第46話 集結する魔法少女たち
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。
エリアCという地獄から生還し、出会いと別れを繰り返しながら成長。
魔法少女形態【色の魔法少女】
白と黒と金色を基調とした高級感のあるドレス。様々な色の宝石が散りばめられている。
帽子は虚空に繋がっているため、端から見たら頭が欠損しているようにも見える。
羽のような大きな黒いリボンを背負っている。
使用武器は「マジックパレット」
空間に自分の思い通りの絵を描くことが出来る。相手の視覚を妨害できるが攻撃力は皆無。
『ユイ』
奈落に住む少女。レンの妹。
黄色い髪に金色の瞳。姉とよく似ているが、髪は長くない。
「突然いなくなった姉を探す」という願いのもと、魔法少女として覚醒。
魔法少女形態【電気の魔法少女】
長めの黒タンクトップ一枚だけで非常に動きやすい衣装、所々青色に発光している。
電気を操る魔法を使うが、不器用なため姉のように電気で武器を生成することはできない。
そのため、ひたすらに出力を上げ火力にモノを言わせた攻撃を得意とする。
『レイス・アタラクシア』
天才研究員リンネの元助手。黒のポニーテールに黒い瞳。21歳の女性。
リンネの研究を引き継ぎ、「魔法少女病」の特効薬を開発している。
それなりに成果が出ている模様。「デミ化」手術の開発者であるが、「デミ」の闇については知らされていなかった。
『衛堂ミコト』
黒のショートボブヘアで赤い瞳の女性。
魔法少女だったが、暴走する親友を止め魔法少女を引退する。
その後は、より多くの人を救うため貧困地エリアBに教会を作る。
『カイザー』
カウボーイハットをかぶった時代遅れの男。
目元は陰になっておりよく見えない。
ミコトの教会に住み着く浮浪者。
ミコトの教会をガールズバーに改装した変態。
『ガブリエラ』
ミコトの教会に迷い込んだ幼い少女。
金髪で透き通るような青い瞳をしている。
---------------
deceased
『奏美音』
【音の魔法少女】
願いを叶えた後にミコトとの決戦で敗れ死亡。
『レン』
【雷の魔法少女】
ユイの姉。魔法少女狩りをする美音に襲われ死亡。
「とある人に会いに行く。」
ユイはそう言い、一人で駅に向かおうとした。
ユイはここ数日の間、自分の姉の行方を知り得る人物を探していた。
その人物は現在エリアBにいるとのことだ。
「エリアBは今かなり危険な場所よ。魔法少女だろうと一人で行くのはリスクが高い。」
レイスが心配して声をかけた。
そして、結局三人で行くことになった。
エリアAから片道約二時間。
ロロたちはようやくエリアBについた。
そこは噂通りの場所だった。
辺り一面にはゴミが散らばっており、ロロは嫌な臭いに鼻をつまんだ。
駅の周辺にはホームレスと思われる人物が何人も寝泊まりしており、歩く人々に物乞いをしていた。
「ひどい……」
レイスは初めて見るエリアBの惨状に驚愕したが、ユイとロロにとっては見慣れた光景であった。
むしろ、少なからずまともに生活している人がいる分、奈落よりマシだ。
「この道をずっと先に行ったところだよ。」
ユイは地図を頼りに、目的の場所へ案内した。
----------
そこは古びた教会だった。
「こんなところに、人が住んでいるのか?」
まるで物語に出てきそうな雰囲気。
ボロボロの建物とはうらはらに、庭や花壇は丁寧に手入れをされているようだった。
「今時、教会なんて珍しい。」
レイスの言うとおり、宗教という文化はだいぶ昔に廃れていた。
今でも神を信仰する者はいるが、教会のような場所に集まることは滅多にない。
ユイは扉の前に立った。
そして一呼吸置き、扉を開けた。
「いらっしゃいませー!」
修道服を着た大勢のシスターが3人を出迎えた。
「いらっしゃいませ?」
ロロたちは違和感を覚えた。
教会とは本来厳粛な場だ。
いらっしゃいませという挨拶はまるで飲食店で行う挨拶。
言うまでもなく、このような場所にはふさわしくない。
「ようこそ、ガールズバーへ。すまないね。開店まであと一時間待ってくれ。」
カウボーイハットを被った時代遅れの男がカウンターの奥からそう伝えた。
