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5人は家族で兄弟姉妹だから。

 イメアは、美味しそうな匂いで目が覚めた。気が付くと、寝着をつけていた。兄が着させてくれたのだと直ぐに分かった。少しの後悔、大きな満足感、そして非常に大きい過去の自分への嫌悪感、漠然とした不安感で頭が混乱し、心が締め付けられた。しかし、それは“グ~”と大きな音を出した胃袋の欲求、空腹感、食欲に打ち負かされてしまった。兄のジャメロが、焼きたてのパンや焼いた乾燥肉、調理した野草をおおざらに持って現れた。既に部屋には、スープの入った鍋も置かれていた。

「お兄ちゃん、あのさ。」

と言いかけたのを止めるように、

「とにかく食べよう。僕も腹がへっているから。」

 自分もシチューをすすりながら、ふーふーとシチューをすすり、パンを、肉を、サラダを頬張り、しきりに”美味しいよ~“と口にする妹を見つめていた。すっかり成熟した大人の美人だと思いしった。エスパの小柄な、抱くと折れてしまわないかと心配になる可憐さとは異なる魅力があった。エスパの小ぶりな、その乳房の感触をまだ忘れたわけではないが、こうして妹を見ていると、どんどん希薄なものになっていく感じがした。強い弾力と抱き心地が、はっきりと快く感じる、昨晩の事が体中で思い出してくる。

「お兄ちゃん。やっぱり、お姉ちゃん達の所にいくの?」

 あくまでも、何気なくという感じでと思いつつ尋ねたが、その後、怖い顔で、

「お兄ちゃんに、あんな酷いことをしたお姉ちゃん達のところに。」

“お前だって同じだろう。”という言葉を何とか飲み込んで

「みんな、僕達のお姉ちゃん達なんだから。僕達5人は兄弟姉妹だろう。」

 その言葉に、彼女は、嫉妬をあからさまに感じさせる表情で見つめ返してきた。

「お兄ちゃんは、あんな姉さん達が、私よりいいんだ。私を捨てるんだ。」

 イメアは、フラフラと立ち上がった。ジャメロは、さっと後ろに飛び、身構えた。妹の顔は憎悪に満ち、体は戦闘態勢に入り、衰弱して落ち込んでいた魔力がみるみるうちに急上昇しているのが、分かった。彼も戦闘態勢に入った。剣に手を伸ばそうてした妹から、剣をすかさず蹴って遠くに飛ばした。すると彼女は、ためらうことなく、格闘戦を挑んできた。彼が実力ははっきり上回るとはいえ、彼と長女との差と比べると差ははるかに小さい。力はともかく、技やセンス、スビードの差は小さい。長女が彼とでは手を抜けないと言う以上に、彼は妹には、手を抜けない戦いだった。少しずつ、彼女を彼は追い詰めていったが、彼女は後先考えることなく、ひたすら全力で挑み続けた。その中で、彼女の動きが時々、一瞬ぎくしゃくするするのが分かった。その隙を突いて彼女を押さえつけた。彼女は、罵り、呪いの言葉を、はきながら、無理矢理態勢を起こそうとした。まるで、自分の体がどうなっても構わないとでもいうようなものだった。

「イメア!頑張るんだ、自分を取り戻すんだ。お兄ちゃんを助けてくれ!」

と叫びながら呪い、魔法除去の魔法を注ぎ込んだ。彼女は抵抗しようとしたが、体の動きがバラバラで、彼を振りほどくことも、魔法を魔法で押し返すこともできなかった。二人の意識が混ざりあうように交差した。

”お兄ちゃん!“

”イメア!“

と二人の意識の中で互いの叫びが聞こえてきた。もう一つの意識が、二人の意識を押し返そうとするのを逆に押し返した。”何とかもってくれ~!“と渾身の魔力を更に注ぎ込んだ。そして遂に、ふ~と、二人の意識が軽くなって、絡み合い、異質な意識の圧力が消えていき、二人の心のつながりが強まっていくのを感じ、これまでにない気持ち良い感じを共有した。その次の瞬間、二人は力つき、絡み合うように、ぐったりてした。

「私。お兄ちゃんを殺そうとした。お兄ちゃんを呪って、罵った。私はお兄ちゃんに、酷いことばかりしてきた。」

 閉じた目を開けると、彼女は涙を流しながら、力なく言った。

「イメア。愛しているよ。」 

 ジャメロには、そういう言葉しか、思いつかなかった。力つきているはずなのに、二人はまた、お互いを求めあった。何度も何度も、互いを貪りあった。ひたすら動き、声をあげ、体が快楽の波に呑まれるたびに体の中の異質なものが消えでもいくのを、イメアは感じ、ジャメロにもそのことが伝わった。声にならない声を上げて、得体のしれないものは消えていった。ジャメロは、イメアに体重をかけないように、体を入れ換えて、彼女を自分の上にした。荒い息は、二人ともなかなか納まらなかった。

「そうだよね。私達みんな、家族だものね。二人で、みんなを助けようね。」

 しみじみとした調子で彼女が囁いたのは、大部分たってからだった。ジャメロは、嬉しそうに、満足そうに微笑で、彼女の唇に自分の唇を重ねた。彼女はすぐ、舌を差しいれてきた。二人の舌が互いの唾液の流れの中で絡み合った。

 二人が、砦を出たのは翌日のことだった。イメアの体調は万全ではなかったが、彼女の臣下という名の監視役、“安楽死”役が様子を見に、彼女が多少とも動けるようであれば、魔獣狩りを強要する連中が来る前に出なければならなかったから。彼等に出会わないように、知られないように、そして、少しでも時間を節約するため、魔界を突っ切って行くことにした。愛馬に、イメアをのせ、彼が手綱を引いて進んだ。

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