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マシックガールズ  作者: まーだ
第三章 デミック・パンデミック
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第29話 エスケープ・フロム・ヘブン

☆登場人物☆


『ロロ』

主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。

起きたら暗い部屋に閉じ込められいて、その後何故か殺し合いをさせられた。


『エリス』

赤いボサボサ髪の女性。

体中に傷の後がある。

「よぉ、元気?」


エリスはロロの部屋の鉄格子を開け、中を確認した。


ロロは部屋の隅で足をかかえ座っていた。


「飯ぐらい食え、死ぬぞ?」


エリスは持っていたパンをロロに差し出した。


ロロは何も言わず、それを拒んだ。


ただ何もない一点だけを見つめ、震えていた。


「よく頑張ったよ、ロロ。」


エリスはロロをやさしく抱擁した。


「ロロなら次も勝てるよ!」


ロロはその言葉に反応し、初めて口を開いた。


「は?」


ロロはエリスの手を振りほどいた。

そして叫んだ。


「次?次って何!?また私に殺し合いをさせるの!?まるで見世物じゃない!あんなのおかしいよ!」


エリスは驚いた顔をしていた。


「まるで見世物?そうだけど……」


皮肉交じりの疑問ではない。

エリスは純粋無垢な瞳をしていた。


ロロはエリスを嫌悪した。

価値観がまるで違う。人の命をまるでゴミのように見ている。


「こんな場所、もう嫌だ……」


ロロは再び蹲った。


「大丈夫だよ。ロロなら勝てる。ロロの反射神経すごかったじゃない。」


エリスはロロの頭を撫でようとした。


「うるさい!」


しかし、ロロは差し伸べられたエリスの手を弾いた。


「ロロ……」


エリスはロロが何も口を聞いてくれないことを悟ると、静かにロロの部屋から出て行った。


「絶対にここから出てやる。そして帰るんだ。私の家に……絶対に……!」


ロロはエリスが出て行ってから暫くして、そんな独り言をつぶやいた。


ロロの瞳にはまだ希望の光が残っている。


----------


「おはようございます。エリスさん。」


早朝、ロロは食堂にいるエリスに話しかけた。


施設での生活は奴隷というほどひどくなく、囚人ほど規則が厳しくはない。

ここに来て一週間ほど経ったロロも満足している。


起床は7時、点呼の後は11時の就寝の点呼まで自由時間。

施設内の設備は充実、何一つ苦になることはない。

仕事もせず、ただで飯を食べることができる最高の施設だ。


殺し合いの見世物にされるということ以外は。


『ヒューマンファイト』

それは奴隷に殺し合いをさせ、それを見て楽しむ娯楽。

一対一や複数人のバトルロイヤルなどルールは様々。

人の血や死、醜い争いを見て楽しむ極悪非道な娯楽である。

奴隷のオーナーは見物料を得ることで生計を立てる。

と言われているが、ほとんどのオーナーには別の収入源があり、奴隷を飼うことは娯楽の一部だと考えている。


奴隷の死を悼む者などいない。ただの道具に過ぎないからだ。


ロロはあの日以来、ステージに上がったことはないが、その日はいつ来るかは誰にもわからない。

まるで死刑宣告だとロロは思った。


先日、ロロは施設内で知り合った少女が連れていかれるのを見かけた。

ロロは嫌な悲鳴を聞いた。

その日以来、ロロは少女と会っていない。


ロロのここから脱出したいという意志は1週間経っても変わっていなかった。


ロロはエリスとの親睦を深めた。エリスはここの施設のトップ。

オーナーという訳ではなく、言わば現場監督だ。

有益な情報を引き出すため、ロロは内心嫌悪しながら、エリスと付き合った。


「おはよロロちゃん。元気そうね。」


「うん、もう慣れたよ、ありがと。」


心にもないことを言い、ロロはエリスの隣に座った。

ロロはエリスと親睦を深めるうちに、エリスのことを理解し始めていた。


エリスは幼い頃この施設のオーナーに拾われ、それ以来『ヒューマンファイト』の見世物として育てられてきた。


物心つく前に殺しを教えてもらった彼女に倫理観という概念は無く、相手を殺すことは『何よりも素晴らしく、褒め称えられる行為』だと思っている。

現場監督になってからは奴隷の育成に努めており、ステージに上がることは稀。


時折、『ヒューマンファイト』には賭け事が発生する。

ここ一番というときにエリスは戦場に投入される。


「ここ最近は退屈だなぁ……」


ロロはエリスの事情を聞くうちに、可哀そうだと思うようになった。

倫理観の欠如した狂人だろうと、根はやさしい子なのだ。

それは会話や行動の節々で顕著に表れている。


「飯食べ終わったら、筋トレだな!」


エリスはそう言い、食器を片付けてトレーニングルームへ向かった。


ロロは運動が苦手だった。

だが、エリスと付き合っていく上で仕方ないと思った。


