第45話 再会
これまで(3章)のあらすじ
ロロは事故によって左腕を失った。
人を魔法少女に変える手術(デミ化)によって一命は取り留めたものの、
家族に捨てられ、地下世界で殺し合いをさせられる。
絶望していたロロは革命家ベルセルクと出会った。
ひとつの希望を見出したロロは真の魔法少女として覚醒。
希望は感染し、数多の魔法少女が誕生した。
ロロたちは地下世界から抜け出すために戦争を始める。
順調に進軍していたロロたちだったが、
政府の最高戦力である「魔法少女軍」が立ちはだかる。
ロロの親友のエリスは死んだ。
ロロを導いてくれた恩人ベルセルクも行方不明に。
数々の犠牲を出しながらも、ロロは地下世界からの脱出に成功した。
そして現在、ロロはデミ化の開発者であるレイスを訪ねる。
そこに現れたのは、二年前に死んだはずの科学者リンネだった。
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☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。
エリアCという地獄から生還し、出会いと別れを繰り返しながら成長。
魔法少女形態【色の魔法少女】
白と黒と金色を基調とした高級感のあるドレス。様々な色の宝石が散りばめられている。
帽子は虚空に繋がっているため、端から見たら頭が欠損しているようにも見える。
羽のような大きな黒いリボンを背負っている。
使用武器は「マジックパレット」
空間に自分の思い通りの絵を描くことが出来る。相手の視覚を妨害できるが攻撃力は皆無。
『ユイ』
奈落に住む少女。レンの妹。
黄色い髪に金色の瞳。姉とよく似ているが、髪は長くない。
「突然いなくなった姉を探す」という願いのもと、魔法少女として覚醒。
魔法少女形態【電気の魔法少女】
長めの黒タンクトップ一枚だけで非常に動きやすい衣装、所々青色に発光している。
電気を操る魔法を使うが、不器用なため姉のように電気で武器を生成することはできない。
そのため、ひたすらに出力を上げ火力にモノを言わせた攻撃を得意とする。
『レイス・アタラクシア』
天才研究員リンネの元助手。黒のポニーテールに黒い瞳。21歳の女性。
リンネをことを信頼しているが、非人道的な研究態度に対しては懐疑的。
リンネの研究を引き継ぎ、「魔法少女病」の特効薬を開発している。
それなりに成果が出ている模様。
「デミ化」手術の開発者であるが、「デミ」の闇については知らされていない。
『アビス』
レイスの助手、兼魔法少女。レイスと同じく黒髪に黒い瞳。
シロとクロが消えてから数日後、突然レイスの目の前に現れた。
レイスの研究のため、自らを実験台として協力している。
『天道リンネ』
赤色のショートヘアで赤い瞳。
世界的に有名な研究者であり、魔法少女になってしまう病気「魔法少女病」の研究をしていた。
シロに惨殺されたはずだが、なぜが生きてレイスの前に現れた。
『メルメル』
リンネに仕えている魔法少女。
ピンク色のおさげに、黄色の瞳を持ち、黒い革ジャンを着ている。
『リオン』
ロロと別行動をし、魔法少女軍と戦うことを選んだ魔法少女(男)。
その際はリーダーを務めた。
「どうしてあなたが生きているの……リンネ博士。」
レイスは驚いた顔でリンネを見つめた。
「ひさしぶりだな、レイス。元気にしていたか?」
「あなたは魔法少女シロに殺された。はず……」
レイスは混乱していた。
喜んでいいのか、悲しんでいいのか分からなかった。
「ところで、レイスは実際に私の死体を見たのか?」
リンネはレイスにそう質問した。
リンネはシロとの決戦の時、レイスを安全な場所に避難させていた。
当然、レイスはリンネの殺された瞬間は見ていない。
「見ていない、見るに堪える姿だって聞いたから……でも、シロがあなたを逃したとは思えない。」
「そうだな、まぁ今更どうでもいいことだ。今、重要なのはそいつの話が真実かそうではないか、だろ?」
リンネはロロを指さした。
