うーん、そもそもロロはどうやってあいつに勝ったの?」
アビスはロロに質問した。
ロロはメルメルとの戦いを語った。
「メルメルはスマホを無力化することで、大幅に弱体化する。だから電波の届かないところに誘導したんだ。」
「なるほど、それで大空洞の中に入ったんだな。」
「身体能力はそこそこだけど、まあ、私は負けそうだったけど。」
「でも、相手も自分の弱点を把握しているだろう。同じ手はきっと通じない。」
「電波を妨害する方法は他にもある。例えば、強力な電磁波を発生させるとか。」
全員がユイを見つめた。
「わ、私!?」
「メルメルが能力を発動する前に、ユイの能力で電磁波のフィールドを作り出すんだ。」
「無理だよ。どれだけの範囲かわからないけど、強力な雷撃を放つだけでも10mが限界だ。」
「だったら私たちが手伝おう。」
ミコトが協力に名乗り出た。
「ミコト?」
「私とシスターたちでアジトを包囲しよう。ユイが電気を供給してくれれば継続的に妨害電波のフィールドを展開できる。」
「だけど、ミコトは……」
ミコトは魔法少女を引退したと言っている。
ロロは無関係なミコトを危険にさらされないよう秘密にしていたのだが、
教会が破壊された以上もうミコトに秘密にすることはできなかった。
「最初から、言えば協力してあげたんだけどね。」
ミコトは皮肉交じりに言った。
ようやく勝算が見えてきたにも関わらず、アルカは不安な表情を見せていた。
ロロはアルカに聞いた。
「アルカ、何か不安でも?」
「メルメルを倒すことよりも、レイスを救うことよりも優先すべきことがある。クローン製造装置の破壊だ。」
アルカの言い分はもっともだ。
メルメルは死んでも蘇る。悪夢を終わらせるには元凶を止めるしかない。
「どこでクローン製造しているかはわからないが、とにかく探すのが最優先だ。メルメルは無視でもいい。」
--------
作戦は順調に決まった。
決行は同日の深夜。
トラックの荷台の上に乗った魔法少女たちは出発の時を待った。
「先行していたエフィたちから連絡があった。準備が完了したと。」
ミコトはロロたちにそう告げると運転席に乗り込んだ。
「カイザー、留守を頼むぞ。」
「あいよ、気をつけてな。」
トラックは目的地に向かって走り出した。
-----------------------
至って普通の部屋、レイスはその部屋に監禁されていた。
監禁といっても、メルメルが見張っている以外は自由に行動することが許されていた。
何なら、リンネも同じ部屋で生活している。
リンネはコーヒーを2つつくり、片方をレイスに渡した。
「どう思った。私がクローンだと知って。」
「衝撃は受けました、それだけです。私はあたなじゃありませんから、あなたの気持ちなんてわかりません。」
「そうか、そうだよな……」
「ですが、あなたは本当に優しい人ですね。あなたはいつも自分以外の人のために行動していた。今回だってそう。天道カルマの無念を晴らすため。それだけのために世界を滅ぼそうとしている。」
レイスは続けて聞いた。
「あなたが本当にしたいことはなんですか……」
「そんなもの、覚えてないよ。」
「だったら、新しく作ればいいじゃないですか。あなたはリンネ博士なんです。殺された天道カルマの娘じゃない。あなたも本物のリンネ博士なんです。」
レイスは必死に言葉を絞り出したが、自分でも何を言っているのかわからなくなり苦笑いをした。
「まあいいさ。どのみち私のすることは決まっている。それはあなたの説得で変わることはない。」
リンネはコーヒーを飲み干すと立ち上がり、部屋から出ようとした。
「どこへ行くの?」
部屋の隅でゲームをしていたメルメルはリンネに聞いた。
「アジトの周りをうろつくネズミ駆除……かな。」
「面白そう!私も混ぜて!」
「だめだ、レイスを見張っておけ。」
「えー」
メルメルは露骨に嫌な顔をした。
「そんな残念そうな顔をするな。もうすぐ戦える。」
「ほんとー!」
メルメルはすぐに機嫌を戻し、再びゲームを始めた。
リンネは部屋を後にした。
(もうすぐ戦える?ロロたちが来るってこと……?)
