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アリス・ウィズ・ラビットワークス  作者: 結城リノン
第1章 王都ラビティア編
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第14話 広報と秘書 後編

その日、書店でラヴィリナは驚愕の表情を浮かべていた。

あれほど赤面した、自分とアリスのそういう本が、またしても販売されていた。

しかも、それは……激しさを増し、より。えっちな本になっていたのだった……

 その日、ラヴィリナは書店で顔から火が出そうなほどに真っ赤になっていた。それは、新たな新刊が発表されたのだが、それは、前にも増して激しく体がまぐわっている作品だった…

 たしかに、アリスが男性だったら、そんなことを考えたことはないとは言い切れないラヴィリナ。手に取ったその書籍では、自分と似ているキャラクターがアリスと似ているキャラと、濃厚に体をまぐわせているのだから、興奮しない方が無理というものである。

 ごく自然にもじもじとしてしまうラヴィリナだったが、すんでのところで理性を保ち、自制心を聞かせたのだった。そして…


「店主!!」

「は、はい! あっ、またあなたですか……」

「ま、またとはなんだ! またとは!」

「す、すみません。ラヴィリナ様。」

「い、いいか。誰が買っていったとか、言うな! 絶対だぞ!」

「は、はい。わかりましたから……」


 そうして、ラヴィリナは前と同じように買い占め、店へと向かった。よく考えると、店に向かわなければアリスにバレ、恥ずかしい想いをしなくても済む。

 かといって、このまま店に置いていれば、まるでラヴィリナがそんなことをしているかのように思われかねない。その結果……


「重い……しかし、これをあの場においておくわけには…」


 まして、書籍が売っていた場所がまずかった。

 アリスが店を開こうとしていた場所から数分というところに、そんなものが売っていた。

 アリスらラヴィリナをモデルにしたような、そういう本が身近に売られていたら、アリスの営業にも支障しかねない。


「こ、これは。アリス様のためなんだ!! うん。そうだ!」


 ラヴィリナは、そういう体で大量に購入していたのだった。そう、口実である。

 店の扉を開け中にドサッと置くと、ラフィアが寄ってくる。それは、純粋に興味のままだった。


「な~に、ラヴィリナ。またエッチな本買ってきたの?」

「なっ! ら、ラフィリア様?! な、何のことでしょう……」


 必死に否定するが、興味という油に火が付いたラフィアを慌てて水で消しても、全く効果がなかった。


「あらぁ。うわぁ。えっ? あらっ。ラヴィリナったら、こんなこと考えてたのね……」

「あっ! ラフィリアさま?! これは、違いますよ。違いますからね。キャラクターがしてるだけですからね。」


 ラフィアが手に取っている書籍は、濃厚なキスをしたり足を絡めたベッドシーンなど、年頃の子が見たら卒倒してしまいそうな内容だった。現に……


「ぶっ!! ちょっと、ラヴィリナ。あんたね。鼻。」

「えっ? あっ……」


 ラフィアと一緒に確認をしていたラヴィリナの鼻からは、赤い血がたらりと出ていた。

 そこまで興奮したというわけではなかったが、自分に似すぎているキャラクターがそんなことをしてるものだから、思わず考えてしまっていた。


「ちょっと、アリス。この子。よっぽどエッチよ。気を付けてね」

「は、はい……」

「えっ?! アリス様?」


 書籍に夢中になっていたラヴィリナは失念していた。隣にアリスがいるということを……

 そして、ラヴィリナが持ってきた書籍をアリスも見ていたのだから卒倒ものだった……


「い、いや。こ、これは。アリス様。特徴がないかとじっくり…」

「あらっやだ、ラヴィリナは、じっくりと眺めてたのねぇ……えっち。」

「なっ!? ラフィア様?!」


 そういうと、ラフィアはラヴィリナの横に寄ると、ラヴィリナに耳打ちをする……


『アリス様が男だったら、こんなことをしたいと思ってたんでしょ?』

『んんんん!!!!』

『よかったじゃない。本の中ででも“そういうこと”をしてくれてるわよ。アリス様……』

『!!!!』

「ラフィア様ぁぁぁぁぁ!!!!」

「やぁぁぁぁぁぁぁ~~~~」


 真っ赤になったラヴィリナがラフィアを追いかけ、店内を走り回ったのだった。そんな中、恥ずかしがりながらも、アリスは最後のページに気になるところを見つけた。そこには……


