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アリス・ウィズ・ラビットワークス  作者: 結城リノン
第1章 王都ラビティア編
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第8話 準備とコスプレ?

王都でカフェをすることになったアリス。

クラリティア人が来ていることは、王の正式発表がないため公にすることができない状態に…

そのために、アリスは変装することに……

ラビティア人の中では高身長の部類に入るアリスは、街を歩くだけでも注目を浴びてしまうのだった…

 王城の応接間では、用意された書類にサインをするアリスの姿があった。文字は違うものの、ここにサインするということだけは分かったアリスだった。


「クラリティアの文字と似ているんですね……」

「えぇ。我々の文化の基本になっているのは、クラリティアの文化でもありますからな」

「なるほど。結構、クラリティアとラビティアって、深く絡んでいるんですね……」

「えぇ。我々の根本の技術は、クラリティアからもたらされたものが多くあります。」


 王都へ来る途中、ラティアも同じようなことを言っていた。多くのシステムがクラリティアからもたらされ、生活を豊かにしたという。

 その後、ゲートが閉じたことにより、その技術をめぐり奪い合いが始まったということを……


「えぇ。そうです。我々は、血塗られた歴史の上に成り立っています」

「確かに、クラリティアとの交流で得られた技術は、かけがえのないものでした」

「それは、もう。その辺の金貨がかすれてしまうほどに、貴重な存在でした」


 ラビティアは、クラリティアとの交流が始まった直後は、原始的な馬車や馬などによっての移動をしていたが、クラリティアとの交流が始まると、一気にハイテクの流れが始まった。

 それまで、馬車を使った輸送が石炭などを利用した車での輸送に代わり、より効率よく、大量に運ぶために鉄道が開発されたりなど、著しく発展をしていった……

 その著しい発展は、王都だけに限らず周囲の関連都市にまで波及し、地域を潤していった。それは、ラビティア住人の生活水準を一気に押し上げるのに、時間はかからなかった……