レイスはゲームをしているメルメルに聞いた。
「ねぇ、メルメル。ロロと会ったらどうするの?」
「殺しあうよ。」
メルメルは即答した。
「メルメルはロロのこと嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ。私とまともに戦える人なんてロロ以外に会ったことないから、むしろ大好き。」
レイスはメルメルの隣に座った。
そしてテレビ画面を見ながら言った。
「あのね、メルメル。殺したらロロに二度と会えなくなっちゃうよ。」
「……」
メルメルは少し考えてから答えた。
「そのときは、リンリンに頼んでロロのクローンを作ってもらうよ。」
「ロロは喜ばないと思うけどね。」
------------------
夜の森の深くにその建物はあった。
あらゆる公共施設から隔離された、いわゆる秘密のラボ。リンネのアジトだ。
端から見れば廃墟にしか見えない建物は怪しい光を放っていた。
「エフィ!」
トラックを降りたミコトは道の傍らで倒れていたシスターの一人のエフィに駆け寄った。
「何があった」
負傷したエフィは必死に声を引き出した。
「リンネの私兵です。魔法少女ではないですが、銃を持っています……おそらく、他のシスターたちも……」
「クソッ……」
ミコトはエフィに応急処置を施した。
「予定変更だ。私とユイはシスターたちの救助に回る。そのあと、しばらくしてから電磁波フィールドを展開する。三人はメルメルに気を付けてクローン製造装置を探してくれ。」
「結局、普通にごり押しかぁ……」
ロロは愚痴を吐いたが、仕方ないと割り切った。
「ま、緊張感あっていいと思うよ。」
「何かあったら私の能力で逃げればいいしね。」
ロロ、アビス、アルカの三人は施設に突入した。
-------------------
「いたぞ!侵入者だ!」
白い服を纏い、銃を持った兵士が施設内を巡回している。
謎のバイザーによってロロの視覚妨害も通用しない。
「まずいね。このままじゃメルメルがこっちにやってくるのは時間の問題だよ。」
三人は一旦物陰に隠れた。
兵隊を倒すことは魔法少女たちにとって造作もないことだ。
しかし、居場所が知られてしまうため、最強の魔法少女メルメルを呼び寄せてしまう。
厄介この上ない敵だ。
「いったいどこからこんな数の兵隊を雇ったんだ。」
「これも、クローンで作り出した人形だろう。」
アビスがつぶやき、アルカが答えた。
そしてアルカは物陰から飛び出した。
「ちょっと!?アルカ!」
「多くの兵隊に、統一された制服。その致命的な弱点を教えてあげる!」
アルカは鞘から剣を抜いた。
アルカの剣は強い光を放ち、兵隊たちの目をくらませた。
ロロが目を開けた瞬間、三人の兵隊が地面に倒れていた。
アルカは兵隊の一人の服を脱がしている。
「な、なにしているの、アルカ……」
「変装。二人も早く着替えて!」
アルカは女性兵士の下着もお構いなしに引きはがす。
「いや、それは流石にあなたの趣味でしょ……」
アビスとロロはアルカに渡された制服に着替える。
アビスはぴったりだったが、ロロとアルカにとっては少し大きめだ。
ロロたちは服を脱がされた兵士たちを物陰に隠した。
「これでしばらくは大丈夫、先に進みましょ。」
そういいアルカは二人を先導して走り出した。
「え、走るの!?」
「ああ、私の能力で見たんだ。兵士たちの"物語"を。」
ロロとアビスは深く考えず、アルカについていった。
------------
ついた先、それはまるで工場だった。
しかしレーン流れているのは人体だ。
「ビンゴ!」
「アルカ、すごい!早速止めましょ!」
ロロは停止ボタンを探した。
アビスはレーンを流れる人体を眺めた。
そして言った。
「たしかにここはクローン製造装置のようだ、だけどメルメルのクローンが作られている気配はないぞ。」
「そうだな、ここで作られているのはあくまで一般兵用のクローン、メルメルのやつは特別製で別の所にあるのかも。」
その時だ、空中にモニターが出現した。
『こんばんはーみんなー!』
聞き覚えのある声。
「メルメル!」
ロロはその少女の名前を呼んだ。
『本当はそっちに行きたいんだけど、人質連れて歩くのは時間がかかるからさ。こっちに来てよ、三階の大広間で待ってるよ。じゃあねー。』
メルメルは言いたいことを言い終えると通信を遮断した。
「罠かもしれない、ミコトたちが電磁波フィールドを展開するまで待った方がいい。」