「そいつが言った、デミの話は真実だ。エリアCと呼ばれる地下都市では、デミの売買がされていた。奴隷たちを解放するための戦争が発生し、多くの命が失われたのも事実だ。」
「そんな……」
レイスはリンネにそう言われ、いよいよ信じるしかなくなった。
「さて、ここで新たな疑問が出てくる。アビス、何故君はこのことを知っていた?」
全員の視線がアビスに集まる。
アビスは動揺した。
「答えは簡単。君は政府から派遣された魔法少女だからだ。デミの開発を早め、そしてその全責任をレイスに押し付けるためのね。」
「違う!」
アビスは否定したが、それ以上の言葉は出なかった。
「隠しても無駄だ、君のことは既に調べてある。」
「……」
「ねぇ、アビィ。全部、話してよ。」
レイスはうなだれたアビスにやさしく話しかけた。
アビスはレイスの顔を見て、そして決心して話を始めた。
「私は正規軍情報戦略部隊所属、アビスだ。いや、アビスというのはコードネームで私の本当の名前はルシア・マキナ。」
「……マキナ?」
レイスはその名前に聞き覚えがあった。
確認のためにアビスに聞き返したが、忘れるはずもない。
二年前に死んだ機械仕掛けの少女の名前を。
「クロエ・マキナの姉よ。」
「私ははじめ、そこの女が言った通り、政府のスパイとして送り込まれた。同時にクロエを利用し、殺した奴の正体を暴くために。」
「アビィ……」
「でも、わかったんだ。レイスはそんな酷いことをする人ではないって。真実を黙っていたのは、レイスに悲しんでほしくないから。これが私の嘘偽りのない、答え。」
アビスはレイスから顔を逸らした。
レイスから軽蔑の眼差しで見られることが怖かったのだ。
しかし、レイスはアビスをやさしく抱きしめた。
「正直に言ってくれてありがとう。」
アビスは我慢していた涙をこぼした。そして、アビスは子供のように泣きじゃくった。
レイスはアビスから離れリンネに近づいた。
そして、リンネを睨んだ。
「どうした?そんな顔を私に見せたのは初めてだな。レイス。」
「博士が生きていたのは嬉しいよ。でも、何かおかしい。私の知ってる博士じゃない。あなたの目的はなんなの。」
かつてのリンネはシロを虐めて、その復讐に追われていた。
リンネは反省しているはずだ。レイスはそう思っていた。
いや、そうでなければならない。
リンネは懺悔のため、死のうとしていた。
その出来事がまるで意味がなかったと語っているようなものだ。
「まぁ、今は全部話すときじゃない。だが、簡単に言えばな、私はこの世界を滅ぼすことにしたんだ。」
「世界を……?」
「そう、この世界を支配している政府機関をぶっ壊す。」
レイスはリンネを悲しい瞳で見つめた。
一体2年の間に何があったのか。何が彼女を変えてしまったのか。
全ては謎に包まれ、どうすることもできなかった。
リンネは話を続けた。
「手始めにだな。政府の軍力を削ることにした。」
リンネは指を鳴らし、アビスを指し示した。
リンネの後ろの人物が、ゆらりと動き出す。
その指示はつまり、殺せということ。
レイスは嫌な予感がして、アビスに叫んだ。
「アビィ!逃げて!」
アビスは逃げずに応戦した。
「行ってこい、メルメル。」
アビスは虚空から剣を取り出し、メルメルと呼ばれる襲撃者に向かって振り下ろす。
その剣はメルメルの直前で動きを止めた。
そして、メルメルは笑顔でアビスに挨拶をした。
「やあ。」
フードの中から桃色の三つ編み髪の少女が現れた。
黄と黒の警告色をした瞳がアビスを見つめる。
「女……!魔法少女かっ!」
アビスは一旦距離を置いた。
メルメルは不敵に微笑んだ。
メルメルはスマートフォンを取り出し、それを操作し始めた。
まるで戦いに興味がないように。
アビスが再びゆっくり近づくも、メルメルはスマホに夢中だった。
「何してるんだ……」
アビスはメルメルに剣を振り下ろした。
しかし、やはり剣は当たる直前で止まった。
「雑魚に興味はないの。」
メルメルはそう呟いた。
すると、空中に無数の剣が出現した。
「は?」
それは全てアビスに向かって降り注いだ。
「がぁっ……!」
