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私、幽霊です!  作者: 黒華夜コウ
六章:日向の中で彼女は笑う
142/152

P.142

「相談っていうと……」

 和輝を見ていたまひろは、そのまま視線を横にずらした。

 その先には瞬、ではなく、その真横で落ちて来た私物を押し入れの中へ投げ戻している夏樹の姿。

 和輝は頷いた。

「勿論、森崎の事ですよ! 皆なら何か聞けるかなって思って……優弥や本条さんだったら除霊の方法も知ってるかな、とか」

 あの時は、その期待が強かった。

 優弥も舞も『霊』について何処まで干渉出来るかよく知らなかったし、夏樹に関しても幽霊の事を何も知らない自分よりかは有益な情報を持っていると思っていたからだ。

 しかし今はどうだろう。鈴鳥紗枝の依頼を経て、少しだけだが理解した気がする。

「……和輝、前にも言ったが」

 沈黙してしまった空気を、優弥は静かに破った。

 和輝は、彼の言葉を納得してしまうのだろうと、この時妙に落ち着いた気分だった。

「俺や本条は視えるし話せるが、それをどうにかする方法は持ってない。対抗出来る方法もな。有ったとしたら、あの時俺もぶっ倒れてなかったんだしな」

 矢張り、と和輝は頭を沈ませた。

 優弥も、舞も、鈴鳥や籠飼に対しては最初から強硬手段をもって解決しようとはしなかった。地道に周囲の情報から探って、警戒して……肝試しの時だって、二人は逃げ道こそ示してくれたが夏樹の前に立ち塞がるような真似はしなかった。いや、出来なかったのだ。両方とも。二人は霊に接する事が出来るからこそ、自分達が如何に霊に対して無力かを知っているのだと思う。

「……まぁ、夏樹ちゃんの前で祓うだなんだと話をするのも気が引けるってのも有るがな」

 そう言って、優弥は頭を掻いた。押し入れの前では、その夏樹が「そうですそうです!」と何回も頷いている。

 気持ちは解らなくもない。だって、夏樹はここに至って尚、誰かに危害を加えるような真似をしていないのだから。籠飼の件ではむしろ助けられたのも間違いない。

 霊的被害を受けていない幽霊に、こちらが騒ぎ立てる必要が有るだろうか。そう、彼は暗に言いたいのだ。

「祓うとかじゃなくて別の方法を考えるってんなら、俺も協力できん事はないが」

 突如落とされた希望の一声に、和輝はパッと顔を上げる。

「そ、それって……!?」

「つまりだな、鈴鳥さんの時と同じって事だ」

 何が言いたいのか解らず、和輝の口は止まった。

 瞬も今一つ要領を得ていない様で、眉根を寄せて優弥へ訊ねる。

「どういう事? 勿体ぶってないで教えてくれよ」

 優弥は彼の言葉に答える代わりに、近くに立つ女性を見上げる。

 まひろは、顎に手を当てて何かに思い至った様子で口を開いた。

「……彼女の事を理解する、って事ね?」

 優弥は不愛想な変わらない表情で頷く。それを聞いても、和輝にはまだ何の事か理解に苦しんだ。

「生きてる人間と同じよ、相田君。相手の事をどうかしたいって思うなら、まず相手の事を調べてみるの。例えば、夏樹ちゃんは何歳なのか。いつの時代に生きていたのか。何処で亡くなって、何をしている子だったのか……彼女をどうするにしても、最初にすべき事は夏樹ちゃんを理解してあげる事。私個人としては、除霊するなんて嫌だけれどね」

 最後の言葉は、恐らくまひろの趣味嗜好が加わったものだろう。

 だが、それを実行するにしてもまだ不安は残る。

「でもさ、夏樹ちゃんって名前以外の記憶無いんでしょ?」

 そう、出会った墓地には夏樹の墓さえなかったと言う。詳しく調べていないので、夏樹の言葉を鵜呑みにするなら、だが。

 舞はそれを指摘して、腕組みをした夏樹もまたそれを肯定した。

「なんであんな所に居たのかも謎なんですよねぇ。あそこって何か曰く付きだったりします?」

 それを幽霊側が訊くのか。

 和輝の不安は強まる一方だったが、まひろは彼女の言葉に微笑で返して見せた。

「ふふ……ちゃあんと調べてあるわよ」

「……マジですか!?」

 腕組みをしたままの状態で夏樹は目を丸くさせた。

「御堂君、アレ、開いて貰える?」

 一瞬、何の事だか理解しかねていた様子の瞬だったが、程無くして何かに思い当たったのか、自身の携帯を取り出した。

「……あぁ、アレっすね!」

 一体何をするつもりなんだと和輝が見守っていると、瞬は手早く弄った携帯画面を皆に向かって見せつけた。

 そこに映し出されていたのは、前に何処かで見たようなサイト。いや、確実に見た事がある。皆で小さな画面を覗き込んで、それを初めて見た夏樹がサイト名を読み上げた。

「オカルト、ミステリー相談研究会……?」

 携帯を持った瞬が、自信たっぷりに笑顔を見せていた。

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