幕間 ゆずの日記
☆登場人物☆
『ゆずりは』
茶色の髪で茶色の瞳。
特徴がないのが特徴。
『衛堂ミコト』
黒のショートボブヘアで赤い瞳の少女。
ゆずりはの親友。魔法少女。
『奏美音』
地面擦れ擦れの長さの青いポニーテールと青い瞳の少女。
ミコトと同じく魔法少女。
『天道博士』
謎の人物。女性。
世界的に有名な研究者であり、魔法少女になってしまう病気「魔法少女病」の研究をしている。
「魔法少女病」の特効薬を開発するため、被験体として送られてきた魔法少女に対して、あらゆる実験を行っていた。
しかし、ある事件に巻き込まれて死亡。
私がこの町に引っ越してきたのは小学4年生の頃だ。
両親の勝手な都合だったが、あまり仲の良い友達はいなかったので特に気にすることもなかった。
きっとここもそう。
「よっ、ゆずりん!」
転校初日、そいつは馴れ馴れしく話しかけてきた。
「ゆずりんって呼ぶのやめてくれる?」
隣の席で毎日話しかけてきてとにかくうるさかった。
それでいて馬鹿で、意固地で、本当にどうしようもないやつだった。
でも、人一倍正義感が強く。やさしい心の持ち主でもあった。
私が困っているときは、自分のことのように悩んでくれたりもした。
そんな彼女と一緒にいると自然と笑顔になるようになっていた。
一緒に滑り台で遊んだり、勉強したり。
風邪だって同じタイミングでひいたりした。
中学生になったころ、私たちはすでに親友だった。
私の中で友情は愛情に変わろうとしていた。
ほぼすべての感情をぶつけられうような関係だったが、彼女に愛を伝えることはできなかった。
怖かったのだ。今まで築き上げた友情が、崩れてしまうのではないかと。
もしそうなったら私は……
きっと死んでしまうだろう。
結局、私は彼女に対する愛情を押し殺した。
今以上の関係になる必要なんてないと思い込んだ。
胸の苦しみは時が経つにつれて和らいでいった。
この前、転校生がやってきた。
奏美音、有名なピアニストだ。
美音はミコトと仲がいいようだ。
なぜか、この日からまた胸が痛みだした。
最初は気のせいかと思ったけど、痛みは日ごとに増していく。
町で偶然、美音を見かけたので、こっそりついていくことにした。
美音はミコトの住むマンションへ入っていった。
朝に食べたものを吐き出しそうなほどの吐き気に襲われた。
それを我慢してミコトの部屋の前まで来た。
私は呼び出しのベルを一回鳴らした。
普段なら馬鹿みたいに数回鳴らすが、吐き気に耐えられなくなった。
私はその場から逃げ出した。
数日後、私は風邪をひいた。
ミコトは見舞いに来なかった。
学園祭、美音のと共に主役を飾ったのはミコトだった。
クラス中みんなが彼女たちの相性は最高だと言っていた。
ミコトはすごい人だから、私とは不釣り合いなのかもしれない。
だけど、これ以上痛みを我慢することはできなかった。
きっとこれが私の気持ちを伝える最後のチャンスだろう。
私はミコトを遊園地に誘った。
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翌日、天気は晴れ。
この頃と比較してわりと暖かい日だ。
ミコトの案で美音も誘った。
確かに誘わないと不自然だけど、個人的には来てほしくなかった。
ミコトに告白するのは帰りだし、まあいいか。
最初はお土産屋さん。
3人でお揃いのペンダントを買った。遊園地の変なキャラクターのやつ。
ミコトと同じものを手に入れたのだが、なんだかもやもやする。
それから……
ジェットコースターやらコーヒーカップやらいろいろな乗り物に乗った。
以前の私なら、三人で楽しめることに幸せを感じていただろう。
けれど、今の私にはそんな感情はなく、心から楽しむことはできなかった。
昼過ぎ、お化け屋敷に入場した。
ミコトや美音の顔が認識できないほどの暗さだ。
私はミコトの手をぎゅっと掴んだ。
「うわぁぁぁ!!」
ミコトが驚いた声を上げ、後ろに倒れた。
油断していた私ものけぞり、ミコトの手を放してしまった。
「あ……」
体を起こすとミコトと美音の姿は闇に消えていた。
どこ、どこにいるのミコト……!