「ラヴィリナさん? ちょっといいですか?」

「へっ?」


 ラフィアを捕まえ、じゃれていたラヴィリナは、アリスの声にこたえアリスの横に行くと、アリスが指さす場所を見た。


「ラヴィリナさん。ここ……」

「えっ? あっ! 次回発行日!」

「あっ、そうだね。その日に印刷所に行けば……」

「そうしましょう。」


 アリスとラヴィリナ。ラフィアは、その発行するタイミングを狙うことにしたのだった。



 一方そのころ。ラヴィリナにバレているとは全く知らない秘書兼広報のロヴィリナは、せっせと創作に明け暮れていた。


「まさか、ラヴィリナ様の本があんなに売れるとは。いよいよラヴィリナ様の人気も。」

「ですねぇ~お堅いイメージの高い、ラヴィリナ様ですが、実のところ人情味もありますからね」


 執務室では、ラヴィリナを宣伝するとはいえ明らかに変な方向へと暴走し始めていたロヴィリナとアリリアだった。


「ロヴィリナ様。これ、出すんですか?」

「そうよ。決まってるじゃない。ラヴィリナ様の初恋相手よ。」

「ですが、さすがに……」

「いい? ラヴィリナ様も乙女。これくらいはしたい! と思っているはずよ。」

「な、なるほど! さすがロヴィリナ様!」

「さ、印刷所に行くわよ!」

「はい! ロヴィリナ様!」


 それから、ロヴィリナと補佐のアリリアは、意気揚々と原本を持ち印刷場へと向かう。その道すがら、ロヴィリナはこれから印刷するものも、売れてくれることを期待していた。

 印刷場に入り、受付を済ませた直後。ロヴィリナの後ろから扉を開けて入ってきたのは、ロヴィリナにとって尊敬する人だった。


「ロヴィリナ!!」

「あっ。ラヴィリナ様。どうして、ここに?」

「これ! あなただったのね!!」


 ラヴィリナが二人の前に出したのは、ロヴィリナ達が前に発行した本だった。


「あぁ。これ。そうですよ。」

「な、なんで、こ、こんなの書いたの!」

「えっ? だって、あんなに恋に疎かったラヴィリナ様が、ようやく出会えた殿方なのですよ!」


 淡々と説明し、情熱をもって制作していたことに、感激したラヴィリナ。ただ、うれしかったのと同じくらいに……


「大げさなのよ!! ロヴィリナはっ!!」

「ふごっ!」


ゴチーン!!


 ラヴィリナは秘書にげんこつをして気絶させると、同伴していたアリリアも一緒にアリスの元に連れていくことにした。この時点でロヴィリナとアリリアを会わせるのは心配だった。しかし…


『こいつを、アリス様のあの刑に処さないと、溜飲が下がらないわ』

「あ、あのラヴィリア様……ロヴィリナ様を怒らないで……」

「ん? 何か言った? アリリア?」

「ひっ! な、何でもないです……」


 この時ほどアリリアはラヴィリアが怖いと思ったことはなかった。そして、ついたのは、アリスの店の前だった…


「えっと、ここは……」

「まぁ、入ればわかるわ。」

「は、はぁ。」


 ラヴィリナは、ロヴィリナを抱えたまま店の中に入っていくと、アリスが店の掃除をしていた。


「あっ。ラヴィリナさん。えっと……」

「アリス様。ただいま。」

「おじゃましま…す?!」


 ラヴィリナの後ろに続いては言ったアリリアは、ロヴィリナがモデルにしたであろう人が目の前に立っているのに驚いていた。それと同時に、アリスの端正な顔にときめいてしまっていた。


