第48話 それでも少女は立ち上がる
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。
エリアCという地獄から生還し、出会いと別れを繰り返しながら成長。
魔法少女形態【色の魔法少女】
白と黒と金色を基調とした高級感のあるドレス。様々な色の宝石が散りばめられている。
帽子は虚空に繋がっているため、端から見たら頭が欠損しているようにも見える。
羽のような大きな黒いリボンを背負っている。
使用武器は「マジックパレット」
空間に自分の思い通りの絵を描くことが出来る。相手の視覚を妨害できるが攻撃力は皆無。
『ユイ』
奈落に住む少女。レンの妹。
黄色い髪に金色の瞳。姉とよく似ているが、髪は長くない。
「突然いなくなった姉を探す」という願いのもと、魔法少女として覚醒。
魔法少女形態【電気の魔法少女】
長めの黒タンクトップ一枚だけで非常に動きやすい衣装、所々青色に発光している。
電気を操る魔法を使うが、不器用なため姉のように電気で武器を生成することはできない。
そのため、ひたすらに出力を上げ火力にモノを言わせた攻撃を得意とする。
『レイス・アタラクシア』
天才研究員リンネの元助手。黒のポニーテールに黒い瞳。21歳の女性。
リンネの研究を引き継ぎ、「魔法少女病」の特効薬を開発している。
それなりに成果が出ている模様。「デミ化」手術の開発者であるが、「デミ」の闇については知らされていなかった。
『アビス』
レイスの助手、兼魔法少女。レイスと同じく黒髪に黒い瞳。
シロとクロが消えてから数日後、突然レイスの目の前に現れた。
本名はルシア・マキナ。魔法少女軍のメンバー。
リンネの実験台にされたクロエの復讐のため、自ら志願して研究室に潜り込んだが、
レイスに悪意が感じられなかったため、彼女の研究に協力するようになった。
魔法少女形態【空間の魔法少女】
黒いスーツのようなデザインの衣装。所々空間に溶け込んでおり、欠けているように見える。
虚空に身を潜め、疑似的な瞬間移動ができる。
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『衛堂ミコト』
黒のショートボブヘアで赤い瞳の女性。
魔法少女だったが、暴走する親友を止め魔法少女を引退する。
その後は、より多くの人を救うため貧困地エリアBに教会を作る。
『カイザー』
カウボーイハットをかぶった時代遅れの男。
目元は陰になっておりよく見えない。
ミコトの教会に住み着く浮浪者。
ミコトの教会をガールズバーに改装した変態。
『エフィ』
シスターの長を務める少女。身元不明。
『ガブリエラ』
ミコトの教会に迷い込んだ幼い少女。
金髪で透き通るような青い瞳をしている。
『アルカ・ディアナ』
赤のメッシュが入った黒髪の少女。
探偵の服を着ており、どこからどう見ても探偵。
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『天道リンネ』
赤色のショートヘアで赤い瞳。
世界的に有名な研究者であり、魔法少女になってしまう病気「魔法少女病」の研究をしていた。
シロに惨殺されたはずだが、なぜが生きている。
『メルメル』
リンネに仕えている魔法少女。
ピンク色のおさげに、黄色の瞳を持ち、黒い革ジャンを着ている。
他の魔法少女を寄せ付けない圧倒的な実力を持っている。
「ごめんなさい……」
レイスは自責の念に駆られていた。
自分のわがままのせいで二人を危険な目に合わせてしまった。
ユイはすでに回復してるが、ロロに至っては今でも苦しんでいる。
「私は大丈夫……」
ユイは慰めのつもりでレイスにそう言った。
しかし、自分の技があっさりと防がれ、まるで相手にならなかったという現実もあり、すっかり戦意消失してしまっていた。
ミコトが廊下の方から歩いてきた。
「ミコト、ロロは……」
レイスはミコトに聞いた。
「まだ苦しんでる。メルメルって子が死なないって言ってたなら信じるしかない。だけど、精神的な苦しみで自殺しないとも限らない。念のためシスターの一人を見張らせておいたわ。」
「ありがとうございます。」
「魔法少女を引退した私が言うことじゃないかもしれないけど、もう少し慎重さが必要かもね。責めているわけじゃないわ。」
ミコトはレイスを励ますと自分の部屋に戻っていった。
ガブリエラが心配そうにレイスの様子を見る。
「どうしたの、お姉ちゃん。」
純粋な瞳でレイスを見つめるガブリエラ。
レイスは目をそらした。
その優しさが毒だと気づいたユイはガブリエラに言った。
「ガブちゃん、ゲームしよっか?」
「うん!やるやる!」
二人の去り際、レイスはつぶやいた。
「私は、どうしたら……」
「深く考えなくていい、あなたに協力するといったのは私たちだ。あなたは少しも悪くない。」
ユイはレイスにそう言うと、ガブリエラと共に部屋に戻った。
「……」
「人生いろいろあるもんだな。酒でも飲んで忘れな。」
カイザーは机にうなだれたレイスにワイングラスを差し出した。
