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私、幽霊です!  作者: 黒華夜コウ
二章:肝試しなんて身から出たアレ
33/152

P.33

「経営不振……」

 突然、まひろが窓の外を眺めながらポツリと言った。

「と、いうことになってるわね」

「引っ掛かる言い方だ」

 殆ど間を空けずに、優弥から疑問の声を投げ掛けられた。

「でも潰れた理由なんぞ俺も知らん。調べたのか?」

「まぁ、流石に……って言っても、ネットにも載って無いような所だったから、聞いて回っただけだけど」

 一連のやり取りに、和輝も首を傾げる。

 経営不振?

 自分の記憶の中では、そんなに閑散とした病院でもなかった筈だが。

 だが、それも幼い時の記憶だ。

 時代の移り変わりは唐突に訪れる。

 もしかしたら、行かなくなってから何かあったのかもしれない。

 相変わらず窓の外だけを眺めるまひろに、和輝は問うた。

「他になにか理由が有りそうなんですか?」

 まひろはこちらを向かず、暫く考えるようにして間を空けてから返しだした。

「んー、それが何も無いのよねぇ」

 やや間延びして返って来た言葉に、今度は心の中で首を傾げる。

「親に訊いても大人に訊いても返ってくるのは同じ理由ばっかり」

「皆が皆『詳しくは知らない』って」

 舞がまひろの後を続けた。

「煙たがるようにその話は早々に打ち切られる」

「だから怪しい」

 最後の舞の言葉に、まひろはコクリと頷いた。

「つまり、隠されてるってことッスか?」

 瞬の問いに、今度はまひろが首を左に傾げた。

「どうかしらね。こういうのって、思い込みがそう匂わせてるって場合も多いから」

「思い込み?」

 和輝が口を挟む。

「そう。金城病院の向かいに墓地がある。そこで怪奇現象が起きている。何も知らない人がこれだけ聞いたら、きっとこの二つを関連付けるでしょう?」

「まぁ、その二つしかワードが出てきてないしな」

 茶化すように言う優弥をよそに、和輝は追撃する。

「でも、その病院の墓地だったんでしょ? だったら……」

「いいえ」

 ピシャリとまひろは否定した。

「墓地は病院が潰れてから建てられたものよ。直接的な関係は無いわ」

 と言ったものの、まひろは考えこむように顔を下に向ける。

 バックミラー越しにそれを察知したのか、代わりに優弥が口を開いた。

「……全く無いとも言い切れないけどな」

「はぁん?」

 少し間の抜けた声で瞬が突っ掛かる。

 優弥は続けた。

「その墓地ってのは、病院が所有していた公園を新しく造り直したんだよ。行きゃ解るが、その時のベンチやブランコなんかはそのまま置いてある。あの井戸だってそうだろうな」

「げっ……誰がそんなモンで遊ぶんだ」

「知るか」

 言葉の終わりと同時に、優弥の車がスピードを落とす。

 誰も通らない歩道の端にゆっくりハンドルを切ると、車は完全に停止した。

「知りたきゃ自分で見てみたら良いだろ?」

 運転席と助手席の隙間から見えたニヤリと笑う優弥の横顔に、和輝は少し背筋を強張らせた。

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