第11話 夢の終わり
☆登場人物☆
『衛堂ミコト』
主人公。17歳。
黒のショートボブヘアで赤い瞳の少女。
至って普通の女子高生。頭は良くない。
育ての親を失い喪失感に駆られていた所、人外の化け物「マジン」に襲われる。
「死にたくない」という願いを抱き魔法少女として覚醒する。
魔法少女形態【命の魔法少女】
まるで医者の白衣のような衣装。グローブとブーツは白色だが、白衣の下は黒いタイツ。
頭には二本の丸っこい角が生えている。
白衣の裏から尻尾が伸びており、尻尾の先は注射器のようなデザインになっている。
白衣には緑色の線がデザインされている。それはサイリウムのように発光しており、ミコトの心臓の鼓動に合わせて心電図のように波を流す。
使用武器は「ミコトカリバー」
ミコトの身長ぐらいの大きさの剣であり、両手に持って戦う。
剣のグリップ真横には緑色の液体が入ったタンクがあり、タンクから伸びた管はミコトのグローブの中へと繋がっている。
使用魔法は「???」
黄金の光を纏い、対象の人物を蘇生させる。
また、自分に使うことで戦闘能力を大幅に上げることが出来る。が、それなりのリスクもあるらしい。
『奏美音』
もう一人の主人公。17歳。
地面擦れ擦れの長さの青いポニーテールと青い瞳の少女。
ミコトより色々とひと回り大きい。
ミコトの学校に転校してきたが、実は世界各地でコンサートを行う超有名ピアニスト。
「自分の両親に再び会いたい」という願いを抱き魔法少女として覚醒。
その後、同じく魔法少女であるミコトと意気投合する。
魔法少女形態【音の魔法少女】
黒の燕尾服のような衣装。ひらひらしておらず、すらっとしており男性的なデザイン。
ピアニストがモチーフにもかかわらず、黒色の手袋をしている。
使用武器は「メゾフォルテ」
右手に強弱記号のフォルテを模した剣、左手に「m」の形をした盾を持っている。鈍器。
使用魔法は「メロディボム」
音を爆弾に変える魔法。大きい音程威力も高くなる。
『ゆずりは』
ミコトの親友。茶色の髪で茶色の瞳。
ミコトとほぼ同じ体格。
最近、ミコトと仲良くしている美音に嫉妬気味。
私たち三人は遊園地に来ていた。
ゆずの誘いだ。
学園祭が終わってから暇で仕方なかった時、タイミングよく誘ってくれた。
本当に気が利くな、ゆずは。
遊園地に来るのなんていつ以来だろう。
私が10歳ぐらいのときだろうか、義父が連れて行ってくれたような……
よく覚えていない。
「なにボケっとしてるのミッコ!手分けして探すよ!」
美音が私の肩を強く叩いた。
さて、誘ってくれた当の本人、ゆずが迷子になってしまった。
お化け屋敷を出たときには既にいなかった。
まだ中にいるかもと少し待ったが、出てこなかった。
結論から言えば、ゆずは先に出て行っていため再会することはなかった。
で、今に至る。
携帯の電話は繋がらない。電源が切れているのだろうか。
迷子センターで呼び出すこともできるが、高校生のゆずにとってそれは辱めになる。
それに、まだそんなに遠くに行っていないはずだ。
誘拐とかされてないよね……
私は少し心配になった。
とりあえずお化け屋敷周辺の建物を探した。
……
ひと際大きな建物が目についた。
建物と言っても仮設のテントのようだが、おそらくこれはサーカステントだろう。
入場の制限はなく、だれでも無料で見ることができるらしい。
ゆずはひとりであんな所行かないだろうけど……
ゆずもまた私たちを探しているのかもしれない。
外は美音にまかせて、私はテントの中を探すことにした。
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サーカステントの中は意外と広かった。
百人は余裕で入れそうだ。客席はほどほどに埋まっていた。
「レディースエーンドジェントルメーン!」
派手な燕尾服を着た男性が幕から出てきた。
彼はサーカスの団長だろうか。
たった今、始まるようだった。
団長は自分のシルクハットを脱ぎ杖でコツコツと叩いた。
すると何匹ものの鳩が飛び出し、四方に散った。
会場は拍手と歓声に包まれた。
普通のマジックだが、生で見ると迫力が違うものだ。
私はしばらくその演技に見とれていた。
私はハッとした。
「いかんいかん……ゆずを探さなくては。」
ぱっと見たところゆずらしい人影は見当たらなかったので、テントの外に出ようとした。
しかし、何やら視線を感じる……
観客全員が私の方に向いていた。
そして、不自然に当てられるスポットライト。
団長は杖で私を指し示していた。
私は参加型の演技に指名されたのだ。
「ごめん美音、がんばってくれ……」
小さくそう呟いた。
とはいったものの、なんだかうれしくなって
私は軽い足取りで舞台に降りた。
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私の目の前には大きさ4、5mほどのギロチンが設置されていた。
団長は何も言わず、ギロチンに丸太をセットした。
そして、持っていたひもを離しギロチンの刃が落ちた。
丸太は綺麗に真っ二つに割れた。
「……」
丸太は首まで太く無かったが、斧でも一回で切れないような太さだった。
この刃、かなり切れ味がいい。首なんて簡単に落とせてしまうだろう。
うーん、こわいなあ……
私はすこし怖気づいた。
団長は私の手をやさしく掴み、ギロチン台へ誘導した。
まあ、何かしらタネがあって死なないことは分かっているので、誘われるがままギロチン台に立った。
そして、私の首と手は完全に固定された。
観客の視線が集まる。
別に処刑される訳でもないのに、そんな気分になった。
誰だっけギロチンで処刑されたの……ジャンヌダルク?
