ホワイトチョコレートの省略はWC、他意はない
サブタイトルのネタ、絶対本編出してやる。
将太は早速その例のマンションに足を運んでいた。というのも、早速電話を掛けたところすぐに来いと言われてしまったからである。
一時間以内の来なければ面接は受けないと無茶苦茶なことを言われたので将太は急いできたのであった。
「……というか、入居に面接ってなんぞ」
正直胡散臭くはあった。が、例えこれがどんなものか分からなくとも可能性に賭けてみたいと思えるほどに彼の心は疲弊していた。
将太は意を決してマンションの自動ドアをくぐった。
「……」
「来たわね! 貴方ね? ここに入居したいという偏屈な変わり者は!」
「へ? そ、そうですけど……、偏屈な変わり者って……」
マンションに足を踏み入れた彼を待っていたのはサイドポニーがまぶしい十代くらいの女の子であった。が、胸にマンションオーナーのカードをぶら下げているので間違いなく、この人がこのマンションのオーナーなのだろう。
「……というかデカくないすか? このマンション」
将太は先ほど外から見た外観とマンションに入ってすぐの感想を口にした。
するとオーナーは誇らしげに胸を張った。
「当然! この私、戸羽財閥の娘であり、天才実業家でもある戸羽風子が自らの欲求を満たすためだけに建設した超高級ロイヤルマンションなのだからね!」
「戸羽財閥ってあの、超お金持ちの財閥? マジ? それマジ?」
「マジよ! ……さて変わり者、あなたの名前を言いなさい。私があなたはここにふさわしいか審査してあげる!」
何ともエラそうに胸を張る戸羽財閥の娘、戸羽風子は何とも嬉しそうに将太に詰め寄った。
一体何が彼女をそこまで駆り立てるのか今一分からない将太であったが、名乗れと言われて名乗らないわけにはいかない。
「光根将太、です」
「いいでしょう将太、さあ、奥に、奥に来るのです!」
「テンション高くありません?」
「当然です! 三か月ぶりの強者なんですから……」
何やら不穏な空気がにじみ出てきた。このような神待遇で人が来ないわけがない。しかし、彼女曰く将太は三か月ぶりの来訪者という事になる。
「……ここ、もしかしてヤバい?」
「ヤバくないですよ! ちょっとこの町一番の変わり者が集結しているだけですので……」
十分ヤバいなと将太はここに入居することを半ばあきらめた。
あの姉妹から逃れて行きついた先があのわがまま娘たちと大して変わらないのは何としても避けねばならなかった。
「あの、やっぱりこの話は……」
「さて第一問! 行くなら山? それとも海?」
やんわりと断ろうとした将太の声は客間に入った途端謎の問題を出してきた風子の声にかき消された。
もはやこれは適当なことを言って不合格になるしかないなと将太は腹をくくる。
「どっちも行けばいいんじゃないんですか? 海の近くに山があるところとか……」
どちらかを答えよという問題でどちらもと答える邪道、流石に相手は呆れ返っただろうと将太はチラリと様子を伺った。
「て、天才かよ……」
(すっげー好印象!?)
将太は驚愕の表情を浮かべる風子の反応に逆に驚きを隠せなかった。
普通それくらい思いつくだろうとツッコミを容れそうになるほどに清々しいまでの驚愕の表情であった。
「じゃ、じゃあ第二問、五人の人間がいますがこの人たちは協調性がありません。どうすればいいでしょうか?」
「……別に無理する必要ないんじゃないですか? 強いて言えば共通の趣味を見つけるとか……」
「ちなみに君、どんな趣味を持っているかな?」
「面白ければ何でも」
もはや問題ではなくただの質問になっているのだが、将太は気にせずなんとなく答えた。無難そうに、面白みのない人間を演出して見せた。
「……採用! ようこそマンションホワイトチョコレートへ!」
「そうですか……って、えええええええええええええええええええええッ!? いいの? こんな適当な会話で?」
「うん。まあ電話来た時からもう決まっていたんだけどね。頑張れ!」
「そこでよろしくねじゃなくて頑張れって言われる辺り、ヤバいにおいがプンプンするんですが……」
とは言いつつも、実は将太、結構嬉しかったり。
あの地獄から解放されるという事実がこの上なく彼の心を躍らせていた。
「じゃあここにサインよろしく。契約書。ちゃんと全部読んでね。一応言っておくと、詐欺とかではないから。ちゃんと全額こちらが負担するし、特に制約はないよ」
「マジすか! ありがとうございます!」
……まあ細かいことは抜きにして、とりあえずこうして将太は新しい住居を確保することになった。