第28話 ロロ
☆登場人物☆
『ロロ』
主人公。白いボブヘアの少女。瞳の色は水色。
目を覚ますと、暗い部屋の中だった。
『エリス』
赤い髪の女性。
「パパー!見て見て!」
少女は父に画用紙を広げて見せた。
人の顔の絵だ。
クレヨンでぐしゃぐしゃに描かれている。
子供がありのままに描いたよくある作品だ。
「ははは、ロロは絵が上手いねぇ。」
父はロロの頭を撫でて微笑んだ。
ロロもまた嬉しくて微笑んだ。
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「……!」
ロロは目を覚ました。
自分の知らない天井、そして壁。
「おかしい……」
ロロはベッドから降りる。
木製のベッドと机、
暗くて判別しにくいがそれ以外のものは特にない。
しかし、ロロはそこが自分の部屋でないことを理解していた。
ロロは再びベッドに戻った。
「これは夢だ。」
ロロはそう呟き、目を瞑ろうとした、その瞬間。
部屋の外から明かりが漏れた。
ロロはその明かりの方を見た。
不自然な縦縞の影、それが鉄格子だと気づくのに時間はかからなかった。
ロロはベッドから飛び降り、鉄格子を掴む。
「な、なんだこれ……」
ロロは鉄の冷たさを肌で感じ取り、現実が夢ではないことを確信した。
ではどうして、このような状況にあるか。
ロロは部屋の外の景色を見ながら考えた。
部屋の外は同じような鉄格子の部屋が複数あった。
それ以外に何もない。
「私、逮捕されたの……かな?」
ロロには心当たりは全くなかった。
それどころか、前日自分が何をやっていたか、自分が今何歳なのかすら思い出せなかった。
本当に長い間、眠っていたような感覚だけが残っていた。
「目、覚ましたかい?」
ロロの目の前の通路の奥から、声が響いた。
「誰……?」
声の主は何も言わず、ロロの部屋の前まで歩いてきた。
その女性は赤い髪に鋭い目。
顔にはいくつもの切り傷の跡があった。
明らかに普通の人ではない、ロロは怯えた。
その様子を見て、赤い髪の女性は笑顔を見せた。
「元気そうだな。」
鉄格子の扉が開いた。
ロロは周りを気にしながらも部屋を出た。
「ついておいで。」
女性はそう言うと、通路の奥へ歩き出した。
ロロは言われるがまま、その女性について行った。
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ロロが連れてこられた部屋は更衣室だった。
しかし、ただの更衣室ではない。
高級マンションのロビーのような広さ。
豪華な装飾そして、大きなシャンデリア。
ロロはその真ん中に立たされた。
周りには赤い髪の女性以外に人はいない。
女性はロロの服を無理やり脱がした。
「ちょっと!?」
ロロは抵抗したが、その女性の力が強すぎて歯が立たない。
結局、ロロは赤くて華やかなドレスを着させられた。
ロロは不安になって聞いた。
「ねえ、ここは一体どこなの、私は今から何をするの?」
赤い髪の女性は部屋から出て行った。
「私の名前はエリス。生きていたらまた会おう。」
エリスは去り際にそう言い、手を振った。
出口の扉は閉まり、鍵のかかる音が鳴った。
「え……?」
生きていたら。
ロロはその言葉に疑問を感じた。
まるで、死ぬ可能性があるかのようだ。
しばらくその場でとどまると、出口とは逆の扉が開いた。
ロロは不安を感じながらも、とりあえず、その扉の方へ歩き出した。
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扉の先は、広いコンサートホールのような場所だった。
ロロが入場すると、大声援に包まれた。
「すごい……」
観客席は360度すべて大勢の客で埋め尽くされている。
ロロは大人気アイドルにでもなったかのような気がして、気分が上がった。
「よくわからないけど、なんだか楽しそう……」
ロロが感心していると、後方から黒い服の男が寄ってきた。
黒服はロロの右手に何かを握らせた。そして、すぐに走り出した。
「ん?」
確かな重みと厚み。
ロロの手に拳銃が握られていた。
その重みは、拳銃が偽物のおもちゃでないことを示している。
この華やかな場に全く似合わない拳銃。
ロロはこれまで以上の不安を感じた。
ロロの嫌な予感、それは的中した。
ロロの前方の壁が上に動いた。
反対側にも同じ広さのホールが現れた。
そして、ロロと同じぐらいの歳の少女が立っていた。
その少女は泣きながら拳銃を構えた。
拳銃の先はロロ自身。
さらに不可解な状況にロロは混乱した。
観客席からカウントダウンのコールが鳴った。
3秒の間。ロロは頭の中を整理した。
観客席から360度見下ろされるホール。
渡された拳銃。
拳銃を自分に向け泣く少女。
エリスの最後の言葉。
それらが指し示すこととは……
ロロは「0」のコールが聞こえる前に地面に伏せた。
歓声すら消し飛ばすほどの破裂音。
対面に居た少女の拳銃から弾が発射されたのだ。
弾はロロには当たらず、後方の壁に命中した。
「ああぁあぁぁぁ!!!」
少女は悲鳴を上げ、膝から崩れ落ちた。
ロロはゆっくりと立ち上がった。
周りを再確認する。
観客は先ほどと変わらず、楽しそうにロロを見ていた。
しかし、ロロにはその笑顔は邪悪に満ちているように見えた。
これは殺し合いだ。
自分たちを見世物にしているのだろう。
ロロはそう判断した。
状況は理解したが、ロロはなぜ自分がこんなことをしているのかが分からなかった。
突如、観客席から怒号が響いた。
「なにボケっとしてる!」
「モタモタすんな!」
「早く殺せ!」
これは自分への命令だ。
ロロは自分に渡された拳銃を見つめた。
相手の少女は一発撃ったきり、地面に伏せて泣いていた。
一発撃ったことで恐怖を感じたか、それとも弾が一発しかなかったか。
おそらく後者だろう。と、ロロは判断した。
ならばどういう状況か。
ロロは理解した。
確実な勝利だ。
歓声は「殺せ」というコールに変わった。
ロロは頭の中を整理するため、四方八方から聞こえてくる雑音に耳を塞いだ。
引き金を引けば、自分の勝利だ。
おそらくそれで自分は解放される。
では引き金を引かなかったらどうなるか。
二人とも解放される?
そんな雰囲気ではない。
新たな銃を渡されるか。それとも、問答無用で殺されるか。
「わからない。」
ロロは考えるのを止めた。
そして、銃を少女に向けた。
「わからないことだらけだ。」
ロロに恐怖が纏わりついた。
その恐怖を取り除く方法。
それはたった一つ。
「でも、最初に撃った、あなたが悪い。」
ロロは引き金を引いた。
少女の絶望の表情がロロの瞳に写った。
弾丸が少女の身体を貫くまでの時間。
ロロはその時間が永遠に感じられた。
「……!」
ロロは大歓声に包まれた。
全てが賞賛だった。
まるでアイドルのライブが終わったときのような。
ロロは笑顔で手を振り返した。
そして、開いた出口からその場を後にした。
血だまりに倒れた少女を視界に入れないようにして。




