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マシックガールズ  作者: まーだ
第一章 魔法少女という病
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第4話 マジンと魔法少女

☆登場人物☆



『衛堂ミコト』

主人公。17歳。

黒のショートボブヘアで赤い瞳の少女。

至って普通の女子高生。頭は良くない。

育ての親を失い喪失感に駆られていた所、人外の化け物「マジン」に襲われる。

「死にたくない」という願いを抱き魔法少女として覚醒する。

魔法少女形態【???の魔法少女】

まるで医者の白衣のような衣装。グローブとブーツは白色だが、白衣の下は黒いタイツ。

頭には二本の丸っこい角が生えている。

白衣の裏から尻尾が伸びており、尻尾の先は注射器のようなデザインになっている。

白衣には緑色の線がデザインされている。それはサイリウムのように発光しており、ミコトの心臓の鼓動に合わせて心電図のように波を流す。

使用武器は「ミコトカリバー」

ミコトの身長ぐらいの大きさの剣であり、両手に持って戦う。

剣のグリップ真横には緑色の液体が入ったタンクがあり、タンクから伸びた管はミコトのグローブの中へと繋がっている。



『奏美音』

もう一人の主人公。17歳。

地面擦れ擦れの長さの青いポニーテールと青い瞳の少女。

ミコトより色々とひと回り大きい。

ミコトの学校に転校してきたが、実は世界各地でコンサートを行う超有名ピアニスト。

数か月前から魔法少女に覚醒しており、学校にやってきた「マジン」を倒すためにミコトと意気投合。

以降はミコトの親友となる。

魔法少女形態【音の魔法少女】

黒の燕尾服のような衣装。ひらひらしておらず、すらっとしており男性的なデザイン。

ピアニストがモチーフにもかかわらず、黒色の手袋をしている。

使用武器は「メゾフォルテ」

右手に強弱記号のフォルテを模した剣、左手に「m」の形をした盾を持っている。鈍器。

私は、とあるマンションに来ていた。

私が暮らしているアパートとは比べ物にならないぐらいでかい。

まるでホテルだ。入り口に暗証番号入力と指紋認証あるし、セキュリティも万全。

美音が暮らしている場所だ。


魔法少女について詳しく聞くため、昨日の夕方に美音に連絡をとった。

かわいそうだけど、ゆずは呼んでない。まあ仕方ないよね。


「おはようミッコ、昨日はありがとね。」


エレベーターから美音が出てきた。

内側からガラスの扉を開け、私を中に誘導した。


「昨日の演奏本当によかったよ。また聞かせてね。」


個人的、良い演奏とは言い難いが、二度と聞きたくないようなものでもなかったので、適当に嘘をついた。

音楽経験の無い私ごときが演奏を評価するのもおかしいが……


二人でエレベーターに乗る。

一番上の階は12階。私たちは10階で降りた。


外の景色が見える。学校、自然公園、私のしょぼいアパート、全部見える。

いい風が吹く。いいな、お金があったらこんなところに暮らしてみたい。


「ここだよ。」


部屋のロックも指紋認証。カードキーのリーダーらしきものもある。

でも美音が扉に触れただけで鍵が開いた。

現代的だ。


広い。家族と一緒に暮らしているのかな。

普通に4人ぐらいは共同生活できそうなスペースがあった。


「お茶とお菓子もってくるから、その辺でくつろいどいて。」


美音にそう言われ、私はふかふかのソファーに腰を下した。

やさしく包み込まれるような感覚に一瞬意識を失いかけた。

最近まともに寝てないのが原因か。


部屋の様子を見る。

おもに白を基調としているインテリアの数々。とても清楚なイメージ。

ピアニストだからピアノを置いているかと思ったけど、それらしきものは見当たらなかった。


ふと、ある棚に目を向ける。そこに、写真立てが置いてあった。

家族写真だろうか、三人家族の親子が笑顔で並んでいる。

でもこの家族、見るからに貧相な姿をしている。とても美音の家族とは思えない。


写真を見ている私に気づいたのか、お菓子とジュースを持ってきた美音が言った。


「それ、私の家族。ふふふ、醜いでしょ?」


それは自虐なのか、私は苦笑いした。


