私達は誰?
「結局、また、お前に助けてもらったな。」
「今度こそ、お兄ちゃんを助けたかったのに。」
「偽者に、簡単に負けてしまって、ごめんね。」
ベットの上で目覚めたマナイラ、イメア、オブリナが弱々しく謝った。何も持たずに戦ったのだから、仕方がない、とジャメロが慰めた。
「お兄ちゃん。あいつらの言ったことは、全部嘘っぱちだからね。」
「聞こえてはいた。何とかしようともがいているうちに、この体をもって飛び出てこれたのだ。何故だかは、わからないが。」
「あの時、突然、体から離れたところにいて、奴らが体を動かしているのを感じ、見ていて、聴こえてはいたんだ。」
ティティアだけが、黙っていた。彼女は魔法に4人の中で一番詳しいし、魔法についての洞察力があったから、断片的な記憶をつなぎ合わせて、分析していた。ジャメロはそれを察していたが、声をかけるのを躊躇した。しかし、触れなければならない、何時かは、と思い直して声をかけた。
「ティティアはどう思う?」
彼女は、苦しそうな表情から、声を絞りだすように話し出した。
「ずっと体の中、心の中?に違う自分がいた感じだったの、奥底に。兄さんを殺そうとしたり、自殺しようとしたり。抑え込んでいた奴らに、取って代わられたの、あの時。兄さんが死んでしまう、私達を置いて、と思った瞬間。あいつらは、勇者を愛して、兄さんを邪険にした連中。でも、あれはかつての私達自身ではないの?兄さんと母さんが作った薬と兄さんの愛と努力で、私達は勇者の束縛から逃れた、兄さんの胸に飛び込めた。でも、勇者に弄ばれていた私達も私達そのものだった。私達は勇者に作られた別の私達に押さえられていなかった…はず。潜在意識の中で兄さんを愛していたから、それを押さえようという力が、兄さんだけを、とくに邪険にさせたかもしれないけど、押さえられていた真の自分達だと言えるのかしら。私達は、みんな、あの時本当に危なかった。兄さんがいなければ、兄さんに頼らなければ、死んでいたはず。兄さんに頼らなければ、生きていけなかったし、今の私達はいなかったと思うの。だから、もしかすると、もしかすると…。」
ティティアはそこで止まった。ジャメロは、続けさせるのを躊躇った。沈黙が始まった。大分たってから、長女のマナイラが、長女としての責任感から、
「保身のために作られた人格、存在が私達と言うことか?」
ティティアは無言だった。
「あくまで、可能性があるということであって。」
ジャメロが引き継いで言いかけたが、イメアが、
「違う!お兄ちゃん、今の私達が本物なのよ!ずっと前から、お兄ちゃんを好きだった、本物の私が、この私なの!信じて。」
ジャメロが、突然、イメアを抱き締めて。
「ごめん。私には、私を愛してくれるイメアがいないとだめなんだ。私を愛してくれるマナイラ姉さん、オブリナ姉さん、ティティアがいないとだめなんだ。だから、このままで、どこにも行かないでくれ。」
涙も流していた。
「仕方がないな~。優しい、賢い、美しい私がずっといてあげるから。」
兄の頭を撫でながら、イメアも涙を流しながら言った。三人がそれぞれのベッドを降り、背後から彼に抱き着いて、
「このがさつな妹だけでは、心もとないからな。しっかり者の長女がいてやろう。」
「がさつな姉と妹では困るだろうから、私がサポートしてやらねばならないな。」
「自分ことが、よく分からない姉さん達や妹ばかりですね。やっぱり私がいないとだめですね。」
4人は互いの言葉に膨れ、そして吹き出した。“あいつらが言ったセリフは矛盾しているが、私の推測にも矛盾がある。”とは思ったが、口にはしなかった。言ってもしかたがないことだったから。
「お兄ちゃん。絶対について行く!世界を敵にしたって!」
イメアは、体を激しく反応させてから、ぐったりとなった。
ジャメロは、魔王の力のことも全て話した。4人は、全てを受け入れた。4人は、涎を流して満足そうにベッドの上で横たわっていた。
「次は私だの。我が兄よ、弟よ、夫よ。」
その言葉に力が入らない状態だったが、マラニアの言葉に4人は非難する視線を向けた。
「今、私達がいるのは、彼女のおかげでもあるのだから。」
ジャメロが弁解がましく言うと、ここぞとばかりに、マラニアが
「その通りじゃ。わしも、お前達の姉にして、妹として、妻の一員として受け入れてくれ。」
と胸をはって主張した。
4人の合意も待つことなく、彼女は彼に抱き着いて、彼をベッドの上に押し倒して、唇を重ねてきた。ジャメロは、それに逆らわなかったし、彼女の喘ぎ声が響き出すのには時間は、かからなかった。4人は、ぼんやりする意識の中、止む得ないと諦めていた。