「が、ガールズバー?」
ロロたちはより混乱した。
よく見ると、カウンターの奥にはお酒やワインが並べてあり、テーブル席もいくつかある。
奥に見える大きなステンドグラスの方が場違いと言わんばかりに、そこはまるでバーだった。
「なるほどね。ここはそういう性癖の人が集う変態の店ね。」
ロロは勝手に納得した。
ユイは男に聞いた。
「ミコトって人に会いに来たんですけど。」
「生憎、その人は指名できないよ。」
「いや、指名とかじゃなくてですね……」
男はユイをからかって遊んだ。
そして、後ろからやってきた少女に殴り飛ばされた。
「ミコトは私だが?」
ミコトと名乗る少女はロロと同じぐらいの年齢に見えた。
周りの少女と同じように修道服を着ている。
「ミコトさん。覚えてますか、私のこと。」
ユイはミコトに言った。
ミコトはユイの目の前まで近づいた。
そして、ユイの顔をしばらく観察した。
「もしかして、ユイか?」
ミコトは答えた。
自分の答えに確信した瞬間、ミコトの顔に喜びの表情が現れた。
「すごい、大きくなったねー。一瞬見ただけじゃ気付かなかったよ。」
ユイもミコトに会えてうれしかったのか笑顔を見せた。
ミコトは隣で倒れている男を踏みつけて言った。
「おい、カイザー。彼女たちにお茶を出してやれ。」
「へ、へい。」
「適当な席に座って待ってて、後で行くわ。」
ミコトはそう言うと、一旦自分の部屋に戻った。
ロロたちはミコトに言われた通り、近くの席に腰を下ろした。
「あの人が、ユイの会いたかった人?」
ロロはユイに聞いた。
「うん。あの人は私のお姉ちゃんの友達。たぶん魔法少女。」
ユイは答えた。
魔法少女は年を取らない。
ミコトの姿は中学生か高校生ぐらいに見えたが、雰囲気は大人びていた。
きっと魔法少女としていくつもの修羅場をくぐってきたのだろう。
ベルセルクと同じように。
と、ロロはユイの答えに納得した。
暫くすると、ミコトが奥の部屋から出てきた。
普段着に着替えており、その姿はまさにどこにでもいる少女だった。
ミコトはロロたちの対面に座った。
「ごめんね。私に来客なんて久しぶりだから。ところで、そちらの二人はどういった関係で?」
ミコトはロロとレイスを見て言った。
「私は、ロロ。ユイの友達です。そして、魔法少女でもあります。」
ロロは変身して見せた。
「魔法少女、懐かしいね。」
ミコトは笑顔で言った。
「懐かしい?ミコトさんは魔法少女じゃなかったんですか?」
ユイは疑問に思い聞いた。
「私はもう卒業したよ。」
「卒業……」
ロロたちは聞いたことのない話だった。
「魔法少女は戦いの果てに願いを叶えることができる。私はそこで魔法少女を止めることを望んだ。」
「願い、ですか……」
魔法少女は希望を持つことで誕生する。
普通はその希望が願いになるのだが、魔法少女たちは自覚していないことが多い。
「確かに、リンネ博士のレポートでもそう書いてあったな。」
「あなたは?」
ミコトはレイスに名前を尋ねた。
「私はレイス・アタラクシア。エリアAで魔法少女について研究しています。今は、休暇中ですけど。ユイたちと目的は合致しています。」
「へぇ、ユイをよろしくね、レイス。」
自己紹介が終わったところで、ユイは立ち上がった。
身を乗り出し、ミコトに聞いた。
「ミコトさん、私が今日ここに来た理由分かりますよね。」
ミコトの表情が変わった。
「二年前のあの日、私はあなたをとある家族に渡した。あの時のあなたとはまるで違う。きっと……」
「覚悟はしています。」
ミコトは言うのを躊躇していたが、ユイの顔を見て、真実を言う覚悟を決めた。
「あなたの姉、レンは魔法少女だった。妹思いのやさしい姉だった。だけど死んだ。私のかつての親友に殺された。」
「それが、聞けて良かったです。」
「強くなったね。ユイ。私は怖かったのかもしれない、あなたに真実を伝えるのが。でも、もう、大丈夫そうね。」
ミコトはそう言った。
ロロはユイの顔を覗き見た。
ユイは嬉しそうな表情をしていたが、どこかぎこちない笑顔だった。
半ばあきらめかけていたとはいえ、姉が死んだことを受け入れるのは相当な苦痛だろう。
でもユイは強かった。
