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マシックガールズ  作者: まーだ
第四章 メルメティック・シンドローム
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幕間 あれから

☆登場人物☆


『衛堂ミコト』

19歳。黒のショートボブヘアで赤い瞳の女性。

育ての親を失い喪失感に駆られていた所、人外の化け物「マジン」に襲われる。

「死にたくない」という願いを抱き魔法少女として覚醒する。

その後、暴走する親友を止め、魔法少女を引退する。


『カイザー』

カウボーイハットをかぶった時代遅れの男。

目元は陰になっておりよく見えない。



『エフィ』

シスターの長を務める少女。身元不明。

二年前


ミコトは大きな駅に来ていた。

駅員に切符を渡す。


「お嬢さん、一人?」


駅員がミコトに尋ねた。


「ええ、そうですよ。」


ミコトは答えた。


「エリアBは最近、治安がものすごく悪いからね。危ないから止めといた方がいいよ。」


駅員はミコトにやさしく忠告をした。


「忠告どうも、でも仕事があるの。」


「仕事?ああ、お嬢さんのこと、学生と見間違えてしまったよ。これは失礼。」


駅員は帽子を外し頭を下げた。

そして、ミコトに切符を渡した。


「気にしてないわ、ありがとう。」


ミコトは切符を受け取り、電車に乗り込んだ。


--------


電車の内装は豪華だった。


ほとんどの人がエリアAの辺境の観光地に向かう金持ちであり、彼らは指定席を使用しているため、自由に座れる席はガラガラだった。


ミコトは大きな窓の隣の席に腰を下ろした。


「よう、隣いいか?」


カウボーイハットを被ったいかにも時代遅れな男がミコトに話しかけた。


「ナンパですか?」


ミコトは率直に聞いた。


「違う違う、さっき駅員との会話を聞いてさ。エリアBに向かうんだろ?」


男はミコトの了承を得ず、対面に座った。


エリアBとはいわゆる貧民街。

最近は政府に不満のある人たちが集まり、破壊活動をしている。という噂がある。


しかし、そもそもミコトはエリア1に来たばかりなので、その惨状を実際には見たことが無かった。


「わざわざエリアBに行く奴なんて珍しいからな。実は俺も、エリアBに用があるんだよ。」


「ナンパですね。」


「違うって!!」


男は否定したが、ミコトはゴミを見るような目で相手を見た。


「見たところ、エリアBには初めて行くようだが?」


「どうしてわかるんです。」


男は饒舌になり解説し始めた。


「あそこは旅行感覚で行くような場所じゃない。この世の終わりのような場所さ。少なくとも、女子供がそんな軽装じゃ暴漢に襲われかねない。荷物も持っているとなりゃ、ただのボーナスバルーンだ。」


