第14話 決別
☆登場人物☆
『衛堂ミコト』
主人公。17歳。
黒のショートボブヘアで赤い瞳の少女。
至って普通の女子高生。頭は良くない。
育ての親を失い喪失感に駆られていた所、人外の化け物「マジン」に襲われる。
「死にたくない」という願いを抱き魔法少女として覚醒する。
魔法少女形態【命の魔法少女】
まるで医者の白衣のような衣装。グローブとブーツは白色だが、白衣の下は黒いタイツ。
頭には二本の丸っこい角が生えている。
白衣の裏から尻尾が伸びており、尻尾の先は注射器のようなデザインになっている。
白衣には緑色の線がデザインされている。それはサイリウムのように発光しており、ミコトの心臓の鼓動に合わせて心電図のように波を流す。
使用武器は「ミコトカリバー」
ミコトの身長ぐらいの大きさの剣であり、両手に持って戦う。
剣のグリップ真横には緑色の液体が入ったタンクがあり、タンクから伸びた管はミコトのグローブの中へと繋がっている。
使用魔法は「???」
黄金の光を纏い、対象の人物を蘇生させる。
また、自分に使うことで戦闘能力を大幅に上げることが出来る。が、それなりのリスクもあるらしい。
『奏美音』
もう一人の主人公。17歳。
地面擦れ擦れの長さの青いポニーテールと青い瞳の少女。
ミコトより色々とひと回り大きい。
ミコトの学校に転校してきたが、実は世界各地でコンサートを行う超有名ピアニスト。
「自分の両親に再び会いたい」という願いを抱き魔法少女として覚醒。
その後、同じく魔法少女であるミコトと意気投合する。
魔法少女形態【音の魔法少女】
黒の燕尾服のような衣装。ひらひらしておらず、すらっとしており男性的なデザイン。
ピアニストがモチーフにもかかわらず、黒色の手袋をしている。
使用武器は「メゾフォルテ」
右手に強弱記号のフォルテを模した剣、左手に「m」の形をした盾を持っている。鈍器。
使用魔法は「メロディボム」
音を爆弾に変える魔法。大きい音程威力も高くなる。
ゆずが死んでから一か月がたった。
一日たりとも彼女のことは忘れたことはない。
しかし、私の精神はほぼ回復していた。
それも美音のおかげだ。
深夜2時。
「あれ?」
美音の姿がない。
いつもなら、だらしない格好で寝ているのに。
トイレか?
しかし、どこにもいない。
「鍵が、ない……」
美音は外に出ていた。
こんな夜中に、いったいなぜ。
私は美音を探すため、家を出た。
美音の場所は携帯の位置情報で大体はわかる。
家から数キロ離れた場所にある、湾岸の倉庫だ。
倉庫と言っても、現在では全く使われていない。
最近まで、暴力団とかのたまり場になっていた。
近づくにつれ、大きな爆発音が明確に聞こえるようになってきた。
まさか、一人で戦っているのか、マジンと……
倉庫にたどり着いた私は、物陰から、音のする方をこっそりと覗いた。
そこには、美音ともう一人別の少女が立っていた。
暗くてよく見えないが、私と同じぐらいの身長の少女だった。
次の瞬間、美音はその少女を剣で殴り飛ばした。
目を疑った。
美音がこんなことをするはずがない。
しかし、立っているのは明らかに美音だ。
あの少女はマジンなのか。いや、そうとは思えない。
少女は悲鳴を上げた。
呻き声と泣き声が合わさり、なんとも痛ましい声だ。
そんな少女に美音は躊躇もなく近づいた。
そして、美音は瀕死の少女にとどめをさした。
止めようかと思ったが、怖くて足が竦んだ。
「美音、どうして……」
少女の死体は消滅した。あの少女は魔法少女だったのか。
なおさらどうして。
彼女は美音に敵意を向けてなかったのに。
どうして、魔法少女を殺したの
ねぇ、美音。
----------
金曜日。だけど、今は冬休みなので学校はない。