涙を一滴も流さなかった。
「それから数日後だ。私は親友の美音を追って、このエリア1まで来た。」
「美音……?」
その言葉に反応したのはレイスだ。
「ん、もしかして美音のファン?」
ミコトは聞いた。
「ファンなんてものじゃないですよ!直接会ったこともあるんですから!失踪前のライブにも行ったし…ってあなたの親友…?」
レイスは自分語りしている途中で、事の真相に気付いた。
ミコトの親友、つまりユイの姉を殺した犯人だ。
ミコトは苦笑いしていた。
「えっとつまりその……、二年前……あ、ああぁ……」
世間一般では美音は失踪したことになっている。
丁度二年前だ。
ミコトの話と辻褄が合う。
「ああ、美音は私が殺した。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
レイスは子供のように泣き出した。
「レイスさん、ユイですら我慢しているのに、みっともない。」
ロロはあきれた。
ミコトはレイスの所まで近づき、手を取った。
「美音は悪くない。美音を支えてあげられなかった私の責任だ。レイス、美音のファンでいてくれてありがとね。」
「ミコト……、ありがとう。」
レイスは涙を拭きとり、泣き止んだ。
「さて、今度はあなたたちのことを聞かせて。人にはいろいろな物語がある。私はここにやってくる人がどのような物語を旅してきたか興味があるの。」
ミコトは再び座り、そう言った。
ロロたちは一人ずつこれまでの旅路について語った。
------------
「ふー、もうお腹いっぱいだよ。」
「私たちの人生で空腹を満たさないでください。」
ミコトはふざけたことを言っているが、話している途中は真剣に聞いていた。
三人の緊張はほぐれ、ミコトとはすっかり仲良くなった。
「あ、そうだ。あなたたち、行く当てがないなら部屋を貸すよ。沢山余ってるし。」
「良いんですか?」
ロロたちは喜んで受け入れた。
「えぇ、ミコト!?この前いっぱいになったって言ってたじゃないか。俺の部屋は無いの?」
カウンターの奥で仕事をしていたカイザーがミコトに文句を言った。
「一か月10万で貸してあげるわ。」
「差別だぞ!」
「区別です。」
ミコトはギャーギャーと文句を言うカイザーを軽くあしらって、
三人を奥の部屋に案内した。
まるで高級旅館のような、とても長い廊下だった。
「ミコトちゃん。その人たちだれ?」
廊下の奥から、小学生ぐらいの少女が飛び出してきた。
「新しい家族よ。仲良くしてね。」
ミコトは少女にそう説明した。
「うん。わかった。」
少女は本堂の方へ走っていった。
「あの子はガブリエラ。二年ぐらい前に一人でいるところを保護したの。親は……いない。仲良くしてね。」
と言ったミコトだったが、心配はしていなかった。
先ほど話をしたことで、ロロたち三人は悪い人ではないと確信していたからだ。
「さて、ここがロロの部屋。」
ミコトは扉を開けた。
「おぉ……」
ロロは部屋の内装を見ると感嘆の声を漏らした。
大きな机に椅子、見た目からしてふかふかなベッド、クローゼットや鏡。
トイレや浴槽もある。そして、大きな窓からは綺麗な夜空が映っていた。
ロロは涙を流していた。
独房、路上……今まで生活と比べると、なんと素晴らしい設備だろうか。
「ありがとうございます。」
ロロはミコトに感謝した。
「そこまで、感謝されると気分がいいわね。」
ミコトは笑って返事をした。
部屋は一人づつ与えられた。
食事は一日に三回。
やることは皿洗いや掃除など簡単な手伝いだけ。
そのほか面倒なことは一切ない。
エリアBにしてはあまりにも怪しい条件だが、ミコトの振る舞いから、邪念は一切感じられなかった。
ロロは一人になるとベッドに飛び込んだ。
ロロは迷っていた。
レイスと協力し、リンネという人物を調べれば、政府の陰謀に気づくことができるかもしれない。
リオンの魔法結社に加わり、反旗を翻せば、政府を陥落させることができるかもしれない。
平和的が暴力的か。
どちらにせよ、得体の知れない魔法少女との争いは避けられないだろう。
「いっそのこと、この教会で一生平和に……」
ロロは考え事をしている内に、暖かい羽毛に包まれ、眠りに落ちた。