レイスが顔を上げると、カイザーは真っ白な歯を見せて笑い、ウィンクをした。
レイスに少しだけ笑顔が戻った。
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「ミコト氏~!!」
教会の入り口の扉が勢いよく開かれた。
雰囲気とは真逆の明るい少女がずかずかと侵入してきた。
「あの、君は?」
レイスは少女に尋ねた。
年齢は15~6、ロロと同じぐらいの体格の少女は自分の帽子を持ち上げて言った。
「私はアルカ・ディアナ!探偵よ!」
「探偵……?」
こんな小さな少女が探偵?そして、なぜこんな辺境に来たのか。
などと、レイスは疑問に思った。
しばらくしてミコトがやってきた。
「アルカ、いらっしゃい。頼んでいた件?どうだった?」
「完璧、報酬は後でもらうね。」
そう言い、アルカはミコトに紙切れを渡した。
ミコトはそれを軽く眺めると、レイスに渡した。
「え、私?」
「こんな状況で、喜べとは言えないけど……」
紙切れには、地図が示されていた。
「アビスの隠れ家。密かに捜索していた。」
「ありがとうございます。でも……」
レイスはロロが心配だった。
自分のために命を懸けてくれたロロを放っておくことができなかった。
自分だけ幸せになるなんて卑怯だと感じた。
ミコトはそんなレイスの感情を読み取って言った。
「ロロの様子は私が見ておくから、そこへ行っておいで。アルカ、レイスの護衛を頼むね。」
「がってん!」
アルカは元気よく返事をした。
そして、レイスの手を引き駆け出した。
「ちょ、ちょっと……!」
そのまま二人は教会を飛び出して行った。
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レイスとアルカはエリアBの辺境の深い森の中に来ていた。
太陽の光も届かないような獣道。ひと気は全くしない。
レイスは周りの風景同様落ち込んでいた。
「これから親友と会うのにそんな落ち込んでたらダメだよ!笑顔!笑顔!」
アルカはレイスに向かってにまっとほほ笑んだ。
レイスは愛想笑いで返した。
しばらく歩くと洞窟が見えた。
どうやら地図が示す場所はその洞窟のようだ。
アルカは懐中電灯を点けた。
壁が見える。あまり深くはない。
「あれ?おかしいな……」
アルカは辺りを照らして見渡したが、人の姿は見当たらなかった。
レイスはアルカに忍び寄る影に気づいた。
「アルカ、上……!」
その影はアビスだった。
アビスは虚空を移動する能力を持つ魔法少女。
もし、レイスがアビスの能力の詳細を知らなかったら、この攻撃には気づけなかっただろう。
アルカはレイスの声に即座に反応すると、どこからともなく短剣を取り出した。
そして、アビスの不意の一撃を防いだ。
「ふぅ~、あぶね。」
「監視されているとは思っていたが、政府の者ではないな……」
アルカはアビスの攻撃を弾き、一歩下がった。
アビスはそこでもう一人の存在を確認する。
二人はようやく互いの目が合った。
「アビィ!」
アビスは驚き目を見開いた。
無意識のうちに自身の持っていた剣を地面に落とした。
「レイス……」
久しぶりの再開。レイスとアビスの瞳から涙が流れた。
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洞窟の隅に腰をおろし、アビスが口を開いた。
「研究所には戻らなかったんだね。」
「あの時すべて打ち明けた通りだ。研究所にとって私はスパイだ。とても戻るなんてできない。」
「なら私といっしょに来なよ。きっとミコトも歓迎してくれる。」
レイスはアビスを教会に招待した。
「そうか、研究所はやめたのか……」
「いつかは戻るつもり。リンネ博士との問題が解決したらね。」
アビスはレイスの顔を真剣に見つめた。
楽観視していた、レイスの顔がひきつった。
「レイス。悪いことは言わない。研究所には戻らない方がいい。」
「……どうして?」
「これは、私が軍に所属していた時の情報だが、政府は近々戦争を始める。最初は単に魔法少女による武力行使だと思っていた。だけど私は魔法少女よりも恐ろしい存在を見たんだ……」
アビスは震えていた。それがどれだけ恐ろしい存在か、レイスにも想像できた。
おそらくあの魔法少女、メルメル以上の……
「……」
「そしてレイス。あなたが研究所に戻ったら、それを完成させるのはあなたになる。また利用されてたくさんの人が傷つく。そんなことにはなってほしくない……」
「そこまで言うならわかったよ。アビィ。」
アビスはゆっくりと立ち上がった。
バランスを崩し転びそうになったところ、レイスが受け止めた。
「大丈夫?」
「あぁ、ちょっと潜伏に魔力を使いすぎたみたいだ。」
「つかまって……」
レイスはアビスに肩を掴ませ歩き出した。
二人の会話を終始退屈そうに聞いていたアルカが独り言をつぶやいた。
「魔法少女よりも恐ろしい存在かぁ、調べてみよっかな……!」
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三人は無事に帰宅した。
