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アリス・ウィズ・ラビットワークス  作者: 結城リノン
第二章 ネザーラビティア編
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第一話 ネザーラビットと盗賊の親方

ネザーラビティアへと旅立ったアリスたちは、途中の町に昼食のために立ち寄ると、この先の渓谷には、盗賊が出るという話を聞く。

前もってその情報は仕入れていたが、アリスには別の目的があった……

 王都ラビティアから旅立ち、数日。行商人の風体をしたアリスたちは、深くかぶったフードを少し開け、周囲を眺める。

 馬車の上から眺める景色は、王都から離れるにつれ、建物が少なくなっていき見晴らしがよくなっていく。


「アリス様、そんなに身を乗り出すと、危ないですよ?」

「大丈夫よ、ラフィア」


 心地よい風が流れているのは、王都とは変わりなかったが、ネザーラビティアに向かうほどに閑散としていく。農地も少なく、待ちゆく人すらすれ違わない。


「この辺って、農地が少ないよね。ラフィア」

「えぇ。ネザーラビティアは農地というより、地下資源が豊富ですからね。」

「地下資源というと、石炭とか?」

「えぇ。その他にも石油なども存在しますよ。」

「へぇ~」


 ラフィアの説明の元、ネザーラビティアのことを知っていくアリス。一緒に同行しているアリナは、馬車の手綱<たずな>を握りながら、首をかしげていた。


「ねぇ、アリス。」

「どうしたの、アリナ。何か見つけた?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど、石油があるのなら、どうして馬車なの?」

「あ、そうよね。石油があるんなら、ガソリンがあってもいいものだけど……」


 石油を精錬することで作られるガソリン。主に燃料として使われ車の動力として使われる。それは、クラリティアと同じだった。


「あぁ、それなら、私の幼いころにはあったみたいですが。」

「ということは、今は……」

「はい。ネザーラビティアは、油田も多く、一大産地だったのですが、ある日。供給されなくなったのです。」

「何かあったの?」

「えぇ。資源の奪い合いが始まったんです。」


 クラリティアとのゲートが閉じた直後、不安に駆られた住人達は、こぞって奪い合いを始めた。

 最初こそ、小さな騒動だったが、次第に暴動へとつながり奪い合いを始めた住人は、さらに最悪な状況へと陥った。

 クラリティアに依存率が高かったネザーラビティアは、こっちに残ったクラリティア人を囲い込み、どこへも行かせないように縛り付けた。そうすることで、利権を独占する方向へと舵を切ったのだった……


「そんなことが……」

「はい。そして、幽閉に近い環境で管理されていたクラリティア人は、当然。病気を患い、急逝していったのです。」

「これを聞いて、アリス様は……、クラリティア人のアリス様はどうします? 嫌いますか? ラビティア人を……」


 アリスと同じクラリティア人が、幽閉され軟禁され、死んでいった過去を知ったアリス。


「それでも……」

「えっ?」

「それでも、私は、仲良くやっていけると思ってる。」

「アリス様」

「それに、ケンカしたくて、ケンカしてる人は少ないと思うし……」


 アリスの素直な返答に、馬車の手綱を取っていたアリナも、笑顔になった。そしてラフィアの心にもほんのりと、あたたかな気持ちになる。


『あぁ。本当に、アリス様でよかった……』


 そんな話をしながら、アリスたちはネザーラビティアの中央都市の手前の街へと到着した。一応、街道沿いということもあり、それなりの人はいたが、それでも王都よりは閑散としていた。

 それでも、王都との交流があるこの街は、物資が潤沢にそろっているようだった。


「あら、珍しいね。王都からのお客なんて。」

「そうですか?」

「そうさ、街道沿いが物騒になってからはね、めっきり来客も減ってさ。」

「そうだったんですね。」

「うちの店はまだいい方さ、もっと中央都市に近い方になると、盗賊団が出るからねぇ。」


 饒舌に話す店主は、いろいろと街のことを話してくれた。

 なんでも、炭鉱などの地下資源に恵まれたこの土地は、溢れた石油が汚染してしまい、作物は育たない荒れた土地になっていた。

 そこに、クラリティアの加工する技術が伝えられ、それまで厄介者でしかなかった石油が、一転して取引のできる価値のあるものに変貌した。

 精錬した液体は、人々の生活を潤わせる潤滑油となり、盛んに人の交流も増えてきた。そして、生活水準が右肩上がりに充実していった。


 店内を見回しても、お客といえばアリスたちだけということもあり、店主は横の席に座り、昔話が止まらなかった。その店主も、久しぶりに来た客に親近感と同時に、娘を見るような優しい顔をしながら説明してくれていた。


