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マシックガールズ  作者: まーだ
第一章 魔法少女という病
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第2話 ミッコとミオ

☆登場人物☆


『衛堂ミコト』

主人公。17歳。

黒のショートボブヘアで赤い瞳の少女。

至って普通の女子高生。頭は良くない。

育ての親を失い喪失感に駆られていた所、人外の化け物「マジン」に襲われる。

「死にたくない」という願いを抱き魔法少女として覚醒する。

魔法少女形態【???の魔法少女】

まるで医者の白衣のような衣装。グローブとブーツは白色だが、白衣の下は黒いタイツ。

頭には二本の丸っこい角が生えている。

白衣の裏から尻尾が伸びており、尻尾の先は注射器のようなデザインになっている。

白衣には緑色の線がデザインされている。それはサイリウムのように発光しており、ミコトの心臓の鼓動に合わせて心電図のように波を流す。



『奏美音』

もう一人の主人公。17歳。

地面擦れ擦れの長さの青いポニーテールと青い瞳の少女。

ミコトより色々とひと回り大きい



『ゆずりは』

ミコトの親友。茶色の髪で茶色の瞳。

ミコトとほぼ同じ体格。



『ミコトの担任』

ハゲているおっさん。先生なのでかしこい。

私の名前は衛堂(えいどう)ミコト。17歳。どこにでもいる女子高生。

と見せかけて、実は魔法少女でもあった。


先日の出来事は夢ではなかった。街は崩壊して、目の前で数百人の命が消えた。

ニュースでは爆破テロが起こったことになっているが、その真相を知っているのは私だけである。

しかし、やはり賛美の声も欲しかったので、すこし寂しく思った。


学校のチャイムが鳴る。

校門まであと数十メートルまで来たという所で間に合わないことを悟った。


「……」


昨日の疲れからか体調がすごぶるよくない。


「よし、帰ろう。」


踵を返そうとしたその時、後ろにいた人にぶつかった。

私はバランスを崩して地面に倒れた。


「いてて。」


「大丈夫?」


ぶつかったその人はやさしく手を差し伸べてくれた。

青くて長い髪に、透き通った瞳。明らかにこの国の人ではない。

その人の手はとても綺麗で美しかった。


私の汚れた手でその人の手をつかむのが申し訳ないと思い、私は自力で立ち上がった。


細身で高身長。私も負けてないが。


私が体についた砂を落としていると、彼女はその場を立ち去るわけでもなく、私の前で突っ立っていた。


変な人だな。と私は思った。


ようやく砂を落とし終えると、彼女の方から話しかけてきた。


「あの、もしかして、高校生?ですよね。」


外国人ではない。言葉の発音からなんとなくわかった。

しかし、片言なのは彼女が何かしらの不安を抱えているからだろうか。

次の瞬間、私ははっとした。


「もしかして、転校生の人?」


私は興味津々で彼女に聞いた。

昨日、担任の先生が言っていた。今日、このクラスに転校生がやってくると。

都会であるこの辺には、転校生はしょっちゅうやってくるので、珍しくもなんともなかった。

しかし、自分のクラスに入ってくるとなると、楽しみなものである。


昨日の夕方はとにかく大変だったので、すっかり忘れていた。


「そうです。二年生です。」


彼女は笑顔でそう答えた。

私の予想は間違ってなかった


私は家に帰ろうとしていた体を反対に向けて、学校の方へ歩いて行った。


「早く行こう。間に合わなくなっちゃう。」


彼女は礼儀正しく「はい」と答えると、私の後についてきた。


----------


私はダッシュで教室に飛び込んだ。


「セーフ!」


「アウトだ、バカ者。」


担任といつものやり取りを終え席に着く。

遅刻は成績に響くと言われているが、そんなことには興味なかった。

なので、毎回ギリギリに到着する。


遅れて、扉からひょっこりと彼女が顔を出す。


「こんにちはー?」


周囲がざわめく。

青く長いサイドテールが横に垂れ下がり、地面に付こうとしていた。