アビスは避ける間もなく、くし刺しになった。
刺さった剣は蒸発するように消え、アビスは地に伏せた。
「アビィ!」
レイスがアビスに駆け寄る。
アビスは既に満身創痍で死にかけていた。
辛うじて、身体を回復している状態だ。
「邪魔だよ。」
メルメルはレイスに言った。
レイスは我が子を守るようにアビスを抱きしめた。
「ねぇ、リンリン。どうすればいい?」
メルメルはリンネに聞いた。
「そいつは私の大切な人だ。アビスだけ殺すことはできるだろ?」
リンネはめんどくさそうに答えた。
「うん、分かった。」
メルメルはアビスの落とした剣を拾った。
そして、レイスの背中を見つめた。
「隙間だらけ、針に糸を通すより簡単。」
レイスは覚悟を決め、目を閉じた。
「止まりなさい。」
そこへロロが割り込んだ。
そして、メルメルに向かって銃を向けた。
レイスが目を開けると、そこには可憐な衣装をまとう少女が立っていた。
「あなた、デミのはずじゃ……?」
レイスはロロに聞いたが、今彼女が見ていることがすべてだ。
ロロは魔法少女になった、デミの中でも珍しい少女だった。
「どういうことだ?君は政府に対して敵意があると思っていたが。」
「どうもこうもないよ。私はあなたたちを敵と判断しただけ。」
ロロは銃口をメルメルに向けていた。
にもかかわらず、メルメルは怖気づく様子もなく、軽やかな口調でリンネに聞いた。
「リンリンー?この白いやつ殺していい?」
「そいつは、やめておけ。今は殺す理由がない。」
リンネは答えた。
メルメルはその言葉を聞くとつまんなそうな顔をして、ロロの横を通り過ぎようとした。
「撃つわよ。」
ロロは警告した。
しかし、メルメルは余裕の表情で答えた。
「撃てば?その銃は攻撃力皆無なんでしょ?」
「どうしてそれを……!」
メルメルは警告を無視してアビスのもとへ歩く。
ロロは心に迷いを抱えていた。
このまま、アビスを放っておいても自分には関係ない。
手を出してしまえば、このメルメルというよく分からない奴に殺されてしまうかもしれない。
しかし、ロロは答えを導き出した。
ベルセルクならどうするか。悪く言えば傍若無人な彼女は、自分の信じる正義のために戦うのだろう。
ロロは天井に向かって銃を放った。
そして叫んだ。
「逃げろ!アビス!」
アビスは瀕死の状態でその言葉を受け取り、すぐさま、虚空に身を隠そうと動き出した。
「逃がすか……!」
メルメルが走り出した、その瞬間、辺りが真っ黒になった。
ロロの魔法マジックパレット、それは空中に色を塗ることが出来る銃のような形をした武器だ。
人に向かって撃ってもまるでダメージはないが、かなり応用が効く。
主に視界妨害として。
例えば、照明を黒色に塗り替える。するとどうなるだろうか。
照明は機能しなくなり、太陽の光が届かないような室内だと、一瞬で真っ暗になる。
結果、メルメルの足が一瞬だけ止まった。
ロロが変身を解除すると、辺りは元に戻った。
そこにアビスの姿は居なかった。
ロロはメルメルに羽交い絞めにされていた。
あまりに一瞬のことなので、ロロも反応できなかった。
「ねぇ、リンリン。こいつ殺していいよね。」
メルメルはリンネに聞いた。
「駄目だ、引き上げるぞ。」
リンネはそう答えて、歩き出した。
メルメルは舌打ちをして、ロロを投げ飛ばした。
リンネとメルメルはその場から離れていった。
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「大丈夫?」
レイスがロロに駆け寄った。
ロロはレイスの手を取りゆっくりと立ち上がる。
初めて感じた死の恐怖。
ロロは身に染みて感じた。
「ごめんなさい。私のせいで、あなたを危険な目に会わせてしまった。」
「いいの、私が決めたことだから。」
レイスは静かになった研究室に戻り、書類をまとめ始めた。
「これからどうするんですか?レイスさん。」
ロロはレイスに聞いた。
「リンネ博士を追う。あの人は私にとっても大切な人だから。」
レイスはそう言いながら、手提げかばん一つに重要な書類を詰め込み、部屋の電気を消した。