「えっと、ラヴィリナ様……えっと。この方が……」

「えぇ、そうよ。アリス様。」

「あ、あの。初めまして。アリリアです。」


 アリスは挨拶をするためにアリリアのもとにいくと、必然的にアリスの方が高身長になってしまい、見下ろす形になる。

 それがどうしてもいやだった。アリスは、片膝をつきアリリアと目線を合わせて挨拶をする。


「初めまして。アリリアさん。よろしくね。」

「は、はい。」


 アリリアも王都騎士団に入ってからは、恋愛の恋の字からも縁遠くなっていた。そんな矢先のアリスの登場。まして、自分よりも高身長な上に、王子様タイプ。惚れないはずは無かった。

 そして、アリリアにとって、ある意味ではご褒美の時間が訪れる。それは、ラヴィリアからアリスに言った一言だった。


「アリス様。もふっていいわよ。」

「えっ? いいの?」

「えぇ。この子も“同罪”だから……」


 満面の笑みで言うラヴィリナ。そして、もふるということを全く知らないアリリアは、この後。数段、大人の階段を上ったのだった……


「はっ!! 私は何を?!」

「ロヴィリナ様。気が付きましたか?」

「アリリア、ど、どうしたの? 何か、つやつやしてるけど……」

「えっと、こ、これは。その……」


 アリリアはそこまで言うと、ラヴィリナはロヴィリナの肩をつかみ、笑顔で喜んでいたが、その笑顔の影は完全に怒っていた。


「おはよう、ロヴィリナ。しっかりとしつけをしないとね。」

「えっ?! ラヴィリナ様……。笑顔が、怖いです……」


 それから、ロヴィリナはアリスと始めて初対面を果たした。それは、ある意味では劇的に、そして、刺激的なお仕置きをされたのだった……

 アリスに手を引かれバックヤードに行ったあと……ロヴィリナのエッチな声が響いたのだった……


『あ、アリス様?! あっ! んっ! だめぇっっっ!!』

『………』

『あっ。』


 アリスはスッキリとした表情のまま、ぐったりとしたロヴィリナを連れてきたのだった。その後、ラヴィリナは二人にアリスの秘密を言ったのだった……


「あなたたち、どうだった?」

「うえっ?! ど、どうだった?!」

「ら、ラヴィリナ様。そ、そんな……恥ずかしい……」


 ラヴィリナに聞かれた二人は、一応に顔を真っ赤にし、モフられたことを聞かれたと勘違いしていた。


「いや、違うからね、アリス様に抱きしめられて気が付かなかった? ってこと。」

「えっ? そ、それは。もう、ね。」

「は、はい……」


 二人は、顔を見合わせて息を合わせてこういった。


「気持ちよかったです!」


 満面の笑みで言う二人は、実にすがすがしい表情をしていた。ラヴィリナの意図したこととは、全く違う方向に向かってしまっていた。


「もっと気が付くところあったでしょ! あなたたち。」

「えっ? だって……ねぇ。」

「は、はい。」

「全く、あなたたちは。あんなに密着したのなら、胸が“あった”ことに気が付かなかった?」

「えっ?!」


 どうやら、ロヴィリナとアリリアは、アリスのもふりによってあり・なしを確認したのではなく、単純に気持ちよかっただけになってしまっていた。


「いい? 極秘事項だけど、アリス様は、女性だからね。」

「えっ?!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 ようやくラヴィリナが伝えたいことが、伝わったのだった。その後、ラヴィリナの意図通りに、なりはしたのだが……


「ちょっ。なんでこうなるの?!」


 ラヴィリナが書店で見つけたのは、同じような本でラヴィリナに似たキャラとアリスに似たキャラが、そういうことをする本があった。ただ一つ違っていたのが……


『女の子同士になってる!! はぁ。それに、増えてる!!』


 ロヴィリナとアリリアは、アリスのもふりを経験したことで、そっちの性癖にも目覚めてしまったのだった。そして、その本にはロヴィリナ達と似ているキャラも登場していたのだった……

身内への制裁は、アリスのもふりだった今回。

ロヴィリナもアリリアも少しだけ、大人の階段を登ったようで……

次回は、活躍のなかった、ラヴィリオに妙な噂が?!それは、アリナとの交際報道だった。お楽しみください。

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