第21話 コハク
☆登場人物☆
『天道リンネ』
赤色のショートヘアで赤い瞳。
世界的に有名な研究者であり、魔法少女になってしまう病気「魔法少女病」の研究をしている。
「魔法少女病」の特効薬を開発するため、被験体として送られてきた魔法少女に対して、あらゆる実験を行っている。
シロをいじめていたグループのリーダー。
『レイス・アタラクシア』
リンネの助手。黒のポニーテールに黒い瞳。
リンネをことを信頼しているが、非人道的な研究態度に対しては懐疑的。
『シロ』
その名の通り、髪も目も肌も真っ白な少女。原因はリンネの薬品。
自分をいじめた加害者に対して復讐と称し殺しまわっている。
「リンネに対する復讐心」のみで魔法少女に覚醒する。
魔法少女形態【血の魔法少女】
容姿に変化は見られない。薄汚れた白色のTシャツと短パンに黒のコート。
自身の血を自由に操ることができ、体積や硬度などをある程度変化させられる。
自身の血を相手に飲ませることで洗脳する等、かなり応用ができるが、自分の血の残量には注意が必要。
8年前
「恋白……、最近元気ないけど大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ!」
私は母の問いにそう答えた。
嘘だ。
学校ではいじめられ、私の居場所はなくなった。
謎の薬品をかけられ、全身が大やけどしたような痛みに苦しんだ。
耐えたと思えば、翌日、私の髪は白く染まっていた。
学校には怖くて行けなくなったけど、代わりに近くの雑貨屋でバイトをしていた。
学校なんて行く必要がなかったのだ。
私には母がいる。
一人で、私をここまで育ててくれた人。
そんな母に恩返しができる。
それで、私は十分に幸せだった。
母は私を心配してくれたが、そのたびに無理やり笑って見せた。
玄関のベルがなった。
私はすぐに玄関へ向かった。
ここは町はずれの一軒家。
来客なんて、訪問販売ですらめずらしいのに。
誰が来たのだろうか。
私は扉を開けた。
そこにはリンネが立っていた。
私は恐怖で言葉が出なかった。
まさか、家にまで来るとは思っていなかった。
「ごめん……シロ」
リンネの口から出た言葉は意外にも謝罪だった。
私は身構えていたが、リンネには攻撃する意思がないことがわかった。
リンネはこれまでの行いを謝罪した。
こんなひどいことをしたリンネを許したくなかった。
しかし、リンネは初めてできた友達でもあった。
楽しく遊んだ日々を思い出すと、リンネを許してあげようという気持ちも湧いてきた。
そうだ、リンネは周りに流されてそうせざるを得なかったのだ。
きっとリンネは悪くない。
悪いのはヒマリとか周りのやつらだ。
私はリンネを許してあげることにした。
「いいよ、もう。」
リンネは顔を上げた。
「シロ……、ありがとう……」
リンネは笑顔でそう答えた。
邪悪さが一切ない、あの頃のリンネの笑顔だ。
釣られて、私まで笑顔になった。
純粋に笑えたのは、久しぶりだった。
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数日後、リンネは再び家に訪ねて来た。
「どうしたの……」
リンネは大雨の中、傘もささずに走ってきたのか、ずぶ濡れで息を切らしていた。
そしてポケットからひとつのビンを取り出す。
茶色のビンの中には薬らしきものが入っていた。
「私の父さん、医者なんだよね。それも世界一の。」
リンネから受け取った薬、それは私の母の病を治すことができる薬だという。
本来は、このような薬存在しないが、リンネが父に頼み込んで持ってきてくれた。
私は嬉しくて涙が出そうだった。
「あの……シロ。ごめんね。」
リンネはうつむきながら言った。
だけど私はそんなこと、もう気にしていなかった。
学校には怖くて足を運べなかったけど。
「リンネちゃん、ありがとう!また一緒に遊ぼうね!」
私はリンネに手を振った。
リンネは恥ずかしそうにそそくさと駆けて行った。
「さて……」
私はリンネからもらった薬を早速使うことにした。
一日一粒、適当な飲み物に混ぜて使用。
私は冷蔵庫からミルクティーを取り出し、薬を一粒入れた。
薬はすぐに溶けた。
早く治るといいな……
私はそう思いながら、母にミルクティーを渡した。
「なんだかうれしそうね、恋白。」
どうやら私の顔に出ていたらしい。
やっぱり、母には隠し事はできないな。
だけど、薬のことは言わなかった。
母の病気が治ったら言おうと思っていたからだ。
母はミルクティーを口に含んだ。
私はその様子を、嬉しそうに見つめた。
母が元気になったら何をしようか考えていた。
学校でのことも正直に打ち明けようと思っていた。
突然、母がせき込んだ。
「?」
むせたのかな?
私は母に近づいた。
次の瞬間、母は持っていたカップを落とした。
カップはカーペットの上に落ち、ミルクティーのシミが広がった。
母は吐血し、苦しそうに喉を抑えた。
「え?」
私にはどうしてこうなっているのか理解できなかった。
困惑して動けなかった。
「恋白……どうして……?」
母がそう言い、私に顔を向けた。
目は恐ろしいほど充血しており、口や鼻からは血があふれ出ていた。
そんな母が私の手を掴んだ。
力の加減ができないのか、母は私の手を万力のように握り締めた。
「あ、あぁ……あああ……」
私は怖くて震えた。涙が出て来た。
握り締める力は次第に失われていった。
それは母が急激に衰弱していることを示しており、私は恐怖した。
「嫌だ……、嫌だ……!」
母の手は私の手から完全に離れた。
そして、全く動かなくなった。
「ねぇ、お母さん?」
母は返事をしなかった。
『どうして』
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「ああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!」
私は目を覚ました。
ベッドは私の体液でびっしょりと濡れた。
あの日からだ。毎日のように悪夢を見る。
母の「どうして」という声だ。
どうしてだろう。
考えても分からない。
だけど、私は母を殺した。
母は最期に私を恨んだ。
私を恨んで死んだのだ。
私はそれが何よりも辛かった。
でも、その苦しみももう終わる。
復讐という名の言い訳をして、私は救われるんだ。
壁に打ち付けた写真を見る。
リンネは楽しそうに笑っていた。
とっても純粋な笑顔、だけど私にはそれが邪悪な笑みにしか見えなかった。
「あーむかつく。早く会いたいなぁ、殺したいなぁ……」
私は壁の写真を引きちぎった。
もう必要ないと判断したからだ。
切断された場所が丁度リンネの首と重なった。
私はなんだかおかしくって笑ってしまった。