校則で髪の色は自由とされているが、茶髪や金髪はいても、青い髪は極めて異質である。

誰もが彼女を噂の転校生だと考えていた。


「やあ、ようこそ奏さん。自己紹介する?」


担任は事前に合ったことがあるのか、彼女の異質さに戸惑うことはなかった。


「はい、じゃあ、一応。」


彼女は黒板の方を向き、しばらくそれを眺めた。

そして、黒板に字を書くのをやめたのか、私たちの方を向き自己紹介を始めた。


(かなで)美音(みおん)。よろしくお願いします。」


美音は一礼した。シャイではあるが、礼儀正しい子だ。


さらに周囲がざわめく。

何もおかしなところはない。いたって普通の自己紹介だった。

いったいなぜ。私はとなりの席の友人である(ゆずりは)に話しかけた。


「みこちゃん知らないの?奏美音。17歳という若さでシンガーソングライター兼ピアニスト。有名になったのは最近だけど、巷で知らない人は少ないよ。」


知らなかった。しかし、そう言われるとなんとなく名前だけは聞いたことがあったような、なかったような。


「有名人か……」


卒業生にはたくさんいるが、現役生で有名人という前例は聞いたことがない。

しかし私には、これがどれだけすごいことかとても曖昧だった。


周囲は私に反して、どんどん盛り上がっていく。

アホな男子どもには遂に告白するものまで現れた。

もちろん、担任に叱られた。


「奏さん。どこでもいいので開いてる席に座ってください。」


クラスには諸事象で開いている席が複数ある。

男子たちは隣の席の友人を互いに押しのけ、美音を自分の隣の席に誘導しようとしていた。


「じゃあ、そこで。」


美音は即座に私の右隣の席を指した。


「えっ?」


動揺した。まさか自分の隣の席を選ぶとは思ってもいなかった。


「みこちゃん、よかったじゃん。」


杠は適当に私を賛美した。

正直に言うとうれしいが、私は彼女のことをよく知らない。


隣の席に美音が座る。流石ピアニストといった所か、座る姿勢も非常に美しい。


「何か顔についてる?」


じっと眺めすぎたせいか、美音が不思議に思ったのか咄嗟に私に聞いてきた。

私も急に質問されるとは思っていなかったので、言葉が出ず、思っていたことを口走った。


「どうして、私の隣に?」


すると、美音はそのままの表情で言った。


「どうしてって、私たちもう友達じゃない?」


不思議そうな表情したいのはこっちだった。

校門でたまたま出会っただけなのに……

美音が元いた学校ではそういう風習でもあったのか?

だけど、嫌な気持ちではなかったので、私はそうだねと笑って返した。


----------


昼休み。予想通り、美音の席の周りには人だかりができた。

普通に仲良くしようとしているもの、サインをねだるもの、懲りずに告白するやつ。


私は静かにお弁当を食べたかったが、今日ぐらいは仕方ないとあきらめた。


しかし、いい笑顔だな。

あんなに楽しそうな顔をしていると、自分まで笑顔になる。


「美音ちゃんのこと、気になる?」


杠が私に話しかけてきた。

彼女は小学生からの幼馴染。ゆずりんと呼ぶと怒るので、ゆずと呼んでいる。


「ゆずりんー」


ゆずはむっとした。

ゆずが怒ったときはタコさんウィンナーをあげると許してくれる。

ゆずはつまようじを取り出し、私の弁当箱からソレをひょいと取り上げ口に運んだ。


幸せそうに食べてくれるので、勝手にとったことを怒る気はない。

そもそも私がわるいし。


「そうだ、今度、美音ちゃん誘ってカラオケいこーよ!」


ゆずはつまようじを咥えながら、手でマイクでも握るような素振りを見せた。

ゆずはいつもは冷静だが、アホな時はアホだ。私によく似ている。


「ばか、美音はプロだぞ?そんな誘いのるわけねーだろ」


ゆずはしょんぼりした。


「なになに、二人で何話しているの?」


そこへ、美音が会話に入ってきた。

いつの間にか美音の周りにいた連中は散り散りになっていた。


「美音ちゃん!今度カラオケ行こ!」


はぁ、このアホは。美音がそんな低俗な場所に行くわけが……


「いいね。行きましょう。」


あれ?


