第47話 襲撃
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。
エリアCという地獄から生還し、出会いと別れを繰り返しながら成長。
魔法少女形態【色の魔法少女】
白と黒と金色を基調とした高級感のあるドレス。様々な色の宝石が散りばめられている。
帽子は虚空に繋がっているため、端から見たら頭が欠損しているようにも見える。
羽のような大きな黒いリボンを背負っている。
使用武器は「マジックパレット」
空間に自分の思い通りの絵を描くことが出来る。相手の視覚を妨害できるが攻撃力は皆無。
『ユイ』
奈落に住む少女。レンの妹。
黄色い髪に金色の瞳。姉とよく似ているが、髪は長くない。
「突然いなくなった姉を探す」という願いのもと、魔法少女として覚醒。
魔法少女形態【電気の魔法少女】
長めの黒タンクトップ一枚だけで非常に動きやすい衣装、所々青色に発光している。
電気を操る魔法を使うが、不器用なため姉のように電気で武器を生成することはできない。
そのため、ひたすらに出力を上げ火力にモノを言わせた攻撃を得意とする。
『レイス・アタラクシア』
天才研究員リンネの元助手。黒のポニーテールに黒い瞳。21歳の女性。
リンネの研究を引き継ぎ、「魔法少女病」の特効薬を開発している。
それなりに成果が出ている模様。「デミ化」手術の開発者であるが、「デミ」の闇については知らされていなかった。
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『天道リンネ』
赤色のショートヘアで赤い瞳。
世界的に有名な研究者であり、魔法少女になってしまう病気「魔法少女病」の研究をしていた。
シロに惨殺されたはずだが、なぜが生きていた。
『メルメル』
リンネに仕えている魔法少女。
ピンク色のおさげに、黄色の瞳を持ち、黒い革ジャンを着ている。
他の魔法少女を寄せ付けない圧倒的な実力を持っている。
ロロはこれ以上ないほど快適な朝を迎えた。
本堂に戻ると、レイスがテーブル席に座って待っていた。
「おはよう、ロロ。って言ってももうすぐお昼ね。昨日はだいぶ疲れたみたいだね。」
「まあ、いろいろあったからね。」
ロロはレイスの対面に座った。
そして、あたりを見渡した。
シスターが数名掃除をしている。
「ユイは?」
「寝てるよ。昨日廊下であったガブリエラと夜遅くまでゲームしていたらしい。」
「そう、もうそんなに仲良くなったのね……」
そういえば、ユイはゲーム好きだったなあ。
とロロはぼんやりと思い出した。
「ところで、あなたは決心がついた?」
「え?どういうこと?」
「確認よ。昨日は勢いに任せて言っちゃった、ってこともあるだろうし。無理強いはしないわ。きっと厳しい道になる。それでもついてきてくれる?」
ロロの返事は決まっていた。
「当然よ。」
ここにいれば、しばらくは平和に暮らせるだろう。
昨日の夜まではそう考えていた。
だけど、そんなことはもう忘れた。
だれかのためになる、自分が生きた意味を残せる、
それがロロの本望だった。
「ありがとう、ロロ。」
レイスはそう言うと、ノートパソコンを取り出し、ロロに見せた。
画面には地図が映し出されていた。
「これは、エリアAの地図。」
ロロは真剣に見つめたが、さっぱり分からなかった。
「……まぁ、詳しい情報は分からなくてもいい。昨日から、立て続けに『魔法水』の工場が襲撃されている。」
「魔法水……?」
聞きなれない単語に、ロロは聞き返した。
「通常、魔法少女はマジンって呼ばれる化け物と戦い、それを糧にしているんだけど、最近、マジンの数が減少して、飢えに苦しんでいたんだ。それを解決するために生み出されたのが魔法水。飲めば一か月は補給なしで動ける。」
「そんな便利なものが……」
「私が開発しました。」
レイスはどや顔でそう言った。
ロロはどう返答していいか困惑し、苦笑いした。
「まぁ、それは置いといて、その工場が襲われている原因はリンネ博士なんじゃないかと考えているの。」
