第34話 アジト
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
殺し合いを娯楽としている趣味の悪い連中に捕まったため、施設からの脱出を試みる。
事故で左手を失ったが「半魔法少女化手術」によって再生。その後、両親によって売りに出される。
真実を知った後は、帰る場所が無くなり彷徨い歩いていたら、底辺『奈落』へたどり着く。
「希望がなくても前に進む」と決心し、本物の魔法少女として覚醒。
『ベルセルク』
奈落の住民。大きな帽子と眼帯が特徴な魔法少女。
一人称は俺。道端で死んだように生きているロロを魔法少女に覚醒させた。
『ユイ』
奈落に住む少女。レンの妹。
ベルセルクはバイクに乗り、ロロはベルセルクの肩に掴まっていた。
バイクは薄暗い道をそれなりのスピードで進む。
「この辺りは奈落の中でもさらにヤバい所だ。そこら中に死体が転がっていただろ。あれは人体実験の後だ。」
「人体実験、それってもしかして……」
「お察しの通りさ、デミ化手術の実験。魔法少女が発見されてから、デミ手術の技術が確立するまで二年。超高速な技術の確立はいくつもの犠牲が必要だったのさ。」
ロロは道に転がる死体を横目で眺めた。
「私も、ああなっていたのかな……」
「それは違うと思う。人体実験を行っている間は町が活性化するからな。今は休止状態さ。」
この辺りにはしっかりとした建物がいくつも建っている。
しかし、明かりがついている建物は1つもなく、廃墟同然だった。
ロロはふと疑問に思った。
「じゃあ、私はなんで捕まったの……」
ベルセルクは真顔で答えた。
「嗜好用に飼われていたかもな。お前はかわいいからな。」
ロロは顔を引きつった。
「それはそれで嫌だ。」
バイクは暗いトンネルを抜けた。
外に出ると辺りは活気にあふれており、ロロはいきなり飛び込んできた光に目がくらんだ。
そこでは人々が商売をしていた。
子供たちが楽しそうに遊んでいた。
大人たちが酒を飲みながら笑っていた。
無法地帯といってもそれなりに秩序はあるようだ。
だが、ロロは大きな矛盾に疑問を抱いた。
「こんな場所で、どうして笑えるのだろう……」
「不思議だろうな、お前にとっては。こいつらは外の世界を知らない。ここでの暮らしが幸せだと思い込んでいる。」
ロロは言葉に詰まった。
この地下世界で初めて会った人物、エリスのことを思い出した。
エリスも彼らと同じように、エリアCでの生活が至高だと考えている。
ベルセルクは続けて言った。
「ここより幸せな場所があると言っても信じないさ。」
「私、彼らに外の世界を見せてあげたい……」
ロロはベルセルクにそう言った。
ベルセルクはロロの言葉に少し驚いた、そして、すぐににやりと笑った。
「ふふ、話がスムーズに進みそうで助かるぜ……」
バイクは人気のない小道に入った。
そのまま猛スピードで突進し、開けた場所に出た。
「ついたぜ、俺のアジトだ。」
ロロは目の前に聳える大きな建物を眺めた。
その建物は周りに電線を張り巡らせていて、至る所で火花がパチパチと音を立てていた。
「発電所……?」
「ああ、1年ぐらい前に買った。といっても無理やり奪ったようなもんだが。奈落の電力は全てここで提供している。」
ベルセルクはそう言うと、アジトの中に入って行った。
ロロはアジトの中を覗いた。
外と同じようにあらゆる場所で火花が舞っている。
「漏電しているみたいだけど……」
ロロはベルセルクに言った。
「うーん、ちょっと頑張りすぎてるみたい……」
ベルセルクはそう言うと、アジトの奥へ進んでいった。
ロロも後に続いた。
ロロとベルセルクが暫く進むと、とある部屋の奥から明るい光が漏れだした。
辺りが暗いだけにその部屋はやけに明るかった。
ベルセルクが扉を開けると、部屋の中から雷があふれ出した。
ロロは驚き、後ずさりをした。
ベルセルクは何の躊躇もなしに部屋に入っていった。
ロロは部屋の外からその様子を眺めた。
「あークソッ、今の当たってないだろ!チートだ!チーター乙!」
可愛い声で可愛らしくないことを言う少女がゲームをしていた。
少女の身体は雷撃で包まれており、金色の髪の毛は逆立っている。
「ユイ、ちょっと電気出しすぎかな、もうちょっと抑えていいよ。」
「はいはいー。」
ユイはゲームのコントローラーを投げ捨て、ベッドでふて寝をした。
ロロは恐る恐る部屋に入った。
そして、寝ながらもなおバチバチと電気を発する少女を見て言った。
「なんなの、この子……」
ベルセルクは答えた。
「こいつはユイ。一年半ぐらい前かな、奈落に落ちてきた。捨てられたんだろう。性格がアレだしな。」
「うっせーな。聞こえてるぞ、ベルねぇ。」
ユイは起き上がりベルセルクに文句を言った。
そして視界に入ったロロを見つめた。
ロロは目を逸らした。
「へへ……、私はユイ。見ての通り魔法少女だ。この町のみんなの電気は私一人で供給してるんだ。すげぇだろ?」
まるで奴隷。
ロロはそう思った。
ロロはユイに聞いた。
「あなたはそれで満足なの……?」
ユイは手を広げ自分の部屋をアピールした。
テレビに最新のゲームや漫画、ベッドに冷蔵庫。
とても奈落での生活とは思えないほど設備が充実していた。
「見れば分かるだろ?ベルねぇは私の欲しいものなんでも用意してくれるんだ。私は大満足だね。」
「そう……」
「それに、もうすぐ面白いことが始まるんだ。それまでの辛抱と思えば、なんともないぜ。」
ユイは不気味な笑みを浮かべた。
「何なの……」
ロロはユイに聞いた。
しかし、ユイは再び横になり、布団に籠った。
次にロロはベルセルクの方を向いた。
早く教えてくれと言わんばかりの視線を送る。
「ああ、分かった。これから何をするか、言おう。」
ベルセルクは右手を挙げ人差し指を立てた。
「クーデターだ。」
ベルセルクは声高らかにそう宣言した。
しかし、ロロにはいまいち伝わっていなかった。
「私は別に、ここから出たいってだけで……」
ベルセルクはロロの肩に手を回し言った。
「安心しな。ロロは混乱に乗じて脱出を図ればいい。その方がコソコソ隠れて逃げ出すより安全だ。ただ、ちょっとだけ協力してもらうがな。」
「協力って?」
ロロが聞き返すと、
ベルセルクはにやりと笑った。
「そのうちわかる。まあ今日の夜ぐらいにな……」
ベルセルクはそう言い、部屋を後にした。
「私も寝るから、この部屋から出てってね。」
ユイはロロに冷たく言い放った。
ロロは仕方なく部屋から出た。
「クーデター、か……」
ロロは一人で呟いた。
本当にそんなことが可能なのか。
町の住民は外の世界のことを知らない。
反対されるのではないか。
そして、もし住民が立ち上がったとして勝ち目はあるのか。
魔法少女がいるとはいえ、たった数人。
乱戦の中、不意を突かれればあっさりと死ぬ。
あまりにも無謀な作戦であると思える。
ロロはそんなことを考えているうちに、疲れからか眠りについていた。