「だけど、こちらの位置は把握されている。行かなければレイスの命が危ない。」
「アビスに賛成だ。クローン製造装置の場所はメルメルから聞き出さないとダメみたいだ。」
「しょうがないな……、だったらさっさと行くよ、アビス!」
アビスは虚空を展開し、三人を飲み込んだ。
---------
アビスの虚空が大広間に出現した。
そこから三人の魔法少女が姿を現した。
「来たね、ロロ。」
メルメルが腕を組みながら待機していた。
「ああ、来ちゃったか……」
レイス特に拘束等はされていなかった。
「ごめんね、私なんかのために……」
レイスは大広間の端に避難した。
それを確認するとメルメルはスマホを取り出し、臨戦態勢に入った。
「自分を責めないでください、レイス。あなたは大切な人です。」
アビスが剣を構える。
「お前の秘密を暴いてやる……」
アルカが鞘から剣を引き抜く。
「私はもう、逃げない……!」
ロロがメルメルに向かって銃を構えた。
三人の魔法少女は先ほど奪った白の制服を脱ぎ捨てそれぞれの衣装に着替えた。
「さあ、存分に殺しあおう……」
4人の魔法少女による決死の戦闘が始まった。
---------------
はっきり言って三人に勝算はなかった。
まともに戦えば一瞬で決着がつく。
そのため、ロロたちがとった作戦は時間稼ぎ、ミコトたちが電磁波フィールドを展開するまでひたすらに耐えることだ。
幸いにもメルメルは比較的よく戦闘で遊ぶ。
相手の攻撃を見て、捌くことができれば致命傷は回避し続けることができる。
もちろん作戦がバレればそれで終了。一巻の終わりだ。
アビスの虚空を使いながら、二人の剣士はメルメルと上手く応戦している。
一方、ロロはメルメルが特殊なバイザーを常につけているため、完全に戦力外だった。
最悪素手でも戦うことができるが、二人の邪魔になるため、少し離れた位置で二人の戦いを見守った。
数分後、状況は一変する。
アビスの剣が溶け始めた。
「なっ……!?」
「やはり、メルメルト。カギになるのはこの能力……!」
隙ができたアビスにメルメルは猛攻を仕掛ける。
「させるかっ!」
すかさずアルカが防御に入る。
「ちっ……」
メルメルが一旦距離を取る。
その際に、アビスは自身の武器を再生した。
「そろそろ、飽きてきたよ。私が戦いたいのはロロだけなのに……」
(まずい……)
ロロが一番警戒していたことが起き始めた。
メルメルのスマホを使う魔法。それはその気になれば何でもできる、とんでもなく理不尽な魔法だ。
めちゃくちゃなことが起きる。そうすれば自分たちに対抗できる手段はない。
メルメルは二人からさらに距離を取った。
そして背中から取り出したのは巨大なミサイルランチャー。
そこからいくつものミサイルが発射された。
「!」
アビスとアルカはメルメルの技を警戒をしていた、しかし、対処しようにもできない。
二人は鉄と炎の嵐に包まれた。
「アビス!アルカ!」
二人は無残に倒れていた。
「ついでにもういっぱーつ!」
ロロに向かって最後の一発が放たれた。
「うおおおおおおお!!!!」
ロロは必死で銃弾を放ったが、まるで効いていない。
鉄の塊はロロの目の前まで来ていた。
「あ……」
「ロローーーッ!!!」
ロロは最期にレイスの叫びを聞いた。
-----------
「あっはははは!!!!これで……私の……勝ち!!」
今にも焼け落ちそうな大広間でメルメルは勝利の雄たけびを上げた。
メルメルは笑い終わると、自分の頬を触れた。
メルメルの頬は涙でぬれていた。
「あれ……、どうして私、泣いているんだろう……」
メルメルは自分の涙を拭きとった。
「みんな……」
レイスは魔法少女たちが包まれた炎を絶望しながら眺めた。
「……?」
しかし、レイスはその中に一人の人影が見た。
「ロロ……?」
炎を吹き飛ばし、その中から魔法少女ロロが姿を現した。
炎によって焼き払われた衣装は光をまとって新しく生まれ変わった。
さらに、手にかつての銃ではなく、大きな筆を両手で抱えていた。
「私は逃げていたんだ。人の命を奪うことから。当然、その考え方は正しい。だけどそれだけじゃ守りたいものもまもれなくなっちゃうだろう!」
ロロが筆を振るうと空中に巨大な剣が描かれた。
そしてそれは光を纏いながら実体化した。
ロロが命じると、剣はメルメルに向かって飛んで行った。
メルメルは直前でシールドを張り攻撃を防いだ。
「ロロが……攻撃の魔法を使った……」
魔法の進化。