「そこでさ、まさかのゲートが閉まったっていうじゃないか。それからさ、一気にきな臭くなったのは……」

「なるほど……」

「うちらはさ、クラリティアの人に、頼りっきりだったのがいけなかったのさ。今考えればね。」

「便利なシステム。楽になる生活。それに、うちらは甘えてしまったのさ。」

「それで、この有様さ。」


 悲しそうな表情をしながらも、気丈に店主は説明していた。一通り話すとその店主は、アリスたちの表情をみて、一気に明るい表情に切り替わる。


「ごめんなさいね。こんな辛気臭い話をしてしまって。」

「いえ。貴重な話を聞かせてもらいました。」

「で、あんたたちは、どっちへ向かうんだい? まさか中央かい?」

「はい、そのつもりですが……」

「なら、きをつけた方がいいよ。途中の渓谷には盗賊が出るからね。」

「盗賊ですか。」


 盗賊のことは、ラフィアも知っていたが、詳しくはあまり知らなかった。王都で聞く情報より、現地で聞く方がより実情を踏まえている。そのため、ここでは知らないフリをしたラフィア。


「そうさ、行商人が襲われているっていうから、注意したほうがいいよ。まぁ、そちらの子がいれば、大丈夫だろうけどさ……」

「えっ? あ、私ですか?」

「そうさ。こうして、お客の相手をしているとね、身なりでわかるものさ。」

「いくら、行商人の体をしていても、漂う空気まではごまかせないからね。」

「あはは。バレてしまいましたか……」


 王族のラフィアのオーラは、接客業の店主には、見抜かれたようだった。食事を済ませたアリスたちは、ネザーラビティアの中央都市へと歩みを進めた。

 そして、しばらく進むと、店主の話のように、渓谷を抜ける街道へとたどり着いた。すると、ラフィアはアリスとアリナに耳打ちをする。


『アリス様。アリナ様、気が付いてます?』

『えぇ。前の街からね』

『あそこまで気配を駄々洩れさせるのは、素人だな。』


 伝説の英雄の子孫のアリナは、ついてきている人が、一般の人ではなく明らかに盗賊の類なことを見抜いていた。

 今にも、突っかかりそうなアリナと、護衛として気を張っているラフィアに、アリスは提案した。


「アリナ、ラフィア。手を出しちゃだめ。」

「えっ? なんで!」

「そうよ、盗賊なんだし……」

「いや、ダメ。盗賊だからって、おいそれと手を出して下手に目立っちゃダメ。」

「じゃぁ、どうするの?」


 アリスには考えがあった、自分から望んで盗賊をやっている輩なんて、そこまでいるとは思っていないアリス。そのため、盗賊をやるのにはそれなりの理由があり、理由はあることでとう盗賊をやめられないことをわかっていた。


『そこまで進んで、盗賊になるとは思えない……』


 そんなアリスの考えを察したアリナは、ラフィアとともに、努めて利益で動く行商人を演じることにした。


「そうね。罰することは簡単だわ。でも、罰するだけでは、根本的な解決にはならないからね……」


 そして、アリスたちの乗る馬車が渓谷に入ると、予想どおりにうしろからついてきていた輩が声をかけてきた……


「なぁ、どこまで行くんだい? おや、これまた美人そろいの行商人だねぇ」

「兄貴、俺はこのちっこいのを……」


 ちっこいといわれたのが、よほどご立腹だったのか、アリナは突っかかりそうになっていたが、アリスはそれをギリギリ抑えていた。


『アリナ。待て!』

『だけど!! こいつ。あたしをちっちゃいって!!』

『わかるけど、今は、落ち着いて。』

『うぐっ。わかった……』


 一方の輩のもう一人は、フードをかぶっていたにもかかわらず、アリスのスタイルを見抜いたようで、いやらしい目でアリスを見ていた。その姿に、愛想笑いをするしかできなかった。