「あなたが、その暴漢なんですか?」


ミコトは窓の外を眺めながら聞いた。


「いちいち、腹が立つことを言うんじゃない。」


「ごめんね。」


ミコトは適当に謝った。


男はタバコに火をつけようとした。

しかし、ミコトに鬼の形相で睨まれると、男は深いため息をつきながら、タバコをしまった。


電車は長い時間をかけてエリアBへ向かっていった。


途中で男がエリアBの内情をペラペラと語ったが、ミコトは興味がなさそうに、あくびをしながら聞き流した。


約2時間の旅路。


ミコトは代わり映えのない景色に飽き飽きしていた。

身体を伸ばして深呼吸すると、足早に電車を降りた。


「まさか、降りる駅が一緒だったとはな……」


次いで、ミコトと話をしていた男が電車から降りた。

ミコトは男の顔を見ると嫌な顔をして、舌打ちをした。


男はやれやれとした表情を見せた。


「俺はカイザー。また会うかもな。」


カイザーと名乗る男はミコトの頭をポンと叩き、言った。


ミコトも皮肉交じりで自己紹介をした。


「私はミコト。二度と会うことは無いでしょう。」


ミコトはカイザーに別れを告げ、駅を離れた。


----------


「うーん、ここかなぁ。」


ミコトは地図と現実の場所を見比べる。

ミコトがたどり着いた場所は古びた教会だった。


場所は小さな町から少し離れた林の中。

道は舗装されてあるものの、意識しないとたどり着けない場所だ。

当然、他の人の姿は見えない。


「ここ?こんな廃墟で何をするんだ。」


カイザーがミコトに聞いた。


「というか、なんでついて来てんの?やっぱり、あなたストーカーね。」


「違うっつーの、一人じゃ危ないから一緒に来てやっただけだ。」


カイザーは駅から教会までミコトのボディガード(無許可)として歩いてきた。


実際、世紀末のような姿をした連中がミコトを狙っていた。

そのため、面倒事を避けるために敢えてミコトは黙っていたが、ここに来てようやく、カイザーに文句を言った。


とはいえ、カイザーに悪意がないことはミコトも分かっていたため、それ以上何か言うことは無かった。


ミコトは教会の扉を開けた。


内装は、外観とは違い、古臭い感じはしない。


木製の椅子が複数並べてあり、キャパシティは100人ほど。

そこそこの大きさだ。


主祭壇の奥に構える、大きなステンドグラスからは、太陽の光が神々しく差し込んでいる。


さらに奥には個室が複数あり、さまざまな使用用途が考えられる。


「で、こんなところに来て、何をするつもりなんだ?」


カイザーが近くにあった長椅子に腰を下ろし、ミコトに聞いた。

声がよく響く。


「多くの人を救う、それが私の夢なの。」


ミコトはステンドグラスを背中に、両手を大きく広げて見せた。


カイザーは腹を抱えて笑った。


「おいおい、まさかシスターごっこでもするつもりか?なんで既成宗教が廃れたか知ってるか?言葉だけじゃ人は救えねぇんだよ。」


ミコトは笑い転げているカイザーを睨み、答えた。


「『ごっこ』じゃないわ。私はこの廃れた世界で、本当の意味で人々を救う。この教会はそのための第一歩。」


数日前、ミコトはエリアBの物件を探し回った。

隠れ家としての用途だったが、ミコトは雰囲気を大切にしたいと思い、美音が残したほぼ全ての財産を使い、この教会を買った。


「そうかい、せいぜい頑張りな。」


ミコトの馬鹿正直な理想にカイザーはあきれた。

そして、そのまま腕を頭の後ろに組み寝始めた。


「あなたはいつまでここにいるつもり?仕事はしてないの?」


ミコトはカイザーの耳元で大声で聞いた。


「俺の仕事は夜にある。昼間は基本的に暇だ。」


「居住費払ってもらうわよ。」


ミコトはカイザーの身体をゆすり、睡眠を妨害しながら言った。


カイザーは目を瞑りながら、嫌味に答えた。


「この教会は礼拝者に入場料をせびるのか?だが、安心しな。無償でボディガードやってやるぜ?女一人だけじゃ不安だろ?」


ミコトはムッとした。

カイザーの余裕な顔に腹が立ったからだ。


ミコトは指を鳴らした。

すると奥の部屋から修道服を着た少女がずらずらと出てきた。

その数、およそ20人。


「マジかよ……」


カイザーは体を起こし、彼女たちを茫然と見つめた。

どれも、ミコトと同じぐらいの身長の少女。

礼儀正しく、まるでロボットのように、ミコトの前に並んだ。


「お掃除ご苦労様、エフィ。」


名前を呼ばれた少女、エフィが前に出た。

そして答えた。


「いえ、ミコトさんの命令ですから。」


ミコトはエフィや他の少女たちの頭を一人ずつ撫でて激励した。


その後、カイザーの前に立ってどや顔を見せた。


「ここはガールズバーか何か?」


カイザーはミコトに聞いた。

ミコトはカイザーにげんこつをくらわした。


ミコトは事前にシスターたちを教会に向かわせ、内装の掃除をさせていた。

外観同様に荒れ果てていたと思われる教会の内装は、想像も出来ないほど片付いていた。


現在、シスターたちは各々が担当の家事を始めている。


「で、このシスターたちはミコトの何なんだよ。金で雇っているのか?」


カイザーがミコトに聞いた。


「いいえ、この子たちは全員、私の娘。」


ミコトは真面目な顔をして答えた。

カイザーは耐えきれず、吹き出した。


「ああ、そうかい、そうかい。そういう設定ね。アハハ!!最高!」


ミコトはカイザーに笑顔を見せた。

その笑顔の裏には静かな怒りが秘められている。


ミコトは真剣だった。


シスターたちは日替わりでバイトをして、稼いだ金はみんなで共有していた。

それはもう家族と言って差し支えないのでは?

ミコトはそう思っていた。


「もう二度と、失ったりしない……」


ミコトは独り言をつぶやいた。


「何か言ったか?」


「何も言ってない……」


ミコトは適当にごまかし、礼拝堂を後にして奥の部屋に向かった。


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