辺りはすっかり夜になっており、教会もといガールズバーは客で賑わっていた。
「よう、レイス。かわいい子連れてきたね。何歳?」
カイザーがアビスを見て馴れ馴れしく話しかけた。
「へ?」
アビスは目が点になった。
目を覆いたくなるような光、耳を塞ぎたくなるような音。
教会と聞かされ連れてこられた場所が正反対の何かだったからだ。
「この子は私の助手、手を出したら許さないよ。それにしてもすごい賑わいだね。」
「週末だからな。」
社畜が多いのか、休み前と給料日は客が急増するらしい。
やっていることは違えど、人々は教会に救いを求めていた。
レイスは苦笑いするしかなかった。
「うーん、やっぱりこの雰囲気は私には合わないなぁ。ねぇアルカはどう思う?」
レイスは隣にいたアルカに話しかけたが、姿を消していた。
「あれ?」
アルカはいつの間にか席についており、複数のシスターと戯れていた。
「あぁ、そういえばアイツは常連客だったな。」
カイザーが唖然とするレイスに説明した。
「カイザーサボんな、さっさと空き瓶持ってって!」
「う~い。」
カイザーは他のシスターに呼ばれて去っていった。
「あ、そうだロロのところに行かないと……」
レイスとアビスはロロの元へ向かった。
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複数枚の扉で隔てられているため、ロロの休養してる部屋はそこまでうるさくなかった。
ロロは未だに苦しみの表情を浮かべている。
見張りをしていたシスターがお辞儀をして部屋を出た。
「ロロ……」
アビスはロロの顔を見た。
アビスはロロに一度だけあったことがある。
見ず知らずの自分を助けるためにメルメルに立ち向かった魔法少女。
そして、本来自分がすべきレイスを守るという役目をこの少女が果たした。
自分の無力さかそれとも悔しさか、アビスは涙を流した。
レイスはそんなアビスの様子を見て部屋から出た。
「ごめん、ロロ……」
アビスの涙がロロの頬に落ちた。
その時、奇跡が起きたかのように、ロロが起き上がった。
「……!」
アビスは驚いて椅子から転がり落ちた。
「虚空の魔法少女、アビス。あなたに会いたかった。」
「わ、私に?」
「ああ、協力してほしい……」
ロロはそう言うと、虚ろな目でアビスを見つめた。
「あなたはメルメルに『呪い』を受けたと聞いた……。こうやって体を起こすのも難しいほどに……」
実際、ロロはひと言発するごとに苦悶の表情を浮かべてた。
ロロは心配させないために無理やり笑顔を作った。
「前よりはかなり良くなった……だけど今はとりあえず聞いてほしい……」
ロロはそういうと、アビスに協力の詳細を伝えた。
「本気なの?下手するとあなたは……」
「大丈夫、必ず成功する。信じて。」
たとえ作戦が無謀だとしても、自分の命の恩人の頼みを断ることができなかった。
アビスはその瞳を信じるしかなかった。
「わかった。」
ロロはその言葉を聞くと、安心したようにベッドに倒れた。
「盗み聞きするつもりはなかったんだけどね。」
レイスが扉を開けて部屋に入った。
「止めても無駄だよレイス。」
「そう言うと思った、でもこれだけは聞かせて。どうしてそこまで、そんなに苦しんでまで、何故私を助けてくれるの。」
「それは……」
ロロは簡潔に答えようとした。
自分の行動理念が人を助けること。
奈落でベルセルクに救われたときから、それは一切変わらない。
そう言おうとしたが、ロロは躊躇した。
命を賭してまで人を助ける?
ロロ自身も疑問に思ったことが何度かあった。
本当の理由は二度と他人に見放されたくないから。
心の奥底に眠るトラウマに縛られていた。
ロロは"いい人"であり続ける必要があった。
ロロはレイスの真剣な顔を見て思い出してしまった。
自分がその真実から目を背け続けたことに。
「私は魔法少女だから……」
しかし、そんな弱音をレイスに吐くことはできない。
ロロは適当にごまかした。
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リンネはパソコンの電源を入れた。
暗い部屋に不気味な機械の光が灯る。
リンネは画面を見ながら腕を組んだ。
「リーンリンっ!」
暗闇からメルメルが現れ、リンネの後ろから抱き着いた。
「暗い部屋で画面は目に悪いよ?」
「こっちの方が慣れているんだ。」
「ふーん、ところで、どーしたの?」
メルメルはリンネの返答に興味なさげに答え、パソコンの画面を見た。
「あぁ、レイスから連絡がきた。」
「……政府の極秘情報を手に入れた?協力?ナニコレ?」
「気が変わったか……いや、レイスのことだ。きっと交渉だろう。」
「へぇ、あの魔法少女助けるためにねぇ。優しんだね。」
「そうだろ?ちょっとばかし心が痛むな……」
リンネはそう言うと、パソコンの電源を落とし、出かける支度を始めた。
「行くの?」
「あぁ、念のためお前も来い。」
「はーい♪」
二人は暗い部屋を出た。