「私、有名になったのは最近だから、ついこの間まで、そんな感じだった。もしあのままだったら野垂れ死んでたかもね。本当に幸運だったよ。」


幸運?私はその言葉に疑問を感じたので、質問した。


「いや、美音がピアニストになれたのは、美音の努力があったからでしょ。」


17歳という若さで、あれだけ難しい曲を演奏できるというのは、並ならぬ努力があったからだろう。

さらに言えば、美音はピアノを習う環境を手にできたのかどうかすら危うい。

その環境をもらえたのは家族や周りの人から信頼されている証だ。

美音の努力は世界一だ。


「そ、そうだね。」


美音はうつむきながら言った。


わかった、謙遜しているんだな。もしくは照れ屋さんか。

学校ではなかなか見られない一面。美音とは仲良くやっていけそうだ。


会話が終わったので、私は美音が持ってきたお菓子を口に運んだ。


「ところで本題だけど…」


美音は真剣な顔で言った。


私はお菓子のさらに手を伸ばすのをやめ両ひざに手を付いた。

本題というのは魔法少女のことだ。

おそらく美音は私よりずいぶん前に魔法少女になったのだろう。

つまりは私の先輩というわけだ。

私はまだ魔法少女についてよくわかっていない。例の怪物についてもだ。

せっかく美音と友達になれたのだから、この機会を逃す手はない。

美音も乗り気だったので、丁度よかった。


----------


「つまり、私たちはあいつらと戦っていかなければならないってこと?」


私や美音のように魔法少女になった者は、生きるために魔力というエネルギーを満たさなければならない。

魔法少女に変身しなければ魔力の消費は極限まで抑えられるが、それでも少しずつ減ってしまうようだ。


そのため、『マジン』と呼ばれる怪物を倒すことで魔力を得る必要がある。


「安心しなさい。魔法少女になった私たちは超人的な戦闘能力を持っているわ。油断さえしなければ、マジンなんかに負けるはずないわ。」


負けるはずがない、か。

おととい死にそうになったけどな。


「魔法少女として戦う理由は他にもあるわ。マジンを倒して、魔力をたくさん貯めれば、どんな望みだって叶えることができる……って聞いてる?ミッコ?」


「……」


魔法少女は望みを叶えることができる。

魔法少女になったときからそんな気がしていたので、知っている。


私はそんなことより、マジンについて考えていた。


そもそもマジンってどこから生まれたのだろうか。

ただ、魔法少女に殺されるために生まれた存在じゃなかろうに。


私は詳しい話を美音に聞こうとした。その時……


パリンッ


突如、ガラスが割れる音が聞こえた。

別の部屋からだろうか。


「なんだろう、野球のボールかな。」


美音はゆっくりと立ち上がり、音がした方へ歩いた。

美音は音が鳴った部屋の扉を開けた。


次の瞬間、美音の体が私の真横を通過した。

痛ましい打撃の音が聞こえた。


「え……」


後ろを振り向くと、美音が壁に打ち付けられ、血を流し倒れていた。


「ミオ!」


慌てて美音のもとへ駆け寄る。

美音の肩をたたく。意識がない。


「そんな…」


後方で足音が聞こえた。

私はゆっくりと振り返った。


黒い煙を纏ったマジンがそこにいた。

逆関節の細い脚で上半身を支えており、牙をむき出しにしている。

まるで、物語で見る狼男。ぐるぅとうなり声をあげていた。


マジンは一歩私の方へ近づく。


冷静になれ、まず最初にすべきことは……

私は頭の中が真っ白になった。


「ミッコ……」


美音が今にも息絶えそうな声で私にささやいた。


「大丈夫?ミオ……」


私は美音に聞いた。

混乱した思考の中で、唯一出した言葉がこれだ。

大丈夫なはずがない。美音は重傷だ。


すると美音は怒ったように私に言った。


「マジンを見たら、すぐに魔法少女に変身!早くしなさい……」


その言葉で意識がはっきりした。

今の私は戦場で無防備な姿を晒しているだけだ。

冷静に戦えばマジンなんて魔法少女の敵ではない。


虹色の光が私を包む。


そして、剣を構える。

私の瞳にはマジンだけが映っていた。


「ミッコ、私は、大丈夫だから。」


息を切らしながら美音が言う。

私ははうなづくと縦に構えた剣をそのままに、マジンに向かっていった。


カン……


金属のような音をたてて、ミコトの剣はマジンの胸元で止まった。

