幕間 ガブリエラ
☆登場人物☆
『衛堂ミコト』
19歳。黒のショートボブヘアで赤い瞳の女性。
魔法少女だったが、暴走する親友を止め魔法少女を引退する。
その後は、より多くの人を救うため貧困地エリアBに教会を作る。
『カイザー』
カウボーイハットをかぶった時代遅れの男。
目元は陰になっておりよく見えない。
ミコトの教会に住み着く浮浪者。
『エフィ』
シスターの長を務める少女。身元不明。
『ガブリエラ』
ミコトの教会に迷い込んだ幼い少女。
金髪で透き通るような青い瞳をしている。
ミコトが教会に住み始めて一週間が経った。
「おいおいおい、誰一人こねぇじゃねーか。大丈夫かこの教会。」
椅子に寝転がったカイザーがミコトに聞いた。
それもそのはずだ、以前にカイザーが言った通り、宗教という文化は完全に廃れた。
今存在する宗教は大体カルトであるから、まともな人は寄り付かない。
それに、町からかなり離れた立地。
宣伝しなければ、人は寄り付かないのも当然のことだろう。
「おかげさまでね。」
ミコトはそれでも誰か一人ぐらいは来るだろうと踏んでいたため、カイザーの一言が若干心に刺さった。
そして、責任を転嫁するため、カイザーに嫌味を言った。
「いいように、言いやがって……、いっそのこと本当にガールズバーに改良して……」
コンコンッ
その時、教会の入り口の扉をたたく音が聞こえた。
一瞬の静寂。
本当に突然のことで、ミコトも驚いた。
「見たか、カイザー。人が来たぞ……」
「あぁ、来たな。」
カイザーは椅子に座り直し、何かしらに祈るポーズをとった。
ミコトは身だしなみを整え、扉を開けた。
「ようこそ、迷える子羊よ。」
「ぷっ……」
ミコトのまじめさにカイザーが吹き出したので、ミコトは睨みをきかせた。
カイザーはミコトから目をそらし、再び祈りのポーズをとった。
ミコトは再び振り返り、教会にやってきた人を見た。
「あれ?」
人は誰もいなかった。
しかし、ミコトはすぐに気が付いた。
「……!」
地面を見ると、幼い少女が倒れていた。
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少女をベッドのある部屋まで運んだが、ミコトは落ち着かない様子でその場をうろうろしていた。
少女は辛うじて息をしている程度で、意識がないように見えた。
「ねぇカイザー、医学とか詳しくない?」
「あったらとっくに原因を見つけてるよ。」
少女の体に外傷は確認できなかった。
ミコトが持ってきた応急処置キットでは手が付けられない。
加えて、エリアBでは医者は呼んでも来ない場合が多い。ヤブ医者もいる。
少女はまさに絶体絶命だった。
「しょうがない……、カイザー一旦部屋を出て……」
ミコトに言われた通り、カイザーは部屋を出ようとした。
しかしその瞬間、少女の体が光りだした。
うめき声を上げ、呼吸が荒くなる。
「こいつ、魔法少女か……」
カイザーがつぶやいた。
「エフィ!魔法水を……早く!」
ミコトは何かを思い出したかのようにエフィに指示を出した。
廊下で待機していたエフィは急いでミコトの部屋に走った。
そして、青い液体の入った瓶を持ってきた。
ミコトはエフィから受け取った魔法水を少女に飲ませた。
少女の発光はとまり、呼吸も正常に戻った。
「これで、ひとまずは安心だ。」
エフィは空になった魔法水の瓶を棚に置いた。
「……」
カイザーはその瓶を怪訝な顔で見つめた。
「どうしてそんな顔してるの?助かってよかったじゃん。」
「ああ、そうだな。よかった、よかった……」
二人は椅子に座り、少女の様子をしばらく眺めた。
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「あら?目を覚ましたのかしら……」
ミコトが部屋にお茶とお菓子を持っていくと、少女が窓の外をぼんやりと眺めていた。
「あ、あの……、ありがとうございます……」
少女は申し訳なさそうな顔をして言った。
「死にかけてた人を助けた、当たり前の行為よ。」
「ですが……、私は……」
ミコトは少女の手に自身の手を重ね、聞いた。
「あなたの名前は?」
「私はガブリエラ・トリニティ。」
「トリニティ……?珍しい名前ね。」
ガブリエラはしばらく沈黙した。
そして、目を閉じつぶやいた。
「魔法少女になった日、そうなったんです……」
「そうなった……?」
「……」
ガブリエラがそれ以上話すことはなかった。
人には知られたくない過去がある。
それはミコトもよくわかっていた。
そこで、ミコトはガブリエラにやさしく語りかけた。
「行き場がないのなら、ここに泊まっていくといいわ。もちろん無料。少しお手伝いしてもらうけどね。」
「え、助けてもらった上に、そんな……」
「謙遜しないで、私としてもにぎやかになることは大歓迎だから。」
ガブリエラは嬉しそうに頷いた。
それを見た、ミコトも笑顔になった。
「お、いいじゃん。俺にも無料で部屋を貸してくれよな。」
ちょうどそのタイミングで部屋に戻ってきたカイザーが割り込んだ。
「あなたは遠慮というものを知りなさい。」
「手伝いしてやるからさ、な?」
「あら、ありがとう、でも部屋代は払ってね。ガブリエラ、案内するわ。」
ミコトはそういうとカイザーから文句を言われる前に部屋から出ていった。
「お、おい……」
ガブリエラもミコトについていくため、身を起こした。
「仲良いんですね。」
部屋から出ていく間際、ガブリエラは嬉しそうにカイザーに告げた。
「そう見えたか?おめでたいやつだな。」
カイザーはため息をついて、近くにあった椅子に腰を下ろした。
「ミコト……か。」
カイザーは再び魔法水の空き瓶を見つめてつぶやいた。




