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私、幽霊です!  作者: 黒華夜コウ
六章:日向の中で彼女は笑う
149/152

P.149

「神谷さん……あの、もしかしてなんですけど、この記事って……」

 期待していた分、予想通りにいかなかった時の喪失感は大きい。だから期待なんてなるべく抱かないようにする。

 そうやって生きてきた筈だ。

 もしかしたら、は和輝の経験上、そうならない事が多い。

 だからこれは、そう、念の為の確認事項だ。『もしかしてまだ隠されたリンク先が有ったりするのか?』などと望み薄な希望を砕く為の。自分の気持ちを突然の喪失感で虚無にしない為の。

「えぇ、これで全部ね」

「病院に森崎の情報が有ったりとかは……?」

「無いけど……カルテか何かって事かしら? でも、あの病院は閉鎖されてたし……閉院したのが正式な手続きを踏んでいたのなら、中にそんな個人情報を置いているとは思えないわ」

 それもそうか、と和輝の諦めは深まった。

 廃病院に雑に放置されている患者のカルテ。ホラーの探索では定番だが、現実的に放置したままというのは考え難い。閉院した理由にもよるが、信用を更に地に落とす事になりかねない。というか現代でそんな事をしたら、何かしらの法律的にもマズイだろう。

「……医療ミスの中に森崎の事が書かれてたりは?」

「そもそも、医療ミス自体が噂話。それで誰かが亡くなったりとか、そういう人の名前なんて何処にも載ってなかったの」

 つまり。

「夏樹ちゃんの事に関しては、手詰まりって事か」

 そういう事だ。

 優弥はトドメを刺した後に、頭を掻いて難しい顔をしている。

 調べた、というのは飽くまで病院と墓地についての事だった。

 相も変わらず、夏樹に関しては彼女の名前しか判明していない。いや、一応謎の歌という取り扱いの難しい情報は増えたが。

「で、でも夏樹ちゃんとは喋れるから、本人に色々聞けば良いしさ!」

 励まそうとしてくれているのだろう。舞は取って付けるように、思ったままの事をそのまま口にした様だった。

 そんなに気軽には考えられない。憑りつかれた未来が全然見えて来ないからだ。

 別に夏樹が存在するのは良い。それは全く構わない。だが自分の身体に憑りつかれたとなれば話が変わってくる。

 眉間を指で押さえていた和輝は、徐に顔を上げて舞を見た。

「……例えば?」

「好きな物とか、趣味とかさ!」

「お見合いか?」

「身長とか測って記録しとくのはどうよ和輝ちゃん」

「健康診断か?」

「じゃあ、中央病院が良いな。俺の知り合いが居る」

「行かないぞ?」

「取りあえず、夏樹ちゃんの入居届を……」

「出しません!」

 和輝の口から、ここ一週間で一番盛大な溜め息が出た。

 皆、真剣に考えてくれているのか、そうじゃないのか。

「でも、病院についてだってまだまだ調べられる部分は有るからね。そう落ち込まないで、相田君」

「だけど……それまで一生このままでしょう?」

 最悪、和輝が寿命を迎えるまで二人で一つ。なんて事も考えてしまう。

 和輝はまだ十八歳。残りの人生の半径五百メートル以内にずっと夏樹が付いているのか?

 前途多難過ぎる。想像しただけで胃がどうにかなりそうだ。

 そんな事を思いながら和輝は自分の腹部を擦る辺り、もう遅かったかもしれない。

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