「なるほど……」
魔法少女とはいえ、魔法水なくては生きていられない。
その供給源さえ絶てば、政府の主力である魔法少女部隊を無力化できると考えたわけだ。
ロロは疑問を持った。
「ん?でも、そんなことしたら自分たちも困らない?」
リンネの横にいたメルメルという名の魔法少女。
彼女も魔法少女ならば、工場を破壊することは自殺行為だ。
「破滅思想。あなたが死んで自分も死ぬ。ああいった考え方をする人なのよ、リンネ博士は。」
「なるほど。私には到底理解できない思想。だけど、環境が違えば思想も違ってくるか……」
ロロはかつての親友、エリスやベルセルクを思い出した。
「よくわかってるじゃない。リンネ博士は悪い人ではなかった。きっと、この世界が彼女を変えてしまった、そう信じている。」
「ですね。」
「話を戻すわ。それで、次に襲撃される場所は地図を見れば明らかよ。」
レイスの言う通り、破壊活動は場所が近い順に行われている。
「この工場か……」
エリアAの南東の工場。
ロロはそこを指さした。
「そう、その工場なら、ここからも近いし、そこでリンネ博士を待ち伏せようと思う。」
「早速行きましょう。善は急げです。」
ロロたちはユイを無理やり起こして、工場へ向かった。
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時は深夜。
大きな工場のそばには川があるのか、闇の中に水の流れる音が聞こえた。
工場は怪しく光り、辺りを照らしていた。
「……見張りがいるね。」
入口の門の真下に兵士が二人。銃を持っている。
「あれ……、魔法少女部隊じゃない?」
ユイがそう言った。
ロロも彼らの制服をよく見ると、確かにあのときの敵部隊が着ていた服に似ている。
「なるほど……。襲撃パターンがあまりにも単純だった理由はこれか。リンネ博士は敢えて次にどこを襲撃するか気づかせたんだ。そうすれば、敵の兵は動かざるを得ない。」
レイスはそうつぶやいた。
ロロが聞く。
「そんなことをして、何のメリットが……」
「わざわざ、敵を呼び込む。その方が政府を潰す目的においては効率的だ。」
「相当、自分たちの強さに自信があるみたいだね。」
ユイは手元でバチバチと火花を散らした。
「……で、どうやって侵入する?」
「うーん、勢いで来ちゃったからなぁ……」
「はぁ…」
さっきまでの荘厳な雰囲気が台無しだ。
ロロはため息をついた。
「二人とも、私が魔法少女だってこと忘れてない?」
ロロは魔法少女に変身して、銃を放った。
銃弾は門番二人の前で静かに弾けた。
「空間に色を塗る能力。攻撃力はないけど、応用すれば視覚妨害ができる。」
ロロは二人の門番の周囲を囲うように色を塗った。
おそらく門番らは変わり映えない風景を見ているのだろう。
侵入者を見逃しているという事実に気づかずに。
三人はできるだけ音を立てずに門を潜り抜けた。
「すごいね、ロロ。」
「いや、すごいというレベルを超えている。 相当強力な能力だ、今度研究させてくれないか?」
「はは……、遠慮しておきます。」
ロロは自分の銃を見つめた。
戦わずして勝つことができるなら自分の能力は悪くない。ロロはそう思った。
「製造所のコアの場所はすでに調べてあるわ、急ぎましょう。」
レイスはそう言い、走り出した。
二人はレイスの後についていった。
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ロロの能力もあり、三人は難なく魔法水製造のコアにたどり着いた。
「これが、コア……?」
巨大な溶鉱炉のような装置は藍色の光を放ち、鈍重な音を立てていた。
興味津々に眺める二人に、レイスは装置の説明をした。
「詳しく説明すると、数日かかるから省くけど。あの装置の中には、魔力を無限に生み出す石があるの。それをつかって、魔力を凝縮した水を作る。そういった工程ね。」
「その通り、実に素晴らしい発明だね。レイス博士。」
突如、男の声が室内に響いた。