私は出口へ急いだ。
「……」
出口に二人の姿はなかった。
嫌な予感がした。背筋が凍るような思いがした。
ミコトと美音が二人でいるということが耐えられなかったのだ。
とにかく探しまくった。走って走って……
電話がかかってきた。美音からだ。
私は携帯の電源を切った。
……
「何やってるんだ、私は……」
冷静な判断ができるようになったのはミコトたちと別れて、
一時間近く経ってからだった。
辺りはだんだん暗くなっていく。
「戻らなきゃ……」
私は携帯の電源を再び入れた。
次の瞬間、巨大な球が空中から降ってきた。
「え!?」
落下した時の衝撃により、その球がどれほどの質量をもっているか察することができた。
(今、下に人いたよね……?)
球の下からは血があふれ出ている。
周りの人々は悲鳴を上げていた。
死んだのだ。
球はゆっくりと動き出し、こちらに転がってきた。
「うそ……」
私は携帯をしまい、すぐに逃げ出した。
球は横に逸れたが、それだけではない。
ピエロの姿をしたおかしな人たちが銃を乱射している。
逃げ惑う人々はそいつらにゴミのように殺されている。
逃げている最中、私はとあることを思った。
思ってしまった。
「ミコト、無事だといいな……」
私はとっさに自分の口を押さえた。
私はなんてことを……
このいざこざで美音が死んでしまえばいいと、そうすれば自分はこの胸の苦しみから解放されると思ってしまったのだ。
最低だ。
「あああああああああああああああああああ……!!」
私は叫んだ。
それから何も頭に入ってこなかった。
気付いたら、自分ひとりだけが、安全地帯に入っていた。
人々は騒いだり、泣いたり、怒ったりしている。
私は少し離れたところでうずくまっていた。
私の心とは反対に光のイルミネーションは美しく輝いていた。
遠くに観覧車が見える。
歩けば数百メートルはするだろうが、その大きさと迫力で近場にあるように見えた。
「あぁ、ミコトとアレに乗りたかったなぁ……」
上昇する観覧車の一台に二人の人影が見えた。
立ち上がって、覚束ない足取りで観覧車の方へ歩く。
近づいても距離は全く変わらない。だけどはっきり見えた。
観覧車の中にいるのはミコトと美音だった。
私の体からすべての力が抜けた。
そしてその場にへたり込んだ。
仕方がなかったのかもしれない。
すべて私の自業自得だ。
私への罰だ。
そうだ、今日、私は死んだんだ。
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『魔法少女』
魔法少女病には二種類のタイプあることを発見した。
普通の人間の姿の魔法少女と、化け物の姿の魔法少女だ。
後者をマジンと呼ぶことにする。
魔法少女とマジンは対立関係にあり、互いを喰らうことでエネルギーを補給する。
しかし、戦闘能力や活動限界、あらゆる面を考慮するとマジンは劣種であることは明白である。
どちらのタイプが発病するか、判明する方法は定かではない。
後に説明するが、"希望"が大きく関係していると見られる。
魔法少女はマジンを倒すことで成長する。
魔法による攻撃の変化や出力の増加などが見られ、
長時間の変身維持も可能になる。
これは、魔法少女本人から聞いた話である。
魔法少女は限界まで成長したとき、願いを叶えられるのだという。
バカらしい話だが、全ての魔法少女が同じように答えた。
なお、願いを叶えた魔法少女は一人もいなかった。
残念ながら、魔法少女病の治療法は私の生きている間には見つからないだろう。
果ての見えないマジンとの戦いを制すには強靭な精神が必要である。
私は『希望』こそが魔法少女病の特効薬であると結論付けた。
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