ロロも急いで飯を食べ終え、エリスに続いた。


トレーニングルームも非常に充実している。

一般的なジムにある機械はもちろん、射撃場もある。

あくまで、銃を撃つ感覚を味わえるだけのおもちゃだが。


どうせ死ぬ身だと考えている者も多く、利用者は少ない。


ロロはふと思った。

もし、自分が死んだらエリスは悲しんでくれるのだろうか。


ロロはランニングマシンで走りながら、さりげなく隣にいるエリスに聞いた。


「んー、考えたこともなかった。ロロちゃんなら、そうそう死ななそうだからね。」


エリスはそう答えた。

ロロは今にも死にそうなぐらい息を切らして言った。


「あなたは長い間この施設に居たんでしょ?私以外に……その、友達は居なかったの」


「居ないね。自分から話しかけてきたのは、あなたが初めてだ。」


エリスは悲しい顔一つしないで言った。


エリスは孤独だった。

というよりは受け入れてもらえなかった。

そのやさしさは一方的なものであったから。


ロロも最初は嫌悪していた。

脱出するという希望を抱いていなければ、関わることを拒絶していただろう。


きっと自分が死んでもエリスは涙を流してはくれない。

悲しみ方すら分からないのだから。

ロロはそう思い、少し悲しくなった。


----------


外の景色は見れないため、奴隷にとって時間を確認する方法は時計しかない。

しかし、その針が進む度、奴隷たちは恐れ震えあがる。


深夜零時。それは死刑宣告の時間。

『ヒューマンファイト』は深夜行われるため、連れていかれるとしたらその時間だ。


就寝の時間は11時だが、時計の音が静かな部屋で響き、寝れたものではない。

他の奴隷の悲鳴を聞くことで、初めて安心して寝ることができるのだ。


ロロも例外ではない。


足音が聞こえたら目を瞑って祈る。

過ぎたことを確認するために目を開く。


誰もいない。


ロロはほっとしてベッドに倒れた。


………


「おめでとう!選ばれたのは君だ。」


ロロは突然の声に起き上がった。

ライトがロロに照らされる。


「え、嘘でしょ……」


部屋の外にはエリスと複数の黒服が立っていた。

黒服はロロの取り押さえ拘束した。


そしてロロの両肩をを持ち、そのまま運び出した。


「ああぁぁ!エリス!助けて!!」


ロロはエリスに助けを求めた。


しかし、エリスは背中を向けたまま振り返らない。


二人の距離はどんどん離れて行った。


ロロは何度も叫んだ。


「エリス!」


エリスはとうとう振り返って言った。

エリスの笑顔を見て、ロロは安心した。


「じゃあね。ロロちゃん。」


あざ笑うかのようにエリスは言い放った。


「嫌……」


ロロは絶望した。

分かってはいた。

自分はエリスの仲間ではない。

だが、エリスに裏切られたような、そんな感情がロロを取り巻いた。


黒服はロロを雑に投げ捨てた。


「ちょっと……」


ロロはしりもちをつき、痛みを感じながらもゆっくりと起き上がった。


そこはロロがあの日見たステージそのままだった。

ロロの目の前には銃を構えた少女が立っている。


そしてすぐにカウントダウンが始まる。


「あれ?」


ロロの手には銃はない。

周りを探したが見当たらない。


カウントは無慈悲にも「0」を宣告した。


「待って……」


ロロは静止しようとしたが、少女の銃は放たれた。


----------


「!!」


ロロは目を覚ました。

起床を知らせるアラームが施設全体に鳴り響いた。


「また、夢……か。」


ロロは毎日悪夢を見る。

自分が殺される夢、他の少女を殺す夢、様々だ。

肉体的な疲れは取れるが、精神的な疲労は溜まるばかり。


「はぁ……」


ロロはため息をついた。


だが、ロロは数日前に脱出するあてを見つけた。


この施設には出口は二つ存在する。


一つ目は食材などを施設内に運び入れる一般的な出口だ。

この出口は厳重な警備の上、先が不鮮明になるほど何重にも扉を重ねている。

脱出は現実的ではない。


もう一つは、死体処理用の出口。

3日に1度の頻度で死体を運び出すためのトラックがやってくる。

トラックは施設内に直接入ってくるため、その出口は道路に直通している。

そして、ここを管理しているのは現場監督であるエリスだ。

つまり彼女の目さえ盗むことができれば脱出できる。


ロロは二つ目の出口から出ることを考えていた。


エリスは他人から恐れられているが、ロロに対しては妙にやさしい。

ロロは申し訳ないと思いつつ、その隙をつくことにした。


「とはいえ、どうやってあそこまで行くか……」


二つ目の出口の存在はロロがエリスから聞き出したものである。

確かに存在はするものの、そこへたどり着く手段をロロは知る由もなかった。


ロロは刻々と過ぎていく時間に焦燥を感じていた。


そして、ついにその日は来てしまった。


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