第24話 手がかり
☆登場人物☆
『シロ』
その名の通り、髪も目も肌も真っ白な少女。原因はリンネの薬品。
本名はコハク。リンネに渡された毒薬を飲ませ、愛する家族を自らの手で殺してしまい絶望する。
そして「リンネに対する復讐心」のみで魔法少女に覚醒する。
目標を達成し、生きる意味を失った所、クロと出会う。
魔法少女形態【血の魔法少女】
容姿に変化は見られない。薄汚れた白色のTシャツと短パンに黒のコート。
自身の血を自由に操ることができ、体積や硬度などをある程度変化させられる。
自身の血を相手に飲ませることで洗脳する等、かなり応用ができるが、自分の血の残量には注意が必要。
『クロ』
シロの前に現れ殺害予告をした殺人ロボット、性別不明。
名前の通り真っ黒な衣装を着ている。
腕はピンク色の粒子が入った瓶のような形状になっている。
敵であるシロに情を持ってしまい、なかなか殺せない。
次の日
「おはよ、シロ」
元気のないクロの声が部屋に響く。
「あ、うん、おはよ。」
部屋の隅に隠れてクロを驚かそうとしていたシロは、クロの様子がおかしいことに気付きすぐに出て来た。
クロは椅子に座り、何も言わず外を眺めた。
シロはその隣に座った。
「今日は私を殺さないの?」
シロはそう言い、クロの顔を覗き込んだ。
クロは泣いていた。
「クロ……なんで泣いているの。」
クロは自分の涙を拭きとり呟いた。
「私は何のために生まれたんだろう……」
クロは自分の存在理由が知りたかった。
シロを殺すためだけだろうか。
だとしたら、どうしてシロに対して情を持ってしまうのか。
クロは頭を抱えた。
「じゃあ探そっか。」
「えっ……」
クロは上を見上げた。
シロは机の上に立っていた。
「クロの生まれた場所、探せばいいじゃん!手伝うよ!」
シロは満面の笑みで微笑み言った。
暗い部屋に朝の日差しと風が入り込んだ。
部屋の埃は舞い、光を反射し、妖精のように空中に輝いた。
クロの瞳から再び涙が溢れてきた。
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二人は図書館に来ていた。
町の図書館ということもあってかなり広い。
だが、電子書籍が流行したこともあって、利用する人は多くない。
「あのさ、シロ。一緒に探してくれるのはありがたいんだけど……」
シロは眼鏡をかけて、まるで勤勉な少女のように振舞っている。
読んでいるのは電話帳だったが。
「流石にこんなところに私の生まれた場所の手がかりなんてないと思うな……」
クロは文句を言いながらも、それっぽい書類をたくさん集めた。
「ん?」
クロは何かに気付いた。
「シロ……鼻。」
クロにそう言われたシロは自分の鼻を手で押さえた。
シロの手には血がべっとりとついていた。
「!?」
シロは急いでトイレに駆け込んだ。
しばらくして、シロはトイレから戻ってきた。
「大丈夫だった?」
「うん、ちょっと興奮しすぎたみたい。」
「電話帳で……?」
シロのジョークにクロはクスっと笑った。
しかし時間はただ経過していくだけだった。
とうとう手がかりは一切見つからなかった。
帰り際、シロは申し訳なさそうに謝った。
「いいの、そう簡単に見つかるものでもないわ。また明日ね。」
クロはそう言い、手を振って去っていった。
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「クロ、起きて……」
シロの声。
クロは目を覚ました。
「ん、んぁ?」
クロは周りを見渡す。
そこは薄暗い部屋だった。クロはこの部屋に見覚えがなかった。
だけど、そこにはシロがいた。
「え……」
シロは全身から血を流していた。重症だ。
「私は、たぶん大丈夫……ちょっと休憩すれば。」
シロはそう言うと近くの壁にもたれかかって休息した。
「ここは、どこなの?」
クロは辺りを調べた。
四方は鉄の壁、破壊された跡が一つだけ。
部屋の中はSF映画などでよく見る謎の装置。これも破壊されている。
クロは自分が誰かに囚われていたと考えた。
しかし、その予想は外れた。
「ここが、あなたの生まれた場所みたいね。」
満身創痍のシロはそう言った。
「どういうこと?」
クロの疑問にシロが答えた。
「気になったの。クロの住んでいる場所はどこなのか。だからこっそり跡をつけた。大きな研究所だったよ。」
クロ自身は気にしてもいなかった。
毎回、自分がどこに帰るのか。
記憶が消されてたのだ。
何かの組織によって……
クロは何となく察しがついた。
自分は重大な使命を持っているわけではない。
シロを殺すための、ただの道具に過ぎないと。
「ここならあるかもね、あなたの生まれた理由。」
シロはそう言い立ち上がった。
シロのケガは完治していないが、あれだけ重症だったのにも関わらず歩ける程には回復していた。
「いこっか。」
シロはクロに手を伸ばした。
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二人は資料室らしき場所で書類を漁った。
シロとクロが暮らしている国の国家機密は見つかったが、クロに関する情報はなかなか見つからなかった。
「……」
シロはとある書類を見つけ、それをじっと見つめた。
「なになに、魔法少女病?」
クロは横からその書類のタイトルを読み上げた。
シロは何も言わず、それを棚に戻した。
「えぇ、おもしろそうじゃん……」
クロは残念がった。
その時……
「いたぞ!侵入者だ!」
武装した警備隊が書庫に駆け付けた。
「発砲を許可する!」
隊長らしき人物が指示を出すと。
その部下は一斉に部屋に突入した。
「逃げるよ!」
シロとクロは窓ガラスを破壊し、飛び降りた。
高さはビルの5階程度。普通の人間なら生きているのが奇跡の衝撃を受ける。
しかし、クロは難なく着地し、シロは血液を逆噴射し、着地の衝撃を弱めた。
クロは逃走中、一瞬だけ後ろを振り返った。
その研究室はまるで鉄の要塞。
あまりの巨大さに自分の使命の重さを感じ取った。
だけど、クロは迷っていなかった。
どんな組織が相手だろうと、シロを殺しはしない。
シロに殺しもさせない。
シロを守ると決めたのだ。
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深夜、ぐっすりと眠るシロを横目に、クロは1つの書類を取り出した。
それは、シロが意味深に見ていたもの、『魔法少女病』について。
研究所から脱出するときクロはそれとなく持ち去っていたのだ。
クロは月明りの下、その書類を読み始めた。
そこには、マジンや魔法少女の特性などが簡潔にまとめられていた。
「魔法少女は希望を信じるが故に、その希望によって自信を破滅へと導く……か、まるで呪いだな。」
クロは寝ているシロを見つめた。
シロは魔法少女だ。
もしこの書類の内容が正しいのなら、シロも例外なく魔法少女病の弊害を受けている。
クロは少し混乱した。
この書類には「希望を持たない魔法少女は死ぬ」と書かれている。
今でこそ、シロは楽しそうであるが、クロがシロと初めて会った時、シロは希望なんて持っていなかった。
殺してくれと言わんばかりの態度だったのだ。
「所詮、憶測か……」
魔法少女のことなんて、本人しかわからない。
クロは理解をやめ、書類を投げ捨てた。
「?」
書類の隙間から何かが落ちた。
「これは……、手紙?」
クロはそれを拾い上げ、中を確認した。
「!?」
それは他でもない、クロに宛てた手紙だった。
クロは送り主の名前を確認した。
「レイス、アタラクシア……」
クロは、手紙の主の元へ急いだ。




