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愛する姉妹を取り戻す  作者: 安藤昌益


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18/25

そして出陣

 魔族の幹部や彼らとともにやってきた3000人の人間・亜人の部隊長達も加わった会議は無事に進行した。問題は、反乱軍である。反乱軍は、好戦派と言うか、国粋派と言うか、解放派と言うかである。魔族の中では、人間達に屈服して、従属しているわけであるから不満が大きいし、人間達に支配をまかされている和平派は裏切り者、傀儡として不満が大きい。それに乗る形で反乱軍は勢いを増している。それは魔界各地で、共通している現象だ。和平派の魔公国が全て崩壊すると、人間達はまた魔族の脅威と直面することになる。魔族和平派も、虐殺されることは確実であるから切実だった。

 “人間・亜人と魔族の混血児の家系の者も多く居住する地域だから、見捨てる訳にはいかないだろうな。”とジャメロは思った。

 情勢説明がなされ、今後の作戦が論議された。反乱軍が迫って来ている。先手を打って攻勢に出ることになった。時間がたてばたつほど、反乱軍の勢力が拡大してゆく、早く叩かなければならない。作戦方針が議論され、決まっていく。そして、最後は、

「勇者が誇る4戦姫と孤高の不敗の騎士が先頭に立つ、精鋭3000人が加わっている。我らの勝利は間違いない!」

 “不敗の騎士?誰のことだ?”とジャメロは思ったが、魔大公は会議を終わらせた。

 ジャメロにとっては、その後が難題だった。

「それで、エルフ女とはどうだったのですか?あなたの戦いの中では?」

 マナイアが、大公に尋ねたのは、会議後、招かれた別室でであった。

「それがだ、実はな。」

 マラニアはニヤニヤしながら、テーブルの上に身を乗り出さんばかりに話しだした。

「背中合わせになって、互いを思い合う恋人のように戦っておった。離れていても、こいつはエルフ女を気遣って、あやつが危なくなると、いても立っても居られないというように駆けつけてな。助けられたあやつは、ひどく色っぽい目を向けてな、こいつはというと、顔を赤らめて、鼻の下を伸ばしてな、見ているこちらが恥ずかしくなったくらいだったし、くやしくなった。吾と此奴が組んずほぐれつして激しく営んでいる間は、心配そうに見つめておったな。最後はな、吾を動けなくなるほど責めるあげた攻後はだな、抱き合って、しかもだ、こやつは、あやつをお姫様抱っこして駆けだしておったが、二人の顔は上気しておったから、あの後、きっと激しく組んずほぐれつして、歓喜の交わりをしたのは確実であったろうな。それを考えると我はたまらなくなってしまう。本当に、こいつは、我というものがありながら、ひどい浮気者じゃ。」

