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愛する姉妹を取り戻す  作者: 安藤昌益


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13/25

交渉?

「家族みんなで食事なんて何年ぶりかのう。やはり、美味しく感じられるのを。」

 母が嬉しそうに言った。ジャメロも、姉マナイアにシチューのおかわりをよそいながら、

「何言っているんだよ~。以前みんなで食卓を囲んでから、1年経っていないよ。」 

とイメアが反論した。

 マナイアが、シチューの入った皿をジャメロから受け取った。

「何言っている。あの時は、4人は心ここにあらず、早く任地に行きたいで、しかも、しかめっ面だったじゃないか。8人で、家族みんなでというにはほど遠かったわ。」

 4人は、下を向いた。彼女らの姪っ子、甥っ子でもあり、義理の弟妹でもある二人は、叔母達かつ姉達を不思議そうに見ていた。

「どちらにしても、こうして戻って来てくれてうれしいよ。」

 慌てて母が言った。ジャメロは何も言わずに、微笑ながらオブリナの皿に牛肉の照り焼きを細かく切って盛った。彼女はまだ片手で、何ごとも十分に、やるまでにはなれていなかった。“でも、四人がいたおかげでこうして無事に帰って来れた。”しみじみ彼は感慨に浸っていた。五人がそろうと、思った以上に速く魔界を駆け抜けることが出来た。何度も魔獣に、ゴブリンなどの群れに遭遇した。ティティア長距離の攻撃魔法で、オブリナが弓矢や投石器で援護する中、マナイアと拳を抜いたイメアが飛び込む。拳や足蹴りをぶち込み、剣が切り裂く。ジャメロは、マナイア達の直ぐ後ろから、弓や魔法で援護し、剣と拳で手助けをし、彼女らの背後も守る。オブリナ達に向けられた攻撃、その攻撃を、行う者から彼女らを守る。彼は、常に動き回り、四人のことを気にかけて行動し、駆け回った。

「安心して戦えるよ、ジャメロ、お前がいると。」

 マナイアが、しみじみと言った。

「姉さん達がいるからだよ。姉さん達は一人でも超一流だよ。私は一人だと、何時までも半人前だよ。」

「そんなことはない。お前より頼りになる戦士なんていなかった。私は、本当に、大事なものを捨ててしまっていたんだとしみじみと感じているよ。」

 そう二人が見つめ合っていると、イメアたちが抗議を始めた。

「お姉ちゃん、ずるいよ!」

「ジャメロも、何、デレーとして。」

「二人とも、顔を離して!」

 それに割って入るように、

「本当に、久しぶりに満腹だよ。」

 あらためて、デザートを食べながら母が言った。

「そうだね。ずっと戦場だったり、似たようなところだったもんね。あ、王宮とかにもいたことがあったね。でも、なんか美味しくなかったし、やっぱり戦場の延長みたいなもんだったよね?」

 3人は頷いた。

「その時、兄さんは?」

 ティティアの問いに、 

「そこから離れたところ別室の小部屋、よくて。町の宿での食事というのもあったよ。」

「それでも、あのエルフ女と一緒で美味しかったでしょう?」

 4人が睨んだ。しかし、オブリナとティティアが直ぐに、

「それはもう忘れるわ。」

 と言って助けてくれた。母が大きく咳をわざとして、

「さあ、過去のことは置いて、今後のことを考えようじゃない?」

 10日後、5人は帝国連合帝都の王宮にいた。 

「我が姉妹達は、身は最早ボロボロで戦うどころか瀕死の状況で、弟として、兄として見捨てることは出来なかったのです。任務と領民を放棄しましたのは大罪ではありますが、姉妹達の過去の功績と我が身を代わりに、お赦しいただけないでしょうか?!」

 ジャメロは、皇帝の足下で平身低頭で叫んだ。足下と言っても、かなりの距離があったが。彼の後ろにはマナイアはじめ4人が、跪いていた。ただれた顔半分、左手の義手、左脚の義足、顔の大きな傷跡を隠すことなく、さらけ出していた。義手も義足も、不格好なものをわざとつけていた。

 彼らを取り囲むように座る廷臣、王侯貴族、元老院議員、司祭長などは、多くの者が好奇心でチラッと見つめて、その後目をそむけた。彼女らを知るものが、そのあまりのひどい有様に驚き、同情の視線を送っていた。ジャメロの傍らに立つ司祭が、彼らの功績と思いを述べ、寛大な措置を懇願した。

 この司祭は、彼らの父とも旧知の仲であり、彼らとも親しい関係にあった。父も、そしてジャメロ母子も、彼の教会にはたびたび寄付をしていた。今回のことも、彼の協力と具申、働きかけで実現したものである。やれるだけの事前の説得工作もしてくれた。

 彼女達には、さらけ出したくないものであることは分かっていたが、同情を引くため、敢えて隠さないことを求めたのはジャメロである。そのかわり、彼は自分のささやかな地位も、領地も捨てる覚悟ではあった。

 できるだけのことはした。彼自身も、多少とも親しい貴族、騎士に懇願してはいた。しかし、寛大な措置が下されるかどうかは確証は得られなかった。危ないかもしれない、とも思った。一人で逃げ出したいとすら、チラッと思った。それでも公式に赦されなければ、どうなるか分からない。大手を、振って姉妹達が生きれるようにしたい、それが、彼の思いだった。

 静まり返っている中で、微かにざわついた。

「申し上げます。」

 勇者の声だった。彼はどこからともなく現れた。後ろには、彼の正妻である3王女が従っていた。ジャメロは、冷たい汗が滴るのを感じた。さすがに、高名な、かつ地位のある司祭の口添えがある中で、物騒なことはしないだろうとは思っていたが。

「彼女らが、任務を放棄したのは、確かに失態ではありますが、困難過ぎる役を推薦した私の罪が、大きいと思います。まず、私めに、鞭打ちの刑をご命じください。」

 すると3王女が、勇者に刑をあたえれるなら我々もと言い立てた。三文芝居だ、と思ったが、この場では効果的だった。皇帝にも勝るくらいの力を持つ大国の王女達と名声という原因を持つ勇者である。そもそも、皇帝にとっては、勇者の意志によって生じたことなのである。それはともかく、勇者の功績を考えれば刑などあり得ない、そもそも困難過ぎる任務が完遂出来なかったことを責めるのは酷だ、彼女らの功績も考慮すべきだ(勇者の功績を考慮するなら)、ジャメロの行動が結果的に彼女らを救ったことと彼の心情を思うと、ということになり、彼女らの爵位は一等格下げ、領地没収、しかし、その代償として、恩賞金を与える、ジャメロの爵位を一等格上げして、彼が購入した土地を彼の領地として認知し、恩賞金も与える、という寛大な裁定が下った。領地と認定されることは、色々な特権が与えられる。ジャメロは、皇帝と勇者に平伏したまま感謝の言葉を口にした。勇者は、彼に歩み寄り、彼の肩に手を置いて、

「君には、本当に苦労をかけた。私としては、君とエスパの仲を応援していたのだが。男女の関係というものはなかなか上手くいかないものだね。あれほど、恋しあっていたのにな。姉さん達を労ってくれ。」

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