 上下水道は整備され、しっかりとメンテナンスが行き届いた王都は、特に人口が密集し、発展著しいほどだった。

 しかし、その輝かしい王都の生活は、ゲートの閉鎖によって、事態は急転することになった……


 突然のゲート閉鎖は、憶測に憶測を呼び、ラビティアに残されたクラリティア人の迫害や、過酷労働へとむけられた。

 クラリティア人が意図的に閉鎖したのではないかという憶測に始まり、発展著しかった王都がゲートを閉じたのだという憶測すら飛び交い始めたのだった……

 その憶測や汚名を晴らすために、交渉に次ぐ交渉。しかし、結果は、決裂という結果になってしまっていた……


「我々は、クラリティアに依存し過ぎていたのです。クラリティア人は、もともと我々の土地にあったものを利用し、発展させたのですから……」

「それって、つまり……」

「えぇ。技術のみの供与だったのです。多少なりとも物資の交易もありましたが、その多くが、技術の供与でした」

「クラリティアからもたらされた技術の供与によって、多くの物資が使われないまま王都内に眠っていることが分かったのです」

「我々は、それを使い、王都の発展へと舵を切ったのです。しかし、地下資源はいづれ、枯渇するもの……」

「王都で必要とするものは、多少なりともクラリティアからの輸入となったのですが……」

「ゲートが閉じた……」

「はい。すると、市民は、危機感を覚えるのです。」


 ゲートが閉じたタイミングと王都の資源が枯渇したタイミングが重なってしまったことで、一気に不安に陥った市民は王都から逃げ出し始めた……

 それは、資源が直接影響しない業種にまで波及していき、王都の成り立ちがガタガタになってしまうほどだった……

 何とか持ちこたえた王都は、再度ゲートをつなぐためにあれこれと研究を始め、その中のひとつにクラリティア側に行ったラビティア人という可能性を見つけたのだった。


「でも、よくクラリティアと連絡が取れましたね……物理的には行き来すらできなかったんでしょ?」

「えぇ。人の行き来はもちろんのこと、物資も当然のように不可能になりました。ただ……」

「ただ?」

「ただ唯一。クラリティア人同士の思念は送り届けることに成功したのです。それが、アリナ様でした。」

「えっ! アリナが?」

「えぇ。偶然というか、アリナ様は騎士の家系だったということもあり、思念波の通信に関して、可能だったのです。」

「こんなことはありませんでしたか? 時々、ふらっといなくなるとか……」

「あぁ。そういえば……」


 アリスのクラリティアの店は、もともとゲートが出現していたエリアに近かったことと、アリナがもともとラビティア人だったことが重なり、やり取りができていたのだった……

 現に、クラリティアにいたとき、アリナは時々、出かけ昼食や夕食のころには戻ってくることがあった。

 つまり、そのタイミングでラビティアとやり取りをしていたとすれば、すべて説明がつく。


「そうして、アリナ様と連絡が取れた私たちは、こうしてアリス様をクラリティアからお呼びすることに成功したのです。」

「そういうことだったのですね」

「えぇ。アリス様がいらしたことで、王都も安泰になります。といっても、王都はまだ、野党も多く夜に出歩くのは危険です。なので……」


 ラビティウスの説明の間、どこかへ行っていたラビティナが、メイドと一緒に何やらカートに乗せて持ってきた……


「説明は終わりましたか?」

「あぁ。用意は……」

「はい、こちらに……」

「用意?」

「えぇ。アリス様。ラビティアに、クラリティア人がいるというのがバレると、いろいろと危険が及ぶ可能性があるので……」

「えっ、ま、まさか……」

「はい」


 アリスは、満面の笑みでラビティナの用意した服に着替えることになるが……


「か、かっこいい……」

「いや、どうして……」

「うむ。これなら……」


 頬を染めるラビティナと、不服なアリスは、アリナたちの待つカフェの候補地へと足を進めることになった。

 一方の、アリナたちはというと、せっせと家主から購入した元バーを掃除していた。


「アリスに聞かずに決めてよかった?ラフィア……」

「いいのよ、私の一存で決めていいって、言われてたから……」

「そうなんだ。にしても、割と設備が残ったまま夜逃げしてる……」


 アリナたちが掃除をする元バーは、通り側の正面が接客の店。中央のバーを挟み反対側にキッチンがしつらえてあった。

 そのほとんどは、備え付けのもので、少し手入れすれば使えるような状態だった。


「夜逃げしてから、そんなに時間が経ってないのか?」

「じゃないかな?」


 人が住むことをやめると、建物は自然の節理に任せ時間の経過とともに朽ちていく……

 しかし、バーとして使われていたこの建物は、家主がしっかりと定期的に手入れしていたのか、ほこりもそこまで積もっていなかった。

 掃除をするといっても、ほこりをはらう程度ということもあり、そこまで人手がいるというわけでもなかった……


 アリナたちが掃除をしているそのころ、着替えが終わったアリスとラビティナは、アリナたちが購入した店へと観光を兼ね王都内を散策していた……


「あの方、どなたかしら……」

「ラビティナ様と、見たことがないお方だけど……」


『かっこいいぃぃぃぃぃぃ!!!!』


 王都の市街地を探索するアリスとラビティナ。レンガ造りの多い通りは、観光客も多く、いろいろな形の耳をしたラビティア人があふれていた。

 アリスは目につくラビティア人のモフモフした毛並みに、撫で繰り回した位という願望の一方。ラビティア人の方から、注目の視線を浴びている状況では、どうしていいかわからない状態になっていた……


「やはり、アリナ様はそういう方でしたか……」

「へっ?」

「アリナ様から聞きましたよ。ご自身からグイグイ行くことはできても、ぐいぐい来られるのは、苦手ということを……」

「あ、アリナがそういってたの?」

「えぇ。よくできた方です。いろいろと教えてもらいましたよ。」

「ほかにも?」


 ラビティナは、アリナに教えてもらったことをつらつらと並べていった。それは、アリスが恥ずかしくなるほどの内容だった……


「のぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「でも、落ち込まないでくださいね。それがあってのアリス様ですから……」