私の剣はマジンには刺さらなかった。


マジンの動きは一瞬だけ止まった。驚いているようにも見えた。

しかし、一番困惑しているのは他でもない、私だ。


「な、なんで!?」


「ミッコ!上っ!」


美音が叫ぶ。


上を見ると、マジンの大きな拳が振り上げられているのが見えた。


「あ……」


剣を構えなおす間もなく、拳は私の頭に振り下ろされた。


体から人間が発するとは思えない音が何回も鳴った。

血液か何かわからない液体が体から溢れた。


私の体はぴくりとも動かなくなった。


「ミッコォォォォ!!!」


美音の叫び声がかすかに聞こえる。


「あああぁぁぁああああ!!!」


美音は声に鳴らない叫びをあげた。


----------


「私は死んだのか…」


体に力を入れる。


動かない。


あんなに強い衝撃を受けて死なないはずがない。

だが、意識はある。


周りは真っ暗闇だった。


ここは地獄だろうか。そうに違いない。


しばらくして、一つの悲鳴が聞こえた。

誰かに助けを求める声のようなそんな悲鳴だ。


美音の声……。


美音は不意打ちをくらっており、とても戦える状態ではない。

きっとあのマジンに殺されてしまうだろう。


「私のせいで、ミオが……」


それだけはいやだ。


自分の体を無理やりにでも動かす。

小指から順番に、ゆっくりと、やがてすべての四肢が動くことを確認する。


暗闇の中でかすかに光る剣を握る。


「魔法少女って、私が思っているより甘い世界じゃないんだね……」


魔法少女は常軌を逸した力を持っている。

しかし、魔法少女は常にマジンと戦わなければならない運命にある。

さながら、戦争に行く武装した兵隊のように。

命を失う可能性は他の誰よりも高いのだ。


私はその剣をもう一度構えた。


そして、覚悟を決める。


「私は迷わない。この命を懸ける!!」


剣は、暖かく、激しい光に覆われた。


「ミオぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


私はもう一人の魔法少女の名前を叫んだ。


それは私にとって大切な存在。


----------


暗闇が晴れた。


私の剣はマジンの胴体を貫いていた。

マジンは悲痛な叫び声をあげ消滅した。


部屋は荒れ果て、血まみれの美音が壁にもたれて目を閉じていた。

きっと、最後まで必死で戦ったのだろう。


美音の閉じた瞳が開いた。


「ごめん、ミオ。遅くなった。」


私は美音に笑って見せた。


「おそいんだよぉ……ミッコぉ……」


美音は私の顔を見て泣き出した。


----------


私は満身創痍の美音を担いで川の土手下まで運んだ。

そこへ美音をやさしく降ろした。


美音のマンションには早速人々が駆けつけていた。

流石にこの状態の美音を晒すわけにはいかない。


私の全身は赤く染まっていた。

私の血か美音の血か分からない。いい匂いはしなかった。


美音は息をしているが、目を覚まさない。

おそらく、体の再生を図っているのだろう。


魔法少女は即死でなければ、どんな重症でもすぐに完治してしまう。

しかし、回復に集中する時は身動きができないので、結局のところマジンとの戦いでは致命傷は避けなければならない。


私は血を洗い流すため、目の前の川に飛び込んだ。


冷たくて気持ちがいい。生きている心地がする。

流れが穏やかなのであおむけになって浮かんでみた。


空を見るといくつもの星が輝いていた。

そうか、いつの間にか夜になってたんだな。

今日は疲れたしもう休んでもいいかな。


そのまま寝てしまいそう……


「おぼぼぼぼぼぉ……!、おぇ……」


気を抜いたら溺れかけた。鼻や口から水が入ってきて気持ち悪い。


「はは、こんなカッコ悪いところ美音には見せられないな……」


一人で笑いながら、草の上で寝ている美音を見た。


美音は胡坐をかきながら、頬杖をして私を見ていた。


「見てたんだ……」


私は恥ずかしくなり、再び水の中に沈んだ。


「カッコよかったよ、ミッコ。」


美音が何か言ったような気がしたが、私には聞こえなかった。


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