今日はわがままを言って美音の練習を見学させてもらえた。
本番さながらの大きいホール。私と美音の貸し切りだった。
とっても素敵な演奏。前に聞いたときよりも格段に上手くなっている。
だけど、私は笑顔にはならなかった。
「ふぅ、どう?」
美音が感想を求めてきた。
正直、上手かったぐらいの感想しか出てこない。
だから私は黙っていた。
「ねぇ、ミッコ?」
私はただずっと美音の瞳を見ていた。
「ちょっとミッコ!怖いよ!おかしいよ!」
美音はピアノの椅子から立ち上がり、私に詰め寄った。
「怖いのはあなただよ!ミオ!」
私は詰め寄る美音を押し返した。
美音は驚いた顔で私を見上げた。
「一体、何人の魔法少女を殺したの……」
美音は目をそらした。
そして、言った。
「気付いていたんだね。」
気付きたくなかった。
あれからほぼ毎晩、美音は深夜に家を出て、魔法少女を探し、そして殺した。
「どうして……!」
理由は聞かずともなんとなく分かっていた。
魔法少女もマジンと同じだ。
魔力を得るために、敵を殺す。
ただ、魔法少女を殺す方がが効率がいい。それだけだ。
美音は目をそらしたまま、何も答えなかった。
私は美音の胸倉をつかんだ。
美音の願いは世界一の舞台でピアノを演奏すること。
ピアノが上手くなる?
そんな理由で人を殺していいはずがない。
私は美音が許せなかった。
「ピアノなんて、自分の腕で弾けばいいだろ!!」
そうだ。美音は努力家だ。
魔法少女の力なんて使わなくていい。
いつかきっと世界一の舞台にたどり着くことができる。
そう思っていた。
美音の表情が変わった。それは、怒りだった。
学園祭の役決めの日、カミラに見せたあの表情だ。
美音は私の腕を無理やり引きはがすと、魔法少女の武器を取り出した。
「私も、殺すのか?あの魔法少女たちのように!」
私は美音に正直に言って欲しかった。
冷静になって考えて欲しかっただけだった。
しかし、美音は剣を私に向けた。
私はそれは無理だと悟った。そして、魔法少女に変身した。
光の剣を構え、美音を敵として見た。
「何も知らないくせに!」
美音が叫ぶ。
分からなかった。
美音がなぜ、そこまでして願いを叶えようとするのか。
だから、戦うしかなかった。
----------
何度も、何度も金属のぶつかる音が鳴る。
美音の剣はあまり大きくないが、その攻撃は私の両手剣の攻撃より重い。
たとえ一瞬の隙をつけたとしても、盾に弾かれる。
美音は魔法少女として、私よりさらに強くなっていた。
互角の勝負かと思っていたが、このままでは防戦一方。
本気を出すしかない。
美音を止めるためには。
私は剣を構えなおした。
剣は黄金の光に包まれた。
「……」
私は美音に突撃した。
狙うのは体のど真ん中。だが、殺すつもりはない。
左右どちらかに避けてくれれば、片方の腕に当たる……
そう考えていた。
しかし、美音は避けようとはしなかった。
私は動揺して、直前スピードを落としてしまった。
その隙を美音は見逃さなかった。
美音の剣が振り下ろされる。
回避は、間に合わない……!
剣は私の左足に命中した。
「ひぎっ……」
嫌な音が鳴る。
足が折れ、私はその場に倒れた。
美音が私を見下ろす。
魔法少女の変身を解除し、言った。
「とどめをささないのは今までお世話になったお礼。」
美音はホールの出口へ歩き出した。
「待って……ミオ……」
私は這いずりながら美音の跡を追った。
「さようなら、ミコト。」
止めなくては、このままだと美音は……
美音は私を見ることなく、外へ出て行ってしまった。
----------
家に帰ると美音の持ち物は全てなくなっていた。
机の上には美音が使っていた合鍵だけがポツンと置いてあった。
私は、また一人になったんだ。