『落ち着いて、私。純粋に調べたいだけ……』


 そんな気持ちが決して表に出ないようにしたいアリスは、努めて行商人の娘を演じていた。

 そして、アリスは一つのことを思い出した。そのことをきっかけに、この場を何とか進めるために切り出した……


「あの、一つ伺いたいのですが……」

「ん? 何だい? 美人のお嬢さん。」

「えっと、こちらに、クラリティアの方がいるとか……」

「えっ?!」


 アリスの発言に、アリナとラフィアが同じような反応を示し、困惑した表情をする。


『なっ、なにを考えてるの?! アリス。』

『そうよ、あなたがクラリティア人ってバレたら、なにをされるか……』

『大丈夫。この人たちは、なにもできないわ。』

『いいわ、賭けてみましょう』


 そんなアリスの言葉に、輩たちは、顔を見合わせると、良い金ずるとでも思ったのか、アリスたちを案内しだした。


「あんたたち、クラリティア人に会いたいのかい?」

「え、えぇ。会えるんですか?」

「あぁ、それには、とりあえず、親方に顔を出してもらわないとな。」

「そうですよね。わたくしたち行商人ですので、やはり親方に顔向けした方がいいですよね?」

「おや、あんたは、物分かりがいいじゃないか。他の二人とは違って……」


 確かに、アリナとラフィアは英雄の子孫と王女。そのため、イライラした感情がうまく隠し切れずに、駄々洩れになってしまっていた。

 そして、近くに馬車を止めると、坑道を利用したアジトへと案内されるアリスたち。そこは、手掘りで作られた坑道で、アリの巣のように入り組んでいた。

 アリスたちの前と後ろを先ほどの輩が挟み、逃げられないように位置取りをしていた。


「言っとくが、逃げようとは思うなよ。」

「そんな、行商人が逃げますか?」

「いやぁ、用心さ。あんたは大丈夫そうだが、他の二人がなぁ~」

「あぁ、この二人は、護衛も兼ねていますからね。」

「やっぱり、そうかい。あんたと違って、空気が違うのさ。」

「そうですよね。」


 アリスたちはそんな他愛のない会話をしつつも、この坑道について聞いてみることにした。


「この坑道は、石炭か何かですか?」

「お、わかるかい? 今じゃ、盗賊なんてしてるけどさ、元は炭鉱夫なのさ。うちらは……」

「ところどころに炭鉱の名残がありますからね。」

「だろ。うちらでもメンテナンスはできるが、どうしても専門的なことは、親方に言わないとな。」


 長い坑道をついて歩くアリスは、話をしながら、相手の過去をゆっくりと引き出していた。


「その親方は、クラリティアのことに詳しいんですか?」

「そりゃぁ、もちろん。クラリティアのことを聞いたら、この辺で右に出るものはいないさ」

「へぇ~そんなに……」


 楽しそうに話す輩のひとりを、おだてるように話を続けるアリスを、不審に思ったもう一人が……


「おい! お前。」

「は、はい? なにか?」

「話し過ぎだ! もう少しおとなしく……」


 思わずビクッと反応してしまうアリスだったが……


「こら、客人をおびえさせるなよ。お前は……」

「いや、だって。」

「すまねぇな。こいつ、警戒心が人一倍強くて……」

「いえ、いいんです。いろんな方がいるので。」

「そう言ってくれると助かるね。ほら、ついた。」


 坑道の入り口から数十分。ようやくたどり着いたそこは、坑道の休憩所を改造したような場所で、ひときは広くなっていた。

 その中央に、大きな椅子が用意されそこに、座ってる人物がいた。


「親方、お客人です。何でも、クラリティア人に会いたいとか……」

「ほう? クラリティア人。」

「は、はい。私はアリスと申します。そしてこの二人は私の護衛で……」

「アリスとやら」

「はい。何でしょう。」


 椅子に座る親方は、ゆっくりと立ち上がると、アリスの姿をまじまじと眺めていた。そして……


「まずは、長旅で疲れただろう。ゆっくりしていくといい。」

「はい、ありがとうございます。」


 こうして、アリスたちは、無事に盗賊のアジトへともぐりこんだのだった。

盗賊の親方の元へと連れていかれたアリスは、開けているとはいえ、狭い坑道の中で、親方と対峙することになるのだった。そして、アリスは行動を始める。

次回、第二章 第二話は、

親方に向かってアリスは、説得を始める。それは、釈迦に説法ではなく、結果を導き出せるのか……

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