「誰だ!」
ロロが声のする方を振り返ると、ホログラムの男が立っていた。
「失礼、自己紹介がまだだったね。この工場の所長を務めている、ヴァルーンだ。」
ヴァルーンは細長く伸びたひげを指でさすりながら自己紹介した。
「どうして気付かれたの…、私の能力は完璧だったのに……」
「君は監視カメラというものを知っているかい。」
ヴァルーンはあきれたように言った。
「あ……」
「バカ……!」
ユイはロロを叱責した。
自分の能力に酔っていたロロは反省した。
「さて、レイス博士。深夜に工場に侵入して、いったい何が目的かね。」
「所長さん、後ろ、気を付けた方がいいよ。」
「なんだと……?」
突如、男の悲鳴が聞こえ、ヴァルーンのホログラムは消滅した。
「へぇ、今日はお客さんたくさんだねぇ……」
ロロは以前聞いた魔法少女の声を耳にした。
「メルメル……!」
「ん、知り合い?まあいいや、すぐそこに行くから待っててね。」
声は途中で途切れた。
「レイスさんは下がってて……」
レイスはロロに言われた通り、装置から離れた。
ユイが魔法少女に変身し、二人は戦闘態勢になる。
「さて、お手並み拝見だな。」
数秒後、天井で爆発が起きた。
「上か……!」
ユイは空に向かって雷撃を放った。
しかし、そこに敵の姿はなく、ユイに瓦礫が降り注いだ。
「ユイ……!!」
ロロは叫んだ。が、この程度でユイは死なないだろうと考え、
すぐに周りを警戒した。
瓦礫からユイが飛び出す。
「チッ……、奴はどこだ……!」
「ここだよ。」
二人は上を見上げる。
メルメルが装置の上に座って、二人を見下ろしていた。
「今のでだいたい実力はわかったよ。」
メルメルは数メートルもする装置から飛び降りた。
「あとは、リンリンの許可があれば、いつでもあなたたちを殺せる。」
メルメルは挑発するように言った。
「そうかい。」
ユイはメルメルに向かって、雷の弾を何発も放った。
しかし、弾は一発も当たらなかった。
「無駄だよ、私には当たらない。」
「くそっ……」
ユイは攻撃を続けた。しかし、何度雷撃を放ってもメルメルには届かない。
メルメルは欠伸をした。
「ねぇ、リンリン。そろそろ殺っていいかな?」
メルメルはレイスの方を向いて言った。
レイスは後ろに気配を感じ、振り返った。
そこに、リンネは立っていた。
「また会ったな、レイス。」
「リンネ博士……」
レイスはリンネに銃を向けた。
リンネはレイスの銃を手でつかみ、自分の額に向けさせた。
「お前は撃てない。やさしいやつだからな。」
リンネの言ったことは図星だった。
尊敬していた博士を銃で撃つことなんてレイスにはできない。
それでも、レイスは怖気ずに言った。
「いいえ、私は本気です。あなたの目的を言わない限り、撃つつもりです。」
リンネは銃から手を放して言った。
「前に言ったとおりだ。私はこの世界を滅ぼす。」
「私を納得させるには二つの理由が必要です。一つは、そう考えるそのものの理由。そして、もう一つはあなたが生きている理由です。」
リンネは何も言わず、不気味な笑顔を見せた。
「ねぇーリンリンー?まだー?」
二人の話の途中にメルメルが割り込んだ。
「そうだな、半殺しにしてやれ。」
「ういー♪」
メルメルはリンネから許可を貰うと、スマホを取り出し、操作し始めた。
「……?」
敵の目の前でスマホに夢中になる少女。
ユイは不思議に思ったが、隙だらけの彼女に攻撃を仕掛けた。
先ほどとは違い、二人の間は超至近距離。
確実に当たる……
はずだった。
「無駄だって……言ってんじゃん!」
突如、メルメルの周りに透明な膜が形成された。
その膜によってユイの電撃はいとも簡単に弾かれた。
「何……!」
距離を詰めたメルメルはユイの手を優しくつかんだ。
そして、メルメルは笑顔でほほ笑んだ。
「クソ、ムカつく顔しやがって、くたばれ……この野郎……」
ユイはありったけの電撃をメルメルに浴びせた。
さすがにこれだけの攻撃を受ければ、と思ったユイだったが、メルメルは無傷だった。