「でも、美音、その、予定とかは?」


意外な反応で私は、美音がOKと言ったにもかかわらず、

NOの選択をさせようとしてしまった。


「大丈夫。案外、暇だよ。」


美音はすぐにそう答えた。

有名人とはいっても俳優とかみたいに毎日仕事があるわけではないのか。

なるほどな。


「で?みこちゃんは行かないのね?」


ゆずがにやにやした笑いで、こちらを見てきた。

とてもむかつくが、これもいつものことだ。


「行かないとは言ってないんですけどー?」


私は若干キレ気味で答えた。

ゆずは私の顔色を確認してもなお、にやにや笑いを止めないでいた。


「じゃあ、これ参加費ね。」


ゆずはそう言うともう一匹のタコさんを食べた。


「あ、最後の一匹だぞ、返せ!」


美音とゆずは笑った。悪魔め。


----------


昼休みが終わり、午後の授業。

食事の後の授業はよく眠くなる。


私はうとうとしながら、先生の話を聞き流した。


美音は真面目に授業を聞いている、偉いなぁ。

杠も起きてはいるが、まじめに授業を聞いているようには見えない。


瞼が重くなる……

抵抗したが、私は眠気に敗北した。



爆発音。

夢の中で昨日の歩道橋の出来事がフラッシュバックされた。


しかし、昨日とは少し違う、やや大きめの爆発音。

私は空を見上げた。瓦礫やガラスの破片が舞っている。


それがだんだん近づいてくる。

鈍い音と共に、私の貧弱な体は瓦礫に押しつぶされた。



「うあああああああ!!!」


私は目覚めた。なんだ夢か。


いや、様子がおかしい。


起き上がって、周りをみる。

教室は爆破実験が行われたかのように荒れていた。

血と煙の匂い。間違いない、何かが起きた。


昨日のような何かが。


「大丈夫?みこ…さん?」


後ろから声が聞こえた。


「美音。」


どうやら、美音は無事のようだ。ケガもしてない。


ゆずは……


辺りを見渡す。

教室の隅で震えていた。よかった。


「何が起きたの?」


私は美音に尋ねた。答えなど気にしてない。

この悲惨な状況を前に、それ以外の言葉が出てこなかっただけだ。


美音はゆっくりと立ち上がり、私に言った。


「ここで、待ってて。ここなら安全だから。」


そう言うと美音は教室を飛び出した。


「美音…?」


私は頭の中が真っ白なまま立ち上がり、美音の後を追った。

何が起きたかなんてどうでもいい。どんな状況かなんてどうでもいい。


でも、なんか。このままあの教室で待っていたら。

二度と美音は戻ってこないんじゃないかって。


たとえ、今日初めて出会った、かりそめの友情でも……

美音を放っておいたら、何か悪いことが起きるんじゃないかって。


何回か瓦礫に躓いて、転んだ。

もう、美音の姿はない。だけど、私の勘だけを頼りに、美音の後を追った。


私は屋上にたどり着いた。


安全のため解放していないはずの扉は壊れているのか鍵がかかっていなかった。

私は扉を開けた。


「美音……」


そこに美音はいた。


そして、その先には人間の姿をした何かがいた。


あの怪物の仲間だろうか。


赤い目が不気味に光る。

歩道橋で見た奴より小さく、大きさは人間程度。

体はうろこのようなものでおおわれており、怪しげな霧が辺りを渦巻いていた。


美音は私に気づいていない。ゆっくりとそれに近づいていった。


「だめだ…美音…」


声がでない。得体のしれない恐怖だろうか。

美音はどんどん怪物に近づいていく。


ふと、思い出した。私は魔法少女だ。


魔法少女は怪物を倒す力を持っている。


魔法少女になれば美音を救える。


しかし、私にはまだ迷いがあった。


その力を正しいことに使おうが、魔法少女は人間の限界を超えた力を持っている。

もし、杠や美音、この学校に人たちにそれを知られたらどうなるだろうか。


美音は私を軽蔑するようなことは絶対に言わない。

そのような人だってことは会った時からわかる。


でも、心の中までは読めない。


嫌われたくない。


「はぁ…」


何を考えているんだ、私は。

嫌われる嫌われないなんてどうでもいいじゃないか。


目の前に救える命があるんだ。救わなくてどうする。

私は勇気を振り絞った。


「でも、魔法少女になるのは最終手段だ。」


私は野球ボール程度の瓦礫を拾い投げた。

瓦礫は怪物の足元に落ちた。


「こっちだ化け物!」


私は怪物に向かって思いっきり叫んだ。


怪物がこちらを見る。

美音も私の方を振り返る。


「あなた!?どうして!」


