第38話 戦火は再び
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
殺し合いを娯楽としている趣味の悪い連中に捕まったため、施設からの脱出を試みる。
事故で左手を失ったが「半魔法少女化手術」によって再生。その後、両親によって売りに出される。
真実を知った後は、帰る場所が無くなり彷徨い歩いていたら、底辺『奈落』へたどり着く。
「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。
『ベルセルク』
奈落の住民。大きな帽子と眼帯が特徴な魔法少女。
一人称は俺。道端で死んだように生きているロロを魔法少女に覚醒させた。
目的は、ロロの「魔法少女病」を利用し、奈落の住民を魔法少女として覚醒させること。
目論見は見事成功し、エリアCに対してクーデターを開始した。
『ユイ』
奈落に住む少女。レンの妹。
黄色い髪に金色の瞳。姉とよく似ているが、髪は長くない。
「突然いなくなった姉を探す」という願いのもと、魔法少女として覚醒。
魔法少女形態【電気の魔法少女】
長めの黒タンクトップ一枚だけで非常に動きやすい衣装、所々青色に発光している。
電気を操る魔法を使うが、不器用なため姉のように電気で武器を生成することはできない。
そのため、ひたすらに出力を上げ火力にモノを言わせた攻撃を得意とする。
『エリス』
赤いボサボサ髪の女性。体中に傷の後がある。
友好的なロロに対して優しく接するが、価値観の違いにより拒絶される。
クーデターから避難している途中で奈落から帰還したロロと再会する。
ロロと仲直りし、再び友達となる。
『紅島』
野球バットを持った魔法少女。男。
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enemy
『シルビア』
銀髪で赤い瞳、マフラーをしている。
『ドラグーン』
翼の生えた魔法少女。赤いショートヘアーで黄色い瞳を持つ。
夜が明けた。
か、どうかはわからないが。
炎は消化され、焼け跡だけが残った。
勝利の宴は終わろうとしていた。
ベルセルクは仲間を集めた。
そして、拡声器を手に持ち叫んだ。
「エリアCの都市部はすぐそこだ。しかし、今回のように容易に陥落はできないだろう。犠牲者も出るかもしれない。」
ロロは魔法少女たちの目を見た。
彼らは希望に満ちた目をしている。
数時間前まで臆病だった者たちが、今では勇ましい戦士となっていた。
「だが、我々はもう進むしか道はないのだ!戦え!そして勝ち取れ!自由を!」
ベルセルクが鼓舞すると、魔法少女たちは一斉に拳を掲げた。
雄々しい咆哮を上げた。
その様子を見て、ベルセルクは勝利を確信したかのように笑った。
「進め!!」
号令と共に、部隊は都市部へ向けて動き出した。
ロロもそれに続き歩き出す。
しかし、ベルセルクに腕を掴まれ止められた。
「ロロ、お前はこっちだ。」
「え?」
ベルセルクが指す先には、奴隷市で囚われていた者たちがいた。
エリスやユイもいる。
「エリアCから抜け出すんだろ?だったらこっちの部隊に加わって、裏道から脱出する。」
「でも、先に行った彼らはどうするの……?」
「さあな。」
ベルセルクは興味がなさそうに答えた。
ロロは、それがどういうことを意味するか理解した。
それは、先に行った部隊は犠牲だということ。
「そんな、酷すぎるよ……」
「いいか、ロロ。今回の作戦は一筋縄ではいかない。成功する確率は極めて低い。」
「なら、なんであんな事言ったのさ!!」
ロロは初めてベルセルクに本気で怒りを表した。
ベルセルクの胸ぐらを掴んで、顔を引き寄せた。
「彼らだって死にたくないはず!」
ベルセルクは無抵抗だった。
まっすぐとロロの瞳を見つめている。
ロロはベルセルクを解放した。
「私は一緒に戦う。」
そう言うと、ロロは先の部隊の方へ駆けていった。
「ロロ……」
それを見たエリスはロロの後に続いていった。
「あーあ、あの子、正義感強いからこうなること分かってたのに。」
ユイはあきれながら言った。
ベルセルクはため息を吐いた。
「ユイ、彼らを任せていいか?」
ベルセルクがユイに聞いた。
ユイは快く承諾した。
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エリアC都市部。
通称、終わらない夜の街。
エリアCには太陽の光が届かないため、ビルや街灯の光が街の明かりとなっている。
権力の象徴でもある摩天楼は、地上のエリアAにも引けを取らないほど成長していた。
奈落出身の者からしたら相当珍しいのか、遠くから見た町の光景に魔法少女たちは感嘆の声を漏らした。
ロロたちはようやく先鋒の部隊にたどり着いた。
彼らの士気は高く、ロロたちが全速力で走っても中々追いつけなかった。
ロロとエリスもその夜の街を目にした。
しかし、どうも様子がおかしかった。
まるで本当に太陽の光に照らされているように街が輝いていた。
「あれを見ろ!」
誰かが叫んだ。
一斉にエリアCの天井を見上げる。
