二人は堕ちて
「とにかく、これを飲んで、気を落ち着けてくれ。」
ジャメロは、酒を少し注いだ茶をイメアに渡した。茶にも、酒にも、魔法、呪いへの抵抗力を増す薬草や魔法が入っている。今までとは比較にならないくらいの量が入っている。今までなら、危険だが、もういい頃だと思われた。
彼女は、それを口に運んですすった。何の反応もなく、彼はホッとした。魔法で、彼女にかけられた魔法がまだ残って入るかどうか探ってみた。よく分からないが、まだ残っているようだった。
「私の中で、勇者様を裏切った、もう生きていられない、死ななければならない、と言う声が頭の中で響くように聞こえてきて…。」
何が何だか分からないと言う感じだった。彼女に説明したほうがいいか、彼は迷った。まだ、何か残っている、慎重にしないと危険だ、と直感した。
「勇者様…、何で?私が好きだったのは…お兄ちゃんだったのに。え…、勇者様…。」
突然、近くにあった剣を取って、ジャメロに切りつけてきた。何かが起こると感じて、妹のイメアから目を離さないでいたが、それでも本来の彼女の剣だったならば、血を流していたろう、と彼は思った。実際に避けられたものの、間一髪だった。イメアは、ジャメロに向かって、大上段で構えた。
「イメア!」
彼女は、この声で我に帰った。
「どうして、お兄ちゃんに…、誰よ、あなたは…、勇者…、あんな奴じゃない、私が好きなのはお兄ちゃんよ!あんたなんか消えなさい!」
自分の中で、自分以外と闘っているようだった。剣が、彼女の手から滑り落ちた。床に音をたてて落ちた。同時に、へなへなと彼女らはしゃがみ込んだ。ジャメロは、イメアに駈け寄った。その彼女には、もうかけられている魔法や呪いは感じられなかった。それでも、除去の魔法をかけた。そして、愕然とした。手応えを感じたからだ。まだあったのだ。それはどういうことか、どういうものかは分からなかった。魔力に力を集中した。それが消滅したとき、彼は息づかいが荒くなっていた。
「お兄ちゃん。私は、なにをしていたの?大丈夫?一体どうしたの?」
イメアは、心配そうに、へたり込んだジャメロを見つめた。呆然としていたとはいえ、彼らがなにをしているのか分からないながらも、彼女が身を任せていたことに、彼は少し安心した。彼は、妹に心配ないと身振りで示してから、息を整えてから、ことの顛末を話して聞かせた。
「え?」
初めはわけが分からないという表情をしていたイメアだったが、次第に説明が続くうちに、この足かけ3年のことを思い起こして、
「そうだった。どうして…。」
深刻な表情になっていった。ジャメロは、止めるべきかと何度も思ったが、所詮は先送りにするだけのことに過ぎないと思い返し続けた。
「お兄ちゃんに、酷いことを言ったし、酷いことをしたんだ、あたし達。それなのに、お兄ちゃんには私のことを助けてくれた。」
目に涙が溢れかえり始めたので、彼は慌てて、彼女の顔を両手で優しく包んで、さらに見つめて、
「お前が悪いんじゃない。勇者に操られていたからだよ。そんなこと、僕は分かっているよ。そんなことなんか、なんとも思ってなんかいないよ。そんなことより、こんなに遅くなって、こんなに苦労させてごめん。」
ゆっくりと、自分にも言い聞かせるためにも、力強い調子で語った。一度はうなずいた彼女だったが、あらためて気がついたように、
「わ、私、汚れてしまったんだ。あんな勇者に、汚されたんだ。お兄ちゃんが好きだったのに。あ!私の顔?鏡はどこ?」
ジャメロは躊躇したが、どうにもならないことだと諦めた。部屋を見渡して鏡を見つけて、彼女に手渡した。彼女はじっと、おのれの顔を見た。顔が引きつった。一瞬、何かの間違いだと思おうとさえした。しかし、直ぐに現実だと認めなければならないことがわかった。
「私の顔にこんな大きな傷が…。こんなに醜くなって、もう、お兄ちゃんに嫌われる。もう、汚れちゃっている。私は汚い、もう。これじゃ、お兄ちゃんに嫌われる、嫌われちゃっているんだ!お兄ちゃんのお嫁さんになれないよお!もう生きていられない!」
半狂乱になりかけているイメアを、ジャメロは急いで、思いっきり抱きしめた、痛いくらいに。それしか思いつかなかった。。
「お前は、醜くなんかない!汚れてなんかいない!僕は、今もお前が好きなんだ!」
必死になって叫んだ。本心だと思った。イメアは大声で泣いた。泣き終わると、彼を少し引き離して、顔をのぞき込むんで、
「じゃあ、私をお兄ちゃんできれいにして。お兄ちゃんが隙間でいっぱいにしてよ。私を、お兄ちゃんのものにしてよ。」
真剣な、恐いくらいの、懇願する彼女の顔は、恐ろしい形相にもかかわらず、この上なく可愛い、美しくも感じた。まだ、あどけなさが残ると思っていた、その19歳から抗しがたい、色気というか、を感じた。ジャメロは、自分を止められなかった。僅かに開いた唇に吸い寄せられるように唇を重ねてしまった。そのまま、舌をいれてくる妹に合わせて、舌を差し入れると二人の舌が絡み合い、唾液が混じり、それが二人ののどに流れ込んでいく。喉が音を立てて飲み込む。妹が兄の鎧や着衣を脱がしていくのを、兄も手伝う。裸身になって強く抱きしめあい、そのうち体を弄る。そして二人はひたすら激しく動き、妹の大きな喘ぎ声が、より大きい叫びで終わり、体もぐったりするのに合わせ、激しく動いていた兄も動きが止まって、妹の上にかぶさる。体重がかかる寸前に体を入れ替えて、妹の体を、上にする。
「イメアは素晴らしかったよ。」
「本当?あのエルフ女より、ずっとよかった?知っているんだからね。」
「イメアの方がずっと素晴らしいよ。それで…」
「嬉しい!お兄ちゃんも最高!勇者なんか粕よ、お兄ちゃんと比べたら。」
そのまま二人は眠りに落ちた。