たぶん違うけど、まあいいや。
団長が口を開いた。
「さあ、奇跡の始まりです!」
ちなみに、どうなるかは聞かされていないけど、大丈夫かな。
首が切れなかっただけで終わるのかな。
何か味気ないけど……
団長が紐を引く。ギロチンが頂点に達し、カウントダウンが始まる。
「それではみなさんご一緒に!」
3、2、1……とみんなの声に包まれる私はさながらスーパースターだ。
「さようなら、魔法少女ミコト……」
「え?」
最後にそう聞こえた時、既にギロチンの紐は離されていた。
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誰かの呼び声が聞こえる。
私はゆっくりと起き上がった。
首に違和感があるが、どうやら無事だったようだ。
「大丈夫?まったく、こんなところで遊んでいたなんて……」
隣には魔法少女の姿の美音がいた。
観客は誰一人としていなかった。
煙と血の匂いがする。
「どういう状況?」
私は美音に聞いた。
「あなたは殺されかけたの、あの団長の姿をしたマジンに。」
そういえば意識が途切れた時、団長が何か言っていたような気がする。
私の名前と私が魔法少女であることを知っていた。
知性を持ったマジン……か。
思えば、マジンは魔法少女のなりそこない。
知性を持っていて当たり前なのだ。
「あなたはここで倒れていたわ。マジンは今、外で暴れている。」
「ゆずは……?」
「まだ、見つかっていない……」
行かなくては……
惨状を見るに、一般人を攻撃している。このままではゆずが危ない。
私たちはすぐにテントの外に出た。
無差別に人が殺されている。
人々は混乱していた。
柵を越えて向かって逃げる者もいれば、茂みに隠れている者もいる。
マジンの姿は見えない。どこか遠くに行ったのだろうか。
突如、大きな球が落ちて来た。
その球によって逃げていた数人が潰された。
そしてその球は動き出し、私たちの方へ転がってきた。
「はァ!」
美音が剣で思いっきり球を叩く。
球は大きな音を立てて破裂した。
「上か!」
私たちは上を見上げた。
遊園地の中心、象徴ともいえる大きな城のてっぺんにマジンはいた。
ピエロの姿をしたマジンだ。
遠くからだとよくわからないが大きさは5mぐらいか。
マジンが天に手を掲げると、空中に大きな球を生成した。
マジンはそれを至る方向に投げていた。
(ゆず、どうか無事でいてくれ……)
私たちはすぐに城に向かった。
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敵の視線をくぐり抜け、なんとか城の内部に侵入できた。
しかし、城のエレベーターは故障していた。
さらに城の周りには銃を持ったピエロの兵隊がわんさかいる。
あれもマジンの能力だろうか、
倒してもすぐ新しいのが降りてくるのできりがない。
そして、ピエロが巡回する中で外壁を登るのはリスクが高い。
「ミッコって空飛べなかったっけ?」
美音が私に聞いてきた。確かに飛べる。
しかし、あれは剣を持ったまま勢いよく突進しているだけで、飛んでいるわけではない。
こんなに高い城はまず登れないだろう。
横方向の距離なら、滑空すれば伸ばせるが……
「この城より高い場所があれば……あるいは。」
城の窓から外の様子を伺った。
「大観覧車……」
あれしかない。
私は窓から飛び出した。
「ミッコ!」
美音が私を呼び止める。
ピエロの兵隊が一斉にこっちに向いた。
「あ」
やってしまった。
「突発的に行動できるのはいいことだけど、冷静な判断も必要ね……」
美音も私にダメ出ししながら出てきた。
「ごめん、ミオ。」
私は美音に謝ったが、そこまで誠意を込めた謝罪ではない。
だってこの程度の敵、相手じゃないんだもの。
「強行突破よ、ミッコ。」
私たちは剣を構え、ピエロたちと交戦した。
