第40話 裁きの剣
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
殺し合いを娯楽としている趣味の悪い連中に捕まったため、施設からの脱出を試みる。
事故で左手を失ったが「半魔法少女化手術」によって再生。その後、両親によって売りに出される。
真実を知った後は、帰る場所が無くなり彷徨い歩いていたら、底辺『奈落』へたどり着く。
「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。
『ベルセルク』
奈落の住民。大きな帽子と眼帯が特徴な魔法少女。
一人称は俺。道端で死んだように生きているロロを魔法少女に覚醒させた。
目的は、ロロの「魔法少女病」を利用し、奈落の住民を魔法少女として覚醒させること。
目論見は見事成功し、エリアCに対してクーデターを開始した。
『ユイ』
奈落に住む少女。レンの妹。
黄色い髪に金色の瞳。姉とよく似ているが、髪は長くない。
「突然いなくなった姉を探す」という願いのもと、魔法少女として覚醒。
魔法少女形態【電気の魔法少女】
長めの黒タンクトップ一枚だけで非常に動きやすい衣装、所々青色に発光している。
電気を操る魔法を使うが、不器用なため姉のように電気で武器を生成することはできない。
そのため、ひたすらに出力を上げ火力にモノを言わせた攻撃を得意とする。
『エリス』
赤いボサボサ髪の女性。体中に傷の後がある。
友好的なロロに対して優しく接するが、価値観の違いにより拒絶される。
クーデターから避難している途中で奈落から帰還したロロと再会する。
ロロと仲直りし、再び友達となる。
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enemy
『ジャッジメント』
大柄な魔法少女。
ロロたちは無事にユイの部隊と合流し、逃走ルートである地下鉄道の駅へ向かっていた。
通路は閑散としている。
ロロたちが来る前から廃れていたような小路。
当然、現在も人の影は見えない。
「……まさかな。まさかこんな通路にネズミがいるとは。」
突然の声にベルセルクは身構えた。
通路の脇から大きな剣を背負った女性が現れた。
ロロと戦った兵士と同じ服装を着ている。
「ということは、敵……!」
ロロの前にベルセルクが立った。
ゆっくりと刀を引き抜き、構える。
「ロロ……、あいつには絶対近づくな。分かったか?」
「え……?」
ベルセルクは珍しく焦っていた。
「ん……、お前は……」
敵が何か言う前に、ベルセルクは斬りかかった。
敵の女性は大剣を軽々と振りかざし、ベルセルクの攻撃を捌いた。
「久しぶりだなぁ、ベルセルク。」
「元気そうだな、ジャッジメント。」
ロロはベルセルクと出会った時のことを思い出した。
ベルセルクは脱走兵だ。
「知り合いなの……?」
「あぁ、敵は俺がもともと所属していた組織だからな。」
ベルセルクはそう答えた。
ジャッジメントと呼ばれる女性は、再び剣を構えた。
しかし、その構え方は奇抜。
大きな剣を真上に掲げた状態で静止した。まるで隙だらけだ。
だが、ベルセルクは攻撃しなかった。
それどころか怯えたように、一歩下がり、後方のロロたちに向かって叫んだ。
「何かに掴まれ!!」
そう言われ、ロロは近くにあった標識の柱に掴まった。
次の瞬間、ジャッジメントの頭上に大きな黒い球体が出現した。
その球体は辺りにある、ありとあらゆるものを吸い込み始めた。
「エリス!!」
ロロは吸い込まれそうになったエリスに手を伸ばした。
エリスは間一髪助かったが、咄嗟に対応できなかった者は黒い球体に吸い込まれていった。
ジャッジメントが剣を振り下ろすと、血の雨が降り注いだ。
ロロは唖然とした。
たった一回の攻撃で、何人もの人が死んだ。
「彼らは、自由になりたかっただけなのに……」
ロロの心の奥底から怒りがこみ上げてきた。
「虐殺がそんなに楽しいのかよ……」
ロロは立ち上がり、ジャッジメントに向かっていった。
ベルセルクはそれを抑えた。
「お前の気持ちは分かる。だが、今のお前じゃどうしようもない。」
「でも……!」
「先に行け、ロロ。こいつは俺が倒す。」
いつになく真剣なベルセルクにロロはそれ以上何も言い返さなかった。
ベルセルクを信頼し、ロロは頷く。
ロロはエリスと共に部隊を先導した。
「誰が通すと言ったよ?」
ジャッジメントが道を塞ぎ行く手を阻んだ。
「こっちだ!」
物陰に隠れていたユイが姿を現し、
身体から電撃を発し、ジャッジメントを攻撃した。
「ぐ……!」
ジャッジメントが体制を崩す。
その隙をつきロロたちは駅へ向かって走り出した。
「ユイ、お前も行って良かったんだぞ?」
「生憎、私は心配性なものでね、ベルねぇ。」
ベルセルクとユイは敵を見据えた。
ジャッジメントはゆっくりと起き上がる。
「お前たちを殺してから、逃げた奴らも殺す。十分間に合う。」
ジャッジメントはそう言うと、剣を構え二人に向かって走り出した。
ベルセルクもそれを見てから走り出す。
ベルセルクの二本の刀、そしてジャッジメントの大剣が交差する。
