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私、幽霊です!  作者: 黒華夜コウ
一章:呪いのなんとか
13/152

P.13

「もっと早く言ってくれよ!」

「言っただろ、さっき!」

 さっき、と言うのはつい五分程前のアレのことだろうか?

 だとしたら、中々に。

「遅すぎるだろ」

 優弥が気持ちを代弁してくれた。

「ねぇ、貴方もしかして……言ってなかったの?」

 ポニーテールの女性は左手も腰に当てて呆れた様子で言った。

 そりゃそうだ。

 言葉から察するに、約束を取り付けた段階で和輝達も行くことになっていたに違いない。

 隣では小柄な少女と優弥が呑気に挨拶を交わしていたが、こっちは素直に承諾出来ない恨めしさが有った。

 出汁に使われるのもそうだし、今日は用事も無いが幾ら何でも許可なく約束を取り付けるのは酷いと思う。

 瞬の方をジロリと見ると、彼はバツが悪そうに「昨日の今日決まったんだよ」と呟く。

 成程。と和輝は、昨夜から現在に至るまでの瞬の一連の行動を得心した。

 恐らく昨夜の遅くまで彼女達と連絡を取り合って、肝試しに行く約束を取り付けた。何方かからはハッキリとは判らないが、瞬は絶好の機会に大層焦ったはずだ。

 瞬の側の友人を連れて来ることが条件だったのだろう。

 それで、差して問題無さそうな、普段から予定を入れないタイプの和輝と外見で釣れそうな優弥を選んだのだろう。

 相手が寝るまでに返事したかったのなら、一々確認を取る暇はない。

 そして肝試しは彼女達と出掛ける口実で、他にも予定を立てていたんじゃないだろうか。

 その予定が優弥の言うところの『企み』で、それを考えている内に眠りこけて寝坊した、と。

 朝に連絡を寄越したのも、実はこのことについて話すつもりだったのだろうか。

「ま、良いわ」

 ポニーテールの女性の一言で和輝も瞬もそちらを見た。

 やはり、この女性が言葉を発すると注目したくなる何かがある。

「今日行く場所を皆に発表する前にね、見せたいものがあるの。今夜、誰かの家に一旦集合しないかしら?」

 誰かの家……と悩む和輝の思考が一瞬止まる。

 ん……今『皆』って?

「もう俺達も行くことになったみたいだな。ドンマイ和輝」

 席から離れて少女と話していた優弥が、和輝の肩に手を乗せた。

「いや……いやいやいや、待てって! まだ行くって言ってねぇよ!」

「あら、行かないの?」

 いや、行きたい。

 行きたいが、勝手に決められるのが癪なのだ。

 自分でも子供っぽいとは思う。だが、空気に流されるような考えはしたくなかった。

「あれー? もしかして相田きゅうん、恐いんでちゅかー?」

 瞬は瞬で開き直って煽って来るが、今は無視した方が正解だろう。

 ここで悩ましいのが、『行きたくない訳じゃないけど誘って来たのは瞬だから、まずは自分の気持ちの整理として瞬の誘いにイエスと言いたい。流れで行くと言うのは個人的に気が進まないから、一旦そこまで話を戻してから行きたいと答えたい』。

 これを如何にして短く、且つ自分への心証を悪くせずに相手側へ伝えるか、だ。

 考えている間にも二つ目の達成は難しくなる。

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