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時刻は6時をまわっていた。ゆずと別れてから3時間ぐらいたっていた。
本来ではパレードが開催されている時間だ。
この時期だと辺りは真っ暗だが、光のイルミネーションで昼間より明るくなっていた。
あのピエロ、人は攻撃するけど建物は破壊しないんだな。
理由は分からなかったが、どうでもよかった。
やっとの思いで観覧車にたどり着いた。
人はいないが動いている。
私は錠を破壊し、美音と観覧車に乗り込んだ。
観覧車はゆっくりと上昇する。
「綺麗ね……」
美音が外の様子を見て呟いた。
下で見た光のイルミネーションが遊園地全域に巡っている。
確かに幻想的な雰囲気で綺麗だ。
ゆずにも見せたかったな……
「一般人は、まだいるみたいだね。」
こんな惨状だ。
生きてる人はもうとっくに遊園地の外に出ているものかと思ったけど、たくさんの人が一か所に集中している。
もしかして……
「あの巨大な球や、兵隊で誘導されているのかもしれないわね。」
入口は封鎖されている可能性が高い。
一か所に固めてやることと言ったら、もちろん大虐殺だ。
ゆずもあの中にいるかもしれない。
「時間がない……」
もう少しで一番高いところにつく。
私は壊れた扉から、外に出た。
強い風が吹く。魔法少女の衣装では少々寒い。
城の方を見る。
マジンはそこで佇んでいた。
「……」
どうしようか、追い風だが、思ったより距離がある。
私は美音に聞こえるように叫んだ。
「ミオ、私をぶっ飛ばしてくれ。」
「はぁ!?だからあなたは冷静な判断を……」
美音は口ではそういったが、すぐに観覧車の外に出てきてくれた。
私たちは目標を見つめる。
観覧車は頂点に達した。
「ミオ、頼む。」
「ちょっとだけ痛いかもしれないよ!」
私は剣を構えマジンに突撃した。
同時に美音が私の足に剣を当てる。
美音はそれを思いっきり降りぬき、私はさらに加速した。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
マジンは私の接近に気付いていないのか、ただ一点だけを見つめていた。
そして、私の剣はマジンを貫いた。
同時に突撃の勢いは弱まり、私の体は真下に落ちていった。
花火が打ち上げられた。
機械的なホログラムだったけど。
「わー、きれいな花火だ……」
私は花火の中を落下し、城の周りにある池に落下した。
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池にぷかぷか浮いていたところ美音に救出された。
「おつかれさま、足痛くない?」
「大丈夫、ありがと。」
お気に入りの服がびしょぬれだ。
まあいいか。
「ゆずを探さないと……」
仮にゆずが死んでいたとしても魔法少女の力で蘇らせることができる。
だが、ゆずの死んだ姿なんて死んでも見たくない。
さきほど人が集中している場所に着いた。
まだ人々は混乱しているみたいだ。
怒号に悲鳴で何も聞こえない。
それでもゆずの名前を精一杯叫んだ。
何度も何度も……
「だめだ、これじゃあ埒が明かない。」
あきらめかけたその時、人ごみからすこし離れた場所にゆずの姿を見つけた。
安堵して胸をなでおろす。
緊張がとけて、自然と笑みがこぼれた。
よかった生きてた。
私たちはいそいでゆずのもとに駆け寄った。
「ゆず!」
私はゆずに抱き着きたい気持ちだったが、全身ずぶ濡れなのでやめておいた。
ゆずは私たちの姿を見ると、突然泣き出した。
怖かったんだろうな。
そしてゆずは私たちに何度も謝った。
ゆずが謝る必要なんてない。
「顔を上げてゆず……」
私はやさしくゆずに語りかけたが、ゆずは最後まで顔を上げなかった。
ただひたすら泣きながら謝っていた。それだけだった。