「ラビティナ……」


 フォローをしてくれたラビティナに抱き着こうとしたアリスだったが……


「あ、そうそう。」

「えっ?」

「公の場での、モフモフは勘弁してくださいね。」

「は、はい。」


 王女ということもあり、手入れの行き届いたふわふわの毛並みをした王女のその宣言は、笑顔なだけより怖さが増していた……


「あっ、あそこのようですね。」

「えっ? あれですか? 結構立派な建物ですね……」


 通りでそんな会話をしていると、中からラフィアがひょっこりと顔を出した。


「あら、ラビティナじゃない。もう、きたの?」

「えぇ。準備が終わったので、散策を兼ねて……」

「で、アリス様は?」

「ラフィア。相変わらず、かわいいなぁ~」

「えっ。あ、ありがとうございます……」

「ん?」

『ふふふっ。』


 突然話しかけられたラフィアは、それが『男装』したアリスとは全く思っていないようで、戸惑いと照れが隠しきれない様子だった。


「ラフィア。案内してくれる?」

「あぁ、そうだったわ。こちらです……」

「ふふふっ。」


 普段から公の場に出ることの少ないラフィアは、上流階級の姿をしている人に対して、王女としての体裁をギリギリ保っていた……


『私は、一応。王女なんだし、しっかりしないと……』


 建物内にはラフィア、ラビティナ。そして最後にアリスという順番で入ったが、アリナもラフィアと同じような表情をしていた。しかし……


「ラフィア。誰か……」

「ラビティナと……えっと……そちらは……」

「えっ?」

「ぷっ!」


 店の前でラフィアが出迎えてから、ラビティナはクスクスと笑いをこらえていた。


「もう、何よ、姉さん……」

「い、いえ。な、何でもないわ……ぷっ。だめ、吹き出しそう……」


 そんな姉妹のやり取りが続いた後……


「もしかして、アリス? アリスなのか?」

「アリナぁ~」


 ようやくわかってくれる人がいたことで、いつものようにハグをしようとアリナに駆け寄って抱き着こうとするが……


ひょい!


「あれ?」


ひょい。


「…………」

「もう! なんなの! アリナぁ……」

「じ、じゃぁ。本当に……」

「えぇ。そうよ。正真正銘のアリス様よ」


えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!


 アリスは、クラリティア人としては背の小さい部類に入るが、ラビティアの中では、十分過ぎるほどに長身に位置する。

 しかし、クラリティア人であることを知られると、よからぬものに襲われる可能性が高かったことで変装することになっていた……


「ラビティナ。どうして、男装なの?」

「えっ? アリス様ほどの高身長で女性の姿をされると、かえって目立ってしまうのですよ」

「そうだとしても、男装って……」

「でも、ほら。似合ってるみたいですよ? ねぇ。アリナ様。ふふふっ」

「えっ? あっ……」


 アリナは掃除用のほうきを持ったまま、頬を染めてアリスと目線が合わないようにしていた……


「ふふ~ん。アリナぁ、こんな姿のあたしがよかったの?」

「い、いや。ちがっ……」


 目線をちっとも合わせようとしないアリナは、その姿だけでアリスになびいているのがわかるほどだった……

 数分後……アリスの男装に少しは慣れたのかアリスのハグを受けていた……


「んん~アリナぁ~」

「…………」


 いつも、男勝りのところがあったアリナだったが、この時は少しだけ乙女な一面が見れたアリスだった……

男勝りの性格を持っていたアリナ。

男装する形になったアリスを見た途端…ちょっぴり乙女に目覚める??

借りてきた猫……ではなく、借りてきたうさぎ状態のアリナに、アリスも戸惑ってしまうのだった……

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