美音の表情は困惑と怒り。私に対して初めて見せた表情だった。

どうしてはこっちのセリフだってのに。


ともあれ、怪物はこちらを向いてくれた。


正攻法では勝てない。ならばどうするか。


「かかってきな、知恵比べだ。」


まあ、相手は力があるから、知恵比べなんてしないだろうけど。

怪物は私めがけて突進してきた。


「馬鹿正直で助かるぜ。」


私は瓦礫に埋もれていた消火器を取り出した。


それを、怪物に対して吹きかけた。

こいつだって生き物だ、突然のことに驚かないはずはない。

驚かなかったら、私は死んでいたが、幸い怪物はひるんだ。


「じゃあな!」


私は突起した形状の瓦礫を掴んで、敵の目に突き刺した。


私が昨日対峙した怪物には目なんて弱点無かった。

だが、こいつにはあった。

勝機を見出すにはそれだけで十分だったのだ。


怪物はゆっくりと倒れた。


「美音!」


私はすぐに美音のもとへ駆けつけた。


「よかった…」


パンッ、と音が鳴る。


私は突然予想外の方向から攻撃を受けた。

美音が私の頬をはたいたのだ。

私は困惑した。そして、殴られた頬を手で押さえた。

美音は息を切らしながら叫んだ。


「どうして来たの!教室で待っててって言ったじゃん!私は、あなたに、死んでほしくないから!」


美音は泣いていた。


「……」


本当は言いたいことはたくさんある。

どうして、美音は教室を飛び出したのか。

どうして、美音は化け物に向かっていったのか。

死んでほしくないのはこちらも同じだ。と。

でも、必死な美音を見て何も言い返せなかった。


「美音……」


がしっ


と、私は後ろから近づく影に気づけなかった。

怪物に首を掴まれる。


目から赤い光を流していた。

瓦礫を突き刺した目はゆっくりと再生していた。


「がぁっ……」


必死で足を動かし、蹴りを入れる。

しかし、化け物はびくともしない。

首はゆっくりと絞まっていく。

息が苦しい。痛い。


ヤバい、死ぬ……


意識が薄くなる。


ごめん、美音。


「うおおおおおおおおおおああああああああああ!!!」


美音が叫び声をあげながら怪物に突撃した。

怪物は一瞬怯み、私は解放された。過呼吸になりそうなほど息が上がった。


美音が私の隣に倒れこむ。


「生きてる?」


私は今度は物理的に声が出なくなっていたので、

倒れながら親指を立てて見せた。


美音はそれを見てほほ笑んだ。


よかった、やっと笑ってくれた。


その笑顔をみて、安心した。


だから、そのお礼と言ったらなんだけど。

私が、美音を守ってあげるんだ。


私は体をゆっくりと持ち上げ、天に向かって右手を伸ばした。


(強い願いを持った少女は魔法少女になれるんだ)


心の中で思った。それだけだった。

私は虹色の光に包まれた。


白衣にネクタイ。ブーツに黒タイツ。

そしておまけ程度の角としっぽ。

魔法少女と呼ぶには少し華やかさが足りないが、そんなの関係ない。私は魔法少女だ。


最後に、伸ばした右手で剣を取った。


「美音、あなたは私が守る。」


私は左隣にいる、美音を見る。


「……」


そこには美音が立っていた。


さっきまで美音が着ていた制服はスーツっぽい衣装に変わっており、手には剣と盾らしきものが握られていた。


「あー、みこさんも、魔法少女だったんだね……」


一瞬の静寂の後、美音がつぶやいた。

私は苦笑いで返した。


美音が私に尋ねる。


「そういえば自己紹介してもらってなかったね、あなたの名前、みこでよかった?」


私は答える。


「私の名前は衛堂ミコト、魔法少女です。」


美音はふふっと笑うと、こう言い返した。


「私は奏美音、魔法少女よ。改めてよろしくね。」


そして、二人の魔法少女の剣は敵に向けられた。


「詳しいことは後で話し合いましょう、ミッコ。」


「そうだね、ミオ。」


お互い、今、適当に考えたニックネームで呼びあった。

何故かそれがしっくりきたのだ。


私は美音と共に怪物に飛びついた。


私たちの剣は怪物の心臓部を貫いた。

瞬間、黒い霧が晴れ、視界が鮮明になる。


役目を終えた私たち、魔法少女はもとの女子高生に戻った。


怪物は光となって消えた。

屋上から景色を眺めると、グラウンドは校舎の瓦礫で埋まっていた。

そのの先のビル群の隙間から夕陽が差し込んでいた。


それは希望の光だった。


よくわからないけど希望。


そんな光が私と美音を照らしていた。


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