幕間 あれから
☆登場人物☆
『衛堂ミコト』
19歳。黒のショートボブヘアで赤い瞳の女性。
育ての親を失い喪失感に駆られていた所、人外の化け物「マジン」に襲われる。
「死にたくない」という願いを抱き魔法少女として覚醒する。
その後、暴走する親友を止め、魔法少女を引退する。
『カイザー』
カウボーイハットをかぶった時代遅れの男。
目元は陰になっておりよく見えない。
『エフィ』
シスターの長を務める少女。身元不明。
二年前
ミコトは大きな駅に来ていた。
駅員に切符を渡す。
「お嬢さん、一人?」
駅員がミコトに尋ねた。
「ええ、そうですよ。」
ミコトは答えた。
「エリアBは最近、治安がものすごく悪いからね。危ないから止めといた方がいいよ。」
駅員はミコトにやさしく忠告をした。
「忠告どうも、でも仕事があるの。」
「仕事?ああ、お嬢さんのこと、学生と見間違えてしまったよ。これは失礼。」
駅員は帽子を外し頭を下げた。
そして、ミコトに切符を渡した。
「気にしてないわ、ありがとう。」
ミコトは切符を受け取り、電車に乗り込んだ。
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電車の内装は豪華だった。
ほとんどの人がエリアAの辺境の観光地に向かう金持ちであり、彼らは指定席を使用しているため、自由に座れる席はガラガラだった。
ミコトは大きな窓の隣の席に腰を下ろした。
「よう、隣いいか?」
カウボーイハットを被ったいかにも時代遅れな男がミコトに話しかけた。
「ナンパですか?」
ミコトは率直に聞いた。
「違う違う、さっき駅員との会話を聞いてさ。エリアBに向かうんだろ?」
男はミコトの了承を得ず、対面に座った。
エリアBとはいわゆる貧民街。
最近は政府に不満のある人たちが集まり、破壊活動をしている。という噂がある。
しかし、そもそもミコトはエリア1に来たばかりなので、その惨状を実際には見たことが無かった。
「わざわざエリアBに行く奴なんて珍しいからな。実は俺も、エリアBに用があるんだよ。」
「ナンパですね。」
「違うって!!」
男は否定したが、ミコトはゴミを見るような目で相手を見た。
「見たところ、エリアBには初めて行くようだが?」
「どうしてわかるんです。」
男は饒舌になり解説し始めた。
「あそこは旅行感覚で行くような場所じゃない。この世の終わりのような場所さ。少なくとも、女子供がそんな軽装じゃ暴漢に襲われかねない。荷物も持っているとなりゃ、ただのボーナスバルーンだ。」
「あなたが、その暴漢なんですか?」
ミコトは窓の外を眺めながら聞いた。
「いちいち、腹が立つことを言うんじゃない。」
「ごめんね。」
ミコトは適当に謝った。
男はタバコに火をつけようとした。
しかし、ミコトに鬼の形相で睨まれると、男は深いため息をつきながら、タバコをしまった。
電車は長い時間をかけてエリアBへ向かっていった。
途中で男がエリアBの内情をペラペラと語ったが、ミコトは興味がなさそうに、あくびをしながら聞き流した。
約2時間の旅路。
ミコトは代わり映えのない景色に飽き飽きしていた。
身体を伸ばして深呼吸すると、足早に電車を降りた。
「まさか、降りる駅が一緒だったとはな……」
次いで、ミコトと話をしていた男が電車から降りた。
ミコトは男の顔を見ると嫌な顔をして、舌打ちをした。
男はやれやれとした表情を見せた。
「俺はカイザー。また会うかもな。」
カイザーと名乗る男はミコトの頭をポンと叩き、言った。
ミコトも皮肉交じりで自己紹介をした。
「私はミコト。二度と会うことは無いでしょう。」
ミコトはカイザーに別れを告げ、駅を離れた。
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「うーん、ここかなぁ。」
ミコトは地図と現実の場所を見比べる。
ミコトがたどり着いた場所は古びた教会だった。
場所は小さな町から少し離れた林の中。
道は舗装されてあるものの、意識しないとたどり着けない場所だ。
当然、他の人の姿は見えない。
「ここ?こんな廃墟で何をするんだ。」
カイザーがミコトに聞いた。