「どうして、貴方に浮気者呼ばわりされなければならないのですか?」

と抗議すると、

「それ以外は、本当のところなのね。」

「ゆっくり弁明を聞きましょうね。」

「包み隠さずにね。」

「わかってますよね。」

 翌日、

「あれからどうなったのだ?」

「まあ、色々ありましたよ。」

 言葉を濁したが、後でまた煩そうなので、正直に語った。あの後、あまりにも追求が執拗だったので、つい彼も切れて、開き直ってしまった。

「ああ、寝たよ、激しく組んずほぐれつつしたよ、草の上で。姉さん達が、貴族の豪華な部屋で、勇者様の上になって下になって、涎を流して、励んで、楽しんでいる時にね!」

 しまったと思った。4人は、うつむいて言葉を失っていた。彼女達も、しまったと思っていた。どうしようか迷ったが、このまま黙ってしまっては最悪だと思い、

「ごめん。」

 頭を下げた。4人も、

「すまなかった。悪いのは私達だ。」

「ごめんなさいね。」

「許して、お兄ちゃん。」

「ごめんね。お兄ちゃん。」

 その後、謝りながら、泣きながら抱き合った。

 魔大公は、大声で笑った。

「全く、我というものがありながら、困った奴だ、本当に。」

と彼女は腕を組んでくるので、“困った奴と言うのはどっちなんだよ?”と心の中で文句を言ったが、逆らうわけにはいかなかった。

 戦闘は、魔族穏健派・人間亜人連合が有利に戦いを進めた。反乱軍は、人数は多かったが、4人の戦姫、魔族人間亜人100名を率いながら、先頭になって戦うジャメロ、陣頭指揮にたつ魔大公、統制の取れた魔大公の軍、人間亜人の部隊の前に連戦連敗だった。反乱軍は、少数の幹部とその周辺以外は、訓練も受けていない兵で、

「魔族はこんなに弱かったか?」

と人間の兵が呟くほどだった。手強い連中も、ジャメロとその兵に瞬く間に防御陣を破られ、躍り込んで来るマナイラ達に頼みとする連中が倒されてしまい、魔大公の手兵の攻撃に他愛もなく蹴散らされてしまった。そして、最後の拠点への攻撃となった。

「ウギャー!」

 ドクロのような顔の巨体が、マナイラの蹴りとオブリナの矢で大きくよろめいたところを、ティティアの特大の火球が命中した。燃えながら、それを阻止する魔力も体力も、既に彼にはなかった。彼の側近達の半ば以上が、イメアとジャメロにより死体の山となっていて、残りの魔族は近づけなかった。

「何やってるんだ!話が違う!」

「俺達を見捨てたのか?最初からか?」

 そんな叫び声が上がると流れを打って逃げだした。それを追おうとした部下達をジャメロが止めた。

「お兄ちゃん。やっぱりなんかあると思う?」

 イメアが心配そうに尋ねた。ジャメロが小さく頷く。

「とにかく、敵の大将は撃ち取った。兵をまとめて、撤収して魔大公の軍に合流しよう。」

 二人のところに戻ってきたマナイラが言った。ジャメロは直ぐに伝令を送って指示をだした。城内で略奪を働き始めた兵が出始めていたが、命令の大部分は素早く実行された。その時、異様なものを感じた。事前に周囲を見に行かせた連中が戻って来た。皆、動揺していた。魔大公の側近の男が駆け込んできた。西門から突入し、本丸の西側に進んでいた魔大公は、裏切りにあって孤立している、東門の外側に軍勢が迫っているということだった。西側の魔軍の一部がこちらに攻撃する構えのようだとも。

「どういうこと?とにかく、このままでは包囲されて危ないわ。固まって、素早く逃げないと。」

 オブリナが言った。直ぐにジャメロは決断した。

「後ろに向かって突撃する。姉さん達は、先頭立って援護してやってくれ。お前らは、姉さん達を援護しろ。それから、お前らは。」

 魔大公から派遣されていた兵を指さして、

「お前達は私と共に、魔大公を救いに行く。そこのお前は我が軍の、道案内をしろ。後で魔大公の助けになる兵力を失わせたくないだろうが!」

「姉上達に従ってまとまって、陣形を崩すことなく突撃しろ。そうすれば九分通り生きて帰れる!そうで無ければ、九分通り死ぬ、しかも恩賞も報酬もなしだ。分かっているなら、生きるために突撃しろ!」

と全軍の前で演説すると姉達に向かって、

「姉さん達もご無事に。私は、必ず後から追いつくから。」

 魔大公を助けることが、彼女らと自分がともに無事に帰れる、勝利する条件だと必要性を納得させようとしたとき、思いがけない彼女らの反応で凍りつき、できなかった。

「勇者様からの使命を、命をかけて果たしなさい。」

 4人の顔を見た時、“誰だ、こいつらは?”とぞっとするものを感じた。姿は変わっていなかったが、何故かそう感じて背筋が冷たくなった。

「もちろんです。」

 そう言って背を向けて駆け出した。“とにかく、魔大公を助け出し、勝利を得ることだ!”と自分に何度も言い聞かせた。

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