第25話 リンネが死んだ日
☆登場人物☆
『レイス・アタラクシア』
リンネの助手。黒のポニーテールに黒い瞳。
リンネをことを信頼しているが、非人道的な研究態度に対しては懐疑的。
贖罪のため自ら殺されに行くリンネを止めようとしたが、間に合わなかった。
『クロ』
シロの前に現れ殺害予告をした殺人ロボット、性別不明。
名前の通り真っ黒な衣装を着ている。
腕はピンク色の粒子が入った瓶のような形状になっている。
敵であるシロに情を持ってしまい、なかなか殺せない。
「レイス、レイス!」
名前を呼ぶ声が聞こえる。
レイスは目を覚ました。
「どういうことだ、レイス。」
レイスは倉庫で寝ていたところ、他の研究員に発見された。
「所長?」
所長と呼ばれる人物はレイスの胸倉をつかんで言った。
「貴様はここで何をしていたのだと聞いている!」
レイスは思考を巡らせた。
そして、自分がリンネによって眠らされたことを思い出した。
「そうだ、博士は……」
レイスは所長の手を振り払い、倉庫を出ようとした。
「リンネ君は死んだよ。」
所長の言葉にレイスは足を止めた。、
「え?」
所長はため息をついて答えた。
「その様子じゃ、何も知らないようだな。天道リンネは魔法少女の襲来によって惨殺された。死体の回収は既に済ませてある。」
所長は無慈悲にも言い放った。
「嘘だ……」
レイスはその場で崩れ落ちた。
いずれ迎える結末だと理解していても、それを信じたくなかった。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!」
狂ったように、叫ぶ。
リンネが戻ってくるはずもないのに、無駄な叫びを何度も何度も。
その後レイスは精神状態の衰弱により自宅謹慎を言い渡された。
輸送中、レイスは自身のポケットの中に紙きれを見つけた。
そこには、どこかの住所が書いてあった。
レイスは身に覚えがない、リンネが書き残したものだということに気が付いた。
リンネの遺品。レイスはここには何かがあると思った。
「運転手さん、ここに向かってくれる?」
レイスは運転手に紙を渡した。
運転手の粋な計らいで、レイスは紙に記された住所にたどり着いた。
そこには小さなシェルターのようなものがひとつだけあった。
『名前を言ってください。』
レイスが入口に近づくと機械音声が流れた。
「……天道リンネ。」
音声認識なら自分の声が認識されるはずがない。と思いながらもリンネの名前を口にした。
『いいえ、あなたの名前で結構ですよ。レイス様。』
機械音声は小ばかにするように言った。
そしてシェルターの扉はゆっくりと開いた。
「ふふ、リンネらしい……」
扉の奥は暗闇、わずかに差し込む明りによって下へ続く階段が見える。
レイスは足元に気を付けながら地下へ降りて行った。
「これは……」
しばらく階段を降りると、開けた空間になった。
リンネの秘密の研究室。レイスは噂には聞いていたが、その存在を確認することは今までになく、デマかと思っていた。
毎日研究所暮らしのリンネが、いったいいつこの秘密の研究所に訪れたのか。
「……」
レイスは深く考えるのをやめた。
ともかく、レイスは目の前の装置を眺めた。
おそらく、これがリンネの遺品。
黒い髪をした少女が無数の管に繋がれている。
レイスはそれから人特有のにおいを感じなかったため、人形かロボットだと勝手に判断した。
レイスは暗い部屋の中、机の上の紙の束を見つけた。
説明書と書いてある。
レイスはそれに手を伸ばした。
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「あなたが、レイス?」
クロはとあるビルの屋上で一人の女性と出会った。
時刻は深夜。なのにも関わらず、ビルの下に広がる摩天楼は星のような光を放っていた。
屋上自体は殺風景で、レイスは複数個あるベンチの中の一つに座っていた。
「久しぶり、クロ。といっても会うのはじめてか……」
クロはレイスを警戒し、数メートル離れたところで様子を見た。
「そこで話して。」
クロがそう言うと、レイスはクロの過去について話し始めた。
「あなたの本当の名前はクロエ・マキナ。ごく普通の高校生だった。1年前の1月22日、あなたは交通事故にあって大けがを負った。一命は取り留めたものの、全身不随となり、あなたは自分から死を望んでいた。そんなあなたを救ったのがリンネ博士だった。いや、救ったという言い方は語弊があるかもしれない。リンネ博士はあなたを実験台にしたの。」
クロは自らの胸に手を当てた。
心臓の音すら聞こえない自分の身体に不安を感じていた。
だが、真実が判明し、クロは胸を撫でおろした。
「あぁ、その名前を聞いた時、全て思い出した。私は自ら望んだんだ。まともに生きることができる可能性があったから、そちらを選んだ。」
クロはレイスに近寄り、ベンチに座った。
「隣に座っていい?レイス。」
「もう座ってるよね……」
「それで、どうなったんですか?私の身体は。そのあとの記憶がないからどうしても気になるんです。」
クロはレイスに言った。
レイスはクロの頭を撫で、そして話を再開した。
「実験は成功していた。あなたはいつでも動かせる状態だった。だけど、1つ別の問題が発生したの。それは、魔法少女シロの襲来。リンネはシロの恨みを買っていて、シロはリンネを殺す計画を立てていた。リンネは殺されることを危惧してはいなかった。それ以上に、シロへの贖罪をしようと努力していた。そこで、あなたを別の用途で起動することにしたの。希望を持たない魔法少女は死んでしまう。空っぽになったシロに『友達』を与えることでそれを解消しようとした。」
クロは自分の生まれた理由を知ることができた。
しかし、喜びは一切感じなかった。
それ以上に大きな疑問が生まれたからだ。
「でもさ、レイス。なら私はなんでシロを殺そうとするの?おかしいじゃない。友達として作られたなら、こんなに葛藤する必要なんてないのに。」
「……」
「レイス?」
レイスは少し考えてから言った。
「いい?クロ。今から言うことはあまりいい知らせじゃない。心して聞いて。」
レイスはクロの瞳を見ながら、真剣なまなざしを見せた。
クロも覚悟を決め、レイスの話を聞いた。