「というか、なんでついて来てんの?やっぱり、あなたストーカーね。」
「違うっつーの、一人じゃ危ないから一緒に来てやっただけだ。」
カイザーは駅から教会までミコトのボディガード(無許可)として歩いてきた。
実際、世紀末のような姿をした連中がミコトを狙っていた。
そのため、面倒事を避けるために敢えてミコトは黙っていたが、ここに来てようやく、カイザーに文句を言った。
とはいえ、カイザーに悪意がないことはミコトも分かっていたため、それ以上何か言うことは無かった。
ミコトは教会の扉を開けた。
内装は、外観とは違い、古臭い感じはしない。
木製の椅子が複数並べてあり、キャパシティは100人ほど。
そこそこの大きさだ。
主祭壇の奥に構える、大きなステンドグラスからは、太陽の光が神々しく差し込んでいる。
さらに奥には個室が複数あり、さまざまな使用用途が考えられる。
「で、こんなところに来て、何をするつもりなんだ?」
カイザーが近くにあった長椅子に腰を下ろし、ミコトに聞いた。
声がよく響く。
「多くの人を救う、それが私の夢なの。」
ミコトはステンドグラスを背中に、両手を大きく広げて見せた。
カイザーは腹を抱えて笑った。
「おいおい、まさかシスターごっこでもするつもりか?なんで既成宗教が廃れたか知ってるか?言葉だけじゃ人は救えねぇんだよ。」
ミコトは笑い転げているカイザーを睨み、答えた。
「『ごっこ』じゃないわ。私はこの廃れた世界で、本当の意味で人々を救う。この教会はそのための第一歩。」
数日前、ミコトはエリアBの物件を探し回った。
隠れ家としての用途だったが、ミコトは雰囲気を大切にしたいと思い、美音が残したほぼ全ての財産を使い、この教会を買った。
「そうかい、せいぜい頑張りな。」
ミコトの馬鹿正直な理想にカイザーはあきれた。
そして、そのまま腕を頭の後ろに組み寝始めた。
「あなたはいつまでここにいるつもり?仕事はしてないの?」
ミコトはカイザーの耳元で大声で聞いた。
「俺の仕事は夜にある。昼間は基本的に暇だ。」
「居住費払ってもらうわよ。」
ミコトはカイザーの身体をゆすり、睡眠を妨害しながら言った。
カイザーは目を瞑りながら、嫌味に答えた。
「この教会は礼拝者に入場料をせびるのか?だが、安心しな。無償でボディガードやってやるぜ?女一人だけじゃ不安だろ?」
ミコトはムッとした。
カイザーの余裕な顔に腹が立ったからだ。
ミコトは指を鳴らした。
すると奥の部屋から修道服を着た少女がずらずらと出てきた。
その数、およそ20人。
「マジかよ……」
カイザーは体を起こし、彼女たちを茫然と見つめた。
どれも、ミコトと同じぐらいの身長の少女。
礼儀正しく、まるでロボットのように、ミコトの前に並んだ。
「お掃除ご苦労様、エフィ。」
名前を呼ばれた少女、エフィが前に出た。
そして答えた。
「いえ、ミコトさんの命令ですから。」
ミコトはエフィや他の少女たちの頭を一人ずつ撫でて激励した。
その後、カイザーの前に立ってどや顔を見せた。
「ここはガールズバーか何か?」
カイザーはミコトに聞いた。
ミコトはカイザーにげんこつをくらわした。
ミコトは事前にシスターたちを教会に向かわせ、内装の掃除をさせていた。
外観同様に荒れ果てていたと思われる教会の内装は、想像も出来ないほど片付いていた。
現在、シスターたちは各々が担当の家事を始めている。
「で、このシスターたちはミコトの何なんだよ。金で雇っているのか?」
カイザーがミコトに聞いた。
「いいえ、この子たちは全員、私の娘。」
ミコトは真面目な顔をして答えた。
カイザーは耐えきれず、吹き出した。
「ああ、そうかい、そうかい。そういう設定ね。アハハ!!最高!」
ミコトはカイザーに笑顔を見せた。
その笑顔の裏には静かな怒りが秘められている。
ミコトは真剣だった。
シスターたちは日替わりでバイトをして、稼いだ金はみんなで共有していた。
それはもう家族と言って差し支えないのでは?
ミコトはそう思っていた。
「もう二度と、失ったりしない……」
ミコトは独り言をつぶやいた。
「何か言ったか?」
「何も言ってない……」
ミコトは適当にごまかし、礼拝堂を後にして奥の部屋に向かった。




