第32話 ウツロトリップ
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
殺し合いを娯楽としている趣味の悪い連中に捕まったため、施設からの脱出を試みる。
事故で左手を失ったが「半魔法少女化手術」によって再生。その後、両親によって売りに出される。
真実を知った後は、帰る場所が無くなり、ふらふらとどこかへ歩いて行った。
『エリス』
赤いボサボサ髪の女性。体中に傷の後がある。
友好的なロロに対して優しく接するが、価値観の違いにより拒絶される。
『ベルセルク』
エリアCよりさらに下、奈落の住民。大きな帽子と眼帯が特徴な少女。
『奈落』
エリアCにはそう呼ばれる場所がある。
地上の世界で真っ当に生きることを許されなかった者が住まう。
人間社会から隔離された吹き溜まり。
殺し、盗み、そして奪い合う。
暮らすものは皆、こうして毎日を過ごす。
生きている地獄。それが奈落。
「生きてるか?」
その声に反応し、ロロは静かに頷く。
何故、自分がこのような場所にいるか。
ロロは全く理解できなかった。
理解しようともしなかった。
ロロにとってここが地獄だろうが天国だろうが、全てがどうでもよかったのだ。
「痛い目に会いたくなかったら、食いもんよこしな。」
フードを被った男はポケットからナイフを取り出し、ロロの目の前にチラつかせた。
「どうぞ……」
ロロはそう言い、自分の左手を前に出した。
「どうぞって、何もねぇじゃねぇか……」
男はロロの左腕をじろじろと見つめた。
しかし、ロロは食べ物らしきものは1つも持っていなかった。
「私の左腕を千切って食べればいい……」
そう言い、ロロは男の顔を睨んだ。
「チッ……、気味悪いことしやがって……」
男は地面に唾を吐き、その場から立ち去った。
ロロは上を見上げた。
この世界に空は無い。
しかし、天井に張り巡らされた照明はまるで星のように輝いていた。
「はは……ははは……」
ロロは壊れたロボットのように笑った。
ロロは高架下の暗がりで一歩も動かず、ただ星だけを眺める生活を送っていた。
デミとなったロロには死ぬ方法すら見当たらなかったからだ。
「食っていいのか?それ。」
「は?」
ロロが目線を下に戻すと、そこにはロロと同い年ぐらいの幼い少女が立っていた。
少女はロロの左腕を両手で丁寧に持ち上げ、それに噛り付いた。
「いだだだだだだ……!」
ロロが腕をブンブン振り回すと、少女はあきらめてロロの左腕を離した。
「何するんだよ……」
ロロは自分の左腕をさすった。くっきりと歯型が残っている。
「食べていいって言ってたじゃん……」
少女はロロの隣に座り、ぶつぶつと文句を言った。
「冗談よ……」
ロロもまさか食べられるとは思ってもいなかった。
ロロは少女を見つめた。
服はロロと同じくボロボロだったが、髪や肌は綺麗で整っていた。
ロロはこの少女が本当に奈落の住人かどうか疑った。
「ところで、あなたは……」
少女はその言葉を待ってましたと言わんばかりに勢いよく立ち上がった。
そしてロロの目の前に立ち、言った。
「俺の名はベルセルク。よろしくな。」
ベルセルクと名乗る少女は適当なポーズを決めた。
ロロはあきれてため息を吐いた。
「女の子の名前じゃないでしょ、ソレ……」
ベルセルクは照れ笑いしながら言った。
「ああ、あだ名が定着しちゃってな。俺もこの名前は好きじゃない。可愛くないし。だから、俺のことはベルって呼んで欲しい。」
ベルセルクは再びロロの隣に座り、ロロの肩に手をかけた。
「俺のこと教えてやったんだぜ。お前も教えてくれよ。な?な?」
ロロはベルセルクに言い寄られ、しぶしぶ答えた。
「私はロロ、それだけ。」
ロロはそう言い、そっぽを向いた。
ここの住民はロロのように仕方なく流れ着いた者も多い。
しかし、そういった者も含めて、全員が悪意を持っている。
ロロは誰一人信用しないと決めた。
と言うよりは、もはやロロは人間そのものを信用できなくなっていた。
「ロロ……いい名前だね!」
ベルセルクはロロの顔を覗き込みながら笑顔で言った。
ロロは驚いて後ずさりをした。
「もう帰ってくれない?あなたといるととても疲れる……」
ロロはベルセルクに冷たく言い放った。
ベルセルクは寂しそうな顔をした。
「そっか、また来るよ!ロロ!」
ベルセルクは手を振りどこかへ駆けて行った。
「おもしろいやつ……」
ロロは独り言をつぶやき、クスっと笑った。