「……!?」
次の瞬間、ユイの手がドロドロに溶けだした。
手だけではない、足もだ。
直立できなくなったユイはその場に倒れた。
「まるで、アイスクリームね。黄色だから……そう、バナナ味。」
「ユイ……!!」
ユイは底知れぬ痛みを感じた。
自分の体が得体のしれない何かに蝕まれていく。
そういった感覚だ。
「安心して、完全に溶けても意識はしっかり保てるから……!」
「あぁ……あぁぁ……!」
「い、今すぐ、あの子を止めなさい!」
ユイの悲痛の叫びを聞いたレイスは再びリンネに銃を向けた。
「心配いらないさ、彼女は死なない。私はメルメルに「殺せ」とは言っていないからな。銃は撃たない方がいいぞ。私が死んだら、メルメルを止める手段はなくなる。」
「ぐっ……」
レイスは仕方なく銃をおろし、三人の戦いを眺めた。
「さて、次はあなただね。」
メルメルはロロを指さした。
そして、スマホを操作し始める。
「……」
ロロは何も言わず、銃を構えた。
そして、二発の銃弾を放った。
以前戦った時と同じ戦法。
照明を真っ黒に塗りつぶし、辺りは真っ暗になる。
「その技はもう見たよ!」
メルメルはロロに向かってまっすぐ走り出した。
「な……!?」
メルメルは暗闇の中でロロの腕を掴んだ。
「あなたも、あの子と同じようにしてあげる!二つ合わせて、バナナとヨーグルトのダブルね!」
ロロの腕が溶け出した。
メルメルはにやりと笑った。
しかし、ロロの悲鳴は聞こえない。
メルメルは違和感に気づく。
ロロの魔法の効果が切れ、その正体が露わになった。
「あれ……?」
メルメルはロロの腕の太さと同じぐらいの鉄パイプを握っていた。
ロロは隣で様子を見ていた。
ロロは溶けかけの鉄パイプに向かって蹴りを入れた。
溶けた鉄がメルメルに張り付く。
一つ目は視界を奪う弾丸、もう一つはロロのデコイを描くための弾丸。
二つの弾丸でメルメルを欺くことに成功した。
「それで?私に勝ったつもり?」
だが、それだけだ。
決定打にはならない。
ロロの時間稼ぎの策は無駄に終わった。
「ムカつくなぁ……、ムカつくなぁ……!!」
ロロは自分の顔に張り付いた鉄を剥がした。
無理やり剥がしたことで、皮膚の表面が破け、血があふれ出した。
ロロはもう一発弾丸を放ったが、メルメルは放たれた弾丸を手でつかみ握りつぶした。
「なんで……っ」
メルメルはロロの銃を持っている方の手を抑えた。
そしてそのまま、ロロを押し倒し、馬乗りになった。
「あなたは溶かさない。あなたにふさわしい処刑方法があるの……」
そう言い、ロロはもう片方の手でスマホを操作し始めた。
ロロは抵抗したが、見かけ上は自由な左手でさえも金縛りにでもあったかのように動かせなかった。
「できるだけ、長く苦しんでほしいから、ね。」
メルメルはどこからともなく瓶を取り出し、それをロロの口につけた。
「んん……」
ロロはその中に入っていた液体を無理やり飲まされた。
途端にロロは内部から燃え上がるような痛みに襲われた。
「あ゛ぁ゛……!!」
肺、胃、あらゆる臓器が燃える。呼吸や声を上げることすら困難。
ロロはもがき苦しんだ。
じたばたと暴れ、必死に何かを掴もうと手を動かす。
「あっはははは!!!ははははっ!!!」
メルメルはロロの苦しむ様子を眺め笑い声をあげた。
「ロロ!!」
レイスはロロに駆け寄った。
ロロはこの世の終わりでも見ているかのような瞳でレイスを睨んだ。
レイスはその表情に怯え途中で足を止めた。
メルメルがスキップをしながらレイスの横を通り過ぎる。
「終わったよ、リンリン。」
「そうか、ならその装置を破壊しろ。」
「らじゃ!」
メルメルは装置を破壊し始めた。
レイスは体がドロドロに溶けて崩れたユイと、
苦しみもがいているロロを目にし、絶望し膝から崩れ落ちた。
「これで分かっただろ。私は止められない。」
リンネはレイスの耳元でそう囁き、立ち去った。
装置は破壊された。
ロロたちは何も得ることはできず、残ったのは装置の残骸と、敗北という結果だけだった。




