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愛する姉妹を取り戻す  作者: 安藤昌益


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魔界で姉妹達と

 一ヶ月後、マラニア魔大公は、反乱の完全鎮圧とその後の安定の報告と支援の礼に、かなりの量の献上品も持って、連合帝国皇帝と勇者の下を訪れた。謁見の間で、皇帝と勇者、その三妃の前に跪く彼女の後ろに、ジャメロと彼の4姉妹が跪いていた。4姉妹の1人は顔半分を隠し、1人は顔をベールで覆っていた。1人は片脚が義足で、1人は片腕が義手だった。

 未定だった境界線部分の魔界領は、4姉妹に与えられ、あらためて彼女らは伯爵に復帰した。また、ジャメロは、彼が養子とした義母の子に全てを譲ることが認められた。身分も領地も全てがなくなったわけだが、魔大公の彼を自分の共同統治者として引き取りたいという申し入れに、同意した結果でもある。帝国も、監視役、お目付役として、好都合だとも考えたのであろう。妻となる女性を送り、懐柔するのと同じ発想であるとも言える。勇者は、なにも咎めなかった。会見は上手くいった。

「上手く騙せたかな?」

 イメアと鏡をのぞき込んでいたマナイラが、心配そうに言った。2人の顔は傷もない、半分崩れてもいない、かつての美しい顔だった。勇者達を誤魔化すために、ジャメロが魔法で一時的に変えていたのである。魔界に戻ってから元に戻したのであるが、2人とも、心配でしかたがないうところだった。オブリナとティティアは、義足、義手に見えるようにという魔法だったので、あまり気にしていたかった。

 あの後、ジャメロは勇者に呼ばれた。特別な一室に連れて行かれた。そこには、酒と簡単な肴が置いてあるテーブルと豪華な椅子が置いてあった。勇者は、そのひとつに座り、ジャメロにも座るように促した。ジャメロは、それに従わざるを得なかった。

「君達には、本当に苦労をかけたよ。」

 楽しい思い出を語るような口調で語りかけてきた。テーブルを挟んで、ワインの杯を前にして座ったジャメロは、勇者の顔を不安を隠しつつ見ていた。

「君の姉上達、妹殿達は強く、美しかった。どれだけ助けられたことか。彼女達がいなければ、魔王を倒すどころか、その途上で私は命を落としただろう。本当に、彼女達4人には、感謝しても、しきれない。彼女達の功績は大きい。それに見合った物を与えられず、残念だ、申し訳ないと思っている。そして、君とエスパなら、何時でも、どんな困難でも、何とかしてくれると心強かった。最後、君達に頼らざるを得ないことが、いくつあったことだろう。そして、困難な任務を常に、見事にやり通してくれた。実際、君達が失敗したら、もう後がないところまで追い詰められていたことが、何度もあったんだ。君達以外には、誰もできなかった。私達のチームは、君達によって助けられたと言っても過言ではないよ。魔王を倒した、あの日のことも、よく覚えているよ。本当に、紙一重の勝利だったんだ。君の姉妹のおかげで何とか勝てたんだ。それに、後ろを、君とエスパが守ってくれているということで、何とか魔王を倒せたのだ。その君達に、相応しいものを与えられず、申し訳なく思っているよ。君とエスパは、本当に息の合ったコンビ、似合いのカップルだと羨ましく思うことさえあったよ。心から応援していたのに…。私は、何故なら…いや、なんでもないよ。ところで。」

 彼は口調を変えて、

「何か変わったことはなかったかね?今回の戦いで?」

 探るような視線だった。ジャメロは、上手くご魔化そうと思い、色々考えたものの、結局、

「特にこれといったことは…。厳しい戦いでしたが、姉達は、何時もの通り、勇敢に戦い、そして強かったとしか。」

「それならいいよ。私は。」

 彼は、何か夢見るような表情になり、

「何故か、重荷が無くなったような気がしたのだよ。なんだろうね、これは。よくわからない、私自身も…。」

 この後、勇者は彼の姉妹達の武勇を、ジャメロとエスパの活躍ぶりを、二人のイチャイチャぶりを長々と、懐かしそうに話し始めた。彼の顔は、いい思い出を語る表情だった。そして、ジャメロのことを、度々褒めた。

 ジャメロは、それには、時々相づちをうち、曖昧に笑ったりするだけで、積極的には応えなかった。

 最後に、勇者の表情は、三度変わり、

「世話になりっぱなしだった。改めて礼を言わせてくれ。ありがとう。」

 彼の差し出す手を、ジャメロは握り返した。それで終わり、その後は何も起こらなかった。

「勇者もあの4人の出現は、想定外だったというところか?」

 ティティアは、私達の出現が予想外と言った方がいいのかも、と思ったが口に出さなかった。ジャメロもそれには触れなかった。それを言うと、彼女らが偽者、ジャメロは本当の姉妹達を殺したかもしれないことになり、また、不安がぶり返すだけだったからだった。

「勇者とて、自分の魔法の結果を完全に把握しているとは限らん。我々が自分の魔法のことが完全に分かっているわけでないのと同様にな。」

 マラニアは、自分のことではないので気楽だった。勇者の魔法か、自分達の処方箋の副作用だったのかもしれないとも、ジャメロには思われた。

 4人の領地と魔大公領の境の地に新たな町と城を築き、魔族と人間・亜人の共存、その先の人間達が協力する、魔族の国を作ることにしている。適地適作で、人間達の商工農業社会を育成させて、その前にインフラ、さらにその前に魔族以外の住民の安全、保護を整える、やらねばならないことは山積みだ。遅々として、確実に勧めても行くしかあるまい。脅威を感じられて困る、まして、勇者が乗り出してこないことを願っている。ジャメロは、振り返って、5人の彼の姉妹達を見た。みんな、微笑んで彼を見ていた。愛する姉妹達は取り戻した。今から、愛する姉妹達を護るのだと思った。彼は両手を広げた。5人は一斉に、彼に抱きついてきた。

 これからの彼らの国のことを、国作りのことを考えようとしたジャメロだったが、今はまず、5人のことを考える、受け止めるのが先だと考えた。まずは、彼女達のために生きるのだ。とにかく、まずは彼女らを思いっきり抱きしめて、口づけをして、それから…だった、その後で未来を考えよう、皆で、と彼は思うしかなかった。




・・・・・・・・・・・・・・・

 この物語は、これで終わります。

 勇者に愛する者を奪われて物の流れ又は寝取られ物の亜流の一つといわれても仕方なくのない作品です。実際、姉妹、幼馴染み、婚約者と目一杯愛する者を奪われるからの始まりで、結局、新しい、どちらかというと、新しく出てきた 少女、時には幼女に近い少女、獣人娘が多いと結ばれる筋が不満に思ったのが発端でした。

 復讐ものでも、ざまあものでも、ありません。真実は、魔族や亜人が優しかったという、一見価値の逆転だけども、結局は勧善懲悪というのでもありません。取り戻す物語であり、汚れても愛は、変わらない、そんな物語です。勇者も含め、クズはいません。

 それだけに、とりもどした後を悩み、混乱した形で終わってしまったように思います。エスパは、初めは少し出てくるキャラのはずが、次々にエピソードが頭の中に出てきて、特別長い1話になってしまいました。マラニアにいたっては、突然でてきたキャラです、自分が書いておいでるなんですが、困って捻り出したのではなく、困っているときに突然、無意識のうちに書いてしまった、出てきたキャラでした。

 それでも、少なくない方々から読んでもらえて嬉しく思っています。ありがとうございました。

 


 

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