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マシックガールズ  作者: まーだ
第三章 デミック・パンデミック
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第35話 希望のパンデミック

☆登場人物☆


『ロロ』

主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。

殺し合いを娯楽としている趣味の悪い連中に捕まったため、施設からの脱出を試みる。

事故で左手を失ったが「半魔法少女化手術」によって再生。その後、両親によって売りに出される。

真実を知った後は、帰る場所が無くなり彷徨い歩いていたら、底辺『奈落』へたどり着く。

「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。



『ベルセルク』

奈落の住民。大きな帽子と眼帯が特徴な魔法少女。

一人称は俺。道端で死んだように生きているロロを魔法少女に覚醒させた。

その目的は……



『ユイ』

奈落に住む少女。レンの妹。

黄色い髪に金色の瞳。姉とよく似ているが、髪は長くない。

魔法少女形態【電気の魔法少女】

長めの黒タンクトップ一枚だけで非常に動きやすい衣装、所々青色に発光している。


時は深夜0時。


エリアCに住む人々は時間感覚が狂っている。

それは太陽の光が届かないという特殊な環境で育ってきたからだ。


起きて、働いて、寝る。

夜も朝も関係ない。


それ故に、身近に暮らしている人たちでさえ、互いの顔を見たことがないこともある。


今日この日までは。


「すっごい人だよ、ベルねぇ!」


アジトの前に群がる人々にユイは興奮し、ぴょんぴょんと跳ねた。


「ああ、そうだな……」


ベルセルクは人々を見下ろした。


発電所の屋上。

比較的高い建物であり、町全体を一望できる。

人々は発電所の周りに大勢集まり、まるで海のように広がっていた。


群衆はベルセルクが招集した。

警報のサイレンを鳴らし、寝ている者も無理やり起こしたのだ。

突然の招集に困惑している人も多い。


次に、ベルセルクは自分の周囲を見渡した。

その場にはベルセルクとユイ以外は居なかった。


「いや……、ロロはどこに行ったんだよ。」


「あ、ロロちゃんなら私の部屋の前の廊下で寝てたよ。」


「バカ野郎、早く連れてこい。」


ベルセルクはあきれながら、ユイを叱責した。

ユイは仕方なく、ロロを呼びに階段を降りて行った。


「さて、始めるかね……」


ベルセルクは床に置かれたマイクを手に取った。


深く息を吸い。

吐き捨てるように叫んだ。


「やぁ、元気かぁ、ゴミども!」


ざわざわとしていた人々は一瞬で静寂とした。

暫くして再び騒ぎ出した。怒りの声。


声自体は届かなかったが、怒りはベルセルクにも届いた。


ベルセルクは続けて言った。


「上の者に搾取されるだけの人生。それが安泰だと決め込んで、引きこもって……それらをゴミだと言って何が悪い!」


ブーイングはさらに増した。


「いい加減、目ぇ覚ませよ……」


賛同するものはいない。

ベルセルクは大方予想通りだと、人々の反応を鼻で笑った。


「ベルねぇおまたせー。」


丁度その時、ユイがロロを連れてやってきた。


ロロはベルセルクを睨んで言った。


「なかなか酷いこと言いますね。」


ベルセルクはロロの誤解を解くため、マイクを切って言った。


「俺も胸が苦しいよー。」


ベルセルクは反省の気持ちを示したが、その表情には反省の「は」の字すら表れていなかった。


ロロは何も言わず、ベルセルクを失望の眼差しで見つめた。


ベルセルクはロロににっこりと笑って見せると再び、民衆の前に立った。


「俺たちは、これからクーデターを奴隷市(スレイヴフィールド)に仕掛ける。別に、ついてこなくても構わない。だが、そうなった場合この発電所は機能しなくなる。中身はとうの昔に売り払っているからな。どういうことか分かるか?今まで通りの生活は、もう二度とできないということだ。」