魔法少女は極限状態になると己の魔力を増強させ新たな魔法を生み出す。
リンネのレポートにあった記述だ。
レイスが直接目にしたのは初めてだった。
ロロの魔法が攻撃に変異した原因は不明だが、レイスはそれが不安だった。
「大丈夫だよ。レイス。」
ロロはレイスにやさしく語りかけた。
「でも……」
不思議な現象を目の当たりにしたメルメル。
彼女の顔に笑顔が戻った。
「そうだ、これでこそ私の求めていたロロだ……!!」
メルメルは再びミサイルを装填した。
「いくよ!ロロ!」
メルメルのミサイルはすべて放たれた。
ロロは地面に幾多もの四角形を書いた。
それらは蓋になり、蓋が開くと中から迎撃用のミサイルが飛び出した。
ロロは爆風を受けながらもほぼ無傷でミサイルの嵐を躱した。
たった一度の攻防だが、レイスは目の前の魔法少女の壮絶さに目を奪われていた。
なんでも創造できる、言うなれば夢現魔法のぶつかり合い。
もはやなんでもありの大合戦。
「レイス……」
レイスは後方からの声を聴いた。
振り返ると、アビスが虚空の中で待機していた。
「アビス……!無事だったのね。よかった。」
「はい、アルカも無事です。先ほど、アルカがクローン製造場所の位置を特定しました。ここはロロに任せましょう。」
レイスはロロの方を見た。
もう心配はなかった。ロロは強い。レイスはそう確信していた。
だからメルメルはロロに任せて、レイスはアビスの虚空の中に入った。
-----------
ロロは筆で自分の姿をいくつか書いた。
それはロロの分身となって実体化した。
「うわ、気持ちわるっ……」
ロロは自分の分身を見てそうつぶやいた。
メルメルもまた、スマホを使い自分の分身を出現させた。
燃え上がる壁を背景に、ロロとメルメルの大群が一斉に走り出し、ぶつかった。
ロロとメルメルは互角の戦いを見せた。
しかし、互角なのはメルメルの演出に過ぎない。
メルメルの能力"メルメール"は自身のスマホに衛星から受信した能力を発動する。
衛星にはリンネが解剖したいくつもの魔法少女のデータが含まれており、組み合わせることで無限の創造魔法を使うことができる。
理論上どんな魔法でも扱うことができるメルメルは一瞬で相手を消滅させることも可能である。
だが、そんなことはメルメルのプライドが許さなかった。
相手とできるだけ対等な条件で勝利するそれがメルメルの信念である。
状況はややメルメルの有利に流れていった。
分身を生成するスピードがロロの方はわずかに遅かったからだ。
ロロは戦法を変えた。
ロロは空中に雲の絵を描き、突風が発生し炎が複数のメルメルに引火した。
メルメルがは瓦礫を浴びながらも、新たな文字をスマホに入力した。
メルメルを中心に津波が発生し、ロロや分身たちをまとめて押し流した。
ロロは慌ててシールドを張る。
しかし、それはすべてメルメルの読み通り、メルメルはロロの目の前まで距離を詰めていた。
メルメルは光の剣を創造し、ロロに斬りかかった。
ロロは筆でそれをガードした。
距離を詰められれば、ロロは創造魔法を使うことができない。
「これで……今度こそ……終わりだ!!」
ロロのガードの隙をつき、剣を突き刺そうとした。
しかし、メルメルはとどめを躊躇した。
「なんで……」
ロロは葛藤しているメルメルを吹き飛ばし、距離を取った。
筆を動かし、巨大なレーザランチャーを出現させた。
「くらえぇぇぇぇぇぇ!!」
筆を投げ捨て、レーザーランチャーのトリガーを引く。
「そんなもの……反射してやる……!!」
メルメルはスマホを操作し、反射シールドを生成しようとした。
しかし、メルメルのスマホ画面には圏外の文字が表示されていた。
「……!?」
同時刻、ミコトたちが電磁波フィールドを生成していた。
そんなことメルメルは知る由もない。
「私は……また負けるのか……」
メルメルは光に飲まれた。
「私は……私は……っ!!!」
レーザーが通り過ぎ、メルメルは跡形もなく消滅した。
ロロは魔力を使い果たし、その場に倒れた。
------
リンネのアジト屋上。
ユイはアジト周辺で待機しているシスターたちの電波を供給していた。
そんな中、ユイは森の奥に謎の光を視認した。
「ねぇ、ミコト。あの光、何?」
シスターたちに連絡を取っていたミコトがユイの近くまでやってきた。
そして、ユイの示す方向を見る。
非常に長い光の列。
その光は明らかに人工物だった。
「あれは……まさか……」
新たな戦いが幕を開けようとしていた。長い夜はまだまだ続く。