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「ははは、生ぬるいなぁベルセルク!」
剣戟の嵐の中、ジャッジメントは余裕の表情を見せた。
「何!?」
「所詮、お前は腰抜けの逃亡兵よ!」
ジャッジメントが思いきり切り上げると、小柄なベルセルクは数メートル吹き飛ばされた。
ジャッジメントは一定の距離を保ち、さらに畳みかける。
近づかなければ、ベルセルクの剣は届かない。
ベルセルクは防戦一方となった。
「いいか、ジャッジメント。俺が逃げたのは、戦いが怖くなったからではない。"ヤツ"の悪の顔、そしてその真髄を見たからだだ!」
「安い言い訳よぉ!」
ベルセルクは接近を試みたが、高速で振り下ろされる、大剣の連撃に隙は無かった。
しかし、それでもベルセルクは勝機を見出していた。
「私がいることも忘れるな!」
それはユイの存在である。
ユイは空中から雷を放った。
それにより、ジャッジメントの動きが一瞬止まる。
「今だ!」
その隙にベルセルクはジャッジメントとの距離を詰めた。
「よう、強いだろ?俺の新しい仲間は。」
「クソ……!」
ジャッジメントは剣を振り下ろした。
しかし、それはベルセルクの刀一本に簡単に受け止められた。
そして、もう一本の刀。ベルセルクはしっかりと狙いを定めた。
「終わりだ……!」
ベルセルクの刀がジャッジメントの胴体に突き刺さる。
しかし、ベルセルクは違和感を感じ取った。
勝利した。それすらも打ち消す違和感。
ベルセルクがジャッジメントの顔を見上げる。
ジャッジメントは笑っていた。
口から血を流し、痛みに耐えながらも笑っていた。
まるで、勝ったとでも言わんばかりに。
さらにその上では、ジャッジメントの大剣が天に向かって掲げられていた。
「肉を切らして骨を断つ、とはまさにこのことだな。」
「しまっ……」
ベルセルクが気付いた時にはもう遅かった。
「ジャッジメント・エクスカリバー。」
ベルセルクの目の前に黒い球体が姿を現した。
ベルセルクは為すすべなく、球体に吸い込まれた。
「あの世まで、逃亡するんだな。」
ジャッジメントの剣が振り下ろされた。
「させるか!!」
その間にユイが割って入った。
雷撃を利用した蹴りで大剣を受け止める。
「何!?」
「あああああああっっ!!!」
起動がずれ、ベルセルクは攻撃を回避し、球体から解放された。
「ユイ!」
ベルセルクはすぐに体制を立てなおし、ユイの名前を呼ぶ。
ユイはジャッジメントの足元で倒れた。
「やってくれたな、クソガキ。」
ユイは足を切り落とされ、動ける状態ではなかった。
ベルセルクはユイに駆け寄ったが、ジャッジメントの剣がユイの身体を貫いた。
ユイの身体は真っ二つになり、雑に放り投げられた。
「あの頃のお前は、そんな感傷的な顔はしなかったぞ?」
ジャッジメントはベルセルクを煽った。
「黙れ……!」
ベルセルクは静かな怒りをぶつけ、ゆっくりとジャッジメントに近づく。
「なぁ、どうして奈落の連中に手を貸すんだ?どうしようもないゴミクズばかり。お前の正義の心とかいうやつはどこへ行ったんだ?」
ジャッジメントは近づいてくるベルセルクに質問した。
「昔話はもういい。これは俺の選択だ。」
ベルセルクは答えながら、歩を進めた。
「そうかい……」
ジャッジメントが大剣を振り上げた。
胴体に損傷を受けてもなお、その動きに鈍りは見られない。
大剣が高速で振り下ろされる。
ベルセルクは、それ以上に高速な動きで回避した。
衝撃で地面が割れ、足場が不安定になる。
距離を詰めようとしていたベルセルクの足が止まった。
それを見逃さなかったジャッジメントはベルセルクの足もとを切り払った。
ベルセルクは空中に飛び上がり、それを避けた。
「ありがとよ。全部私の思い通りだ。」
ジャッジメントは剣を真上に掲げてた。
「空中では回避できまい!!ジャッジメントエクスカリバー!」
黒い球が出現し、ベルセルクはそれに吸い込まれる。
「ちぃ……」
ベルセルクは姿勢を制御しようとしたが、上手くいかない。
「無駄なあがきだ!死ねぇ!」
ジャッジメントは剣を振り下ろした。
その瞬間。
「あ……?」
ジャッジメントの動きが一瞬止まった。
足元に目線を向ける。
上半身だけのユイがジャッジメントの足を掴んでいた。
ユイは最後の力を振り絞り、ジャッジメントの身体に電流を流していた。
「このカスどもがぁぁぁぁぁぁぁ!!」
球体から解放されたベルセルクは、空中で姿勢を完全に制御した。
そして、引き寄せられた勢いのまま、ジャッジメントの身体を切り裂いた。
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ジャッジメントが動かなくなったことを確認すると、
ベルセルクは急いでユイの元へ駆け寄った。
「ユイ……、なんて無茶なことを……」
ベルセルクはユイの身体を集め、魔力を使い、縫合した。
「へへ……、あの時と比べたら大したことない……」
「だけど、おかげで助かった。ありがとう、ユイ。」
ユイは嬉しそうに微笑んだ。
「でも、ちょっとだけ眠るね。」
「ああ、ゆっくり休め。」
ベルセルクはユイを背負い、ロロたちの元へ急いだ。