奈落の電気は全てユイが供給している。

発電所を買ったのはこのためだった。


発電所なのに発電設備がないのもこのため。

ユイが電力供給をやめれば、奈落の人々の生活を支えるライフラインは無くなる。


ベルセルクのこの一言は人々の撤退の道を断った。


人々の怒りの声は徐々に収まり、不安と恐怖に変わっていった。


「ねぇ、ベル……」


人々と同じく、ロロも不安を抱えていた。


「確かに、この方法ならば人々を徴兵できる。しかし、徴兵したところでまともな戦力になるとは思えない。」


ロロがもともと居た『ヒューマンファイト』が行われている奴隷市。

そこでは銃が遊びに使われていた。


武装した兵隊が何人もいる。ロロはそう予想していた。


そして予想通りだった場合。

兵は為すすべもなく殺されるだろう。


たとえ、三人の魔法少女が居ようとも、多勢に無勢。

勝算がまるでない。


「ああ、分かっている。だからロロが必要だったんだ。」


「えっ?」


急なことに、ロロは動揺した。


「直ぐに分かるさ。」


ベルセルクはそう言うと、再びマイクを持った。

そして、スピーカーの音が割れるほどの声を出し叫んだ。


「お前らがここに来た理由は知らないし知りたくもない!だけどよ、このまま負け犬の人生で本当に満足か?一矢も報いずに野垂れ死ぬ人生で本当に満足か? なぁ……!」


ベルセルクは言い終わるとマイクを捨てた。


「目覚めの刻だ……」



突如、ベルセルクの演説を聞いていた民衆の中に光が溢れだした。

あちらこちらで次々と光を放ち、暗い街中を照らした。


ロロは困惑した。


ロロはこの光に見覚えがあった。

これは魔法少女が誕生するときの光だ。


つまり、聴衆の中に魔法少女が次々と生まれだしている。


「どうなっているの……?」


困惑したロロはベルセルクに聞いた。


ベルセルクは答えた。


「魔法少女は病気だ。そして、それは伝染する。」


「私が魔法少女だから……?ベルやユイも魔法少女じゃない。どうして私なの?」


「天道博士のレポートにも記されていない、魔法少女病の感染のメカニズム。いや、ワクチンが完成している今、もはや誰も知る由がないだろう。魔法少女病の感染源は、お前のような魔法少女になりたての人なんだよ。正確に言えば、魔法少女は固有の魔法を形成する、それまでの間だな。」


「私が……感染源。」


「気を悪くするな、ロロ。感染しても魔法少女になるかどうかは個人の選択だ。お前のせいじゃない。まぁ、こんな状況じゃ選択肢はないがな。」


魔法少女が誕生する条件。

それは絶望の中で希望を抱くこと。


あまりに抽象的な言い方だが、ロロは自身の感覚で理解していた。


奈落という劣悪な環境は魔法少女を生み出すには最適ということ。

感染源となる魔法少女とほんのちょっとの希望さえあればいいのだから。


「みんな痩せ我慢していたんだ。」


「そういうこと。」


魔法少女となった者はさらに他の人を魔法少女にする。

光の連鎖が終わるころには実に8割の聴衆が魔法少女と化していた。


「少女?じゃないのもいるみたいだけどねぇ……」


ユイは電線にぶら下がりながら言った。

魔法少女とはいったものの、年齢や性別に無理のある者も多い。

というより、むしろそちらの方が多いぐらいだ。


「年齢や性別は関係ない。全員、魔法少女だ。」


ベルセルクは適当に言った。


ロロは奇跡の光景を暫く眺めた。


数は数百人。

これだけの魔法少女がいれば、クーデターは間違いなく成功する。


しかし、ロロの心にはまだ、不安が残っていた。

それはベルセルクの目的が不明だということ。


発電所買収から現在に至るまで、ベルセルクは緻密な計画を練っていた。

そしてその計画はロロが奈落にやってくることで成功した。


クーデターの目的がロロに対する親切心でないことは明らかだった。


ロロは勇気を出してベルセルクに聞いた。


「ベル。少し、話を聞いてもいい?」


「ああ、あとでな……」


ベルセルクはそう言うと、再びマイクを手に取り、聴衆に語りだした。


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