「そんな……!」
エリアCの天井に大きな穴が開いていた。
太陽の光がそこから神々しく差し込んでいた。
ロロは久しぶりの光に目が眩んだ。
ロロ以外のほとんどの人は初めて目にする光に戸惑っていた。
そもそも太陽という概念すらないのだ。
神の国。そう呼ぶ者もいた。
感動している場合ではない、ロロはそう思った。
重要なのは、何故今天井が開いたかだ。
ロロは目を細くして、光の方を見つめた。
そして、焼けるような視界の中、特徴的なシルエットを見つけた。
「ヘリコプター?」
ロロの目には、確かにそれがヘリコプターに見えた。
しかし、次の瞬間、それは無数の大きな影となって襲い掛かってきた。
「!?」
ロロはエリスの盾となるように、彼女の前に立った。
降り注ぐ隕石。
回避できなかった者は無残に潰された。
運よく当たらなかったロロは再び、空を見上げる。
「あれは……!」
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その少女は宙に浮いていた。
「あははは!命中!」
少女が地上に転がる魔法少女たちの死体を見て呟いた。
そして、少女は竜のような翼を大きく羽ばたかせた。
「攻撃命令は出してないはずだが?ドラグーン。」
銀色の髪の少女、シルビアはヘリコプターから身を乗り出し、ドラグーンと呼ばれる竜の少女に注意した。
「遅かれ早かれ、やるんでしょ?だったら早めにやっとかないとね。」
ドラグーンはシルビアの命令を無視し、両手を構えた。
後方に大量の魔法陣が出現した。
「終焉の鎮魂歌……」
魔法陣から炎を纏った隕石が出現し、地上の魔法少女に向かって発射された。
「翼を持たぬ魔法少女どもめ……、一方的に蹂躙してやるぞ……」
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ロロたちはパニックになっていた。
奴隷市はあんなに簡単だったのに、都市攻略前に複数死人がでたのだ。
「また振ってくるぞ!」
誰かが叫んだ。
ロロが空を確認すると、また同じような影が出現していた。
「まずい……」
ロロはエリスの前に立ち、防御の姿勢を取った。
「俺に任せろ。」
ロロの前にさらに一人の男が立った。
彼は、魔法少女になった男の一人だ。
「紅島!!!」
そこそこ人望があるようで、期待されている。
彼の手には野球のバットが握られていた。
「俺の力は、今この瞬間のために!」
迫る隕石。
紅島はバットを思いきり振るった。
見事に命中し、隕石はヘリコプターに向かって打ち返された。
紅島のバットの不思議な力が発動したのだろう。
降り注いできた全ての隕石は打ち返された隕石と同じ軌道を描き、敵へ向かっていった。
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「ん?」
ドラグーンは異変を察知した。
そして、すぐに回避行動を取った。
「おわわわ……!」
ドラグーンは巧みな動きで跳ね返された隕石を躱せたものの、近くで飛んでいたヘリコプターの羽に命中した。
「だから、言っただろう。敵も私たちと同じように、魔法少女なんだから。」
シルビアは冷静にドラグーンを叱責した。
「つまんないなぁ……」
ドラグーンは舌打ちをし、高速で街の方へ飛んで行った。
シルビアはドラグーンを冷酷な目で見送ると、仲間に合図を送った。
「いいな、みんな。反逆者は手あたり次第に殺せ。残党は捕虜としろ。散開!」
シルビアの号令が終わると、空中にいた三機のヘリコプターが爆散した。
それと同時に、およそ30人ほどの兵士が空中へ飛び出した。
全員が手練れの魔法少女。
それが、エリア1正規軍魔法少女部隊。
その隊長を務めるのが、例の少女、シルビア。
魔法少女部隊は都市部に向かって降下し、落下傘を広げた。
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「ヘリコプターが墜落した。だけど、人が降りたようにも見えた。」
エリスはそう呟いたが、聞く耳を持つものは居なかった。
誰もが紅島が敵を倒した、と賞賛を送っていた。
「それもそのはず、こいつらは空を知らないし、ヘリコプターも知らない。」
ロロたちを追いかけてきたベルセルクがロロの隣に立って言った。
「今更何しに来たの?」
ロロはベルセルクを突き放すように冷たく言った。
「何しに来たって、助けに来ただけだけど?」
ベルセルクはそう言ったが、ロロは不愉快な顔をした。
「何人か死んだ。知ってたんでしょ。こんなことが起きること。」
「まあな。」
「最低……」
ベルセルクは何も言わなかった。
ロロはさらにベルセルクに聞いた。
「ねぇ、まだ言ってないことがあるでしょ。あなたの目的。」
「言わないとダメか?」
「うん、許さない。」
「おいおい、それが命の恩人に対する態度か?」
ベルセルクはロロをからかうように言った。
「黙りな。」
ロロはそう言うと、エリスを連れて都市部へ向かう魔法少女たちの後について行った。
ベルセルクも仕方ないような感じで彼らの後に続いた。