「私も手伝うよ。」
レイスは驚いた顔をした。
当然だ。この件にロロは全く関係ない。
「その、ちょっと酷いこと言っちゃったし……」
ロロはそう付け足したが、それだけが本心ではない。
困っている人を助ける。
ロロの行動理念そのものだ。
「ふふ、ありがとう、えーっと……」
「私はロロ。」
「ありがとね。ロロ。」
ロロは立ち去ろうとするレイスの服の裾を引っ張った。
「あ、そうだ。外で連れが待っているんです。一緒にどこかうまい店に食べに行きません?」
ロロはわざとらしく咳払いして、さりげなく言った。
「ええ、ぜひ。」
レイスは笑顔でそう答えた。
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川沿いに店を構えた老舗のラーメン店。というよりは屋台。
ロロたちはそこで食事をすることに決めた。
「大変だったのね。二人とも。」
「大変なんてものじゃないですよ。私なんて、体まっぷたつですからね!」
ユイは初めて会ったレイスともう打ち解け合っていた。
「へい、ラーメンお待ち。」
大将が三人にラーメンを渡した。
至って普通のラーメン。しかし、どことなく懐かしい感じがした。
「いただきます。」
ロロは息を吹きかけて熱を冷ましながら、麺を口へ運んだ。
「うまい……」
ロロとユイはこれまでにまともな食事をしてこなかったため、よくありがちな普通のラーメンでも、涙を流すほどおいしく感じられた。
レイスはというと、涙は流さなかったものの、おいしそうに食べる二人を見てとても幸せな気分になった。
「でも、なんでリンネ博士は政府を破壊したいだなんて、あんな暴力的なこと言ったのだろう。」
レイスがふとつぶいやいた。
二人はラーメンを食べるのに夢中で聞いていなかったが。
「聞くまでもないだろう。政府は悪だ。」
突然、隣でラーメンを食べている客が話に割り込んできた。
ロロはその声に聞き覚えがあった。
ラーメンを食べるのを止め、彼の顔を見た。
「あ、君は……!」
「久しぶりです。ロロさん。」
彼の名前はリオン。
かつてロロたちと解放戦線を張り、正規軍と戦う覚悟を決めた青年だった。
男だけど魔法少女。そういうものだ。
「生きてたのね。よかった。」
ロロはあの日に奈落の魔法少女たちは全員殺されたとばかり思っていた。
しかし、リオンを含め数名の魔法少女は大きな穴の開いた天井から脱出していた。
「ロロさん。今日はあなたを探していました。」
「私?」
リオンは改まって話を始めた。
「僕は政府に対抗する組織『魔法結社』を設立しました。そこに、虐げられた魔法少女やデミを集めて、いずれは政府を壊滅させるつもりです。」
「あなたは自由になれた。これ以上戦う必要は……」
「復讐は醜いですか?なんとでも言ってください。」
リオンは変わってしまった。
変わらざるを得なかったのかもしれない。
仲間が無惨に殺されていく中、逃亡の道を選んだロロたちには理解できなかった。
「目的は違えど、ロロさんは仲間であり、尊敬する人でもあります。困ったときにはいつでも訪ねてきてください。もちろん結社に加わっていただけるのなら大歓迎です。政府側に着かない限りね。」
リオンはそう言い残し、ごちそうさまと言うと、その場を立ち去って行った。
「政府に不満を持つ人間が増えてきています。このままでは内戦になりかねません。」
ロロは数日間、政府やエリア1の内情を調べ上げた。
富裕層のエリアAの人々は特に不満もなく、幸せに暮らしているが、エリアBの人々は政府に不満を募らせているらしい。
その不満の捌け口がなく、テロや犯罪は日常茶飯事になっているという。
エリアCの奈落と同じようになってしまうのだろうか。
「かといって、私たちにできることは何もない。やはり、リンネ博士の力が必要だ。」
「でも、あの人も世界の破滅を望んでいるんでしょ?」
ユイはリンネに聞いた。
リンネは戸惑いながらも頷いた。
「あー、もう。何が正しいかわかんなくなっちゃった。」
ロロはとりあえず全て忘れて、目の前のラーメンを食べた。




