42.奇跡の真相2
「この事件、関係者が美形揃いだろ? そこにマスコミが目を付けて、センセーショナルに報道したものだから……」
俺の部屋にテレビがない理由がそれでわかった。
殺人未遂事件の被害者にショックを与えないための病院側の配慮だったのだ。
吉田比奈の父親がマスコミに圧力をかけたため、報道自体はすぐに沈静した。
だが、その反動もあって、ネット上では大変なことになっているらしい。
「あちこちのブログにお前や例の教師の写真がアップされていて、この病院にも問い合わせがきている。俺の親父、実はこの病院の雇われ医師なんだ。親父には黙ってろって言われたけど、本人だけ知らないなんて、やっぱ、まずいだろ?」
「ネット上で公開されているのは、麻賀と俺の写真だけ?」
こちらの真意を汲み取った如月は、神妙な声でうなずいた。
「探してみたけど彼女の写真はなかった。父親が手を回したんじゃないかな」
「だったらいいよ」
「よかないだろ! おい、下ばかり向いてないで、少しはこっちを見ろよ! 俺はこれでもお前のことを心配してっ!」
記事に気をとられていると、でかい手に顎をつかまれ、顔をぐっと持ち上げられた。
「柳瀬、そんなにショックだったのか?」
心配顔でそんなことを言う。
ピンとはずれのセリフがおかしかったが、ここで笑うのはさすがに失礼だろう。
「如月、違うんだ。ショックを受けてるわけじゃない。俺は自分が誰に殺されそうになったかも知ってるし、写真を公開されたぐらいで落ち込んだりしない。むしろこの記事に感謝している。おかげで、ずっと知りたかったことを知ることができた」
感謝の言葉を述べてから、一人にして欲しいと告げると、如月は不満そうに眉を持ち上げた。
「お前、ひょっとして俺のことが好きなの? この体勢だって、しゃれにならないと思うけど、誰かに見られてホモのレッテルを貼られても知らないよ?」
如月一樹は、純情で、単純な、スポーツ馬鹿だ。
でも、男友達などいない俺には新鮮でもある。
「変なやつ」
逃げるように出て行く背中を見送って、俺は床に落ちた週刊誌を拾い上げた。




